……ピンチヒッター編伸びそうでこわい
赤い龍が戦場に降りたとき、まるでこれから場を支配するのを告げんとするように方向を上げた。かつてない身体の高揚に気づいたゾッドが光線剣でウルティマセイバーを握って応戦するフリードを跳ね除け、一誠のほうへと向かう。赤い龍は留まることを知らず、増幅していく力を使ってオーバーテクノロジーで作られたスーツによる機能の攻撃を受け止め、それを拳で返す。ただ見ているわけにも行かないフリードが加勢をしようとすると、フリードの周りを取り囲む番号の振られた拘束衣に身を包む者たち。
「オイオイ、俺ちゃんがイッセーちゃんのところに行くのを邪魔するんですかねぇ?おいィ、謙虚さが足りんなぁ?」
「白髪が何か言ってるってナンバーゼロは言ってみる」
「それにはナンバースリーがドンマイって返す」
「やめとけよ、あとで先生に何か言われるのだるいだろうが」
ナンバーゼロと呼ばれた拘束衣の少女(腕は使えているが拘束衣に0とある)、ナンバースリーと呼ばれた黒髪でゾッドのような戦闘狂特有の血に飢えた目つきの少年(拘束衣に3とある)、そして気だるそうな2と書かれた女性。三人ともゾッドのような光線剣を持っており、フリードから漂う神聖な雰囲気を放つウルティマセイバーに対しては思うところがあるようで一誠がゾッドと打ち合う中、フリードにはナンバーゼロが白音がナンバースリーと、そして到着が遅れたであろうイリナとゼノヴィアはナンバーツーに当たっていた。
「うわっ!?地球にはこんなに変なのがいるんだねってナンバーゼロがご報告!」
「それには少し否定の異を唱える、とナンバースリーが返すぜ。イイ女もいっぱいだァ!」
「ドン引きだわ、お前ら。おら、さっさと終わらせんぞ。どうせ、ターゲットの兄貴に比べれば弱いんだからさ。ナンバーツーの意見ね?」
元気な様子でフリードと打ち合い、きゃっきゃと騒ぐ様子はまるで子供のようなナンバーゼロ。
イリナとゼノヴィアを嘗め回すように下から上へとスーツに包まれた肉体を眺め、舌なめずりをするナンバーツー。
やはりペースを崩すつもりがないらしい、イリナとゼノヴィアの二人がかりでも順応しているナンバーツー。
彼らの口調の特徴は語尾や会話の中に自らの識別番号であろう、数字を伝えるのが連絡手段となっているらしい。アーシアは辿りついたはいいが、彼らが気を利かせてくれたらしく相手取る敵がいないのが幸いだ。白音はアーシアの心優しい性格が戦闘向きではないと思うが、こうしてついてきたということは相応の覚悟を秘めてやってきた。
弟のように自分が接している正士郎が戦ってやられた相手と対面するのは怖いが、一番怖いのは家族を失うことだ。
自分が利用されるだけだった人生、そんな中で自分をきちんと一人の人間として接してくれる兵藤兄弟やタケハヤスサノオ、そして百鬼夜行という組織の為に役に立ちたかったから。けれど、彼らはどうして戦闘を楽しんでいるのだろう?まるでどこかに閉じ込められていたような服装だが、閉じ込められてもなお、どうして戦うのを楽しめるのだろうか。
「クソッ!聖剣は僕が壊すってのに……!」
「……!」
続いて現れた、金髪の青年の放つ怨嗟のオーラにアーシアは何もいえなくなっていた。彼は目の前で繰り広げられている光線を刃とする剣を持った者たちから放たれる全ての気配が憎いとばかりに見つめ、戦場の中へと突っ込んでいった。同じ制服を着てはいるものの、当時のアーシアは彼の名前を知らなかったが名前は『木場祐斗』と言って魔王の妹であるリアス・グレモリーの騎士にあたる人物だ。その過去をこの場にいる誰もあずかり知らないことだが、聖剣に関するもので聖剣に対する恨みはフリードと同等かそれ以上である。
どこかの“誤差”によって赤龍帝の少年に出会わなかったことと、世界を闇に包もうとした邪龍を宿す少年、猫叉の少女、それにアーシアとで聖剣を破壊すると決意するはずだったことはズレてしまって彼を受け止めるものはいなかった。主君であるはずのリアス・グレモリーはそこまで配慮が回らず、秘める木場の膨らんでゆく怨念が最大限まで達してしまい、このような状態を招いたのだ。アーシアとしては彼を止めてやりたい、と思うが言葉を聞き入れるかどうかの心配があった。教会に所属していた身としては迷える子羊を助けたいものだが、彼女が今は教会のシスターの服装をしていないのが幸いだ。復讐に囚われた復讐者は教会に関連するものを全て憎んでいる今、嗅ぎつけた場所に教会を思わせる服装をしていたとあれば、どんなことをするか分からない。
「
「あららァ?変なの来ちゃったよ、ってナンバーゼロが報告するよ」
「えー、男かよ。因縁あるのが女だったら良かったなぁ、ってナンバーツーがご報告。うわぁ、復讐者だよ、アベンジャー。なぁなぁ、終わったらナンバーツーが好きにしていいんだろ?」
「落ち着きなよ、ナンバーツー。ナンバースリー的にはターゲットを捕らえないとドクターが納得しないから、捕らえてからになるってナンバースリーが的確な意見を述べるよ」
会話の内容から『ナンバーズ』達はターゲットと呼ぶ目的のものを欲するドクターとやらの指示で動いているようだ。ゆったりした自己流の剣裁きに無駄はなく、ナンバーゼロはパワータイプ、ナンバーツーは超スピードでナンバースリーはテクニックタイプで手数で勝負するタイプらしい。
「お前ら、目的はなんだ!?」
「ヒトの身にして……クリプトン人にして神聖さを受けても平気だと分かったカル=エルを捕らえに来た。お前は見ていなかったかもしれんが、奴の父の名を出したときの驚きようを見せてやりたかったよ」
「馬鹿な……。父親は兵藤誠一郎だぞ!?」
「違う、アイツの生みの親とでも言っておこうか。私の友人だった男がカル=エルの父親なのだ」
「兵藤くん!君の弟さんはもしかして、こいつらの仲間なのか!?」
闘いの合間、木場からの怒号が飛ぶ。普段の一誠ならば俺の弟だ!と主張して終わらせるが、昔から正士郎は普通の子供と違うところが多かった。なにか達観しているところが見られたり、今では彼が想っているイリナと遊んでいたときから分かりやすかった。気を抜くと考えていることが見え、ここにいていいのかと悩んでいるように見えた。当時の一誠にそれを聞く勇気とそこまでに至る経験もなかったので様子を尋ねるぐらいしかできなかったものの、正士郎はそんな一誠に気づくと無理に笑っていた。
思えば、あれは両親が死んでからだろう。
タケハヤスサノオの下に行って普通の人間ならば耐えられないとされる天巌戸での時間の流れが緩慢になったりを繰り返す空間での修行。そこで得た戦闘の技術は人外を超え、通常時でも人間よりはるかに発達した戦闘センスを持つ一誠を超えるほど。不意打ちでの闘いならば正士郎に隙を見せれば殺される、と一誠は思うが正士郎と敵対したことといえばプリンを取り合って喧嘩したぐらいだった。小さい頃から既に人ではない片鱗を覗かせていたのか、一誠が殴れば痛みがむしろ一誠の拳に返ってくるほどだった。
あのときは気のせいだと思っていたが、今はなんとなく分かる。正士郎は怪力を以って生まれた人間ではなく、彼らと同じ種族だと。
「ああ、そうだ。だけど、それがどうしたって言うんだ?お前らの言うカル=エルがしーくんの本名だとしても、しーくんがなんなのかなんてどうだっていい。しーくんはしーくんだ、俺の弟だ。百鬼夜行のメンバーで俺の家族だ。頭がいいんだか悪いんだか、ノリが悪いときもあるし、俺がアイツに俺のエゴを押し付ける時だってあるだろう。タケハヤ様のつまらん洒落を聞いて突っ込みを入れるだろう。それがしーくんだ、それが弟だ。どんな経歴とかあっても、俺にはどうでもいい。しーくんは俺と一緒に育ってきたんだ、今までのしーくんを見てきた俺だからこそ、お前に突きつけてやる。―――しーくんはやらない、お前らを倒す。家族を護るのが長男だろう?」
『思えば、相棒は変わらないな。この赤い龍の力をどのようにしたいのかという問いは迷わず正士郎と答えたほどだった。最初、俺には良く分からなかったよ。相棒とは血の繋がりも顔も似ていないようなガキにどんな価値があるのかなんてのも。相棒が人間をやめ、現人神となったのだって俺は度肝を抜かれたな。なんせ、それさえも正士郎に寂しい思いをさせたくないと来たもんだ。面白いな、お前ら兄弟ってのは。だからこそ、俺はお前に力を貸してやりたいと思う』
ドライグは、哂う。
宿主の少年は今も昔も変わることがなく、ただ一つの目的を持って生きている。彼はただ『しーくん』と呼ぶ自分より背が高い弟を愛でることのみを目的として。ブラコン、ここに極めりと言ったところだが一誠はそれだけの為に覇龍を会得した。荒神と言える日本の神々から賜った現人神へとなる力によって開花した禁手の姿、荒御魂ノ龍鎧だって一誠の性質の激しさを教えてくれる。
しーくんかわいい。
しーくんアホ毛かわいい。
しーくんマイブラザー。
一誠の心象世界からはそれだけが伝わってくる、気づかぬうちに歴代の所有者の怨念さえも跳ね除けて独自の覇龍まで形作ってしまった。絶対の矛にして、絶対の盾。矛盾と称するに相応しい異星人だろうとも家族と義弟を称する少年の―――パーソナリティ。
「覇龍でッ!俺が!お前を!ブッ飛ばす!」
『ああ!さっさと終わらせよう!正士郎が起きるからな!』
「我、いかなるときも。
例え、異星からの来訪者であろうとも。
縁も所縁もなかろうとも。
この紅き力を手段として。
汝が重き者の為に」
「『「「「覇と為りて敵を討たん」」」』」
切り札とは一体なんだったのか?
ノリと勢いで覇龍を唱え、赤龍帝の篭手のまわりからしーくんと鉢巻を巻いた親衛隊と化した歴代の皆さんが見えた気がした。詠唱内容が完全に名指しな気がした白音はナンバースリーと戦いながら、眠っている同級生に後で肉まんをおごらせると決意した。まるで名指しで自分が何処にも入っていないのを悔やみ、やっぱり一誠は正士郎が大好きなんだなと羨んだ白猫はなんとなく姉を思わせるナンバースリーにボディブローを入れる。
「詠唱を戦闘中に行えるだと!?ウルティマブレスレットを使えるカル=エルと言い、出鱈目だな……!」
「『
フリードがウルティマセイバーを一誠に投げ、ニッカリ青江と村正を引き抜いて構えてナンバーゼロに応戦するとウルティマセイバーは一誠の手の中でウルティマセイバーが変化した手甲たるウルティマガントレットへと右腕を覆う篭手に吸収されていって『士』と崩し文字が浮かび上がる。全体的に和を象りながらも、本来の姿とは全く違う一誠だけの覇龍。宝を護る西洋の竜と神の使いとされる東洋の龍としてのモチーフが見られ、まるでその姿は神々しさと禍々しさを持つ黒歴史ノートを顕在化させたようなものだ。
ウルティマガントレットの属性である神聖は現人神へと変わった一誠の属性と互いをひきつけあい、まるで引き寄せあうS極とN極のように融合して絶大な破壊力を見せる。禁手の荒御魂ノ龍鎧以上のスピードとパワーを併せ持つ姿はまさしく鬼神の如き強さで刀を捨てて得意とするファイティングスタイルとなった一誠は鬼に金棒、ブラコンに異能である。
「ナンバーゼロから通告。ターゲットの兄だと思われるものが強化された模様」
「え?なにそれ、流行り?きめぇ」
光線の剣で殴りつけるようなナンバーゼロのスタイルは一応は剣を嗜んだフリード煮とっては失笑もの。白音が対峙しているナンバーツーはナンバーゼロに比べればマシなものの、スピードと勢いを活かしただけのファイトスタイルでそのパワーに仙術によるカウンターを加えればなんのこともないもの。一方のイリナとゼノヴィアが相手取っているナンバースリーはどうやら三人組の中で最も手ごわいらしく、二人の剣の突きに対して手数で補ってカウンターを返している。元から器用なタイプなのか、両手に光線剣を分身させて手で持って行われる数々は重みがある一撃一撃なのでなお性質が悪い。
憤怒を拳に乗せ、ウルティマガントレットを纏って神聖さを乗せたボディブローをかける一誠に対してかつてない強敵の攻撃に心躍らせる対照的なゾッド。
――――素晴らしい。これほどの強敵、かつてないぞ!ジョー=エルゥゥゥゥゥ!貴様は学者肌であったが、お前の息子は俺と同等、いやさそれ以上の強者の下にいるッ!
ゾッドがこれを一誠の『全力』と錯覚する中、隠し持っている刃の存在にまだ誰も気づいていなかった。
ゾッドがマダラみたいになってるぞ、柱間ァァァァァァ!
感想くだちい