亡く少女の為のセクステット   作:月の海

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Sideレミリア
「お嬢様、お暇を頂いてもよろしいでしょうか」
私のティーカップに紅茶を注ぐと咲夜はそう願い出た。
「ん?あぁ、今日だったか」
あまりに普段と変わらなすぎて言われるまで忘れていた。
「よかろう、許可する」
「ありがとうございます」
今日は咲夜が死ぬ日だ。



第2話

図書館を訪れると小悪魔や妖精メイド達がバタバタと本を運んでいた。

「取り込み中だったかしら?」

「レミィが構わないなら問題ないわ」

パチェが本からこちらに視線を向けた。

私は対面に座ると改めて周囲を見回した。

「何の騒ぎ?」

「ここの空間も咲夜の能力で拡張してもらっていたから移動しておかないと圧死してしまうのよ」

「あぁ、そういうこと」

「後で私が魔法でなんとかするから少しだけ何部屋か間借りさせてもらうわ。咲夜は?」

「さっき出ていったわ」

「そう」

「悪魔の犬のくせに死ぬ前に主人の前から姿消すとかお前は猫かって話だよ」

「そうね」

「…なんか反応薄くない?」

「どちらかと言えば貴女が過剰に反応してるのよ」

「…………」

「気持ちの整理がつかない?なら血を吸ってしまえばいいのよ」

テーブルに突っ伏して答える。

「…それはしない」

「なぜ?」

「それは…」

―私は一生死ぬ人間ですよ。―

「そういう契約《やくそく》だからな」

「それじゃあ諦めて娘の門出を祝うように送り出してあげてなさい」

「…そう、ね」

 

 

 

Side美鈴

あれ?咲夜さん?こんなにたくさんの料理どうしたんですか?

何言ってるの?貴女のために用意したのよ

へ?

ほら、まだまだあるからどんどん食べてね。

わ~い♪

 

「もう食べられませんよぉ…」

「そ…………ごは…………ね」

ん?

気が付くと目の前には笑顔の咲夜さんがいた。

「…ハッ!わわ、咲夜さん!?寝てません、寝てませんよ!!ちょーっと目を閉じてただけですよ」

「あぁ、そうだったの」

「はい!!」

あれ?もしかしてセーフ?

「じゃあ言ってた通りご飯はもういらないのね」

「すみません、寝てました!!」

考えるよりも先に体が動いていた。

「最初から素直にそう言えばいいのよ。そう言えば―」

「ご飯いっぱい?」

ΣΣ(゚д゚lll)

「惨いお仕置きが酷いお仕置きになるわ」

「ほとんど変わってないですよおおぉぉぉー!!!」

 

「それじゃ行ってくるから、後は頼んだわよ」

お仕置きが済むと咲夜さんはトーンを落としてそう言った。

咲夜さんの気は既に風前の灯火だ。

おそらくこれが最後だろう。

「……我知道了(了解しました)」

私は帽子を胸に当て最大限の礼をこめて頭を下げた。

 

 

 

Side霖之助

「いらっしゃい、今日は何をお求めで?」

「残念ながら今日は客ではありませんわ」

一番の常連は本日は客じゃないらしい。

「客じゃない客人は間に合っていたんだが」

脳裏を過るのは紅白と白黒。

「まぁいいじゃありませんか」

普段の彼女ならば決して食い下がりはしない。

「…そこにかけるといい、今お茶を淹れてくるよ」

それが示すものはおそらく…

 

「君は変わらず綺麗だね」

あ、動揺したな。

「…それは皮肉?それとも私を口説いているかしら?」

「言葉通りに受け止めてもらえないのは悲しいね」

見た目は昔と全く変わっていない。

能力の応用なのか魔術の類なのかは分からないが。

「客じゃない客人にでも言ってあげるべきだったわね」

「マスタースパークと夢想封印の合わせ技をいただいたよ。流石の僕も身の危険を感じたよ」

照れ隠しにしてもあれは洒落にならなかった。

「私もエターナルミークした方がいいかしら」

「やめてくれ」

彼女はお茶を飲み干すと席を立った。

「もう行くのかい?」

「えぇ。お茶、結構なお点前でしたわ」

「お粗末様、次はどこに向かうんだい?」

「次は――」

 

 

 

Side慧音

「今日はここまで」

「気をつけー礼ー」

授業を終え、塗板を消していると外が騒がしくなっていた。

見てみるとそこには子供達に囲まれている咲夜がいた。

「こらこらお前達、咲夜を困らせるんじゃない」

「え~」

いくら咲夜でも何もなしではどうしようもないだろう。

「別に構いませんわ」

「いいのか?」

了承こそしたものの打つ手がないようで考えあぐねていた。

「おーい慧音、筍持ってきたぞ」

「それじゃあ皆、先生の帽子を見ててね。3、2、1…」

妹紅を見て何か思いついた咲夜がカウントダウンを終えると私の帽子が筍になっていた。

「「「おぉ~」」」

「よし、お前らもういいな」

「うん!先生、お姉ちゃん、もこたん、さようなら~」

「さようなら」

「気を付けて帰るんだぞ」

「おい」

子供達を見送り帽子を被り直してから咲夜に向き直った。

「いつもすまないな」

「これくらいならお安いご用ですわ」

「…………」

妹紅はじっと咲夜を見て黙ったままだった。

「ん?どうした妹紅」

「慧音、ちょっと」

そう言うと妹紅は私に耳打ちした。

「 (こいつ、もう死ぬぞ)」

そんなはずはない。

咲夜は吸血鬼の従者なのだからその命は現に永遠となっているはずなのだ。

その証拠に咲夜の容姿は年齢相応のそれではない。

「こんな目の前でいちゃいちゃされると妬いてしまいますわ」

「ふふん、いいだろ」

軽口を叩く咲夜と肩を組んできた妹紅についカッとなってしまう。

「そんなこと言ってる場合じゃな―」

「慧音」

私の言葉を遮り、咲夜は人差し指を唇に当てた。

「貴女達を見てたらお嬢様が恋しくなってまいりましたわ。そろそろお暇させていただくわ」

「あぁ、じゃあな」

私は何も言うことが出来なかった。

 

Side妹紅

「あいつはさ、全部知ってたんだよ」

「なら何であいつは…」

不死にならなかったのか、そう言いたいのだろう。

「譲れないものがあるんだろ。人間としてのプライドって言うべきかね」

あの時、私は見たからな。

不死の誘いを突っぱねるあいつを。

「さ、今日は飲もうじゃないか。あいつの、友人の旅立ちを祝してな」

「……あぁ」

 




Sideレミリア
「ただいま戻りましたわ」
日も暮れ、私達の時間となった頃、咲夜は唐突に現れた。
「なんだ帰ってきたのか」
「そういう約束でしたから」
―大丈夫、生きている間は一緒にいますから―
「猫にでもなったかと思ったがやっぱり犬のままだったか」
「?」
良く分からないといった顔だった。
「こっちの話だ」
「そうですか。それより今日は歩き通しで疲れましたわ。お先に休ませてもらいます」
「主人より先に寝付くとはとんだ完璧で瀟洒な従者もいたものだ。だが赦す」
「ありがとうございます、お休みなさいませお嬢様」
「あぁ、お休み」
私の咲夜。
~fin~
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