衛宮士郎が平行世界に飛ばされたあげく、魔改造で女になったようです。   作:糸田シエン

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なんだかとてつもなく久々な投稿な気がする!


戦いに向けて……

海中から飛び出した母船と、それを取り巻く子船は、宙に浮かんだまま微動だにせず、端から見れば不気味に他ならない。そもそもこの世界に飛行技術は存在しない。一部の魔術師が複数の魔術を併用し、ようやく人一人浮かせられるかどうかといったところだ。

故に大質量の帆船が複数浮いている時点で、異質なものとして認識されるのだ。

そしてシロナにしてみれば、それがすぐに英霊絡みであることに気付いた。

「アヤメ、今すぐここを離れるんだ!」

「シロナは!?」

「俺はあれを止めなくちゃならない。だからアヤメはすぐに逃げるんだ」

「でも……!」

あれが発する魔力は尋常じゃない、とリンは直感的に理解した。そして、魔神ペトであっても手に余る物かもしれない、と。

「早く離れるんだぞ!」

「あっ……!」

シロナは駆け出す。リンは追わなかった。いや、追えなかった。

シロナは船へと走る。

投影した剣を足場にしながら、宙を駆けていく。

 

 

「う、あぅ……」

ペトはシロナを追おうと転移の術式を組もうとして、胸が詰まるような痛みで胸を抑えて膝を着いて崩れ落ちた。集中力が削がれて術式も霧散した。

(こんな時に……! 頼むから、治まって……!)

そんなペトの思いも虚しく、ペトの意識は途絶えた。

もうすぐ限界が来ると知りながらも、その魂が燃え尽きるその時まで、力を振るい続けると決めたのだから。

 

 

リンは一人取り残され、改めて自身の姿を思い出して恥ずかしさに溺れていた。

「着替えよう。うん、そうしよう」

近くの洋服店の試着室を借りてリンとしての普段着に着替えていた。

眼帯を着け、ポニーテールにする。少し悩んだが、最後にシロナから貰ったイヤリングを着けた。

夜桜を下げ、店を出た。

しばらく歩くと、フィナリアとニーナに会う。

「……まさかお前ら……!」

「ごめんね、ちょっと気になって」

「うぷぷ、キャラが違った……!」

「忘れろ! 頼むから忘れてくれー!」

リンにとっては黒歴史なのだ。過去の厨二を暴かれるのと同義である。

「まぁ、あと一週間は我慢しなさい」

「お前が我慢しろフィナリア!」

「二人とも落ち着いて……ってあれ?」

いがみ合う二人は気付いていないが、ニーナは側を通り過ぎた人物に違和感を覚えた。

(なんだかよく分からないけど、既視感が……)

少し傷んだ白髪に、褐色の肌。鋼色の瞳に、赤い外套をまとった女性の後ろ姿を、ニーナはただ眺めていた。

「どうしたんだ、ニーナ」

「いや、なんでもないよ」

今までの思考を振り払う。

「それで、アレはどうする?」

フィナリアが宙に浮かぶ帆船を指差して言う。

「シロナが乗り込んで行ったが……私達はしばらく様子見の方がいいかもしれない」

「そうね。大砲とか迎撃しなきゃならないかもしれないし」

「じゃあ私達は散って砲弾を撃ち落とすってことだね」

「そういうこと。それじゃ、散開!」

こうして三人は自らが持つ場所へと向かう。

 

 

時は少し遡る。

場所は帆船の甲板。一人の女が、酒を煽っていた。

「さて、派手にやらかすとするかねぇ……。と、その前に。人の船に無断で乗り込むたぁ、いい度胸じゃないか。アーチャー」

アーチャーと呼ばれた女は、物陰から姿を現した。

「それとも、護衛でもしてくれるのかい?」

「私は警告しにきただけよ」

「警告? 何をふざけたことを」

アーチャーは鼻で笑う。

「無闇に犠牲者を出すべきではないと言ったのよ。奴らもそう馬鹿ではないし、力がないわけでもない。数で攻められれば、どれだけ強大な存在であろうといずれは討たれる」

「なら、その前に滅ぼせばいいじゃないか」

「警告はしたわ。これ以上は口出ししない。けど、気を付けることね」

「……何にだい?」

「正義の味方とか、ね」

アーチャーは船から飛び下りた。

「ま、あたしには関係ないね。精々楽しませてもらうさ。……砲撃よぉい!」

帆船が動き、大砲の標準が定められていく。

「させるかぁぁぁぁっ!」

「っ!?」

咄嗟に構えたクラシカルな二丁拳銃で振り下ろされた剣を受け、流す。

「あーあー、まだ入ってたのに、勿体ない。さっさとアンタを片付けて新しいのを開けるとするかねぇ」

手放し、甲板に落ちた衝撃で砕けた酒瓶から広がる液体を眺めながら、女は呟いた。

シロナはそんな女に問い掛ける。

「お前はライダー、なのか?」

「誰だい、そりゃ。アーチャーの奴もそんなこと言ってた気がするな」

「アーチャー、だと?」

シロナの脳裏に浮かぶのは、自身の未来の可能性の一つ、英霊エミヤ。しかし、それはないと言い聞かせる。まるで現実逃避をするように。

「で、アンタは敵ってことでいいんだろう?」

「……そうだ、俺はお前を止める!」

干将・莫耶と二丁拳銃が、それぞれ構えられた。

 




戦闘シーン、難しいですよね。
戦闘シーン、得意じゃないんですよね。
戦闘シーン、でも書きたくなるんですよね。
戦闘シーン、……もうないや。

さて、次もいつになるのやら。

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