ロキファミリアの古傷   作:プラス九

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 態々、拙作を開いていただきありがとうございます。
 少しでも楽しんでいただけたら。


1.出会いと傷痕

 

 ティオナは一人オラリオの街を歩いていた。姉はフィンの手伝いを無理矢理行い、アイズはレフィーヤと鍛錬中。いつもなら嬉々として鍛錬に参加するが、今日はなんとなく散歩をすることにしていた。

 露店を巡り、目ぼしいものもなく、どうするかを考えているとオラリオの市壁が目に入る。

 たまには景色でも眺めてみよう。いつもならそんなこと思いもしないが、なんとなく思いついた目的を目指して足を運ぶことにした。

 

 

「風が気持ちいいな〜」

 

 周りに誰もいないので、ティオナは大きく背を伸ばしながら市壁からの街並みを眺める。

 すると壁にもたれて剣を抱えるように座る小人族の少年が目に入った。誰もいないと思っていたが、先客がいたようだ。

 

「ねぇ、ねぇ。何してるの?」

 

 持ち前の明るさから人見知りするはずもなく、ティオナは少年に近づいていく。

 

「こんにちは。アマゾネスのお姉さん。僕は見張りをしているんだ」

 

「見張り?何か事件があったの?」

 

「大丈夫。事件も何もない平和な日だよ。ファミリアの意向でね」

 

 麦わら帽子を深めに被り顔を見ることは出来ないが、声色と雰囲気を見るにとても優しい人なのだろう。

 物腰も柔らかくとても聞き上手な彼とティオナはすぐに仲良くなった。無類の冒険譚好きのティオナの話にも着いてこれ、アルゴノゥトが一番好きと同じだったからなおのことだろう。

 気付けば日も暮れ始め、青かった空も薄ら赤が混じっている。

 

「あっ、もうこんな時間か〜。私ティオナ!君の名前は?どこのファミリア?」

 

 楽しかった時間は早く感じてしまう。黄昏の館に帰るのが少し惜しく感じてしまう。そういえば自己紹介をしていなかったと気付き、ファミリアが分かれば会いに行けるかもと期待しながら尋ねる。

 

「僕はルイン。所属はロキファミリアだよ」

 

 

 

 まさか自分と同じファミリアとは思っていなかったティオナは目を丸くする。

 

「え?ルインもロキファミリアなの?私もロキファミリアだよ!」

 

 まさかの同じファミリアだ。自分の話について来れる人はなかなかおらず、同じファミリアならいつでも話せると喜んでると、ふと思う。

 

 ルインを見かけたことあったっけ?

 所属人数の多いファミリアだが、顔も名前も知らない人がいるだろうか?もしかして新人かな?

 

 ティオナは、頭の中で自己解決して、一緒にホームに帰ろうと誘う。

 

「ごめんね、ティオナ。僕は見張りを続けないといけない。ホームには戻れない」

 

 頑なに断られ、実力行使と手を引いてもびくともしない。仕方ないと諦め、また来るねと、約束して一人ホームな戻ることにした。

 微かに、ほんの僅かに新人に無茶な指示を出しているフィン達に苛立ちを感じながら。

 

 

 

 

「…………以上で、報告を終える。他に何かあるものは?」

 

 夜に行われた定時報告会にて幹部達は団長室に集まっていた。

 特に問題が起こっていなければすぐに終わる事務連絡程度だが、普段あげることのないティオナが手を挙げる。

 

「珍しいね、ティオナ。何か問題でもあったかい?」

 

 ティオナはどちらかと言えば報告は早く終わることを望む傾向にある。特に何も事件が起きていない時には。

 

「なんで新人が入ったことを教えてくれなかったの?それにあんなに良い子をずっとホームに戻れないような指示するなんて」

 

 ティオナの口調には少し怒気が含まれていた。普段と違う様子から周りは驚きを隠せずにいる。

 

「すぐに紹介がなかったってことは、遠征の時ぐらいに入ったの?いくら忙しいからってフィンもリヴェリアもガレスも忘れるなんて信じられない」

 

「待ってくれ、ティオナ。最近、新人を入れたという報告は受けていない」

 

「私も受けていないな」

 

「儂もじゃ」

 

 周りも首を横に振る。

 

「じゃあ、ロキが入れたって言うの?フィン達の指示で市壁から見張りをしてるって言ってたけど」

 

 全く身に覚えないのない指示にフィンは、頭を抱える。考えられるのは、ロキが勝手にフィン達の名前を使って指示を出したことだが、独断で入れるような者を手元に置かないことが不自然だ。

 

「その新人の名前とかはわかるかな?」

 

「ルイン、小人族だよ」

 

 ティオナが名前を伝えると、明らかに三人の様子が変わった。

 

「……ルイン?戻ってきたの?」

 

 アイズが首を傾けながら呟いた。

 

「アイズ、彼は戻ってきてないよ。もしそうなら必ず僕達に連絡が来るようになっている」

 

 何かを知っていそうなアイズに聞こうとティオネが声を発する前にフィンが言葉で遮る。

 

「それにそのことは箝口令を出したはずだよ」

 

「おい、フィン!俺はそんなこと聞いたことねぇ。幹部にも説明はなしか!?」

 

 今まで興味なさそうにしていたベートが疑問をぶつける。

 

「ああ、この件については幹部も含め、知ることは許さない。詮索も許さないよ」

 

 フィンの有無を言わさぬ様子から、舌打ちをして黙るしかない。

 

「ティオナ、その同胞はどこに居たのかな。今から僕とガレスで確認してくるよ」

 

 例え冗談でもロキファミリアを語るのは面子に関わるが、態々団長が出る必要はない。まして、報告後即座に対応も珍しい。

 事情が上手く把握できていない面々は目を丸くすることしか出来ない。

 

「この件はロキに伝えることを禁じる。異論も質問もなしだ。ガレス、装備が整い次第すぐに向かう。以上、解散だ」

 

 何故、装備が必要なのか。

 

 今日出会ったばかりの友人を心配しながら部屋を後にした。

 

 

 

 

 フィン達が戻ってきたのは翌日の昼過ぎだった。険しい顔を見て団員達は空気を読み道を開ける。

 その様子を見てティオナはルインのことがより心配になっていく。難しく考えるより会えるかわからないけど、様子を見に行こうとホームを出ることにした。

 

 ティオナが市壁に着くと、昨日と同じ位置にルインの姿を見つけた。無事な様子に安心して声をかける。

 

「ルイン!やっほー」

 

「こんにちは。ティオナ」

 

「無事そうで良かったよ。フィンとガレスから何もされなかった?」

 

「団長達から?うーん、僕は会ってないから何かあったのかな?」

 

 いまいち事情が掴めない様子のルインにティオナは昨日あったことを説明した。

 そっか。と、一言溢し少し悲しそうな顔をしている。

 

「団長達が言ったならそれが真実だよ。僕は許されてはいけないから。ティオナもごめんね。心配かけて」

 

 もうロキファミリアとは言わないから……。と顔は見えない為何を想っているかはわからないが、もしかしたら辛いのかもしれない。

 

「もうここにも来ない方がいいよ」

 

 拒絶。しているのではなく、させられている。他でもなく自分自身のせいで。ティオナは考えるより早く声を上げた。

 

「そんなことないよ!だってもう友達だから!友達に会うのは悪いことじゃないし」

 

 思わず出た言葉は本心なのだろう。

 表裏のない子だ。と、ルインは思わず微笑む。

 

「私は難しいことはわかんないからこういう時は体を動かそう!ルイン、組手しよっ!」

 

「はは、そうだね。体を動かそう。お互い素手でいいかな?」

 

「こう見えてLv.5だから剣を使ってもいいよ?」

 

「いや、体を動かしたいから素手でいいよ。お手柔らかにね」

 

 お互いが構えて対面する。いくよ〜。と、声を出してティオナはLv.1の冒険者には少し厳しい力量で殴りかかる。

 

 えっ?

 

 ティオナは気付けば空を見上げていた。地面に仰向けで倒れているが、体に痛みは不思議とない。少し手加減し過ぎたかなと、立ち上がり先程より強めに殴りかかる。

 しかし、同じように地面に寝かされる。何をされたのかが全くわからない。

 それを何度か繰り返していくうちにティオナの方にもスイッチが入っていく。

 

「よ〜し!これからは本気でいくからね!」

 

 決して人に向けてはいけないような強さの拳をルインへ振るう。上級冒険者でも対応が難しい拳をルインは躱すしかなかった。

 

 今回は見えた。ティオナは腕が伸び切る前に躱され、伸び切った瞬間に引っ張られていた。体勢を崩され背後から足払いで転かされる。

 

「流石にタネがバレたかな?」

 

 昨日と同じ優しい声に戻ったルインは手を差し出し、ティオナを起こす。

 

「すごいね!ルイン!どうやったらそんなことができるようになるの?」

 

「ティオナの拳はとてもまっすぐだからね。うん、とてもいいことだから、僕みたい技はいらないかな」

 

「でも、他のみんなはもっと考えろって言うよ?」

 

「うーん。君の真っ直ぐさは一番の長所だと思うけど……。そうだね、自分がこうされたら嫌だなあって思うことをたまにしてみるといいかもね。意地悪だけど」

 

「よくわかんないけどやってみる!」

 

 気付けば組み手から稽古へと変わっていた。ティオナ自身もこうなるとは思っていなかったけど、そんなことはどうでもよかった。

 だって、今が楽しいのだから。

 

 翌朝、久しぶりに幹部達での訓練を行うことになった。ティオナの相手はベートに決まる。スピードで相手を翻弄するスタイルの為、ティオナとの相性はベートの方有利である。戦績もやはりベートが圧倒している。

 

「やーい、ベート!今日はものすごく調子が良いからけっちょんけっちょんにしてやるから」

 

「けっ、いつもそう言ってるだろ。いい加減学べよ、馬鹿ゾネス」

 

 日頃から行われる軽口を言い合い、お互いが構える。

 

 ティオネは目を見開き、目の前の光景が信じられなかった。妹がベートに対して圧倒しているからだ。否、完封と言ってもいいだろう。

 

「そこまで」

 

 ベートが床に叩きつけられるとフィンにより終了の合図が入った。

 

「ティオナどう言うことよ!」

 

「だから調子が良いって言ったじゃん」

 

 ティオネは思わずティオナの方へ詰め寄る。ベートの方は肩で息をしまだ起き上がれていない。しかし、ティオナは多少の疲れは見せるがまだ余裕がある。

 それに先程見せたあの妹とは思えない戦い方、駆け引きや搦手、相手の誘導など、初めて見た妹の姿が未だに信じられない。

 

「僕からも聞きたい。さっきのような戦い方は君の苦手とするものだっただろう?」

 

「ふふーん。昨日友達と特訓したからね」

 

「……友達?」

 

「みんなには教えないよ」

 

 ティオナはアイズへの質問に対して強く拒絶した。

 

「アイズに教えたら訓練ばっかりして私が遊べないじゃん」

 

 普段の雰囲気に戻ったティオナの一言で周りはクスクスと笑い出す。アイズは頬を膨らまし不満げな目線を向けるが、それがより笑いに繋がる。だが、フィンだけは何かを考えるようにティオナを見つめていた。

 

 

「急に呼び出してすまないね」

 

 ティオナは団長室へフィン、リヴェリア、ガレスに呼び出されていた。おそらく朝の件についてだろう。

 

「呼び出したのは他でもない。君の友達についてだ」

 

「友達について詮索しないでよ」

 

「そうは言ってられない。その友達は一昨日の彼のことだろう?それならファミリアの問題でもある」

 

「なら大丈夫だよ。もうロキファミリアとは名乗らないって言ってたから。私にしか言ってないって言ってたし」

 

「いや、それでもファミリアの面子が」

 

「ルインは言ってたよ。団長達には許されないことをしたって。団長が関係ないならそれが真実だって」

 

「なら罪を認めたことになる。早急な対応を……」

 

「だからなんでルインを悪者にするの!?ルインはみんなの心配してたのに」

 

「みんなの心配?何を言って……」

 

 ティオナは淡々と話すフィンに怒りが抑えられない。出会って日も浅いがルインの人となりはなんとなくわかったつもりだ。組手稽古が終わった時に話したことはロキファミリアの話ばかりだった。

 

『ロキ様はお酒の量は増えてないかい?女の子にしつこくして嫌われてないかい?思いつきでみんなに迷惑かけてないかい?

 

 フィンはまだ一人で悩んでいたりしないかい?自己完結して説明不足たったりしないかい?彼を見てくれる人は出来たかい?

 

 ガレスは後輩に酒飲み対決を強要してないかい?頭を使うことを周りに任せてないかい?エルフと喧嘩はしてないかい?

 

 アイズはダンジョン以外にも興味は出来たかな?ジャガ丸くんばっかり食べてないかな?友達は出来たかな?

 

 ラウルは……。アキは……』

 

 ルインとの会話を思い浮かべて一つ一つ伝えていく。

 フィン達の方目を向けると、目を見開いて固まっている。普段見られない三人の慌てように、ティオナは思わず言葉を止めてしまう。

 

「ル、ルインは、私のことは何を言っていた?」

 

「えっと、リヴェリアのやつだけよくわからなかったんだけど、ちゃんと笑えているかい?だったかな」

 

「そうか、後はフィン達に任せる」

 

 リヴェリアは消え入りそうな声で呟き、部屋を退出していく。

 

「……わかった。ティオナ、君には教えてもいい。聞く勇気はあるかい?ロキファミリアの、オラリオの、人類の裏切り者。大罪人ルイン・マックルーのことを」

 

 ティオナが静かに頷くと、フィンは淡々と話し始めた。ガレスは目を瞑り粛々と話が終わるのを待つ。

 

 語られたのは七年前に起こった大抗争。今もなお話すのを躊躇われる『死の七日間』について。闇派閥に与して多くの犠牲を出した裏切り者。追放された派閥の2名より当時活躍していた一級冒険者の裏切りは当時のオラリオを絶望へと叩き落とした。

 現在最強と言われる【猛者】より格上とされ、当時オラリオ最強と言われたロキファミリア所属Lv.7ルイン・マックルー、二つ名は【騎士】。小人族なのに武術に優れ、【勇者】に劣らぬ知恵を持つ。誰にも優しく、弱者の味方。誰しもが彼の正義を疑わなかった。

 始まりは、狂信者による自爆特攻だった。住人達を助ける為身代わりになり、死体すら残っていなかった。死亡したと誰もが思っていた。

 裏切りがわかったのは抗争の終盤。【暴食】と【静寂】を破り、残党を潰す為飛び出したフィンの前に現れた。

 

『想定通りだね。やっぱり君から潰すべきだったよ。そうだね、君さえ潰せば、またやり直せる』

 

 それはいつも通りの笑顔だった。それは見たことのない目だった。

 傷一つない装備に、似合わない返り血。後ろには息絶えている多数の冒険者。

 

『この血かい?君の想像通りだよ』

 

 不適に笑みを浮かべ、フィンへと斬りかかる。訓練で何度も剣を交えたが、殺気を向けられたことはない。

 堪らず応戦する。何度も声をかける。何度も何度も。

 

 どれぐらいの時間が経っただろうか。声は掠れてしまった。全身傷だらけになり、血が足りないのかクラクラする。

 気付けば人集りになっている。誰もがこの状況を理解できていない様子だ。

 

『さあ、【勇者】の最後だ!いや、誰も守れない君は【愚者】の方が相応しいかな』

 

 止めの一撃が放たれた。しかし、フィンは不思議と遅くに感じた。それを紙一重で躱し、槍を胸に突き刺す。

 口から血を吐き、ゆっくりと倒れていく。槍は心臓に達している。

 観衆は静まり返っている。

 

『敵の最後の一人は今討たれた』

 

 歓声をあげるものは誰もいなかった。

 

 ロキファミリアの【騎士】は民衆を助ける為、身代わりになり捕縛された。その後洗脳を受け敵側に【勇者】が発見し、捕獲は無理と判断し討伐された。

 

 後にギルドより発表があった。解決に尽力したロキファミリアを堕とすことは、闇派閥に隙を見せることになると判断したギルド側による情報統制。

 大衆には悲劇の騎士として、一部のものには大罪人として認知されていった。

 

 復興の仕事は多忙過ぎたが、当時は非常に助けられた。怒りも悲しみも何もかもを誤魔化すことが出来たから。しかし、傷痕は確かに残っていた。幸いなことに、彼に一番懐いていたアイズには、行方を晦まされた時に、外への任務ということで誤魔化して、死も裏切りも伝わっていない。

 

 フィン達はファミリアの傷痕を忘れる為に箝口令を出した。それが功を奏したのか、関係ないのか、日常は少しずつ取り戻されていった。

 

 落ち着きが見え始めた時に、フィン、ガレス、リヴェリアはロキに呼び出された。

 伝えられた内容は、ルインの裏切りの理由。

 

『今のやり方だと小人族に希望は見せられない。フィオナ騎士団を作るにはオラリオを消し、古代と条件を同じにしなければ』

 

 神アストレアが邪神から聞き出した情報らしい。

 各々が驚きを隠せなかった。特にフィンは、己が課している同胞の救済と同じ理由が信じられなかった。

 

『僕は興味はないかな。勿論、蔑んでるわけではないよ。だけど、応援はさせてもらおうかな』

 

 強要するつもりもなく、ただ話しただけであったが、賛同されず少しながら落ち込んだ記憶がある。それ程までに彼を尊敬していたのだ。彼が協力してくれればより早く出来るのではないかと。

 

 リヴェリアは、聞かされた時に理解ができなかった。彼の善性はとても心地よく、誰からも好かれていた。野心も少なく己より多くの他の為に行動する姿しか見たことがなかった。魔法は使えなかったが、知識には広く、高等な魔法論の会話にもついてきてくれて話し合う時間が心待ちになる程だ。

 

 相談すらしてもらえなかった。

 

 胸の奥がチクリと痛んだ。相談されたから何が出来たのか。共に歩めたのか。ああ、だから相談してくれなかったのか。

 自分でも気付いていなかった、当たり前過ぎた感情を、想いを、知ってしまった。幼馴染にも見せたことのない表情を、涙を我慢することが出来ず座り込んでいた。

 

 その後の数日間は、ロキは酒に呑まれていた。リヴェリアは部屋から出なくなった。フィンは忙殺されたいのか、空いた穴を全て受け持った。

 団員の誰もが心配した。不安になった。だから、ガレスが発破をかけた。

 

『ここで折れたら、また闇派閥に傾くぞ!今の現状こそ、奴の狙いかもしれん。それが出来るというのは、儂よりもお前達の方が理解しとるじゃろ!』

 

 その言葉が響いたのか、少しずつ元の役割に戻っていった。その傷痕を隠すようにして。

 

 

 

 フィンから話を聞いたティオナはルインのイメージとは結びつかず混乱していた。彼女のイメージは事件前に言われたものだ。

 

「ガ、ガレスは聞かされた時にどう思ったの?」

 

「儂か?そうだな。あやつは別の意味でフィン以上にきれる。儂では思惑など理解できんよ。決して許されてはいけないことをした。だが、共に歩んだ武人としてはその矜恃は認めてやりたいとは思った。それだけだ」

 

「以上だ。ティオナ、だからこそ僕達はルインを許してはいけない。まして、ロキに気づかれる前に解決しなければならない。本来なら、リヴェリアにも知って欲しくはなかったけどね」

 

「あやつは、対人戦が最も得意とする。例えファルナを失ったとしても【猛者】と渡り合えるかもしれん。安易な接触は避けた方が良かろう」

 

 ガレスの指摘が胸に刺さり、どうすれば良いか頭の中がぐしゃぐしゃになる。

 これ以上考えたくなく、ティオナは自室に戻っていくことになった。

 

 彼は、そもそも本物なのか。それとも偽物なのか。本物なら何故生きているのか。何故、オラリオに戻ってきたのか。事件のことや自分のイメージ、何もかもがわからない。トボトボと重い足を進め廊下を歩いていく。

 

「なんや、ティオナ。悩み事か?」

 

 ロキの声が聞こえた。ティオナは、フィンの話からロキに伝えてはいけないと思い、必死に作り笑顔を作る。

 

「ううん、なんでもないよ!ロキもどうしたの?いつもお酒飲んでる時間でしょ?」

 

「無理して作り笑顔なんかせんでもええ。うちが聞いたるからついてきいや」

 

 ロキは有無を言わせないように、ティオナの手を引いてロキの部屋へ連れていった。

 

「その様子からルインのこと聞いたんやろ?」

 

 ティオナは核心をつかれ目を泳がしてしまう。

 

「ルイン?なんのことかな?」

 

「いや、そんな大根芝居せんでもええ。話してみ?」

 

 ティオナ渾身の誤魔化しは呆気なく見破られ、ポツポツと事情を説明してしまう。

 

「そっか。だったら、ティオナ。ルインに会ってくれんかな?今まで通り友達として」

 

「いいの?だって」

 

「だってもあってもない。ルインは友達なんやろ?なら大切にせな」

 

 ロキは、優しく微笑み、ティオナを抱きしめる。ティオナはやっといつも通りの笑みを浮かべ大きく頷いた。

 




 読んでいただきありがとうございました。

 一応、時系列は原作開始直前辺りを想定しています。
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