ダンガンロンパ 狛枝 作:雪哉
ゲームはもちろん、ダンガンゼロや特典小説にまで至りますのでご注意下さい。
一日でノリで書いたため、お見苦しい部分も多々あると思いますが、どうか笑って見てやって下さい。
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追記 誤字脱字修正しました
「……ねえ……、聞こえてる……?」
誰だろう、誰かが「私」に話しかけている。
「……おーい。…………駄目か、参ったなどうも……」
少しづつ意識が戻り始めた。薄く目を開くと、誰かが私の顔を覗き込んでいるのが視界に映る。慌てて体を起こすと、その男と額同士をぶつけてしまった。
「いてっ!」
その誰かは頭を押さえながら呻いている。石頭の私は何ともなかったが、悪いのは当然こちらなので、すぐに謝罪の言葉を述べる。
「ご、ごめんなさい……」
「い、いや、大丈夫だよ……。気にしないで」
頭の痛みが引いてきたのか、ゆっくりと頭から手を放したその人物は爽やかな笑顔を浮かべながらこう名乗ってきた。
「初めまして、ボクは『狛枝凪斗《こまえだなぎと》』だよ」
青白い肌の頼りなさげな優男だった。カーキ色のパーカーに身を包み、ボリュームのある色の薄い髪がゆらゆらと炎のように揺れている。狛枝は何かを期待するように私を見ていた。おそらくこちらが名乗るのを待っているのだろう。仕方ない……。
「私は『琴江木麻奈《ことえぎまな》』といいます。初めまして、狛枝さん」
「琴江木さんね! うん、いい名前だね! よろしくお願いするよ」
狛枝は笑顔を崩すことなく、右手を差し出してきた。一瞬戸惑ったが、すぐにこちらも片手を差し伸べ、彼と握手を交わす。と、そこで「なぜ、自分はこんなところで誰かと握手をしているのだろう」という疑問が沸いてきた。下校途中までの記憶はあるが、そこでぷっつりと意識が途切れている。
私は立ち上がると、辺りを見回してみた。薄暗く、殺風景な小部屋だ。特に変わった様子はない。ただし、ここが鉄格子で囲まれた牢屋だということを除けばの話だが。
混乱する頭で私は狛枝に尋ねてみた。
「えーっと、狛枝さん? どうして私たちはこんな場所にいるのでしょう?」
すると、彼は腕を組みながら気怠そうに溜息をついた。
「……あのね、本当に申し訳ないんだけど、ボクが君を巻き込んじゃったみたいだ」
「……巻き込んだって、何に?」
「うーん、信じてもらえないかもしれないけど……。『誘拐』っていえば分かり易いかな」
信じられなかった。そんなことあるはずがない。
「信じられないって顔してるね。でも、事実なんだ。まずは、落ち着いて受け止めてくれないかな?」
狛枝は心配そうにこちらを見ていたが、おそらく彼は勘違いをしている。私が信じられないのは、別に『誘拐されたこと』ではない。私の身にそんな事が起きた事自体が信じられなかった。そして、狛枝は更に信じがたい言葉を口にした。
「まったく、こんなことに巻き込まれるなんて、君も相当ツイてないね……」
「……何ですって?」
「えっ? いや、君もツイてないなぁ、って言ったけど……。ど、どうしたの?」
「……いい? 今度私にその台詞を言ったら、『殺す』からね。良く覚えておいて」
それを聞いた狛枝は、すっかり青い顔になって震えている。
「わ、わかったよ……。約束する……」
失礼な話だ。この私が『不幸』だなんて、そんなことがあるはずがない。生まれてこの方、私の思い通りにならなかったことはない。容姿・勉学・財産・その他諸々、全てが上手くいってきた。ジャンケンですら負けたことはない。
私『琴江木麻奈』は、言うなれば『幸運』なのだ。
こんな事態に陥ること自体、間違っているとしか思えない。私の人生における汚点だ。
(……しかし、本当に妙ね……)
客観的に見ても、自分がこのような仕打ちを受けるはずがない。そう、まるで自分の幸運が無くなってしまったような、何か得体のしれない『不幸』に飲み込まれてしまったような……。
背筋に、ぞっと寒気が走る。一体何が起こっているのだろうか。
「……あのー、琴江木さん?」
「……何でしょう?」
私が鬱陶しそうに返事をすると、狛枝は困ったような苦笑いを浮かべ、
「まあ、『安心して』とまではいかないけど、何とかなるんじゃないかな。いや、必ずボクは助かるけど、巻き込んだ責任もあるしね……。君も助かるように、出来る限りのことはするよ」
私はその言葉に違和感を覚えた。
「あら? 結構な自信ですね」
まあね……、と狛枝の目が一瞬だけ薄気味悪い色になる。そして、彼はこう言った。
「こんな『不幸』が訪れたんだ。きっと凄い『幸運』が待っているに決まってるよ!」
それが始まり。二つの『幸運』が交錯した瞬間だった。