【完】外宇宙生まれのSさん   作:ふくつのこころ

20 / 25
最終章に向けて切って落とされる火蓋


Uブレスレットとクリプトン人

 中華料理店『あわじしま』を経営するヒルコはこれからやってくる“嵐”を予感していた。白髪の見慣れぬ少年、少年が持つ包みから漂う禍々しい雰囲気、そして栗毛の少女とメッシュの少女が持っている包みから感じる神聖な雰囲気。弟や妹とは違う、また別のそれは包みにあるからこそ実害を為していないが小さいときから正士郎を見ているからこそ分かることがあって、その包みから感じる気配は正士郎にとっては「よくないもの」だとすぐに分かったのはこれでも国祖神の女神の兄だと思えば当然のことだろう。母親の化身である分霊に尋ねれば教えてくれるだろうが、やめておこう。下手に手を出すのも粋ではない、たぶん、きっとメイビー。

 

「チャーハン作るよ!」

 

 中華鍋を揺らすのがヒルコには似合ってる、きっとそうさと中華鍋を振る作業に戻るヒルコ。今日も『あわじしま』は大盛況、全部終わったら百鬼夜行に何かおごろうと考えたナイスガイは中華鍋を振る作業に戻ったのだった。

 

※※※

 

 聖剣破壊の任務の日、社員寮に届いたのはTとだけ差出人の方に書かれた手紙があった。嫌な予感がした正士郎は早朝、鳥が囀り朝日が差し込むのはきっとまだ時間が早いからだ。朝のジョギングと称して正士郎と散歩に行く口実を作りたがる兄が起きてくる前に手紙の封を解き、その手紙の内容を確認しようと思った。

『拝啓 TAKAMAGAHARA所属 百鬼夜行 兵藤正士郎様

日々の任務のほうをいかが遂行してるんだか想像はつくぜ、この野郎。今回はこの俺、タケハヤスサノオ様がしーくんに直々に手紙を出してやった。まぁ、しーくんはイッセーと違って物分りのいい子だから大丈夫だろ、大丈夫だ。物分りの良いしーくん、ちゃんとしたらタケハヤスサノオ様はちゃんとボーナス出すイイ男だって知ってるだろ?まぁ、そういうことなんだけれども、今回のミッソンは教会サイドに恩を売りたいと思っている。あいつらは一神教派らしいんで俺達は煙たがられること間違いないんだが、俺が恩を売っておいたので大丈夫だ。幸い、向こうのエクソシストの奴らを社員寮に泊まらせておくことによってウチに不利なことはないようにしておいた。隠密課の奴らの報告によると、どうもしーくんが大好きな女が居るようだな?良かったじゃあないか、上手く行けば抱き込むことができるかもしれねー。今回のお前ら百鬼夜行のミッソンは聖剣の破壊ってのは冒頭だとかディラン・マッケイの小娘の言われたと思う。あと、アーシアたんの悪口をそいつらが言ったらブッ潰してもタケハヤ様許すから大丈夫よ。タケハヤ様はね、自分の部下を悪く言われることが自分のことを悪く言われることの次に大嫌いなんだZE☆

PS.フリードって奴と合流したと思う。そのときにしーくんがもらったであろう、ウルティマブレスレットはしーくんの十六歳のプレゼントだ。また大好きな子にはもらえると思うが、もらえなかったときのためになんやかんやしておいたぜベイベー。ヒルコ兄さんによろぴく言っておいてくんなさい、OK?ずどーん

偉大なるTAKAMAGAHARAの社長で秘書ちゃん大好きなタケハヤスサノオより』

 どうも、この上司と言うのは腹黒いというかエゴイスティックな性格のようだ。百鬼夜行を優先しているようでいて自分の体裁とプライドが何よりも大切な男らしい。他には駒王学園の表の方を護っているらしいソーナ・シトリーがどうのこうのと書いていたが、悪魔には興味がなかった正士郎は破り捨てた。それについて言及している紙もなければ記述もないので万が一の場合はグレモリーに責任を押し付ければいいだろう。悪魔には良い思い出がないのもあるし、魔王の妹だという事実も気にしないに越したことはない。彼らは人間ではないし、正士郎の家族ではない。あくまでこの地を荒らす羽虫でしかないのだ、それは天使も堕天使も同様。レイナーレがタケハヤの秘書になっていることを知らない正士郎、一部を除けば正士郎は身内以外には何の興味も慈悲も持っていなかったのである。

 一応、ウルティマブレスレットと呼称があるのでウルティマブレスレットと呼ぶことにするが、どうも、この武器についての説明がなされていなかったので自分で確かめよ、と経験と体験を主とするタケハヤらしいところだろう。ウルティマブレスレット、ということは自分の脳波で形を変化させると見て問題はない。正士郎が昔見たものと記憶をあわせてみても、ウルティマブレスレットの形状変化については明記されていなかったがウルティマツヴァイなるウルティマブレスレットを劇中ヒーローに与えた者によると、あらゆる敵に勝てる万能武器らしいので大丈夫だろうと。早速、ウルティマブレスレットを正士郎が昔から持っている念力を使って形を変えてみる。ウルティマディフェンダーなる盾に変われ、と念じるとウルティマブレスレットが輝いてウルティマディフェンダーにそっくりな盾(ウルティマディフェンダーだが)に赤と黄色と青の正士郎のカラーを以って変化した。それからウルティマスパークに変われ、と念じると浮遊するカッター状の武器に変化したのでやはりタケハヤスサノオ、あの時期の放送を見て間違いないと思った。

 寝巻き代わりの浴衣姿、そんな正士郎の背後にイリナが回りこむまで時間はかからず。

 

「しーくーん?なぁに、それ?」

「ん?なんだと思う?」

「しーくんの大好きなウルティマンだっけ?そのブレスレットだよね?確かウルティマブレスレットだったと思う、名前」

「正解。よく覚えてるね」

 

 えへへ、と可愛らしく笑うイリナ。格好こそTAKAMAGAHARAの社員ではないので備品の浴衣を着てはいないが、ラフな服装と結わえている髪を下ろしていることもあって印象が変わって見える。タイトなパイロットスーツを思わせる装束を着ていた時に比べれば年相応の少女らしくて可愛らしい反応が初々しく、しばらくはイリナと過ごした。それからイリナが食事の用意をするといって聞かないのでできるだけ人通りの少ない茂みのある庭園でウルティマスパークを制御する鍛錬を行っていた。

 

「……不思議な武器だな、カル=エル」

「誰だ?あんたは」

 

 刃が白熱したウルティマスパークで生垣に囲まれた中、雑草を刈っていると正士郎に似た雰囲気の男が正士郎に声をかけた。筋肉質で黒髪、どことなくイリナ達の戦闘装束に近い服装で正士郎を見定めるようにこちらを見ている。ゆっくりと近づく男と距離を開け、正士郎は聞きなれぬカル=エルという名に眉を潜める。

 

「否、あの地球人の男が付けた名前によれば――今は『兵藤正士郎』か」

「だから、誰だと言ってんだ!」

「感じないか?カル=エル。お前も俺も滅んだ同じ故郷に生まれた同胞であるはず」

「僕は兵藤家の人間じゃないってのは分かってはいるけど、あんたと同じって。そんなのありえないだろ、僕はあんたとは―――ッ!?」

 

 男から感じたのは正士郎の中にある意識、『クリプトン人』としての反応。それに男は笑い、正士郎に手を突き出した。握手でもしようと言うのだろうが、正士郎は見知らぬ人間に手を差し出されたところで握手を返すほど律儀ではない。確かにそういう場でならば仕方なく応じるかもしれないが、どちらかと言えば正士郎は見知らぬ人間には厳しい。ので握手に応じず、むしろ男の手を叩いた。すると、その流れを受け流して男によって背負い投げされ、世界が一転したように見えた。

 

「まだまだだな、カル=エル。お前の父親は学者ではあったが、軍人の俺の攻撃を流せるほどには有能だったよ。やっぱり自然出産でうまれた奴はだめだな。俺はゾッド、クリプトン星の元軍人だ」

「聞いてもないのに名乗るんだな、あんたは」

「もちろん。貴様が今回行おうとしているミッションだって、すでにこちらには筒抜けだ。……ああ、そう身構えるな。お前のそのウルティマブレスレット、制御に不慣れなまま暴発されては敵わん。神が創った道具とあっては、より我々に刃向かうと聞く」

 

 ゾッドと名乗った男は肩を竦めた。正士郎は疑念を抱いた。どうも、ゾッドと言うのはウルティマブレスレットを怖れている節がある。確かに正士郎は魔法系統の攻撃が苦手だ。神器のような超能力染みた攻撃ならば、受け止めることは容易だがフェニックス戦で即時決着を付けたのも魔力が苦手だとバレないようにする為というのがある。ゾッドの口ぶりによれば、ゾッドもまた同様らしい。魔法系を操れないのをタケハヤが汲んでくれたおかげでウルティマブレスレットが今回誕生したといってもいいが、それにしたってウルティマブレスレットをゾッドは怖れすぎだ。地面に伏せたままではカッコがつかないので態勢を立て直し、そしてゾッドと向き直る。通常の人間に比べれば頑健な身体に傷を入れたこと、打撃を与えたことからゾッドが訓練を行った人種だというのは分かった。

 

「だが、疑問がある。お前だ、カル=エル。俺達クリプトン人は魔法のような神聖なものに弱い。それは科学技術を極め、神聖さを否定したとあっては当然のことかもしれん。だからこそ、貴様に問いたい。貴様、どのようにしてウルティマブレスレットを操れる?」

「ウルティマブレスレットを操れる理由だと?そんなのは分からない。僕は度重なる幸運と出会いで手に入れただけだ。とうさん、かあさん、にいちゃん、イリナ姉、ねえさん……。みんなに出会えたんだ」

「わからんな、貴様はッ!」

 

 ゾッドは腑抜けたような正士郎を蹴り飛ばした。そして正士郎の腹部にその足を乗せ、グイグイと圧力を与えている。一誠が見れば荒御魂ノ竜鎧を発動した直後に覇龍を出しかねないが、その兄もいない。

 

「どこかで奪っただとか、貴様が発現させたと思っていたが……。どうやら見込み違いらしいな、カル=エルッ!なんとか言え!」

「しーくん!?おい、お前!なにしてんだよ!」

 

 痛みに抗う正士郎は声を漏らすまいとし、それが気に食わないゾッドはより強く踏みしめる。鉄板が入っているからか、重みも甚大だ。普段ならば筋肉で割りかねない正士郎だが、今はまるで押し付けられているかのようだ。ランニングウェアで和風の全身鎧に竜の意匠をもった姿で駆けつけた一誠が拳を振るうと、ゾッドが正士郎の上に乗ったまま、より力を込めて受け止める。

 

「にい、ちゃん…・・・」

「これが貴様の兄か、カル=エル!」

「しーくんを変な名前で呼ぶんじゃねえ!しーくんはしーくんだ!その足をどけろ!」

「美しい兄弟愛だなぁ?カル=エル!貴様はクリプトナイトを知らないゆえ、その力は失われてゆく!自らの兄の前で死に顔をさらし、そのまま死んでゆけェ!」

 

 ゾッドの言うように正士郎の怪力無双を誇る正士郎の力が失われてゆき、反対にゾッドの力が強くなっていくような感覚だ。しかし、正しくは正士郎が衰弱して行っているのであってゾッド自体は強化されて行ってはいない。未知の物質であるクリプトナイトは正士郎にとってはそうであっても、ゾッドは知識があるゆえに対処法も知っているかに見えた。

 一誠は許せなかった。自らの弟を足蹴にしている見知らぬ男が。仮にも正士郎を知っていたにしろ、本来は大人しいはずの弟が此処まで拒絶しているのだから事情はあると見ている。だが一誠は今は事情を聞くよりもまずは失礼な男をブチのめすのが先だと思った。宙に漂うウルティマブレスレットが変化した姿、ウルティマスパーク。スパークの名に反してナイフの形を取ってはいるが、白熱しているようなのでウルティマスパークの名は正しい。篭手に眠る赤い龍を呼ぶと、赤い龍は宿主の声に応える。

 

『良いのか?相棒。此処は相棒の家で正士郎は敵の足にある』

「ああ、だからこそなんだ。しーくんを足蹴にし、あまつさえ馬鹿にしやがったのが俺には許せねえ。頼む、ドライグ。俺に覇龍を使わせて欲しいんだ、俺はしーくんを、家族を護るためにタケハヤ様の下で修行をしてきた。今こそ、その成果をぶつけるべきなんじゃないかと思うんだ」

『・・・・・・なるほどな、相棒にとって力とは護る物か。だがな、切り札は、』

「『最後に取っておくモン』」

「だろ?」

 

 ああ、と頷いたドライグの反応を聞いて一誠は神通力を纏った拳を振るう―――

 




クリプトナイトの放射線を受けたしーくんの運命はいかに
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。