神斬り武蔵 作:もやしもん
轟音の方へと足を運ばせるとそこにはモンスターと対峙しているロキ・ファミリアの仲良し四人組がいた。
「新種か!?」
ロキ・ファミリアが対峙しているモンスター、地面から生えた緑色の蛇のようでその身体は緑色の鱗のような皮膚に覆われていた。根本からは何本もの触手が生えていて敵対者を捕らわんとうねっていた。アイズ以外の全員が素手で辛うじて剣を持っているアイズも剣を持っているものの既に罅が入っていてあと数度の衝撃で割れて折れそうなことを物語っていた。
「武蔵も手伝って!」
ティオナに言われて俺も戦闘に加わった。触手をかわしながら近づき、拳を大きく振りかぶって打ち込む。新種のモンスターの鱗が凹み拳がめり込む、が殺すには至らなかった。
「硬いのぅー」
武蔵の拳から血が滴った。
カグツチで全部纏めて焼き払う選択肢は有るのだがそれはしたくなかった。カグツチの具体的な制御方法は未だ分かっていない。ダンジョンの大広間を火の海に変え果てるような火力の魔法が放たれることがあればただの火の玉が放たれることもある。こんな木造の建造物という燃焼材に囲まれた空間で無制御のカグツチを放てば都市中が地獄と化すかもしれない。
血の滴る拳で硬い鱗を何度も殴打してやっと一匹が倒れた。先刻までは血の滴っていただけの拳は一体倒しただけで肉が削げ、骨が見えていた。この調子ではとても全てを倒しきるなんてことは出来ない。アイズの剣が砕けた。ヒリュテ姉妹は触手に捕まっていて、アイズも今さっき捕まった。唯一無事なレフィーヤは魔法の詠唱を始めたが次の瞬間、新種のモンスターは瞬時にレフィーヤに突っ込んだ。
俺は本気で加速した。敵がレフィーヤに突っ込むのがひどくゆっくりに見えた。そして目の前で鮮血が飛び散るのも見えた。
―間に合わなかった―
目を閉じたくなる光景を目を見開いて見つめた。二度と忘れぬ光景にするべく目を見開いた。
そして倒れゆくレフィーヤの身体を抱き抱えてモンスターから距離を取った。
幸いにも傷は浅かった。俺は懐に入っていたポーションを駆けた。
「すまぬ!すまぬ!!レフィーヤ!!!お主の力が必要じゃ!!目を開けてくれ!!」
強くなりたかった…強く、なりたかった。じゃなきゃアイズさんの隣には立てないって知っていた。じゃなきゃ武蔵さんの隣に立てないって知っていた。
アイズさんの凍りついた表情を温めたかった。
武蔵さんから時折感じる寂しさを満たしたかった。
私の腹部を敵が貫く。ああ、失敗した。私は弱い。誰にも頼られず終わるのか
良い匂い。懐かしいような安心するような…優しい匂い。
「お主の力が必要じゃ!!目を開けてくれ!!」
ああ。優しい顔。必死そうに見えてもその顔には優しさと悲しさに満ちている。
レフィーヤの目が開いた。 一先ず安心する。
「俺の手も限界じゃ!アイズもティオナもティオネも触手に捕まった!お前の魔法が必要じゃ!!ヤツは恐らく魔力を優先して攻撃する!!俺が抱えて逃げ回ってやる!!だから、だから……お前が魔法を撃ってくれ!俺からの願いじゃ!!レフィーヤ・ウィリディス!!!」
レフィーヤの目にしっかりとした光が宿る。素晴らしい、美しい覚悟の瞳だ。
「ウィーシェの名のもとに願う!!!!」
魔力に反応して全ての触手がレフィーヤを狙う。俺はレフィーヤを抱えたまま触手から逃げ回る。
「【エルフ・リング】!!」
レフィーヤを囲むようにして輪が出現した。第一関門突破だ。
―終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏の前に風を巻け―
―閉ざされる光、凍てつく大地―
―吹雪け、三度の厳冬―
―我が名は…アールヴ!!!―
敵が俺達を捕捉してまた突っ込んでくる。壁を蹴って飛び上がり、空中から敵を俯瞰する。魔法を撃つのに絶好の位置、絶好の角度、そして絶好の魔法使い。
「今じゃ!!」
「ウィン・フィルベルト!!!!!」
俺の胸から氷が飛び出して敵を覆った。
レフィーヤに影響が無いように着地をした。さっきまで生き生きと動き回っていた敵は尽く凍りついていた。触手に捕まったいた3人は各々砕いて抜け出るとレフィーヤに駆け寄った。
「レフィーヤすごい!」
「助かったわ」
「…リヴェリアみたいだった」
「いえいえ!あれは武蔵さんが…ってあれ!?武蔵さんは!?」
俺は四人にバレないように抜け出た。そんな俺に後ろから声がかかる。
「お前も案外真面目やなー」
「ロキ、見てたのか?」
「おう。武蔵~。気張りすぎるなや~。お前なら、、強くなれるで」
「じゃと、いいな。じゃあな」
俺はロキと別れて静かに歩いた。そして誰もいないホームの扉を開けた。中に入った俺はシャワーを浴びると袴を履いて簪も過度に装飾があるものではない物にした。具足を付けて胸当も着けた。刀を腰に差し、探索用の背嚢を背負った。
向かうはダンジョン。強くならなきゃいけないんだ。
弟子の活躍を見ないクソ師匠に拍手。