ツヴァイウィング大好き娘、追っかけ続けて装者になる   作:わらぶく

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無印編、開始ですッ!


無印編
少女はリディアンへ、そして出会う


「仰ぎ見よ太陽を よろずの愛を学べ

 朝な夕なに声高く

 調べと共に強く生きよ

 

 遥かな未来の果て 例え涙をしても

 誉れ胸を張る乙女よ

 信ず夢を歌にして──」

 

 リディアン音楽院入学式からこんにちは。

 体のリハビリをこなし退院してから半年、現在私は大きな体育館で同級生となる入学生たちと共に、リディアンの校歌を歌っている。初めての校歌は新入生が声を出せないイメージがあるだろう。

 私もある。何なら今大きな声を出してるのは、私一人だけかもしれない。この辺りは、入学前にツヴァイウィングのお二人から教えてもらったので、予習OKだった。

 

 入学式が終われば、遂に私たちはリディアンの生徒。

 さてさて、今年から晴々しい高校生活だ。

 心機一転、胸を張っていきましょー!

 

 何て言えたらどれだけ気が楽だったか。

 登校初日、私は早々にやらかした。

 自己紹介でしくじった。そしてもう一つ。

 一言で言えば、私は容姿があまりよろしくなかったのだ。

 

 顔が、体型がとかじゃなくて、私は腕や足に包帯をグルグル巻きにしているのが原因だ。というのも、お腹の中のアメノムラクモが私の体を治すときに、聖遺物特有の謎物質で治したらしく、おかげで私の体には黒い斑点が無数に残ってしまった。

 このことにより、私のクラス内での印象は『やべーやつ』になってしまった。

 

 助けてくれたことには感謝してる。これからもお二人のことを応援し続けられるからね。

 だけど、わざわざ私がやりました! みたいな痕は残さなくても良かっただろうにッ! 生産者じゃないんだぞッ! 嫌がらせか? 無茶をした私をした嫌がらせか? そのせいでこっちは同級生から変な目で見られているんだァ!

 

 ……まぁ、顔に出なくて良かった。

 それだけはアメノムラクモに感謝している。生きているのも、このお腹の聖遺物におかげだから。

 んで。

 

「んにゃーッ! どうして売り切れているんですかぁー!」

 

 近くのCDショップで絶叫。

 今日はツヴァイウィングのお二人が新曲を出したので、それを買いに来ている。限定版は既に確保済みだけど、ファンたるもの限定版と通常版両方買わなくてどうするか。行きつけのこのショップで買えないなら既に望み薄なのでは……。

 しかも今回も初回特典付きッ!

 そんなのすぐ無くなってしまうに決まっているッ! 

 

 なんて考えも、すぐに消し去る。

 ならば他の場所に回れば良い。何のために私は足が生えてるんじゃい! ショップを飛びだし、走る。電車やバスに乗るの時間さえ勿体なくて、ただひたすらに駆け続ける。こういう時にいつもの訓練で培われたスタミナが役に立つッ!

 そのままの勢いで近場のショップを網羅、だけども運命を私を嫌っているようでどこも全部売り切れてる。ならばどこまでもーッ!

 

 そんなわけで都会を駆け回ること、一時間。

 ようやく見つけたッ! 残り一個しかなかったツヴァイウィングの最新CD、店頭から見易い場所におかれている。

 これで、これでようやく──

 

 ──コツン。

 

 側から伸びてくるもう一つの手がぶつかって、思わず腕を引っ込めてしまい身構える。翼さんのおかげで身に付いた動作で警戒体制をとると、ぶつかった手の正体に気が付き思わず声が出た。

 

「ご、ごめんなさいッ!」

 

 頭をペコリと下げて謝る、リディアン制服の女の子。

 オレンジよりの黄色い髪の毛先に癖がある子だ。間違いない、この子は二年前のライブの時に見たことがある。名前は知らないけど知ってる子だ。

 この子も私と同じリディアンに入ったところを見ると、歌に精通した人なのでしょうか。個人的には、メチャクチャ体育会系だと思ってました。

 

「ね、ねぇ君、二年前のライブで居た子ですよね」

 

「ああーッ! 奏さんのことをおすすめしてくれた人だッ! ずっと会いたかったんですよぉ! こんなところで会えるなんて運命感じちゃいますッ!」

 

「やっぱりあの子だ。良かったぁ、生きててくれたんですね……。本当に良かったです……」

 

 感極まって、思わず抱き締めてしまう。

 悲劇、なんかでまとめて良いのか困ってしまうほどの事件でも、あの中で私が守れた人がこうして元気に生きているなら、現二課職員としてとっても嬉しいこと。

 まぁ、私もシンフォギア、というか聖遺物装者ですからね。未熟ですがたった一人でも人命救助が出来たのなら満足です。

 

 さて、それはさておき。

 

「それで何ですけど、ここにいて手がぶつかったということはあなたもツヴァイウィングのCD目的ですね?」

 

「はいッ!」

 

「私もそうなのです。昔からツヴァイウィングの大ファンでして、これを買えば限定版と通常版が揃うのです。

 同じファンが同じものを買いたいとき、どうするかはあなたも分かりますね?」

 

 女の子も、頷いてくれる。

 ならば道はひとーつッ!!

 

「「うーらみっこなしよッ! じゃんけん──」」

 

 

 

 

 

「やったー!! 奏さんと翼さんのCDだー!」

 

「私が、負けた……?

 愛が、愛が足りないというのかッ!?」

 

 私はグーで彼女はパー、ものの見事に敗北した。

 私がわざとらしく膝をついている隣で、女の子はCDをレジに持っていった。とは言え、今回は負けたけどそこまで悔しくはない。

 というのも、お二人のCDを買うためにここまで来て、私との勝負に勝ちあんなに喜んでいるんだ。あの姿はツヴァイウィングのCDを初めて買った中学生の私を思い出して、思わず感慨に耽ってしまい悔しさがない。

 

 ここは、私が退こう。

 もっとツヴァイウィングの沼にはまってもらわないと。

 逃がさないよ?

 

「それにしてもスゴい喜びようですね。そんなに欲しかったんですか?」

 

「はい、勧められてからはもうずっと! あのライブは、色々な意味で転換点なんです。嫌なこともあったけど、それ以上に素敵なものを見れましたからッ!」

 

 キラキラッと輝くような笑顔に思わず顔がにやける。

 この人の笑顔、中々に人を惹き付けるおそろしいものがあるな。かわいいが過ぎるぞ……。

 

 目的の物を手に入れた女の子を連れて、私はCDショップから出る。

 

「あの、ずっと聞きたいことがあったんですけど」

 

「んー? 何です?」

 

「体に巻いてる包帯って……あっ! も、もし答えたくないことならき、気にしないでくださいッ! 人には答えたくないことの一つや二つはあるものですからッ!」

 

「あーこれですか。まぁそうですね。二年前のライブで負ったものです。でもそんな悲壮的なヤツとかでもないですから。ちょーっと痕になっちゃっただけです」

 

 努めて、努めて笑顔で答える。

 ただ、やっぱり二年前の話は暗くなりがち。止めよう。

 

 横断歩道を渡って、最寄りの駅まで。

 ここからリディアンの寮までは少し遠い。ダッシュで行けば一時間弱、電車で四十分ほど。あんまり変わらないかもしれないけど、疲労の溜まり方が違う。

 それに、女の子の方は走れるとは限りませんからね。

 

 ……さっきから感じること嫌な感じは何だ?

 肌がひりつくような、お腹の聖遺物がピコピコと反応している不快な感じだ。

 

「……」

 

「どうか、したんですか?」

 

「あーいえちょっとだけね。体質的なもので──」

 

 ふわりと舞う……黒い塵……。

 アメノムラクモがカタカタと動き出して気持ち悪い。

 だけどこの子が私の危険を察知してくれて、前方から歩いてくるカラフルな人型とオタマジャクシのような姿をした奴ら──ノイズだッ!

 

「あ、あれって……」

 

「シェルターまで逃げますよッ!!」

 

 女の子の手首を掴み一気に走り出す。

 どうせカバンの中には入っているのなんて教科書ぐらいなもの。こんなもの持ちながらだと走りにくくて敵わない。今はともかくこの場から早く離れることが最優先だ。

 ここから最寄りのシェルターは結構遠い。

 ともかく、ともかく早く──

 

(何でこんなところに迷子が!?)

 

 道路のど真ん中、逃げ遅れた小さな子が泣いていた。

 あんなところに居る子を見逃すわけにもいかず、踵を返しそうとした時。

 

「ッ!」

 

「あ、ちょっと!」

 

 女の子が泣いている子の所まで向かってしまう。

 助けたいのは分かりますけど無茶はしないでってばッ!

 

「大丈夫ッ!? 怪我してないッ!?」

 

「ママとはぐれちゃったぁ……」

 

「分かった。でも、今は逃げようッ!」

 

「まったくもうッ! 自殺願望でもあるんですかッ!?」

 

「でも、この子が危なかったから──」

 

 喧嘩なんてしてる暇なんてなく、こうしている間にもノイズはどんどん距離を詰めてきている。二人を守りながらなんて私には出来る気がしないが、それでもやるしかない。

 小さな子は女の子に背負ってもらって、私は先行偵察。走った先にノイズだらけなんて洒落にもならない。

 とにかく走る。

 狭い路地を抜けてシェルターへの道へ戻ろうとしても、それを遮るようにノイズに先回りされている。

 沸きすぎでしょうがッ!!

 

 しまいには上から奇襲されて川に三人で飛び込む始末。

 途中女の子が倒れてしまい、小さな子を私が左腕で抱きかかえながら女の子に右肩を貸す。だんだんと私たちを追い詰める包囲網が一気に狭まってきて、悪手と知りながらもハシゴで建物の上に逃げるしかなかった。

 何分も登り続けて、ようやく屋上に。

 

 ダメです、ムリです、走れません。

 仰向けに倒れながら乱れた呼吸を必死に整えようとする。

 あんだけ走ったらいくら鍛えていてもムリ。

 疲れすぎて死ぬぅ~……

 

「もう、私たちダメなのかな……」

 

「大丈夫、きっとなんとかなるよ」

 

 小さな子が弱気を言い始めてしまって、それを励ましてくれる女の子。それだけでも私の心のもちようはかなり違う。

 というか、私にはそれだけの余裕がない。

 

 だけど、そんな私たちに止めを刺すように。

 いつの間にか溢れていたノイズどもが、屋上いっぱいに溢れていた。

 

「後ろに下がってッ!」

 

 体を起こし二人の前に立ちはだかるように。

 せめてこの二人だけでも守らなければ。

 最悪の場合、弦十郎さんから使用厳禁と言いつけられてしまったお腹のアメノムラクモを運用してでも、この場を……。

 

 そんな私の決意を嗤うように。

 

 

 

 

 

 ──Balwisyall Nescell gungnir tron──

 

 歌が響いた。

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