昼過ぎから雲行きが怪しくなっていた空は、全ての授業が終わる頃にはすっかり土砂降りになっていた。傘を忘れた一部のクラスメイトの嘆きを耳に拾いながら、周は自分の鞄の中から折り畳み傘を取り出す。
「明日は午後から天気が良くないようなので、折り畳み傘を用意しておくといいですよ」
周は、昨日の夜そう教えてくれた真昼に心の中で感謝した。テレビでニュースや天気予報を確認する事を、周は基本的にしない。真昼と出会う前の自分ならば、雨に濡れながら家へ帰っていたに違いない。
なんなら風邪を引くまで確定コースだ。
「お、今回はちゃんと傘持ってきたんだな」
「……俺が毎回傘を忘れてるみたいに言うな」
帰宅の準備を終えたらしい樹が感心したように話し掛けてくるが、真昼の注意がなければ間違いなく忘れていたので非常に居心地が悪い。目を逸らしながら言葉を返せば、余計な所まで察しの良い樹は案の定ニヤニヤし始めた。
「ふーん、なるほどな?」
「なんだよ」
「お世話されてるようでなによりです」
「うるさい」
察しが良すぎるのも困るが、樹は本当に踏み込んで欲しくない事には触れてこない。そのあたりも含めて『察しが良すぎる』と言うのかもしれないが、その点に関しては周は樹を信頼していた。
返事が適当なのは、見透かされた事からの居心地の悪さ。あとは鬱陶しいだけである。樹は傘持ってきたのか?と少しばかりの反撃を試みたが、普通に折り畳み傘を見せつけられて撃沈した。
『周も天気予報は自分で確認するようにしろよー?』などとお小言まで貰う始末である。
「というかオレがしっかり持ってこないと」
「いっくん!傘忘れた!!」
「……こういうこった」
いつの間にいたのか。言葉を遮るようにして勢いよく自首した千歳に、樹が苦笑する。早速じゃれあい始める2人は、どうやら相合傘で帰る気満々なようである。
こんな土砂降りの雨すらも、青春を謳歌する彼らにとってはイチャつく要因の1つにしかならないらしい。周は遠い目になった。
「砂糖吐きそうだから帰るわ」
「いやなんでだよ。……あ、ちゃんと今日は風呂入って身体あっためて寝るんだぞ?」
「おかんか」
「それと、また子供に傘渡すなよ?」
「じゃあこの土砂降りの中、傘をささずにいる子供に出会わないよう祈っといてくれ」
「ってことは、いたら渡すんだな」
「周またねー!ばいばーい!」
ケラケラ笑う樹と手を振る千歳に背を向け、周は教室を後にした。
ありがたいことに、真昼から今日の買い出しは不要であると既に連絡があった。鞄を肩に掛け、なるべく雨に濡れないよう努力しながら帰路を急ぐ。
……これだけ技術が進歩しているというのに、どうして雨を防ぐ道具は未だに傘が主流なのだろうか。この土砂降りのなか、折り畳み傘1つはあまりに頼りない。
案の定、歩いているうちに雨に濡れたズボンが肌に張り付いてきて、周は溜め息を吐いた。
リハビリ。短くてごめんなさい。
次で終わらせたい。まず投稿したい。