自分が納得出来ない程不自然にするつもりもないけれど。
「本当にすまなかった……。許してほしい」
「い、いや、別に大したこと無かったし……」
建物の中で手当を受けた俺。赤髪の少女が申し訳なさそうに頭を下げてくるが正直そこまでしてもらう程気にしてない。大して痛くも無かったし。転生してどうやら相当石頭になっているらしい。そんなとこまで強靭なのかサイヤ人。
というかぶつかって来た桜色の髪をした少年の方がダメージが大きそうでこちらが申し訳なくなる。
「んだよ!大体あんなとこに突っ立ってる方が悪いんじゃねえか」
「ナツ!」
「だっ!?」
文句を言った少年、ナツに拳骨を落とす少女。………このやり取りだけで彼らの力関係が察せられる。
痛みに呻くナツの姿を観察する。どことなく見覚えがあるような気もするし、彼が主人公のナツ・ドラ……ゴ……ドラコーン?だかなんだかいう人だろう。こうして見ている限りは普通の子供にしか見えないが、将来成長すればヒロインにラッキースケベをかますような立派なエロコメ主人公になるのだろうか。(なりません)
「お前が逃げたのが原因だろう。人の所為にせずに反省しろ」
「お……お……」
………かなり痛そうなんだけど彼は大丈夫なのだろうか。
「自己紹介がまだだったな。私はエルザ。こっちはナツ」
マジで?この子がエルザだったのか。彼女の事は知っているぞ。友人がしつこく聞かせて来たからな。確か裸で拷問されるシーンがあるキャラだろ?嬉々としてそのシーンについて語ってくる友人にドン引きしたのは記憶に新しい。こんな真面目そうな子が将来はそんなSM地味たプレイをするようになるのかと思うと時の流れとは残酷だなと思う。
「俺は……」
それはともかくとして、俺も名乗ろうと思ったのだが、そういえば名前とか気にしてなかったな。
考えてみれば名前が無いなど不自然にも程がある。予め決めておけばよかった。早く応えないと怪しまれる。何か、何かそれっぽい名前……
「お、俺はリセロ」
咄嗟に出たにしてはサイヤ人っぽくていい名前ではなかろうか。この世界においておかしくないかは分からないがまあ多分大丈夫だろう。少なくとも前世の名前である田中太郎を名乗るよりはよっぽどいい。
「ふむ。リセロというのか。ギルドに何か用だったのか?」
「えっ?あ〜………」
目の前に突っ立ってたんだからそう思われるわな。さて、何と答えたものか……。ん?いや、待て。今俺は無一文だし、このギルドというのがどういうものかは知らないが、見たところ子供も何人かいるみたいだし、俺も厄介になれないだろうか。少なくとも子供が一人で食い扶持を稼ごうとするよりは誰かの庇護下に置いてもらった方がいいだろう。
「俺、行く所無いんだ。迷惑じゃなかったら此処に居させてもらえないかな?」
結論から言うと俺の要望は受け入れられた。というか俺としては居候させてほしいというニュアンスだったのだが、エルザが人の話を聞かずにどんどん話を進めていき、気づけばギルドに入る事になっていた。
俺ギルドがどういう所なのかも分かってないんだけど本当にいいんだろうか。
「気にするな。お前と同じような境遇の者も居る」
いや、同じような境遇って何?エルザさん?何か勘違いしてません?
流されるがままにギルドマークを刻み、俺はフェアリーテイルの一員になった。ちなみにマークの場所は左胸だ。どこに入れるか迷ったのだが、超サイヤ人4の胸にギルドマークがあったらカッコイイのではないかと妄想してしまい、衝動的に決めた。だが、多分そんな未来は来ないだろう。自分がそんなに強くなれる気はしないし、そんな変身が必要な戦いなどしたくない。
その後も慌ただしく一日が過ぎていった。いくつか挙げれば、何故か上半身裸の少年(グレイというらしい)に喧嘩を吹っかけられたりした。
どうやら俺がナツを頭突き一発でノックアウトしたと彼は認識したらしく、興味を持たれたようだ。俺としては面倒くさかったので無視しようと思ったのだが、あまりに人の話を聞かない為、望み通りに頭突きを食らわせて沈めておいた。自分の石頭ぶりにはびっくりである。
………ところで、友人の話ではグレイという名前の所構わず服を脱ぎ出す変態キャラがいたはずだが、こいつだろうか。まさかこの歳で露出性癖があるとは恐れ入った。
後はエルザとミラジェーンという子の喧嘩に巻き込まれたり。一部始終を見ていたというのに何故喧嘩をし始めるのか分からなかった。後ろではナツとグレイも殴り合っていたし、此処のコミュニケーション法か何かなのだろうか。だとしたら俺にはついていけそうにない。
それとミラジェーン……長いからミラでいいか。の口調がレディースのヤンキーみたいで怖い。露出の激しい格好してるし、将来が不安だ。
………友人からミラは裏でショタとか漁ってそう、とか聞いた事があるが目腐ってんのかあいつ。どこからどうやってそんな想像に至ったんだ。
それに比べてミラの兄妹達は素直だな。喧嘩を止めようとしてくれたエルフマンとリサーナが天使に見えたぜ。あれか、姉を反面教師にして育ったからいい子に………おっとミラが凄い目で睨んで来ている。
えっ?何か失礼な事を考えなかったかって?ハハハッ、そんな訳がないだろう。だからその拳を収めるんだ。話せば分かr
いや、普通初対面の人間を殴るか。周りも慣れたものを見てるような態度だったが、暴力によるコミュニケーションが成り立ってるのかよ此処。毎日こんなんじゃないだろうな……。
最後に語るべきはマスターだろうか。見るからに問題児だらけのこのギルドのマスターということで、どんなゲテモノが出てくるかと身構えていたのだが、優しい爺さんで拍子抜けした。怒ったら怖かったりするんだろうか。少し話したが本当に性格の良さそうな人だ。年寄りは頑固で偏屈で面倒臭い存在だと思っていたが、考えが変わりそうである。
おっと、忘れちゃいけないのが飯の話だ。夕食もギルドでご馳走になったのだが、サイヤ人の胃袋を舐めていた。どれだけ食ってもまだ入る。我ながらどこに入っているのか不思議なくらい食った。
あまりの食欲に周りにドン引きされたが気にしない。美味いものを大量に食える。人間の三大欲求の一つをこれ以上ない程に満たせる。ああ、何て素晴らしいんだ。
………この一件で俺も変人のカテゴリで認識されたような気がしないでもないが、これからはずっとこうなのだから慣れてもらうしかない。
まあ、何はともあれ皆歓迎……してくれてるかは分からんが、受け入れてはもらえそうで安心した。
この世界に転生した事に不満が無い訳ではないが、これからが楽しみでもある。
一先ずかめはめ波でも出す事を目標にしてみようか。サイヤ人になったからには強くなりたいし、修行のメニューも考えなくちゃな。