キスショット、イリナ、ロスヴァイセ、ソーナ、黒歌ならしーくんのヒロインになれそうな気がしてきました。
ただ、ソーナは上級悪魔の生まれと言う以上、しーくん攻略は難しいですね。
フェニックス家三男のライザーをフェニックス家に送還した後日、タケハヤはフェニックス卿と面会していた。
悪魔を嫌悪する正士郎には言えないことだが、タケハヤの仕事の関係上、フェニックス郷と面会することがある。
人間界、冥界、そして高天ヶ原の全ての流通の頂点にあるタケハヤの仕事は流通関係を独占している。
フェニックス家を潤す、万能回復アイテムの“フェニックスの涙”の流通をタケハヤが行なっていることでフェニックス家の生命線はタケハヤの手にあるのも同然である。
「この度は実に申し訳ないことをしてしまったな、タケハヤ殿」
「そうかい、そう思うんなら、もうちょっと報酬の値段を上げろよな、ゴルァ」
立場上、フェニックス家がタケハヤに頼み込んでいる立場なのでタケハヤはこのような態度をとるのも許されている。
風と炎を司る、フェニックスの性質は荒れ荒ぶ嵐の神・タケハヤスサノオの性質を見抜いていたのでフェニックス卿は常にタケハヤスサノオに粗相がない様に、と気をつけていた。
いわば自分たちにとっては首領も同等の存在、上下関係がハッキリしている悪魔の世界において、インド神話の帝釈天ことインドラよりもなお、気をつけなければならない存在として常に萎縮していた。
ぴっちりしたスーツを着こなすフェニックス郷と違い、タケハヤは上半身全裸にアロハシャツにハーフパンツ、そしてサンダルと言った非常にラフな服装でごろつきの如き雰囲気を漂わせ、傍らにはタケハヤと正反対にスーツを着こなす秘書の姿がある。
「さすがにこれ以上、報酬を上げるとなるとキツイのですが……」
「ああん?謝罪しよう、って気持ちがあるんなら容易いはずだ。オレの憩いの時をぶち壊し、あまつさえオレの
タケハヤの申し出はフェニックス家にとって、実に重荷となるものだった。
フェニックス卿こと、トワイライト・フェニックスは自らの不甲斐なさに奥歯を噛み締める。
先の戦争の際に顔を見せず、引きこもっていただけの神のいる辺境の国のトップの三人のうちの一人、それがタケハヤスサノオ。
この男にとって、悪魔や堕天使、そして天使は何の価値もないのだろう。いつだったか、グレモリー郷と謁見した際に高天ヶ原側の話題が出ることがあったが、タケハヤスサノオは現魔王のサーゼクス・ルシファーを赤毛坊主と呼び、どんな頼みも全て断り、一方的な要求を飲ませたという。
サーゼクスの妹のリアス・グレモリーの眷属として身分を庇護されていた、猫又の塔城小猫を「羽虫には任せられない」という理由だけで『奪い取った』ようなものだ。
今後、リアス・グレモリーと自身の三男の結婚が控えている以上、これ以上、その三男に辛い思いをさせたくなかったが、魔王と言えども公務としてではなく、ただプライベートでタケハヤスサノオと面会したルシファーは何を考えているのだろう?
「タ、タケハヤ殿……」
「ああん?どうした、ついにフェニックス家の資産のうち九割をくれるつもりになったか?おっと、勘違いしてもらっちゃ困るぜ、焼き鳥オヤジ。表向きでは、オレのところに『資金援助』もスポンサーとして扱っていることになっている。今回のてめーの息子のライザー、そいつのサーゼクスの野郎との勝手な行動を黙ってやるかわりに財産寄越せ、と言うんだ。ストレートでいいだろう?あとはそうだな、ライザーとグレモリーのところの小娘の婚約を破棄してもらおうか。理由?一つだ。『オレの機嫌を損ねた』」
「い、いえっ!ち、違います!実は私に案があるのです……」
ここはフェニックス家の人間界にある、とあるビル。
駒王学園周辺はグレモリー家の領地であるので、おおっぴらな行動が出来ない。
魔王になれば出身の家を継げなくなるが、関係はなくなるわけではない。事実、グレモリー家はサーゼクスが魔王となったことで高い地位を獲得している。
「……ほう?」
フェニックス卿の予想外の申し出にタケハヤは目を細める。“父”というものには良い記憶のないタケハヤはフェニックス卿の考えを値踏みするようであった。父・イザナギのような融通の利かない父にはならない、と固く心に誓ったタケハヤだったが、本人が気づかないだけでタケハヤ自身は自分が思っている以上に融通が利かないようになっていた。
ただ、正士郎を愛でる時はまた別である。
追い込まれた不死鳥はどのようにして舞い戻るのか、とタケハヤは楽しそうに口元をゆがめ、足を組んでフェニックス卿の出方を窺うこととする。
「そういえば、アーシアさん」
「はい、なんでしょう?正士郎さん」
ある日の平日のこと、朝食の前に白音と一誠がランニングに出かけている間、アーシアは正士郎や白音らのために朝食を作っていた。
目を擦りながら、『S』のエンブレムの入ったバンダナのようなモノを手首にくくり、洗顔して歯磨きをした後もなお、アンニュイな表情は変わらない。
テーブルに朝食を並べ終え、先に食べてしまいましょうか、というアーシアの誘いに乗って二人で朝食を摂っているときだった。
「アーシアさんは僕のことは呼び捨てでいいと思います」
「えっ、でも……」
アーシアは白音や一誠が正士郎を「しーくん」と呼ぶのをよく聞くが、なかなか自分からでは正士郎を呼び捨てにしたりだとか、『にっくねーむ』とやらで呼ぶのは慣れなかった。
環境が環境で、自分より年下の少年と関わることが少なかったアーシアはそもそも同年代と接する事が今までなかったのが大きい。
「別にさん付けが嫌なわけじゃないけど、年上にさん付けはきついかなと」
「じゃあ、なんとお呼びすればいいですか?」
「それは……」
理由を語り、アーシアはきょとんとしたようで首を傾げる。金髪美少女が首をかしげるのは絵になっており、キスショットに「のらいぬ」呼ばわりされるのが気に入らなかったので、その際は「しーくん」と名乗ったものの、自分から率先して「しーくん」と名乗るのは納得できないものがあった。
「僕のことは、呼び捨てでいいとおもう。丁寧に呼んでくれるのは嬉しいけどね」
「では、セイシロウ。私のことはおねえちゃん、と呼んでくださいますか?」
「!?」
そのとき正士郎に衝撃が走る、いや電流が走る。アーシアがごくナチュラルになんの躊躇いもなく名を呼んでくれたのはアーシアが優しいからだ、と正士郎は納得することにしたが、白音や一誠をはじめ、タケハヤが最初に呼んだ『しーくん』と呼ばれなかったのは幸いだが、ここでまさかの爆弾発言。
キスショットをはじめ、金髪女性は『おねえちゃん』と呼ばれたがるんだろうか、と偏見に襲われそうになったが、アーシアの癒される笑顔を前にして断れるほど正士郎は非情はなれなかった。
「……ハイ、おねえちゃん」
「はぅっ!セイシロウ、おかわりはもっとありますからね!」
何故か正士郎がアーシアを『おねえちゃん』と呼ぶと、アーシアは正士郎の手を握り、茶碗をとっていって大きく白飯を盛り始めた。
年上の女性に優しくされたのは一誠の母の美奈子くらいで、キスショットは年上にカウントすればいいか分からない。
アマテラスは確かによくしてくれるが、神々しくてあまりにも近寄りがたかった。
けれど、不思議と心は温かかった。
☆☆☆
トワイライト・フェニックスは決断を迫られていた。
タケハヤスサノオという男はあまりにも横暴で、気に入ったものはそれこそ、兵藤正士郎という少年のように大切にするが、一度でも『敵』と断じた者に対しては凄まじいまでの怒りをぶつける。
激しいほど性格が変わりやすく、それでいて激情家である。
息子のライザーとグレモリー家のリアス嬢との婚約を解消するだけで、フェニックス家が護れるのならばどうってこともない。
「父上、あの話は本当だったんですか?」
「ああ!ライザー、お前とサーゼクス・ルシファーの勝手な行動でフェニックス家が傾いたぞ!?お前、サーゼクスに自分からついていったのではあるまいな?」
トワイライトはライザーを書斎に呼び寄せ、自分は回転椅子に座って書類の積まれたデスクを人差し指でとんとんと打ちつけ、雰囲気は非常にイライラしているように見受けられ、ライザーはトワイライトのその様子を幼い頃から見たことがある。
上の二人の兄は期待されているからか、よく叱られているのを見かけた。
鍛錬せずとも一族の力を得ることが出来た、ライザーはトワイライトに叱られることなく育ち、今の横暴な性格に育ったのだが、ここまで父親が自分に対して怒っているのははじめてかもしれない。
「はい、オレがタケハヤスサノオとはどのような人物であるかを見てやろう、と思いましてね。なに、辺境の島国の神でしょう?粗暴で品がなく、野蛮人のようでしたよ。これでは下級悪魔のほうがマシですね、オレに対する礼儀がなかった」
ライザーは己の見たこと・感じたことをそのまま素直に率直に伝える。幼い頃からライザーは思ったことを言えばなんでも手に入る環境に育ったのもあり、屋敷内はともかく、両親に遠慮したことはなかった。
「馬鹿者!あの方をそのように呼んではならん!」
「父上、今日はどうなされたのです?『フェニックス一族たるもの、炎のように堂々と燃えてあれ』と仰っているのに……」
「ライザー、お前は分かっておらぬ。あのお方は絶対に怒らせてはならん、グレモリー卿やそのご子息のサーゼクス・ルシファーはタケハヤスサノオ、そして高天ヶ原の頂点に君臨し、あの辺境の島国を主に統括するアマテラス殿をどう思っておるかはわからぬが、高天ヶ原の神々が仮にタケハヤスサノオのようなものがいるならば、お前は行動を慎まなければなるまい」
ライザーには分からなかった。あの強く大きな背中をしていた、この父がどうして震えているのかを。辺境の島国の神々はおそるるに足らず、と思っていたこととヴァジュラを所有するインドラならばまだしも、あの無礼な言葉を放ったタケハヤスサノオのことはどうも好きになれそうになかったのだ。
タケハヤ自身もライザーを嫌っているようだし、互いに嫌い遭っているならば、どんな対応をしてもかまわない、とライザーは思っている。
それも、相手が悪魔ではないならば余計にだ。パーティーでは好青年を演じるライザーは、それが顕著であった。
「タケハヤスサノオに何を要求されたのです?」
「……そういえば、フェニックスを継ぐのはお前であったな、ライザー。ならば話しておかねばなるまい、タケハヤ殿から提示された条件はーー」
「条件は?」
「ーーフェニックス家の資産のうち、九割だ」
「それじゃあ、全部じゃないですか!」
ライザーの中でタケハヤスサノオへの憎悪が膨れ上がる。部屋内で目を覚ました際にはすでに財布の中身はカラッポになっていたし、魔王を目の前にしてもあの口を叩くことができる傲岸不遜さ。
あのあと、サーゼクスとグレイフィアとともに夕食を摂った際にサーゼクスはライザーに謝罪をしたがライザーはサーゼクスからの謝罪を快く受け入れた。
あのタケハヤの知人であるという、あの少年には悪いが、タケハヤスサノオからの謝罪を受け、そして条件の撤回をしなければ腹の虫がおさまらない。
「父上、お願いがあります」
「……なにかね?もう部屋を出て行ってくれると嬉しいのだが……」
ライザーは大きく深呼吸をし、そして息を吐く。
これから父に対して言うのは、おそらく無謀な決断として切り捨てられることとなるだろう。
しかし、ここで決断を露にしなければ、フェニックス一族は絶えてしまうだろう。
「オレは誇り高きフェニックスの炎と風、両方を受け継ぐ者としてタケハヤスサノオにレーティングゲームを挑みます」
「ラ、ライザー!?正気か!?」
「もちろん、オレは正気ですよ。レーティングゲームならば、向こうも条件を吞んでくれるでしょう」
「……」
フェニックス卿は無駄に自信に満ち溢れている、ライザーに何もいえなかった。どうせ、家の財産を九割も持っていかれるほどにタケハヤの逆鱗に触れてしまったというならば、いまさら、なにをしてもいいはずだ。
牙を剥かないより剥いて後悔したほうがマシ、とフェニックス卿は特に反対することもなかったのでライザーのその意思を認めることとした。
「よかろう、タケハヤ殿にかけあってみる」
聞いて分からぬならば身を持って体感するべき、とフェニックス卿ーートワイライトはライザーがいなくなっても別に困ることはない、なにかあれば娘のレイヴェルに家を継がせよう、と考えて三男の願いを了承した。
☆★☆
深く、暗い空間の中で『ソレ』は眠っていた。
思えば太古が昔、あのワカメ小僧によって暗く狭い空間に封じられたことがはじまりだろう。
この国の河川・海の全てを統べる存在でありながらも、どうしてこの大きな肉体を狭い空間に封じられなくてはならないのか?
尻尾に仕込んでおいた、宝剣はワカメ小僧によって武器とされているし、ワカメ小僧の手下の二人のニンゲンの兄弟は片割れが忌々しき赤い龍を宿している。
兄の方は赤い龍を宿し、弟の方は普通の人間とは違う性質と資質を秘めていて、そもそものこと、この国のニンゲンであるかさえ怪しい。
猫又の小娘、黄金の髪をした治癒力を持つ小娘、そしてワカメ小僧の手下の兄弟の弟の方の影にいる自分と『同等のような』存在。
不愉快なまでにこちらに向けられる殺意は強く、よほどワカメ小僧が手塩にかけている弟の方を気に入っているんだろうか?
それに大層な美女のようである、それでいてこちらに牙を剥くならば、それもまた一興といえようか。
赤い龍を宿す兄、普通のニンゲンとは全く違う
ワカメ小僧はこの空間に封じた己を使うつもりはないようだし、ワカメ小僧の手下の白髪の狂気の坊主にも使わせるつもりはないようだ。
白いヤツも、赤いヤツも、全てが憎たらしい。
己の中に吸収し、この中に封じたワカメ小僧とその兄弟すらも飲み込んでやりたい、という欲望が渦巻く。
この力を求めよ、片割れの弟よ。
汝が己の力を求めん、というのならば、いくらでも力を貸してくれてもかまわぬ。
ただ、一つだけ条件を突き出すならば、己はお前の持つ全てを食らい尽くすことを忘れてはならない。
己こそ、この国土の全ての河川・海を支配する最強にして最凶の神霊ぞ。
時が来るまで待ってやろうではないか、己を世界に現界させよ。
我が名はーー
渦によって力を吸い、渦によって力を放出せんとする恐るべき神霊にして、国土に豊穣をもたらさんとする龍と呼ばれる存在ーー