予告編と内容が違うのは仕方ありません、人間だもの。
作者は嘘を付くのではありません、間違いが多いだけなのです。
Sさんと兵藤家
日本は多神教の神道、という宗教がある。
八百万の神と呼ばれる者が存在し、それは様々な者に宿っていて使い古した道具には魂が宿るとされ、一般的には付喪神と呼ばれる。
そういった考えが根付いていたことで人々は自然の恵みを古来より神から与えられたものだ、と自然の中に“神”を見出した。
しかし、なにも神は一神教のとこでいう“絶対的で全てを救う存在”だと思われているわけじゃあない。
嵐を巻き起こすのは神が怒っているからとされ、その側面を俺達は
反対に前述したように自然の恵みを齎す、その側面を俺達は
「……うん?玄関の前に何故に赤ん坊が」
最近、一人息子が一歳になった
学生時代に見に行った地球で育った超人がスーパーパワー片手に敵をばったばった薙ぎ払う、そんなストーリーだったと思う。もちろん、普通のサラリーマンとして働いて家族を養っている所謂、誠一郎は普通の男だ。
しかし、そんな誠一郎は普通ならば赤ん坊を放って置きそうなものだが放っておくほど誠一郎は冷たい人間ではなかった。
むしろ、『お人好し』に分類されて強い意思を持つ珍しいタイプだった。家族が出来る前から既に熱い部分を秘めていた誠一郎は息子が生まれたことでより強くなり、この赤ん坊の親が名乗り出るまでは息子同然に育てようと決めた。
時間ももう遅いし、この赤ん坊の親を探すのはまた翌日からでもいいだろう。赤ん坊を抱きかかえた誠一郎はインターホンを押して扉を開けて、愛する家族が待っている自宅に入る。
「おかえりなさい、そろそろ帰ってくると思っていたわ」
「ただいま、母さん、玄関前に赤ん坊が置いてあったんだが」
「……」
誠一郎の妻、美奈子はしばらく誠一郎が抱きかかえている赤ん坊と誠一郎の顔を交互に見つめる。
誠一郎の隠し子だとか、それとも人の良さから誰かに面倒事を押し付けられたのか、と色々な可能性を模索する。端正な顔立ちは北欧風の雰囲気が滲み、瞳の色からして日本人ではないのが分かる。赤ん坊を包み込む毛布はまるで“家紋”のように逆三角形にSをあしらった紋章がある。
現代日本では家柄だとかについてはすっかり一部の地域を除けば珍しくなっているので、おそらく海外で生まれたのだろう、と美奈子は考える。
それに下手に玄関で騒ぎ立てて、深夜に変な噂を立てるのも賢明ではないと判断したのもある。
そして御人よしの旦那のことだ、見知らぬ人間でも平然と救いの手を差し伸べるのは老若男女変わらないのは付き合い始めた頃から知っていたけれども、それが旦那の腕の中にいる息子と変わらないくらいの年齢の赤ん坊も範囲内にあるとは知らなかった。
「……時間も時間だし、明日、警察に届けに行きましょう。この子の両親が探しているかもしれないわ」
「流石だな、話が分かるようで助かるよ」
けれど、そんな旦那の無茶も人懐こい笑顔を浮かべられれば許してしまう。
惚れた弱み、と言えば、それまでだろうが息子には誠一郎ほどにお節介に育たなくとも、せめて『一途で誠実であるように』と願いを込めて『
「普通の人より優しいのがいいところだけど、それが短所かもしれないわね。そう思うでしょう?」
坊や、とクタクタに疲れた旦那から赤ん坊を受け取って息子は夫婦の寝室で一緒に眠っているので使われていないベビーベッドに寝かせる。
寝顔は安らかで何かよい夢でも見ているんだろう、と美奈子は予想する。詳しくは日が昇ってから悩むとして一時的に兵藤家で暮らすことになった名前のない赤ん坊が快適に暮らせるように、と誠一郎のようなお人好しを無意識に発動させる。
住宅街近隣の場所。
兵藤誠一郎が玄関前で逆三角形の中にSを象った紋章が入った毛布に包んだ、赤ん坊を見つけたときにオレはすぐに身を隠した。
この近隣ではオレのように古墳時代の日本人が着用してそうなものを着た人間はいないし、今の時代ではオレの服装は時代遅れだ。
一歩間違えればカルト集団に所属している、という偏見を凭れて怪しまれて人間世界における「ケーサツ」とやらに通報されることを踏まえればギャング風のブラックスーツの方が怪しまれないものだ。
風俗で働いているかのような、“いかにも”な服装は深夜の時間帯で「こんびに」とやらで綺麗な包装紙で握り飯と『ぺっとぼとる』という瓢箪より使い勝手の良い瓶のような物に入った茶を購入した際に「こんびに」で職務に従事する人間にオレの職業を探るような視線を送られたが、まぁ特に気にする必要はないだろう。
「兵藤誠一郎か」
それなりと言えばそれまでだが、良い給料を得て一歳になる息子の一誠と妻の美奈子と三人暮らしの男性。
近眼で眼鏡をかけており、学生時代から人が良く周囲から厚い信頼を受けていたという。
現在の職場でも上司にこっぴどく罵られても部下のフォローをし、安い小遣い(おそらく美奈子なる妻に尻に敷かれているんだろう)にもかかわらず、部下の昇進祝いを奢ろうとする気前の良い人物らしい。
オレの姉貴から借りた、見晴らしの
「奇妙な船の近くで鳴いていた、あのクソガキ。アイツはどうやって兵藤誠一郎と兵藤美奈子の人生を変えちまうんだろうな」
オレと姉貴と兄貴が生まれ、人間が此処まで繁栄させた父上と母上が造った国・日ノ本。
そんなオレにとっては故郷と言える土地に流れ着いてきたクソガキはどうやら、悪運が強いようだ。他国ならば奇妙な宇宙船のようなモノで飛来してきた、クソガキは
玄関の近くの寝室から感じた、大きな力を内蔵した幼児の魂の鼓動。その持ち主とは兵藤誠一郎と兵藤美奈子の一歳になる、一人息子の一誠のものだろう。海を越えた土地では一誠の宿す
一神教の信徒共は龍を迫害するが、むしろオレにとってはお前らが哀れでならない。神聖で美しい
この気配だと恐らく、あの赤い龍王・ドライグの
異なる惑星の船に乗ってやってきた、クソガキの力は底知れないものを感じ、力の源泉はオレ等に通じるものがある。クソガキの力と同等のものでクソガキと肩を並べて立てるのは同じ力を持つ、クソガキにとっての義兄弟に当たる兵藤一誠くらいだろうか。
他のドラゴン系の神器の所有者では血縁関係くらいなきゃ、相手にもされんだろうし、そもそも基礎としての能力からクソガキは敵視されると見た。
旧魔王のルシファーの血筋の白龍皇の所持者のガキん家の前に置いてやろうと思ったが、どうも、あの悪魔という奴らは好かん。
この駒王の土地を、日ノ本を今の人間の言葉では『ニホン』と呼ばれる我が国を自らの縄張りとしてやがる。
姉上は無介入を貫き通し、兄貴はなんッにもいわねーが、んな風にのらりくらりとしてっから他の種族にハバ利かせやがられんだ。
「……てめえが一番イイ環境に行けるようにしてやったんだ、オレになんか寄越せよな。
『TAKAMAGAHARA』印のキセルを咥え、紫煙を拭かせながらぷはーっ、とリング状の煙をふかす。
さて、こんなにウロチョロしていちゃあ、夜の世界を担当しているツクヨミ兄貴にまーた五月蝿ェこと言われんのは面倒臭ェからな。
ーー正士郎ゥゥゥゥゥ!兄ちゃんはお前が好きだアア!
ーーセイシロー、私の腕の中に飛び込んできてもいいにゃん?
ーーセイシローさん、よかったら私と、その……。
ほらよ、てめえには明るい未来が待ってんじゃねーか。
そして改めて、我が国・日ノ本へようこそ。