【完】外宇宙生まれのSさん   作:ふくつのこころ

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「姉に勝てる弟は存在しない」byあまてらす(自称17歳)さん
「17歳………?」byカッコイイスサノオさん


紅い龍は戦場に舞い降りる

「しーくん!目を覚ませ!お前は無敵になるんだろ!?」

 

   兄の呼び声が遠く薄れる。あのゾッドとやらの目は憎しみというよりは正士郎に対しての羨望の色があった。ふとゾッドに対して使用していなかった装備の中に母親が作ってくれたヘアバンド兼防具がある。今迄にこれにどのくらい助けられただろう?小さい時からすでに持っていたとされる『S』のマークが入ったバンダナのようなソレ。ゾッドが語るようにクリプトン星というのがあるならば、これは自分とクリプトン星との繋がりを示すものではないだろうか。早い段階でタケハヤスサノオによるケアがあったことから精神に影響はなかったが、義父母の死は自分の人間性の形成に大きな影響を与えただろう。

   みんな、変わりゆく。

   兄は自らの能力を制御下に収め、人間という範疇を超える存在へと変わっていってイリナは聖剣使いに、そして兄と親交のあった兄の同級生は奇しくも悪魔の下僕に。最後のは気に入らないが、百鬼夜行に同級生の少女と聖女と呼ばれた少女が加わったように自分を置いてまわりが変わっているのだ。何も変わらぬのは幼少期に見た金髪の美しい吸血鬼。漂う波動はタケハヤスサノオのソレかそれ以上、フェニックス戦で見せた不死身殺しの力は強力でどこまでもマイペースなスタイル。彼女だけは変わらず、そして刃の下に秘めた心は一本芯で通っている。彼女が意識を手放す前に笑ったのが見え、上空下では正士郎の視力で見えた光景はフリードが鍔もなければ鞘もない刀でゾッドと剣撃を行っているものだった。

 

***

 

「建速素戔嗚様、お伝え申し上げます」

「………よせ、もういい。俺は悪い話は好かん」

「ハッ、失礼しました」

 

   TAKAMAGAHARA社長室。隠密課と呼ばれる地上と他勢力を監視するための課は社長室にノックし、タケハヤスサノオに報告を行おうとするがタケハヤスサノオが不機嫌な様子で返したのですぐに下がった。短い間ながらもレイナーレはタケハヤスサノオの人となりを知っているが、これほどに取り乱したことはない。いつもならレイナーレに対し、ルパンダイブならぬタケハヤダイブをかますタケハヤだが珍しく怒っているようだった。というのも、タケハヤの髪が逆立っているからであり、どことなく正士郎を思わせるのは曲がりなりにも正士郎の人物構成にタケハヤが関わっているからだろう。

 

「どうしたの?社長」

「………わからんか?俺の部下がクソッタレに負傷させられちまった………!あいつらは人間だ、だのに何故だ?俺が出る、あいつらを殺してやらねば気が済まん」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!社長が出てはいけないでしょう!?貴方がでれないから部下たちが………」

「それで傷ついたらどうなる?それが今だろうが!俺が行かなかったら、俺は正士郎らと約束が守れねえ!」

 

   タケハヤはまともに状況判断ができないほどで無骨な造りの十拳の剣を空間から取り出し、社長室から出ようと試みる。レイナーレが双丘を押し付けてでも腕を掴むが、普段ならいざ知らず、今のタケハヤスサノオには効果がないようだ。こうなったらTAKAMAGAHARAで止められるものはなく、誰もが様子を見守っているようだった。すると、一陣の風が開いてもいない窓から吹き込み、タケハヤの頬を撫でる。風はやがてタケハヤから離れ、紅白装束に身を包む長い黒髪を結わえた少女だった。なんとなくタケハヤと似ていることと一度は顔を合わせたことがあるからレイナーレは知っている、アマテラスだ。

 

「スサァ!貴方は馬鹿ですか!」

 

   アマテラスはタケハヤの頭部を思い切り現れたかと思えば、勢いよく叩いた。外見はレイナーレよりも幼いか幼くないかだが、十分な迫力と気迫がある。やはりさすがはタケハヤの姉といったところで自体を見守ることしかできなかったタケハヤの部下らは虫の子のように散って行った。アマテラスの逆鱗の射程範囲に入りたくないのだ。

 

「姉貴!正士郎がやられたんだ!俺は俺自身の手で正士郎らに手を出した奴を断罪するッ!」

「だから、馬鹿だって言ってるんでしょうが!」

 

   アマテラスのその華奢な身体から想像もつかないほど、強く発揮される怪力。外見ではタケハヤより幼い彼女がタケハヤの顔面に拳を叩き込むと、勢いよく壁へと吹っ飛ばした。これが日常茶飯事なTAKAMAGAHARAの職員に対し、レイナーレは頭が処理に追いついていないのに気づく。自分を迎え入れてくれ、職場を与えてくれたアマテラスは思ったよりお転婆だったようだ。どうも、タケハヤの身体は鋼鉄のようにできているようでアマテラスの拳が赤くなってじんじんしているようだ。

 

「いいですか!?建速素戔嗚!貴方はですね、正士郎や一誠の上司であり師範なのです!一誠の覇龍を授けたのは誰だ!貴方だ!あの子達をTAKAMAGAHARA最強クラスにまで育てたのはお前だ!スサが自信を持たずしてどうする!?あの子達は貴方がいるから、貴方に出会ったから私たちに出会えたかもしれない。いいか?私たちは家族なんだ、いつも言っていたろう?確かにお前は身内に優しい。それはお前の長所だ、大事にしてくれ。でもな、お前ーースサが信じてやらんでどうするんだ。兵藤正士郎、兵藤一誠、塔城白音、アーシア・アルジェント、フリード・セルゼン。スサが選び、スサが信用するスサの部下達だ。私は羨ましい、スサの部下が。今時、あのようなラフな関係が流行りかもしれないが高天ヶ原に乗り込んできて迷惑して帰ったお前を見ているようだよ。特に正士郎はな」

「どうして、しーくんが出るんだよ。あいつと俺、全然関係ないじゃん」

「それでいいのですよ、スサ。正士郎をしーくんと呼ばない貴方は気持ち悪い」

「酷いよねえや」

「ふふ」

 

  正士郎をしーくん、と呼んだタケハヤにタケハヤを叱咤する際にコロコロと表情が変わっていって一人称だったり口調だったりが変化していったのは、よほど荒御魂が前に現れて静かな和御魂が引っ込んでいたのだろう。ねえやとアマテラスをタケハヤが呼んだ時、レイナーレはタケハヤが正士郎を気にかける理由がわかった。

   正士郎を自分と重ねているのだ、タケハヤスサノオは。

   それゆえにシスコン、それゆえに心配して十拳の剣を出そうとした。トップには許されない感情に左右されやすいタケハヤだが、それがこの国に根付いたある種の力かもしれない。時としてデメリットは発生すれど、なんとなくレイナーレは正士郎が羨ましかった。

 

「あと、レイナーレ」

「なんでしょう、アマテラス様」

「私のこれは立体映像ですので肉体はございません」

「!?」

「これもまたTAKAMAGAHARAブランド、なのですよ。情愛が深いグレモリー一族を悪くは言えませんね、個人的に私も正士郎達の時間を奪った悪魔を滅ぼして差し上げたい。レイナーレ、うちの愚弟が迷惑をかけます」

 

   最後に衝撃の事実を残し、アマテラスは姿を消していった。周囲から歓声が上がり、アマテラスへの称賛の声が上がる。ふとレイナーレが空を見上げると、空にある輝けるアマテラスの宮殿がより一層光っていて喜びをあらわしているようだ。やはりさすがは兄弟、そっくりである。

 

「じゃあ、社長。今夜、食事行く?」

「MJD?焼き鳥からとったオカネ残ってるー?」

「私は散財はしないわ、社長と違うんだから」

 

  まいったね、どうもとタケハヤが照れるとタイミング悪く騒がしくタケハヤの娘婿である黒髪の美しい美青年が日本古来の服を纏って入ってきた。彼がいわゆるオオクニヌシという者だが、タイミング悪くタケハヤに蹴り飛ばされていた。重要な報告書だと思われる囲みの中に禁と書かれて封がされている手紙。ぷんすかぷんすかとタケハヤが婿いびりをするように愚痴を叩きながら、開いてみるとタケハヤの目の色が変わる。

 

ーー百鬼夜行、頼む………お!

 

***

 

「しーくん、生きてるよな?」

「………」

「なぁ、しーくん。お前、確かに無敵になるって言っていたよな?俺は驚いたぜ、俺の後を追っていたしーくんが俺くらいに強くなるなんて。基礎が違うもんな、しーくんはシュークリーム?」

『相棒、クリプトンだ』

「そう、クリプトンだけど、しーくんは俺の弟だ。簡単にはやられないよな?」

 

   一誠の呼びかけに対し、ドライグが少し訂正する。先に運び込んだのはTAKAMAGAHARAの寮だった。アーシアが聖母の微笑を使おうにも外傷は見当たらず、正士郎の反応はない。毛布代わりにかけられた『S』と書かれたマーク付きのバンダナは正士郎を守るように毛布となって包み込む。アーシアが正士郎の顔をタオルで拭きながら、一誠の方を見やる。一誠は出会った時から明るく、家族思いだった。こうして自分が毎日を楽しく過ごせるのは彼とタケハヤのおかげだろう。自分を『ねえさん』と慕う彼が可愛らしく、弟も同然だ。白音は同級生の少年がなぜここまでしたいのか、がよくわかった。

   あの今はいない姉だってそうだったのだ、大切な家族を守るために。ふと、同級生の少年の想い人とその同期がいないのに気がついた。

 

「あれ?これは………」

 

『これを拾ったと思う人へ。しーくんをノックアウトさせたのをゼノヴィアと一緒に聖剣を折るついでに倒してきます。大丈夫です、私はしーくんのおねえちゃんだから。こんなところで強がる必要はないとゼノヴィアは言うけど、私はそうはいきません。行ってきますーー紫藤イリナ』

 

   はっきり言わせてもらおう、何を考えているのかと。

   白音は率直な感想を抱いた、とんでもない大馬鹿であると。これを一誠に見せねば、と焦っていると「あれ?イリナとゼノヴィアは?」という一誠に白音が見せると、一誠は絶句した。

 

「馬鹿しかいないな!だがそれがいい!白音ちゃん、アーシア!行くぞ!しーくんの敵を、そしてお仕事の時間だ!白音ちゃんはアーシアの護衛!アーシアは回復飛ばしてくれ!」

 

『禁手・荒御魂ノ龍鎧』

 

「「はい!」」

 

  バランスブレイクを行い、東洋と西洋が融合したような鎧を纏ってアーシアと白音に指示する。それから正士郎には、

 

「しーくん、ちょっと仕事行ってくる。だから、お前はそこで休んでくれ」

 

ーーその後、赤い龍は戦場に舞い降りる




ようやく覇龍来るー?
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