赤茶色の髪をした少女がピンクのマフラーをし、ジャージ姿のまま雪が降る午後の街を歩いている
「寒い…寒いぞ…」
ああ、やっぱり動くべきではなかった
こんな寒い中、何故私が彼方を探さなければならない…
「それもこれも、悪喰のせいだ」
なんという八つ当たり、茨は小さな溜め息をし空を見上げた
「茨?珍しいね、外にいるなんて」
振り返ると目当ての人物がいた、これだけ探したというのに向こうから来るなんて…
とんだ骨折り損だ、それになんだその暖かそうなコートは
「彼方を探していた、急用でね」
「急用?」
「うむ、だがその前にそのコートを貸してはいただけないだろうか?」
「……えぇ…」
まあ当然の嫌そうな反応だね
やれやれ、低級神も楽じゃないな
「もう、いつものジャージのまんまだから悪いんじゃないのさ」
悪態はつくものの彼方は茨にコートを羽織らせた
「文句を言うとは紳士ではないね」
「主人の悪い癖も指摘して正すのも執事の役目なんだ」
たいした従者だ
「おっと忘れるところだった、用事というのは骨を用意してほしい」
「ほ、骨?」
「そう、人骨でも獣骨でも構わない、ああ、魚はダメだから」
そう言うと茨は歩き始めた、用件はそれだけのようだ
「おい、コート返せチミっ子」
◆
結局、コート無しで仕事場に来たわけだけど
茨に言われた骨…
人骨はさすがに無理だけど獣骨ならどうにかなりそうな宛はある
「お~彼方っちじゃん、真冬にコート無しとは学生は元気だねぇ、と」
この緩い感じで喋る女性がこの
レンタル執事事業の社長であり創設者
濃い紫髪の腰まで伸びたポニーテール
黙っていればクールなお姉様に見える、見えるだけであって話してみれば軽い、しかし何処と無くしっかりしていて食えない人でもある
名前は橘 白雪
「追い剥ぎにあったんですよ、会うなりコートを要求されました」
「なんじゃそりゃ、随分と強い小学生もいたもんだ、高校生から追い剥ぎとはな~」
「………」
けらけらと笑っていた白雪は無言だった彼方を見て、驚いた表情に変わり始めた
「え?マジで?」
あながち子供っぽいで間違いがない人物にやられたのだ、黙ってしまうのも当然か
「白雪さんも気をつけた方がいいですよ、奪った瞬間、人外的力を行使して逃げる怠け神もいますから」
「彼方っちも苦労してるんだねぇ、ところで今日は非番じゃなかった?」
「実は白雪さんにお願いがありまして」
「なんだい?骨以外の相談事なら聞いてあげる」
クスクスと白雪さんは子供のように笑う
こっちの事情はバレバレなのか…この人も食えない人だな
「その骨が必要なんですが…」
「やれやれ、友人は選んだほうがいいぞ彼方少年、あんまり変なのと関わると人間らしい死に方はしないぞ」
白雪は説教気味に言い、溜め息をし真上を見上げた
「………」
わかってる、これまでだって茨と関わって危険な目には逢ってきた
でも、俺は…
彼方は少し微笑み、白雪の方へと向いた
「大丈夫ですよ、変なのは変なのですけど、とびっきり変な奴ですから」
ああ、茨が聞いていたら怒りそうだなぁ、と内心苦笑している、白雪は真顔で彼方を見ていて呆れているのか驚いているのかさえわからない、きっと前者だな
「知り合いにさ」
急に白雪がぽつりと呟く
「あ、はい」
「牛を飼っている奴がいるんだ、ちょうど忘年会もあるし、今年はバーベキューでもするかなぁ」
「それって…」
「骨はあげるよ、ゴミになるし」
得意気に微笑み白雪はウィンクをした
相変わらずどんな人脈をしているかわからないが、やっぱり頼りになる
「ありがとうございます!白雪さん!」
「ゴミを貰って喜ぶなんて変なのだね彼方っちも、それじゃ早速行くかい?」
「え?行くって、まさか今からですか!?」
「忘年会は一ヶ月後だし、それまであのお嬢ちゃんは待ってくれないっしょ?なら早めにゴーだよ、バーベキュー用の肉は冷凍すれば問題ないし」
「…ほんと、どこまで知ってるんですか白雪さんは」
苦笑しながら聞いて見るが当然白雪は答えないし、彼方も深くは追求はしなかった
結局あの後、二人で牧場へ向かい牛を白雪さんは買い取った、骨は後日茨の屋敷に届くようにした
これで準備は整った、茨はこの骨でどうするつもりなのだろう…