ノアです。(謎自己紹介)
今回の主人公となる戦術人形はリベロールちゃんです!
まあメインの戦術人形であって視点は別のオリキャラなんですが……
とまあ前書きはここまでにして…
ごゆっくり、見ていってください!
「ふぅ…お腹いっぱいだ…仕事したくないなぁ」
そうため息をつきながら廊下を歩いている僕…エドワードは、とあるグリフィンの支部で働く、自律人形を専門としている医師だ。
普段は戦闘から帰ってきた人形たちの手当てや、損傷具合によっては修復ポッドにその子の基本情報などを入力して修復してあげたり、人形たちのメンタルケアなどをしている。
まあ、いわば戦術指揮官とは違い、裏方の仕事をしている普通の先生だ。
…ああ、言い忘れたが僕はもちろん自律人形ではなく普通の人間だ。
疲れを感じない訳でもないし、こうして時々サボろうかなんて事も考えている。
まあ医師という役割上、仕事がないことが一番だし、何より仕事がない方が平和でいいことだ。
「はぁ…切り替えて仕事しないと…ふぁぁぁ…」
そう食事明けの眠気を感じながら、僕は医務室の扉を開けた。
一応人形専門の医師とはいえ、医師である事には一応だが変わりないので、部屋は除菌のアルコールの匂いが漂っていた。
「はぁ…やっぱりいた」
そう頭を掻きながら医務室のベッドで眠っている、病的なまでに綺麗な白髪の少女を見下ろしながら、僕はどうしようかと悩んでいた。
この子はリベロールという女の子で、この基地の戦術指揮官が保有する戦術人形の1人だ。
この子は製造した時にどうやらメンタルや身体の性能に多数の欠陥を抱えているらしく、時折僕のところに投薬を受けにやってくるのだが、出撃など以外の時は、こうして医務室で寝ていることが多いのだ。
…まあ、この子の場合は人形たちのいう睡眠というよりも、どちらかと言うと熟睡している人間に近く、昏睡状態と言った方が正しいのだが。
だから、余計に起こしにくい。
ほかの人形たちなら自分の得た情報をまとめるだけの睡眠…いや、どちらかというと常に明晰夢を見ているような状態とも取れるのかもしれない状態なので、比較的スっと起きてくれるのだが、この子はそうは行かず、時と場合によっては起きてくれない事もある。
そんな扱いにくいこの子は、指揮官からしても厄介な子らしく、基本的に放置されているか、たまに探索に駆り出されるくらいで、見ていて可哀想な程に相手にされておらず、僕の方も呼ばれていない間くらいは自由に普段は寝かせてやっているのだ。
「はぁ、いつも通りベッド貸し出し1…と」
そうベッドの貸し出し記録に記録をつけながら、僕は自分のデスクに座り、必要物資の洗い出しをして本部に要求する書類を作ったり、コーヒーを飲んでまったりしていたりしていた。
そして太陽も傾き、夕方になりだした頃、ベッドの方から声が聞こえ、顔を向けてみると、さっきまで寝ていたリベロールが起きて伸びをしているところだった。
「リベロールちゃんおはよう、よく眠れたかい?」
「はい…今日も指揮官に、ワタシ呼ばれてませんでした?」
「そうだね…部隊の出撃はあったけど、リベロールちゃんは呼びに来てなかったな……もう少し構うように伝えておこうか?」
そう言うと、リベロールはゆっくりと首を左右に振り、
「大丈夫です。辛抱強いことだけがワタシの取り柄ですから……」
と、少し悲しそうに言ってきた。
「…そうか、キミがいいならいいんだけど…何かあったら、遠慮なく言ってね」
「はい…ありがとうございます」
そうリベロールは言うと、それでも寂しさを隠しきれないようで、少し俯きながら、しょぼんとしていた。
「…晩御飯、一緒に食べに行こっか」
「…え?でも…」
そうリベロールは拒もうとしたが、無慈悲にもぐぅ…とお腹が鳴り、お腹がすいていることを知らせてきた。
「ほら、行こう?」
そう言って、リベロールの手を引き、僕は食堂へと向かった。
「ほら、何食べる?」
「そうですね…野菜炒め定食の半盛で」
そうリベロールが注文した後に僕もカレーを注文し、僕達は椅子に座って食べ始めた。
「やっぱり…というかなんというか、少食なんだね」
「はい…これでもワタシからしたら多い方です」
「そっかー、無理そうなら残してもいいからね、僕が食べるから」
「…先生は、大食いなんですね」
そう微笑みながら言われ、僕は、そうかなぁ?と言いながら、カレーを頬張っていた。
その後、食べ終わってから医務室に戻るまでの間、リベロールの指揮官について、少し聞いてみることにした。
「指揮官…ですか…」
「うん、どう思ってるのかなって思ってね」
そう言うと、少し俯いてから、
「信頼は…してます、ワタシには頼れる人が指揮官かエドさんくらいしかいませんから…」
と、言ってきた。
「…そうか、信頼できてるならよかったよ、本当に、何か些細な事でもいいから、相談したくなったら言うんだよ」
「はい…ありがとうございます…でもどうしてこんなダメなところしかないワタシに対して優しくしてくれるんですか?」
「ダメなところばかりじゃないよ、リベロールちゃんはちゃんといい所もあるって」
「でも…ワタシはすぐ怪我もするし、戦場に出ても約立たずで…メンタルも身体も、普通の人形よりもダメダメで…」
そうリベロールは自分のことをけなすと、悲しそうな顔を浮かべ、半ば泣きそうになっていた。
「別に、怪我しやすいならその度に手当してあげるし、戦場は…僕はわからないけど、メンタルも身体の欠陥も、それがあるからこそのリベロールちゃんだと思うんだけどな…一番人間っぽいって言うかなんて言うか…」
「人間…っぽい…?」
そう不思議そうに首を傾げてくるリベロールに対して笑顔を向けつつ、僕は、
「そう、人間っぽい。人形のみんなは基本的に人間と違って欠点の少ないことが多いけど、僕たち人間は欠点だらけだからね」
と言いながら、リベロールの頭を撫でてやった。
「でも…ワタシは指示されないと人間と違って行動できない、人間の代用品ですし…」
「そういう、自分から行動できない人も少なからずいるよ、なにも自律人形だけじゃないさ」
そうフォローしてあげると、リベロールはほんの少しだけ嬉しそうにし、僕の目をじっと見つめてきた。
「…?どうしたんだい?なにかついてる?」
「…いいえ、優しい人だな、って思っただけです」
「そうかい、ならよかった」
そんな話をしていると、ちょうど職員宿舎と人形の宿舎の分かれ道にたどり着いた。
「じゃあまた明日、いつでも寝においで」
「…はい、ありがとうございます」
そう言ってそれぞれ別れ、各々の部屋へと戻っていった。
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「あぁ…疲れた、なにか飲み物でも…」
そう言って修復ポッドのある部屋から医務室へと戻り、ふとベッドの方を見てみる。
「…今日も来てない…か」
そうリベロールが居ないことにどこか落胆しながら、僕は作り置いておいたコーヒーを飲んでいた。
あの一緒に食事した日から、既に2日ほど経ったが、その次の日から今日まで、寝に来るどころか姿を見ていないのだ。
もしかしたら探索任務に送られているのかもしれない、最初はそう思っていたのだが、それだとしても長いと思うのだ。
リベロールの練度は高いわけでもなかったし、警戒任務以外だとあの子は戦闘も厳しいはずなのだ。
「リベロールちゃん…大丈夫かな…」
そう呟きながら窓の外を眺めてみても、その言葉に返事してくれる人は、その時は誰もいなかった。
しばらくして、どうやら寝落ちていたことに気づき、暗い中時計を見てみると、ちょうど晩御飯の時間になっていた。
「…晩御飯、食べに行くか」
そう言って、おぼつかない気分のまま席を立ち、ぼーっとした頭のまま食堂へと向かった。
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食堂に着くと、どうやらほかの人形や職員も既に食事を終えたらしく、そこには人の姿は見当たらなかった。
かろうじて食堂に在中している自律人形の少女はいたので、少しほっとしながら、僕は注文カウンターまで向かっていった。
「すみません、オムライス1つ」
「はーい!少々お待ちくださーい!」
そう注文し、僕はカウンターにもたれかかって、ぼーっと、料理を作ってくれている、小さいながらも立派な姿をしばらく見つめていた。
待っていると、大きめの器に盛られたオムライスを持って、女の子はにっこにこの笑顔で、席まで運んできてくれた。
「お待ちどうさまです!…あれ?どうしたんですか先生、なんかぼーっとして」
「あぁ…なんなんだろうね、最近ずっとこんな感じなんだ」
「へぇ…何かあったら言ってくださいね、同じ基地に務める仲間なんですから」
「うん…ありがとう、じゃあ元気出すために作ってくれたオムライス、頂くよ」
そう言って軽く頭を撫でてやり、いただきますと言って、オムライスを1口頬張る。
すると、特にこれといって何か隠し味を入れているわけでもないだろうが、どこか懐かしい、そんな味がした。
「…どうですか?今回もお米は本物を使えてませんけど…」
「うん、美味しいよ、…まあ、お米はこの時代、色々と無理があるからねぇ、代用品があっただけマシだよ」
「ですよねぇ…最近来た89式さんも食べたことがないそうですよ、お米派なのに」
そう言って、少女はあははっと笑い、食堂のカウンターの中へと戻っていった。
「代用品…かぁ、そう言えば自律人形も元は人間の代用品として造られた…んだったっけ」
そう思い、黙々と食べながら、僕は食堂のカウンターの反対側で、せっせと洗い物をする少女を見てみる。
しかし、その姿はどう見ても、人間の少女そのものだった。
しばらく無心でスプーンを進めていると、何も無いお皿をつついていることに気づき、少し恥ずかしく感じながらもスプーンを置き、カウンターまで食器を返しに行った。
「ごちそうさま、美味しかったよ」
「よかったです!作りがいがありました!」
そう笑顔で言いながら、少女はカウンターに置かれた空の食器を持って、大量のお皿の置かれた、洗い場へと向かった。
「…お皿洗い、手伝おうか?」
「いえ!大丈夫です!これが私のお仕事なので!お気遣いありがとうございます!」
「そうかい、ならいいんだけど…そうだ、1つ、変なことを聞いてもいいかな?」
そう言うと、少女は食器洗いの手を止め、こちらへと歩み寄ってきた。
「いいですよ、どうしました?」
「わざわざごめんね…あのさ、もし君が、自分の知る限り欠点しかない、ってなっててさ、その事を"人間らしい"って言われたら、どう思う?」
そう聞くと、少女は、少し考えてから、
「嫌な気は…特に私はしないですけど、私はあくまでも自律人形、人間とは違いますから…でも、私は少し誇らしい気分になると思います、人形なのに人間らしい、それって"私はプログラムを超えた存在だ、他の人形と違って当然なんだ"って、自分の欠点を少しポジティブに思えるじゃないですか」
「…プログラムを超えた存在、違って当然…かぁ、そう考えてくれてたらいいけど…そうだ、じゃあ……ううん、やっぱりいいや、ありがとね、変な質問聞いてくれて」
「いえいえ!いつも先生にはお世話になってますし!お役に立てたなら光栄です!」
そう少女は満面の笑みで言うと、それでは!と元気よく言って、またお皿洗いを再開した。
「…流石に、あの子に戦場での扱われ方とか聞くのは酷だよね、せっかく戦場とは違う平和なところにいれてるんだから……」
そうぽつりと呟き、僕は医務室へと戻っていった。
それから数時間後、僕は一日の業務を終え、医務室を出て、自室へと戻っていっていた。
俯きながら廊下を歩いていると、正面に誰か立っていることに気づき、ふと顔を上げてみると、そこには、傷だらけの格好をした、リベロールが立っていた。
「リベロールちゃん!?大変だ、早く手当を…!」
そう言って駆け寄り、顔を見ると、リベロールのその目には、大量の涙が浮かんでいた。
「…どうしたんだい?」
そう尋ねると、涙を頬に流し、震えた声で、
「…今日は、お別れを言いに来ました」
と、いつもよりも小さい声で言った。
「…お別れ?」
「はい、お別れです、ワタシ、明日、IOPに返却されるんです」
「一体どうして?今まで指揮官は何も言わなかったじゃないか、それなのにどうして?」
そう尋ねると、リベロールは更に涙を溢れさせながら、
「ワタシが、使えない、いらない子だからです」
と言った。
「そんなわけがない!キミは使えなくないさ、相性のいい子だっている、いらない子じゃないよ!」
「それでも、もう指揮官は決めたんです、ワタシはいらない子だって、使えない子だって…だって、ワタシはそれを戦場で証明してしまった、この怪我だって、ワタシが使える子ならつかなかったはずです」
「いや、それは指揮官が悪いよ、だってキミは、ダミーリンクは疎か、性能の強化だってして貰えてないじゃないか、そんな子を戦場に連れて行って使えないと烙印を押すなんて、そんなの、そんなの、身勝手すぎるじゃないか…!」
そう言うと、リベロールは、傷で痛むであろう身体で、僕の傍に近寄り、僕のことを抱きしめてきた。
「やっぱり…先生は優しい人。でも…もういいんです、ワタシはこれで…要らなければ容赦なく切り捨てられる、それが私たち自律人形…人間の、代用品なんですから」
「だからって…そんなことってないじゃないか…!たとえ自律人形だって、その子一人一人に個性や性格があるんだ、そんな子を使えない、要らないから切り捨てるだなんて…」
そう言って、僕はリベロールの身体を、いつの間にか抱き締め返していた。
「痛いです…先生、力入れすぎです…」
そう言われ、抱きしめる腕を一度は解いたが、やはり辛さに耐えきれず、少し力を抜いて、また、その華奢な身体を抱きしめていた。
「ワタシは、IOPに返却されたら、コアを抜かれて、一般に放出品として販売されるでしょう。でも、きっと、ワタシなんかに買い取り手はつきません…だから、きっと、これが最期です、こんなワタシが、本気で誰かを大好きになるのは……今まで、ありがとうございました」
「僕も…僕も大好きだよ、だから…だからきっと、キミを、どんな手を使ってでも迎えに行く、約束するよ」
「ありがとうございます…先生、大好きです」
そう伝え、僕たちは、互いの身体を抱きしめ合い、別れを惜しみ続けた。
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「っはぁ〜、疲れたなぁ…サボりたい…」
そう窓際で、僕は青い空を見て伸びをしていた。
戦場の最前線における、つかの間の平和な時が流れていた。
あの日の後、僕は前まで働いていた基地から、最前線にほど近い、前よりも戦闘の多い地区に異動となっていた。
前よりも仕事は増えたし、重要なポジションになった事はもう最初の頃を思い出したくもないほどに経験してきたつもりだ。
…今日もヘリは戦術人形たちを運び、戦場へと向かう。
それも昔と変わらず、人間の代用品として。
まあ、この基地の戦術指揮官は、前の基地と違い、とてもいい人だ。
僕たち一般の職員から、戦術人形たち。
その誰にでも手を差し伸べ、共に歩んでいる。
…僕が自律人形専門の医師になった理由は、『たとえ自律人形…ロボットであっても、共に助け合い、共に生き、更には、人生を最期まで共にする、そんな扱いをしてあげたい』からだった。
この基地の指揮官…彼は、僕と同じで、そんな人だった。
だから、僕は、今、『彼女』と共に、人生を歩むことができている。
彼女は、身体やメンタルも欠陥があってしまうし、病弱で、気も弱くて、すぐに怪我をしてしまう。
…でもどんな自律人形よりも、人間らしい。
「…よし!"ナズナ"、そろそろ部隊が帰ってくる、準備しよっか」
「はい、先生、ワタシも頑張ります」
「昔と違ってベッドで寝てない時点でもう頑張ってる方だよ、成長したね」
「…それも、あの時、先生が私を励ましてくれて、また傍に置いてくれたからですよ、先生が好きだから、頑張れるんです」
「…そうかい、僕も愛してるよ、リベロール」
「はい、エドさん」
―――今日も、基地は慌ただしく回っていく。
1人の指揮官と、たくさんの戦術人形の仲間たち。
そして、1人の先生と、そのパートナー。
どんなに欠陥があっても、どんなに辛い別れがあっても、まっすぐに生きていける2人。
そんな2人の物語は、これからも続いていく。
幸福な、未来へと。
いかがでしたか?
このまま何話か短編集として主人公を変えて続けていく予定ですので、どうぞよろしくお願いします!
ではまた次回!お会いしましょう!