ツヴァイウィング大好き娘、追っかけ続けて装者になる   作:わらぶく

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少女は見知らぬ子と食事をする

「踏み込みが甘いッ!」

 

「あばぁっ!」

 

 響さんが来てから早一か月ほど。

 私は初めてのお給金を貰いに来ただけのはずなのに、翼さん主導の特訓に引きずり込まれていた。というのも、最近は外国の政府やらが怪しい動きを見せているやらで、私に身に危険が迫っているんだそう。

 なので、今日から弦十郎さんと翼さんのお二人から護身術の指南が始まった。

 

 はっきりと言って地獄である。

 

「体はある程度出来上がってはいるが、体の動かし方はまだまだだな。

 だが、何事も継続あるのみだ。みっちり仕上げていくぞッ!」

 

「ひぃぃぃ……ッ!」

 

 

 

 

「ひぇ、ひぇぇ……」

 

 ものの見事にコテンパンにされた。

 何度も殴打と投げを食らい続けた私の体はボロボロだぁ!

 弦十郎さんの指導は優しく厳しいをモットーにしているのか、指導中はめちゃくちゃ厳しいけど終わった後にすっごい褒めてくれるからやる気は出る。ただ内容がヤバい。どこかの映画じみたもので筋トレから有酸素運動まで全部やる。

 明日の私は間違いなく筋肉痛で死ぬだろう。

 

 今はと言うと、休日を使って肌を晒さないように変装し繁華街へと繰り出していた。

 流石休日、大通りはヒトで満ち溢れている。牛丼を食べるにはうってつけだ。

 お金を持ってる分、ちゃんと計画的に使い果たさないと。

 

 というのも、二課のお給金がすごいのだ。

 あんまり大声では言えないんだけど、まぁウン百万単位でもらえている。

 まさに大金。聖遺物保持者とは言え、高校生にこんな大金を持たせていいのか……。

 もちろんこんな大金をずっと持っているのも怖いので、半分は即座にお母さんに、もう半分はツヴァイウィングのグッズ関連と衣食住だ。

 今はとにかく、最近よく使う牛丼屋へGO!

 

 だった、はずなんだけどなぁ……。

 

「腹減った……」

 

 公園の通路に設置されたベンチに、赤いオシャレな洋服をきた女の子が寝っ転がっている。

 白寄りの銀髪を二つに結んだ何とも可愛らしい子。寝ているところから推測するに、身長的には私よりも少し小さいというところ。ちょっと離れていても、お腹の鳴る音が聞こえてくる。

 

 いや、無視してもいいんだけど、あそこまで負のオーラを出しているとしづらいというか。

 むしろここは勇気を出して人助けをしてみるべきではないかと。

 

「あ、あの大丈夫ですか……?」

 

「ん、誰だ? あたしに何か用かよ」

 

「あ、いや、お腹鳴らしててすごい呻いていたので、何かできないかなと……。もしよかったらご飯奢ってあげられるんだけど、どうかな……?」

 

 精一杯の勇気を絞り出して、話しかける。

 だけど、相手の顔は不審者を見つめるような厳しいものになっていって、突き刺すような鋭い目線が向けられている。

 

「何だ聞こえてたのかよ。別に気にしなくてもいいっての」

 

「待って……」

 

「あん? 何だよ」

 

「出来れば好意を素直に受け取ってほしいです……」

 

「はぁ?」

 

「だってこのまま別れたら気まずい空気が広がって死んじゃうじゃないですか! お願いですよッ!」

 

「お前の都合なんてあたしは知らねぇよ!」

 

「お願いしますよッ! どうか、どうかわたしを助けるッと思ってぇッ!」

 

「分かった、分かったから放せってばッ!」

 

 

 

 

「いやぁ、慣れないことはやるもんじゃないですねぇ」

 

「ったく、何事かと思ったっての。何で飯奢られる側が頭下げられてんだよ……」

 

「尊敬する人を真似して人助けをしてみようと思ったんですけど、うん相手が悪かったですね。いやぁ失敗失敗、次からは気弱そうな人を選んで助けることにします」

 

「何だ? あたし様は気が強いってか?」

 

「え、違うんですか? 語気は強いし、目線は鋭いし、これまで知り合った人の中で一番キッツいですよ。可愛い顔と気の強さが比例してるというか何というか」

 

「いきなり馴れ馴れしいなお前ッ! さっきまでのへっぴり腰はなんだったんだよッ!」

 

 談笑する私たちがいるのは、個人的うまさナンバーワンの牛丼店。

 休日だけど昼飯時は過ぎてることもあって、私たちは危なげなく席に座ることが出来た。

 

「にしても、何でこんな所なんだ?」

 

「こんな所とは失礼ですね。ここは私イチオシの牛丼屋です。何でも良いですよ。何食べます?」

 

「そーだな。この普通の牛丼の大盛りで頼む。何だかんだ言ったけど、腹減りすぎて割ときつかったんだよ。飯に罪はねーもんな」

 

「良いんですか? ここの大盛りは結構多いですよ?」

 

「大盛りって言っても、たかが知れてんだろ。腹減りすぎてしんどいんだよ」

 

「お、言いましたね。なら私は張り合って特盛にしちゃいましょう。最近はよく食べるようになってしまったので」

 

 この方は知らないようです。ここの量の恐ろしさを……。

 今日、何故お腹を空かせてベンチで寝ていたのかを聞いてみると、どうやら保護者的な人が用意してくれた料理を落としてしまい、料理も出来ず食べるものもなくあそこで寝ていたらしい。そういう時は冷凍食品に頼ればいいが、それも冷蔵庫になかったみたいだ。

 そもそも、話を聞いている限り最低限は食材を買わないようで、食事が終われば冷蔵庫は空っぽだそうで。

 

「そんな人いるんですねぇ……」

 

「居るんだよ。あたしは直接見てるからな」

 

「はぁ……、あっ来たみたいですよ」

 

「噂の大盛りか? どうせそんな──」

 

 店員さんがトレーに乗せて持って来てくれたのは、腕で抱え込むくらい大きな丼に入った牛丼と、それの一回り大きな牛丼。店員さんが机に置くとドンと音が鳴って、れんげが手渡される。これがここの店舗のイチオシ、クソでか特盛牛丼。

 いやはや、何回見ても大きい。学校の掃除で使ってた小さいバケツの半分ぐらいは容量があるんじゃないかというほど。これが一杯なんだってから得じゃない?

 

「おい、それ食べられるのかよ……」

 

「? はい、問題無いですよ。それよりも、そっちこそ全部食べられるんですかぁ?」

 

「は、はぁ!? あたしが食いもん残すとでも思ってんのか!?」

 

「なら一緒に食べ始めましょう!」

 

「やってやらぁッ!」

 

 威勢よく食べ始めたものの、まぁこんな量食べられるわけもなく。

 れんげを使いながら食べ進めていく私の横で、四分の三まで食べ進めたクリスさんが見事にダウンしている。私はと言えば、アメノムラクモが起動してから食欲と食事量が倍増し、これくらいならば苦も無く食べ終えることが出来てしまう。

 まぁ、食事後は妊婦みたいにお腹が大きくなってしまうんだけども。

 食欲には勝てないッ!

 

「こ、これ多すぎだろ……」

 

 これが、即落ちというやつか。

 それでも、初見でこれだけ食べられれば健闘したほう。

 たまに半分以上の残す人とかいるからね。

 

「んー、ごちそうさまでした」

 

「マジかよッ!? 全部食べちまったのか?」

 

「はい。いや美味しゅうございました……そっちのはまだ残ってるみたいですけど」

 

「あたしは無理だ……食べるってんならやるよ」

 

「では失礼して、残飯処理しますね~」

 

 横からクリスさんの丼を貰い、サクッと食べ干す。

 いよいよ彼女の私を見る目が化け物に対するそれになって来たけど、もうそんなことは気にしない。なんなら店員からすでに浴びている。

 

「ふぅ……良い昼食でしたね」

 

「こんなもんあたしの胃が爆発しちまうっての」

 

 水を飲みながらそういう彼女。

 でも、最初にあった時に比べたら笑顔が多くて可愛らしい。

 やっぱり食はすごいですね。

 

「私的には満足です。少しゆっくりしてから帰りましょうか。

 やっぱり楽しくご飯を食べるのは良いですね。満足です」

 

「あたしは驚きの連続だって」

 

「楽しかったですか?」

 

「まぁ……それなりには。雑談しながらの飯も良いもんだな。んじゃ、あたしは帰るよ。やることがあるんでな」

 

「はい、それでは」

 

 席から立ち上がって、彼女は店外へと歩いて出ていった。

 途中こっちに振り返って、手を振ってくれたのでこっちもふり返す。

 やべぇな、可愛いが過ぎるかよ。

 

 一休みしてから私も席を立つ。

 今日の夜は寮でアニメでも見てよう。どうせ夜間外出できないし。

 それにしてもさっきの人すっごい話し易かったな。

 また会えたらいいなぁ。

 

 

 

 

 

 その日の夜、私の所に一報がやって来る。

 内容を聞いた私は、寮を飛び出して二課へと駆け出していた。

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