久しぶりにイーストシティにやって来た。
耳障りな音がして列車が止まったので、列車を降りて駅を出ようとしたら、そこで見知った顔を見つけた。
「やあ、ロイ久しぶり」
「む、君か。久しぶりだな。まあ、君が乗っているのは分かっていたのだがね」
「え?」
僕が声をかけると、ロイは振り返り微笑んだ。
なぜ、僕が乗っていたのを知っていたのだろうか?
「もしかして、あのテロリストっぽい人たちと関係してるのかい?」
僕は列車の中で銃を振り回していた男たちを思い出す。
僕が手を出すまでもなく、背の小さい男の子にやられてしまっていたけど。
「ああ、その通りだ。この列車には将軍閣下も乗っていらしてね。まったく、この情勢下でバカンスとは……」
ロイはため息を吐いた。
「ははっ、軍人さんは大変そうだね~。ま、愚痴ならまた後で聞くよ」
「暇ができたら、だろう?」
笑って頷く。
と、そこでロイの後ろにいた女性に気づいた。
わざとらしく笑って話しかける。
「これは失敬。挨拶を忘れてしまいまして。僕はトーロック。貴女は?」
「リザ・ホークアイです。階級は中尉です」
なんだかお堅い返しをされてしまった。
僕が軍人に見えるのだろうか。
「あはは、そんな固くならなくていいですよ。僕は軍人じゃなくて民間人ですから」
「あ、ではこんにちは」
「はい、こんにちは」
そんなことをしていると、見覚えのある二人組が近づいてきた。
ロイがそれに気づき手を上げた。
「や、鋼の」
「あれ、大佐こんにちは」
大きな鎧を着たほうが答えた。
彼が鋼の、だろうか。
もう一人の、先ほどテロリストを片付けていた少年は、ロイの挨拶に不快感を表していた。
「なんだね、その嫌そうな顔は?」
「くぁ~~!大佐の管轄なら放っときゃ良かった!」
「ははっ、まったくつれないな」
「あの~、僕にも少し説明してくれない?」
空気になっていた僕は、本格的についていけなくなる前にロイに話しかけた。
「おっと、危うく忘れるところだった。紹介しておこう、鋼の錬金術師のエドワード・エルリックだ。まあ、君には関係ないことかもしれんがね」
「え~と、アンタは?」
エドワードと言われた少年は、訝しげに僕に向かって会釈してきた。
反射的に同じようにする。
「僕の名前はトーロック。親しい人にはロックと呼ばれているよ」
僕はエドワードに向かって手を差し出した。
だが、エドワードは少し戸惑っているようだった。
「あれ? こういうのは好かないかな」
「あ、いやそういうわけじゃないんだけど……手がこれだからさ」
そう言うと、エドワードは右腕を前に出した。
それはオートメイルと呼ばれる義手だった。
僕も、本物を見るのは初めてだ。
「……何か、いろいろとあったんだね」
エドワードは悲しそうな顔をして、一つ頷いた。
その後、しっかりと握手をする。
「鋼の、いろいろと派手にやっているようじゃないか。元に戻るために」
「げ、相変わらず地獄耳だな」
「君の行動が派手なだけだろう」
「ぐあ!!」
「き、貴様ぁ!」
突然、構内に叫び声が響いた。
声のほうに視線を向ければ、列車内でエドワードにやられていた男が、軍人の二人を振り払って立っていた。
「うわ……」
「大佐、お下がりください」
エドワードは露骨に嫌そうな顔をしている。
リザさんは銃を構えロイの前に出ようとしているが、ロイがそれを制止しているようだった。
多分、錬金術を使う気だろう。
先ほどエドワードに派手と言っていたが、ロイの錬金術も派手な部類に入るだろう。
「ま、僕にやらせてもらおう」
「ロック?」
僕はロイの前に出て、走って来たテロリストの男と相対した。
僕は袖からナイフを取り出し、それを走ってきた男の足に投げつける。
「ぐ、ああ!」
男は勢いよく倒れこんだ。
ズザー、と音がなる。
「錬金術を使わなくても、これくらいなら何とかなるものさ」
「ロック……私の活躍が何もないじゃないか……」
「はははっ、そのほうがロイらしいよ」
「無能だと、そう言いたいのかね?」
ロイは笑いながら怒っていた。
「落ち着いて、落ち着いて」
「誰のせいだと思ってるんだ、まったく……」
「終わったんだからいいじゃないか」
「はあ……」
笑いながらロイの肩を叩く。
大佐になっても変わらない、楽しい奴だ、ロイは。
「じゃあ、僕はこれで失礼するよ」
「む、何か急ぎの用があったのか?」
「いやさ、ここにいると面倒なことに巻き込まれそうだからね」
それじゃあ、またいつか会おう、と言いながら手を振り、僕は駅を出た。