ツヴァイウィング大好き娘、追っかけ続けて装者になる   作:わらぶく

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少女は何とか生き延びる

「ノイズ多数出現。付近にアヤメちゃんの反応も確認しましたッ!」

 

「何だとぉッ!?」

 

 リディアン音楽院地下深く。

 まるで木の根のように根差した特異災害機動対策二課の司令室には緊張が走っていた。

 オペレーターである藤尭朔也(ふじたかさくや)友里(ともさと)あおいが司令室前方のスクリーンに映像を転送する。そこには小さい子とリディアンの制服を着た少女を必死に避難させるアヤメの姿があった。

 現場のマップに映る無数の反応。それらすべてはノイズである。

 

 弦十郎は危機感を覚えていた。

 この状況、もし最悪の場合となればアヤメは間違いなくアメノムラクモを起動するだろうと確信している。正式な二課の職員となってまだ半年なれど、アヤメには覚悟があった。特に奏と翼の二人、ツヴァイウィングのことになれば尚更だ。

 

「奏に連絡はッ!」

 

「取りましたが三十分以上はかかる見込みです!

 翼さんも最短で十分以上! それまでアヤメちゃんが逃げ延びるかどうかは……!」

 

「くそ……ッ!」

 

 ノイズの反応は、まるで惹かれているかのようにアヤメへ向かっていく。

 やはり民間人を連れての避難は厳しいようだ。それに加えてノイズの奇異な行動。

 お腹の中に聖遺物があるとしても、それを使えば彼女の体がどうなるかわからない。二年前がいい例だ。あのような怪我をもう一度すれば、どうなるか分かったものではないのだ。

 

 それを彼女も理解しているからこそ、こうして使わずに逃げてくれている。

 

「アヤメくんとの連絡は取れないのかッ!?」

 

「それが、コールしても応答がありません。無線が故障中か、アヤメちゃんが身につけていない可能性がありますッ!」

 

「学院で外したままだったか……!」

 

 唇を噛みながら、悩む。

 残り十分、それまで絶対に逃げ延びるという確証がない。

 そうすれば彼女たちを避難させられるか。それだけが頭を悩ませる種だ。

 

「ッ!? アヤメちゃんのすぐ側で大きなエネルギー反応を検知!」

 

「これって、まさかアウフヴァッヘン波形ッ!?」

 

 突如として発生した反応にオペレーターの友里はもちろん、同席していた了子も反応する。

 モニターに写されたのは特殊な形をした波形だ。見る人が見ればすぐに分かるもの。

 だが、システムは波形を識別し、誰にでも分かりやすい形で表示してくれる。

 『ガングニール』と。

 

「ガングニールだとぉッ!?」

 

 

 

 

 

「え、えー!? な、何これー!?」

 

 確かに聞いた、奏さん似の聖詠。

 振り返ってみれば、そこにいたのはシンフォギアを纏った女の子だった。しかもこれは、反応からして奏さんと同じガングニール。

 もしかして、盾になった時に突き刺さったやつが……?

 

(考えてる場合じゃない……)

「君、シンフォギアを纏えるならこの場を切り抜けられますねッ!」

 

「へっ!?」

 

「戦い方が分からなくても、その女の子を守れる力はありますッ!

 さぁ跳んでッ! ジャンプですよッ!」

 

「は、はいッ!」

 

 私が急かしてすぐ、彼女は小さい子を抱きかかえて人並外れた跳躍を披露する。物凄い悲鳴を上げて飛んでいったけど、あの子なら守り切れると信じている。

 なんたって、ノイズに追われてる時に迷子を助けようとするぐらいには、人助けが助けられそうだからね。今はとこかくこっち、私はまだノイズに囲まれたままだ。何とか逃げたいけど、悠長に梯子を下りることは出来ない。

 

 ……やるかッ!

 

「死ぬとしてもぉッ! 可能性がある方に飛んでやるんだぁッ!

 ダァァァァッ!」

 

 ノイズが走ってくるのを横目に、私は屋上から思いっきり飛ぶ。

 飛び込んで来てたノイズが制服の上着をかすって塵になっていくが、当の私は無事ッ!

 だけど、もちろん私の体は地上へと真っ逆さま。このまま落ちたら間違いなく死ぬ。だけどノイズに触れられて散るよりは絶対にマシ。

 それにノイズが出たってことは、間違いなくお二人もやって──

 

「ぐえっ」

 

 全身がいきなり上に引っ張り上げられるような感覚に、カエルのような呻き声が出る。

 意識が持っていかれそうになったけど、そこは何とか持ちこたえた。襟元をみれば銀と青の刀が刺さっていて、私の体は地面に激突する寸前で止まっていた。いやほんと、あと一秒でも遅かったら激突死だった。

 ということはやっぱり来てくれたんだ。

 

 空を舞う翼さんの姿。

 向かう先は女の子が飛んでいった方向だ。

 

「大丈夫ですかッ!」

 

「はひぃ……もう動けませぇん……」

 

 迎えに来てくれたエージェントの緒川さんに精一杯の笑顔を振りまいて、私のその場に座り込む。これ以上は流石に動けない。これでまた走れなんて言われたら、私は間違いなく諦めるだろう。

 

 ともかく、私は緒川さんの案内で黒い車の中に乗った。中には護衛の黒服さんたちが居て、私に何も起きないようにと周囲を見張ってくれているみたいだ。

 緒川さんは、翼さんの方へと応援しに行くらしい。

 私が車のシートで死んでいると、隣を座る黒服さんが無線機を渡してきた。

 

「司令より連絡の方が」

 

「うぇっ? 私にですか?」

 

 聞いてみれば、頷かれてしまった。

 

「弦十郎さんから、いったい何か……。あーあー、もしもしアヤメです」

 

『アヤメくん、そちらは何とか無事のようだな』

 

「はい、こちらは何とか無事でした。いやぁ、流石に死ぬかと思いましたよ。あの、私と一緒に避難していた女の子たちが居たんですけど、そっちの方はどうなりました?」

 

『彼女たちは翼が介入したこともあって無事だ。アヤメくんが一緒に避難させていたから生存することが出来たと言えるだろう。よくやった』

 

「良かった。もうクタクタです……出来ればちょっとひと眠りさせてもらえると嬉しいんですけど……」

 

『その前に、俺は君を叱責しなければならない立場なのでな』

 

 ……ん? 何か怒られるようなことをしたのか、私は?

 

『君に持たせていた無線。どこにやったんだ?』

 

「……あ」

 

 言われてはじめて気付くほど、私はすっかり忘れていた。

 あの時投げ捨てたカバン、学校生活では使えないからとカバンにしまっていたのが仇になったみたいだ。とは言ってもあんな状況で悠長にカバン覗いてられないし、次からはポケットか何かに入れておこう。

 

「すみません……」

 

『今回は助かったから良いものの、次からは絶対に忘れないように頼むぞ。

 こちらから何も手助けできなくなるからな』

 

「分かりました。繰り返しすみません、変な心配をかけてしまって」

 

『反省してくれたなら良い。無事に帰ってくるのを待っているぞ。ちょうど翼の方も終わったようだ。今日は君にも行った歓迎会が開催される予定になっている。新たな適合者だからな』

 

「なるほど、それは早く帰らないといけないですね」

 

 無線を切り、黒服さんに「着いたら起こして」とだけ伝えて私は目を瞑った。

 今日は酷く疲れた。歓迎会ではしゃぐ為にも、今は体力回復しなければ……。

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