ロキファミリアの古傷   作:プラス九

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 引き続き、楽しんでいただけたら嬉しいです。


2.再会と真意

 翌日、ティオナは周りに気付かれないようにホームを出る。思わずコソコソと行動してしまうが、ルインのいる市壁へと足を向ける。

 

「ティオナ」

 

 いつもの場所に着くと、いつも通りの優しい声が聞こえた。

 

「ルイン!やっほ〜」

 

 ティオナは、いつも通りにルインに近づく。

 

「その様子は僕のことを聞いたみたいだね。無理しなくてもいいんだよ」

 

「そんなにわかりやすいかな?ロキにもすぐバレたし」

 

「それは君一番の美徳だよ。特に、僕も、ロキも、そういうことに聡いから気にしないで」

 

 クスクスと笑いながらルインは応える。

 

「でも、その上でまた来てくれて嬉しいよ」

 

 ロキに言われたように来て良かった。

 

 ティオナは、思わず微笑みを隠せずに、いつも通り他愛のない会話を始める。

 

 どれぐらい話していただろうか。ルインとの会話は尽きることがないし、それに楽しい。

 

「ティオナ、実はリヴェリアがかなり前から覗いているんだ。呼んできてもらえるかな?」

 

 会話が一区切りついたところで指摘されたが、ティオナは全く気付いていなかった。言われたように死角を進み近づいてみる。

 

「リヴェリア?」

 

 声をかけると、普段見たことのない真剣な、悲しげな表情のリヴェリアは驚き声を上げる。

 

「ルインが来て欲しいって」

 

 リヴェリアに伝えると普段見ることのないドギマギとした様子を見せた。ティオナは、無理矢理手を引いてルインの方へ向かっていく。

 

「やあ、リヴェリア久しぶりだね」

 

 なんとかリヴェリアを、ルインの前に連れて来ると優しく声をかけた。その声を聞きリヴェリアはポロポロと涙を浮かべる。

 

「……本当にルインが」

 

 リヴェリアは、なんとか声を絞り出すことができた。

 

「ティオナから君の話は聞いたよ。一番危惧していたのは、君の笑顔を奪うことだった」

 

「な、なんで相談してくれなかった?」

 

 会話として成り立ってはいなかった。ルインはリヴェリアを心配し、リヴェリアは自分の想いを伝えることに必死だった。

 

「相談したら君は、僕を支えてくれたと思う。それも、人類を敵にしても。だけど、僕はそれは嫌だった、それだけさ」

 

「……私を選んでくれなかったのか?」

 

「違うよ。君を死なせなくなかった。僕の独りよがりだよ」

 

 絞り出すようにリヴェリアは、溢れる涙と共に言葉を告げる。それにルインは優しく返していく。

 

「僕は、僕の気持ちは伝えることは、決して許されない。君の、見知らぬ風景を見たいという夢に枷をつけてしまう」

 

「そ、そんなこと。ルインと比べることなんて」

 

「君の気持ちには、気付いていたんだ。ずるいと思ってくれていいよ。だからこそ利用した。ティオナの話を聞いたら失敗したみたいだけど」

 

 突然ルインは、リヴェリアに対して冷たく突き放した。静観していたティオナすら、その唐突な言葉に目を白黒した。リヴェリアは、それにより駆け出してしまいティオナも心配になり後を追う。

 

「……リヴェリア、こんなことしか出来ない僕を恨んでくれ。……愛しているよ」

 

 だけど、ルインの呟きをティオナは耳にすることができた。

 

 

 

 翌日、リヴェリアは少し目元を腫らしながらもいつも通り振る舞っていた。ティオナは、その様子に胸を撫で下ろしながらも、ルインの最後の呟きを伝えるか迷っていた。

 迷い抜いた末、ルインに伝えてもいいか問うことにし、ホームを抜け出すことにした。

 

「……ティオナ?最近、様子がおかしいよ?」

 

 心臓が止まるかと思った。おそらく、フィン達が一番危惧しているはずのアイズから声をかけられてしまった。なんとか誤魔化そうとするが、頑なに拒む。会いに行くのを諦めて断りを伝えると、特訓の相手と思われてしまい、より強要されてしまう。

 遂にティオナの方が折れ、七年前で曖昧になっていることを願い、連れて行くことした。

 

「……ルイン。戻ってきてたんだね」

 

 ティオナの願いは空振りし、アイズは一眼見て反応した。

 

「今日はアイズが来てくれたんだね。元気そうでなりよりかな」

 

「死んだと思ってた。……生きていて嬉しい」

 

 アイズの一言にティオナは目を見張る。

 

「アイズ、知ってたの?」

 

「ん……。確かに小さかったけど、それくらいはわかるよ。みんなが辛そうだったから言えなかったけど」

 

「はは、ここまで来たってことは久しぶりに見てあげようか」

 

 アイズの言葉を打ち消すように、抱えていた剣を抜く。アイズも、嬉しそうに剣を抜き、お互いが構える。

 

 数え切れない剣劇を繰り返す。ルインは、アイズの剣捌きを余裕を持って捌ききり、首元に刃を突きつけた。

 

「うーん。相変わらずと言えばいいのかな?腕は上がっているけど、根本は変わっていないみたいだね」

 

 少し悲しそうにルインは、アイズへと語る。

 

「アイズ。君に一番伝えたかったことを話すよ。英雄は必ず強いとは限らない。あの始まりの英雄は強くなかった。強さとは武力だけではないんだ」

 

「……よくわからない」

 

「なら、アイズがわからなかった、気になった強さを持ったものがいたらしっかり見てあげて。知らない強さに気付けるから」

 

 少し不満げに見えるアイズであったが、剣を鞘に収めると頭をルインに近づけた。

 ルインは頭を撫でて口元を緩める。

 

「よく頑張ったね。でも頑張りすぎだよ。そうだね、アイズも後輩の育成に関わっても良いかもね。人に教えるのは、鍛錬より学ぶことが多いからね」

 

 撫でられているアイズはどこか幸せそうだった。ティオナは少し羨ましく感じたが、じっと我慢することにした。

 

「……ルインは、ずっとここにいるの?」

 

 ティオナは、アイズの質問にドキッとした。否、してしまった。当たり前になりつつえる状況が消えてしまうことに気付いてしまった。慌ててルインの方へ顔を向ける。

 

「ずっとは無理だよ。それは神だけが許されていることだから」

 

 ルインは、撫でていた手を離し優しく微笑む。

 

「ある優しい神様が無理をしてくれてね。色々制約がある全部は言えないけど」

 

「……そっか」

 

 釈然としない答えだったが、ルインもそれ以上は話すつもりはないらしい。日も暮れ始め、ルインに帰るように促され、泣く泣く帰路につくことにした。

 

 その日の夜、ルインは暗くなっている街並みを眺めていた。

 

「まさか、貴方達が来てくれるとは驚きましたね。フレイヤ様」

 

「あら、太々しく嘘を吐くのは変わってないみたいね」

 

「あれ程、警戒されたら気付きますよ」

 

 オッタルを後ろに連れ、ローブを深く被った美の女神が現れる。

 

「あの娘には言わなくてよかったの?」

 

「突然現れたものが、突然消える。何もおかしなことはないでしょう?」

 

「ふふっ、意地悪なのね」

 

 他愛のない話を、いくつかしていると、我慢が出来なくなったのか、オッタルは一歩前に出る。

 

「あら、珍しいわね?良いわ。しっかり確認しなさい」

 

 敬愛なる女神からも許可を受け、得物である大剣を構える。

 ルインも受け入れるよう剣を抜き相対する。

 合図はなかったが、同時に動く。数度切り結ぶと、お互いに剣を納めた。

 

「うん。迷いは消えたようだね。とても良くなっているよ」

 

 満足そうに頷くルインを見て、無言で後ろに下がる。ほんの少し口元が上がっていたのをフレイヤは見逃してはいなかったが。

 

「僕の真意を知っているのはアストレア様、ヘルメス様、フレイヤ様だけでしょうか?」

 

 真剣な眼差しをフレイヤに向ける。

 

「……いいえ、ロキも知っているわ」

 

「そうですか。ロキ様には黙っていて欲しかったですね。あの寂しがりやな神のことだ。辛い思いをさせたでしょう」

 

 悲しそうに、嬉しそうにルインは笑う。

 

「貴方達がやり遂げたことは誰からも許されることではないわ。だけど、私達は許すわ。誰にも文句は言わせない。だって、私達は神だから」

 

「はははっ。最後に美の女神に会いに来て貰い、許される。貴方の眷族に自慢できますね」

 

「ふふっ、最後まで素直じゃないわね。だけど、もうお休みなさい」

 

「やっぱり、神には叶わないなぁ」

 

 ルインは一筋の涙を流し、笑いながら呟いた。体が薄れていく。

 

「ロキファミリアに、幸せを」

 

 願いを呟き終わると、初めから何もなかったように、本来の風景に戻った。

 

「オッタル、貴方の好きにしていいわ」

 

「……有難く」

 

 呟きを残し、二人は夜の闇に消えていった。

 

 

 

 翌日、ロキファミリアは騒然としていた。

 突然、けたたましくホームの門が破壊された。

 

「それは、ファミリアの総意と受け取ってもいいのかい、オッタル?」

 

 騒動の発端である破壊をもたらしたオッタルへとフィンは尋ねる。

 

「……これは俺の独断であり、私情だ。ファミリアの総意ではない」

 

「どういうことかな?そんなことで君がこんなことをしでかすとは考えられない」

 

「俺の目的は一つ。旧友の被っている泥を取り除くこと。貴様達は自分可愛さに傷を見ようとしない!真意をしようとしない!いつまで泥を被せ続ける!?」

 

 オッタルの咆哮に、誰もがたじろぐ。

 

「待ちや、オッタル」

 

 誰も動けない中、ロキが姿を現した。

 

「これはウチらの傷や。ウチの弱さで広げたもんや。覚悟を決めた、ウチに語らせてくれんかな?」

 

「……わかった」

 

 オッタルは納得したのか、静かに戻っていた。

 

「みんなおるか?今から話すのは七年前に出来た傷の話や。本当ならもっと早く伝えるべきやった。ウチも聞かされるまで知らなかったことや。誰も気付けなかった、誰より才能が無かった冒険者の話や」

 

 

 

 

 ある所に一人の小人族がいた。小人族の町に生まれ、冒険譚が大好きだった。

 

 いつか英雄のような冒険をしてみたい。

 

 そう思うのに時間はかからなかった。剣術を学び、町一番の腕前になった。

 

 これなら冒険者になれる!英雄を目指せる!

 

 腕に自信を持って、オラリオに向かった。小人族ということで苦戦はしたが、なんとかファミリアに入ることができた。

 初めてのダンジョン。一階層で死にかけた。初めはそんなものだと思った。思い込んだ。剣術の鍛錬をしっかり行いつつ。何度も挑んだ。何度も何度も。

 ある日気付いた。同時期に冒険者になった者たちが遥か先に進んでいることに。

 ある日気付いた。自分の強さは小人族にしては、程度だったことに。

 三階層にすら到達出来ず、金は装備に消えていく。ポーションすら買えないから傷薬を自作しながら、誤魔化しながら何度もダンジョンに挑んだ。

 それはたまたまだった。色々と薬の調合を試していたが、その日の薬を飲んだ時に気付いた。

 

 いつもより力が出せる。

 

 気付けば五階層にまで辿り着けた。あれ程、鍛錬しても行くことが叶わなかった場所に。薬を飲んだだけで。

 薬の改良に力を入れていった。勿論、鍛錬もしっかり行って。そこからは、とんとん拍子に進んだ。念願かなってランクアップも出来た。スキルも発現した

 

【薬物依存】 

 薬の効果増加。

 調合アビリティの一時発現。

 薬の副作用の増加。

 

 レベルも上がり、薬に頼らなくても大丈夫だと思った。薬を飲んだ時よりも進めなかった。薬を飲まなければ。

 スキルのおかげで質も効果も上がった。効果が切れると体が少し体に違和感を感じるようになった。

 しかし、冒険はどんどん進むことができた。すごく嬉しかった。

 ある日、同胞が団長をしているファミリアの話を聞いた。主神に願い改宗した。結成して間もなかった為みんなレベルが自分より下だった。少し嬉しかった。以前は、小人族だからパーティを組んでもらえなかったが、パーティでの探索は楽しかった。

 しかし、彼らは才能があった。怖くなった。すぐに追いつかれると。誰にも気付かれないように、薬の改良に励んだ。

 一度新しい主神にスキルのことを怪しまれたが誤魔化した。駆け出しの頃はポーションが買えず、自作の傷薬を、多様していたと。神への嘘のつき方を覚えた。覚えてしまった。

 彼らの快進撃は止まらなかった。ファミリアも大きくなっていき、今のままだと追い抜かれてしまう。薬の量を増やした。

 しかし、彼らを妬むことも、恨むこともなくなった。いいやつだった。大好きになっていた。輝いて見えた。彼らなら薬のことを話しても許してくれるかもしれない。一度薬を飲むのをやめてみた。地獄だった。体は激痛により動けなくなり、幻覚や幻聴により恐怖が刻まれた。なんとか薬を飲み絶望した。もう逃げられないと。

 そこからは、恐怖から逃げ出すようになった。八つ当たりをしたい。ファミリアへ迷惑をかけられない。見つけ出したのは悪党への八つ当たりだった。お礼を言われた。嬉しかった。恥ずかしかった。誤魔化すように善行にも力を入れた。

 二大派閥が居なくなり、周りからオラリオ最強と言われ始めた。小人族の天才だと同胞達から尊敬されていた。

 ある日気付いた。体が思うように動かなくなり始めているのに。

 ある日相談された。尊敬する同胞に。彼の悲願を知ってしまった。彼は人工の英雄と彼自信を揶揄した。

 

 君は英雄だ!人工は僕じゃないか!

 

 伝えたかった。叫びたかった。だけど、逃げる事は出来なかった。

 日に日に体の異常が目立つようになった。死が近づいてきているとなんとなく理解した。恐怖はなかった。安堵した。

 しかし、彼女の顔を思い浮かんでしまった。誇り高い妖精。彼女との会話は様々な恐怖を忘れさせてくれた。楽しかった。大好きだった。愛してしまった。

 自分が死んだら、優しい彼女は悲しんでくれるだろう。気付かれないように涙してくれるだろう。いつか忘れてくれるだろう。

 

 忘れて欲しくない。

 

 胸が少し痛くなった。彼女の知る自分は作り物でしかないのに。作り物の存在なんて忘れて欲しいと願った。恐怖が生まれた。

 

 ある日、ローブで身を隠している人物を見かけた。身に覚えがあった。後をつけ、密談している場所に潜り込んだ。計画を知った。彼らの前に姿を現した。協力を申し出た。

 怪しまれ、警戒される。二人相手では必ず負けるだろう。想いを伝えた。叫んだ。泣いていた。だけど、何かが軽くなった気がした。もっと早く伝えるべきだった。

 彼らに信用され、参加することができた。計画の穴を改善し、試練をより高めた。彼らなら突破出来ると信じて。

 

 英雄は彼でなくてはならない。作り物を本物が打ち倒す。彼女を騙していた偽者は、これでやっと忘れてもらえる。憎んでくれる。恨んでくれる。彼女達を偽った罪なのだから。

 

 計画は無事に進んでくれている。最後は英雄の勝利で終わりだ。彼との戦いは僕が優勢だった。

 

 何故?本物が何をしているんだ!

 

 長時間に及んだが、最後に薬が切れた。神も粋な計らいをしてくれた。全身全霊で最後の一撃を放った。不思議と体に痛くなかった。それは僕が目指していた一撃だった。速く、鋭く、洗練された、とても遅い一撃だった。

 

 彼は、英雄になれただろうか。彼女は、忘れてくれただろうか。

 

 きっと、みんな悲しんでくれるだろう。傷を苦しんでしまうだろう。

 

 だけど、彼らにはあのドワーフがいる。発破をかけてくれるだろう。怒鳴ってあげるだろう。

 彼が居ればロキファミリアはまた進める。

 

 そう信じている。

 

 だから、偽者は舞台から去らなければ、ロキファミリアに、幸せを。

 

ルイン・マックルー

【騎士】

Lv.7

力  B 798

耐久 C 687

器用 A 832

俊敏 A 812

魔力 I 0

 

【魔法】

 

【スキル】

 

薬物依存

 




 
 ここで終わりです。その後の各キャラの反応は想像にお任せしたいと思います。
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