さて、今後の予定です。
・「セイシロウ」繋がりで死々累生死郎とキスショットを取り合う
・さすが赤龍帝、義弟を思う心が違った!
・因縁の相手っているよね、じゃあ出そう!
・今明かされるぅ、衝撃の真実ぅ!
となっております。
可能な限り、この夏はSさんが更新されたらいいなって思ってます。
「……ここでいいですね」
なんてことを呟きながら、白音は正士郎の手首を掴んでバランスをとりつつ社員寮と言う名のアパートの屋根へとやってきた。正士郎としては兄に対して想いを抱いているように見受けられるアーシアと並んで白音もそうであろう、との様子が若干感じ取っていたが、そんな白音に自分へ話があることに面食らった。まさか、こんな風情のある夜空の下でこれから居眠りをして起こさなかったら、商店街にある中華料理店「鋼鉄の男」の炒飯、ラーメン、ギョーザの全てが全て大盛の『黄金コンビ大盛セット』を何人前か奢れ、との宣告が来るのではないかと思えば鳥肌が止まらない。
彼女の健啖家ぶりは休日に食事に行く際だとか、昼食を摂るときに嫌と言うほど見ていた。
「塔城さん、タケハヤ様に『眠りの正士郎』とまで言われた僕と星空観賞は難しいんじゃないかな?」
「……しーくんはおかしなことを言いますね。しーくん、考えてもみてください。大好きな人と二人きりで星を見る。そんな“しちゅえーしょん”でも寝てしまうんですか?」
白音の言葉に
夜空を指差しながら、アレガ、デネブ、と恒星の名前を挙げてくれたのは忘れてしまったけれどよい思い出だ。
あのときの自分は一誠や両親とそこに訪れたが、確かに今の『眠りの正士郎』からは考えられないことだが眠らなかった。そして、いつしか想いは兄の幼馴染の栗色の髪の少女を思い出す。どこか遠いところに引っ越していった彼女だが、『姉』のいない自分にとってはアーシアの前に『おねえちゃん』であった人物であり、同時にーー初恋だった。
「寝ない」
「……言い切るとはさすがしーくん、そこに痺れませんし、全く憧れない」
「塔城さんは手厳しいね」
参ったね、どうもと苦笑いしながら二人して屋根の上に座る。互いに顔を合わせず、夜空を見上げながら星だとか、これまでの短い間に起こったことを思い出す。特殊部隊・『百鬼夜行』の立ち上げからそんなに経っていない間にたくさんのことが起きた。アーシア・アルジェントの加入、未だ暴走するタケハヤの包み込むような愛情……これはいつも通りか。
正士郎にはなかったが、白音にとってフェニックス戦で正士郎が見せた残虐性は目を疑った。
あの様子を見てしまった後だとこうして気まずそうに笑っている表情でさえ、贋物ではないか、と疑ってしまう。寮内ではアーシアと一誠が正士郎に付きっきりというのもあり、聞くなら今しかない。そして、それに矛盾するように『聞いてしまってもいいんだろうか?』との葛藤が白音を襲った。
「何か僕に話したいことあるんじゃなかった?」
「……よく覚えていますね、しーくんの癖に。なまいきです」
そんな白音の考えが見透かされているのか、先に切り出したのは正士郎だった。笑みを拭い、いつもと違って真剣な面持ちの正士郎は義兄である一誠を彷彿されるのもあり、元々、整った顔立ちで若干の西洋の色が混ざっていることから魅惑的に映るだろうが、白音は寸前に堪えた。
フェニックス戦で見せた、ライザー・フェニックス眷属への一方的な『
のんびりとした正士郎という印象よりも、あのときの正士郎は妖しげな色香さえ垣間見られた。
二人は已然として顔を合わせず、また暫くの間、無言の空気が流れる。
「……フェニックス戦の時、」
「その話はしないでくれ、それなら僕は先に戻るよ」
白音が切り出した途端、正士郎は腰を上げた。切り出した本人が放り投げるとはまた自己中心的な行いだが、襤褸雑巾にしたフェニックスに対する憎悪さえ正士郎から見られた。アンニュイな表情は掻き消え、そこには
「……なんで、あんなに早く反応して私とアーシア先輩を護ってくれたんですか?」
それは白音の単純な疑問であった。
猫又と言う妖怪の特性は上司がこの国の、日本の主神クラスの神ならば聞いてそうなもので現に白音の怪力は正士郎に日常生活から見せているし、小柄な身体だからこそ発揮できているスピードならば反応できたはずだ。
実戦レベルの相手であろう、フェニックス戦で見学をするように言われたが、タケハヤからは参戦してはいけない、と言われた覚えはないし、参戦して後で理由を問われた際に理由を話せばいい。
多少の我儘ならば融通は聞かせてくれるだろう、とタケハヤの人柄ならぬ『神』柄を見込んだ上でのこと。
「ああ、あのときのことか。許せなかったんだよ、僕のともだちやねえさんに手を出したのは」
「……」
白音は正士郎の言葉に聞き入った。白音の姉、黒歌と白音が共に二人で生きてきたように正士郎もまたタケハヤが幼少の頃にいなかったときは義兄の一誠と肩を寄せ合って生きてきたのだろう。
どこか通じるものがある二人だが、白音は寂しそうな正士郎の背中にかけられる言葉が見つからなかった。助けてもらった身で、そして兵藤兄弟と共に過ごして時間はまだそんなに経っていない。
今の白音に正士郎の事情に首を突っ込むことはできず、同時に正士郎の様子をどうにかできるはずもなく、できるとするならば正士郎が心から愛した者くらいだろうか。
「……しーくんって変な人。普段の居眠りを起こさないってだけで文句言うくせに、こういうときはちゃんと出来るってなんなんですか?本当に」
「そこはご愛嬌ってことにしておこうよ。……で、これから居眠りをしてたら起こして欲しいな」
「……それより、コンビ二行きましょう。肉まん奢って下さい、しーくんはなまいきです」
話の路線変更を行い、正士郎は身体の震えを押さえつけ、白音の方を振り返った。相変わらずアホ毛が風で揺らめいていて、普段の眠たそうな正士郎を現しているかのようだ。やはり、この同級生の少年にシリアスは似合わない、と感じながら二人してアパートの屋根を降りた。降下した際にまず一誠がしつこく正士郎に理由を尋ねるが、その最中、ずっと白音は正士郎の背中を指で弾いていた。
相変わらず表情は変わる様子が見られなかったが、食事を共にするほどの仲であったので食事を前にした時の白音は目が爛々と輝いている。
ムスッとしたようにも怒っているようにも笑っているようにも見えない、白音が感情を見せているのは仲良くなったような気がして嬉しかったので調子に乗ってしまい、悲劇が起こったのが中華料理店『鋼鉄の男』で起きた事件なのだが。
「僕が生意気なのは昔からだよ。……一応聞くけど、塔城さん。肉まん幾つ買うつもり?」
「……禁則事項です。しーくん、乙女には秘密が多くしかるべきだと思うのですが、そう思いません?」
正士郎に戦慄が走る。
白音が肉まんの数を明確にしない場合、そのとき既に訪れたコンビ二の肉まん形は失われたのも同然。
だが此処で一つ白音の為にフォローを入れておくとすれば、決して正士郎に奢らせるだけ奢らせているだけではないのだ。昼食にたまに何か奢る場合があるが、正士郎が奢る場合が多いのは正士郎が異性に奢らせるのは気分が悪い、と言う立派な理由がある。
シリアスだったはずの先ほどの雰囲気が弾け飛び、柔らかくそして暖かい雰囲気に戻れるのはこの二人にとっての才能だろう。
こうして夜は過ぎていくのだ。
しーくんの身長、知りたい人はいるかな!?