【完】外宇宙生まれのSさん   作:ふくつのこころ

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活動報告にて一誠のヒロインのアンケートを行なっています。
ついでに正士郎のもお願いします


Sさんの激昂

「兵藤正士郎の憂鬱」

 

「……なんですか、それは」

 

「みろよ、小猫ちゃん。しーくんのやつ、完全に参ってやがるぜ……!」

 

翌日の朝。

小猫と一誠、そして正士郎が共に登校している時間帯、正士郎の顔からは生気が抜けていた。

小猫が自分より背が高い、正士郎をジト目で見上げるもののそれ以上に早かった正士郎の落胆振りによってジト目を受け付けなかった。

一誠はそんな正士郎を携帯電話のカメラ機能を用い、撮影して正士郎を写真に収めて待ち受け画面にしていた。

この画像のタイトルは勿論、「落胆するしーくん」である。

 

「……私も写真に収めるとしましょうか」

 

「小猫ちゃんなら構わないぜ!しーくんはこの世の宝だからな!」

 

「さりげなく恥ずかしいこと言うなよ、兄貴」

 

未来の義弟になるかもしれない、正士郎の様子は小猫は非常に嗜虐心を煽られるものとなった。

スッ、と携帯を取り出してパシャッ、パシャッと撮影しているのは他の生徒の間でも目立つが、一誠が正士郎を撮影するのは良くあることで陰口で「ブラコンでホモ」と噂になりかけた際に噂の源泉となった生徒は行方不明になった。

おそるべきである。

 

「恥ずかしいことだと?俺はしーくんの良さを誰よりも知っているつもりだ、それだけで俺は飯が旨いな!」

 

胸を張って笑顔で言われてしまえば、それを否定できるほど正士郎は冷ややかな性格ではなかった。

そんな正士郎と一誠に小猫は暖かな雰囲気を感じ、彼らが本当に日本で最も権力のある日本神話勢の三人のトップの一人、タケハヤの直属の部下には思えなかった。

悪魔の眷属となっていた時には味わえなかった、まるで暖かい兄弟のようなやり取りは小猫の心を満たす。

そんな場所に傍に置いてくれる様にしてくれたタケハヤには感謝しつつ、助けてくれた一誠への思慕が芽生える。

同時に良く眠るアンニュイな同級生にも。

 

(私は、この環境を護りたい)

 

密かな決意を自分に誓いながら三人は今晩の夕食の内容、そして週末の歓迎会の内容を取り決めていた。

そのときの主役と言える小猫がいる前で行なったのだから、そこで鋭いツッコミが正士郎によってされる。

 

「これさ、僕と兄貴でやるもんじゃないか?コッソリと」

 

そのとき、一誠は話題を逸らし、小猫は夕食の好みの惣菜を提案してきた。

どうも正士郎に非があったらしく、今夜の夕食係は正士郎に決められてしまったらしい。

口は災いの元、とタケハヤがよく語ってくれた“武勇伝”の教訓として身に付いていたが、この百鬼夜行は歓迎会の内容もその主役と共に考える傾向にあるらしい。

これからは口には気をつけよう、と思い、小猫と兄のリクエストを聞いて正士郎は今晩の買い物のメモを取った。

 

 

「今日の授業には飲まれずに済んだよ、睡魔ってやつ」

 

「……そうですか、それは良かった。で?」

 

放課後、なにか廊下が騒がしいが、小猫や正士郎には関係なかった。また学園内の有名な誰かがろうかを歩いているだけだろう、と特に好奇心を示さず、一誠が迎えに来る前にこちらから迎えに行ってやろうというサプライズだ。

それに一誠の友人のドスケベな二人からの好意(、、)をいつまでも無駄にするのは申し訳ないと思い、こっそりと借りておこうか、と思ったのは正士郎の気遣いによるものだろうか。

連日の修行に明け暮れていた、中学時代の兄を明るい性格のままにしてくれていた松田や元浜の二人には感謝しても仕切れないほど。

同性の先輩であれほど大っぴらに話しやすいのは少ないゆえ、一学年上の生徒に知り合いが少ないことから一誠の教室を訪ねるのは正士郎にとって苦痛だった。

 

あのブラコンの弟か、と指を指されてこそこそと陰口を自分に叩かれるのはまだしも、心配性な兄を悪く言われたくなかった。

 

「よう、正士郎!」

 

「元浜先輩じゃないですか、どうしたんです?」

 

「まあ、その、なんだ。グレモリー先輩がお前を呼んでる」

 

不意に声をかけてきたのは一誠の友人で一学年上の元浜宗一だった。

メガネをかけて知的な雰囲気を漂わせているが、そのメガネを「TS(スリーサイズ)スカウター」と称し、女子のスリーサイズを当てる謎の特技があるらしい。

それを自宅でやるならいいが、教室で大声でやるので知的な雰囲気が崩れ去り、もう一人の元浜とともに嫌煙されているのは正士郎にとっては辛かった。

そういえば、この人は昨晩にリアス・グレモリーの眷属の中に混ざっていた。

 

「……しーくん、どうしましょう?」

 

「ごめん、塔城さん。今日もだけど、兄貴と一緒に帰ってくれないかな?今晩は好きなもの作るよ」

 

「……それで手を打ちましょう」

 

正士郎の言葉に小猫はうなずき、すたすたと二学年の教室へと向かう。

残された元浜と正士郎は少しばかり気まずい雰囲気になるも、年下に気遣いは出来るらしい元浜が話題を切り出した。

 

「とりあえず、来てもらえるか?」

 

「分かってますよ、元浜先輩。先輩には中学時代にお世話になりましたからね」

 

「はは、数も少なかったのに良く覚えてんなぁ。普通は兄貴の同級生、それも同性なんて覚えねえものだぜ?」

 

「あっ、そういえば、昨夜はごめんなさい、きついこと言ってしまって」

 

「いいってことよ、お前にもそんな一面があるんだな、って分かったしさ」

 

こうして話していると、女子からの評判や同性からの評判は悪いものの元浜はそれほどに悪い人間ではない。

いや、昨日の邂逅ではすでに悪魔サイドに入っているのは確かだろうが、あまり悪魔としての日が経っていなさそうな元浜に正士郎は嫌悪感を覚えなかった。

休日に一誠を連れ出し、隣町に外出した際に誘ってもらったのもあるし、数少ない中学時代の思い出だ。

百鬼夜行の仕事上、部活に入ることが叶わず、それにはアマテラスやタケハヤも申し訳なさそうにしていたが、仕事が優先だから仕方ない、と修学旅行も諦めていた。

同時に兄も修学旅行にいけなかったが、正士郎が行けないと知るとタケハヤに抗議したのを良く覚えている。

 

『俺がいけないのはいいけど、しーくんが行ったっていいじゃねえか!』

 

兄として弟にせめて思い出を作ってもらいたい、との気遣いだろうが、この土地で悪魔を監視する任務の関係上、正士郎は修学旅行に行けなかった。

担任や学年主任には家庭事情のため、と誤魔化していたが、通常ならありえたはずの登校日もなく、両親のいない可哀そうな子として扱われていた。

 

そんな正士郎を同級生が修学旅行に行っている間、連日連れ回してくれたのが一誠の友人の松田と元浜の二人だった。

 

「先輩は、もしかして悪魔なんですか?」

 

「あ、ああ。グレモリー先輩に頼まれちゃってさ。それにあの二大お姉さまの朱乃さんもいるだろ?すげえぜ?オカルト研究部は」

 

「そうですか、先輩が楽しいなら……」

 

「なぁ、正士郎も入らないか?ちょっとアウェーだからさ、知り合いがいればと思って」

 

正士郎は元浜に悪魔となったかについて尋ねたが、元浜は満更でもない様子で返答した。

リアス・グレモリーが直々に頼んだ、と言うが、おそらく誰かを使いに教室に迎えに行かせてオカルト研究部の部室で勧誘を行なったんだと思う。

しどろもどろな口調から言わされている感があり、ぎごちなさを感じる。

神器は思いに呼応して力をパワーアップするというが、そういった伝承から元浜の「エロに対する限りない欲望」を知ったリアスが勧誘したのだろう。

 

「まずは先輩のご主人様に会ってからにしません?」

 

「そ、そうだな。あはは……」

 

元浜の言葉に笑って返す正士郎だったが、目元が笑っていなかった。

正士郎の目が濁っていることや、珍しく冷ややかな口調であることから元浜は一歩下がってしまった。

一つ学年が下なだけのはずの正士郎に怖気づくのは自分でもおかしいと思うが、正士郎の目は「殺したことがある者の目」だった。

旧校舎に辿り着き、オカルト研究部の部室に辿り着く。

 

「さ、着いた」

 

「お邪魔します、グレモリー先輩」

 

「ごきげんよう、兵藤正士郎君。オカルト研究部は貴方を歓迎するわ」

 

辺りにはまるでサバトを行う為の道具が広がっており、魔方陣のようなモノがある。一つの生活空間が出来上がっており、何枚ものチラシが積み上げられている。ポットや高級そうな茶葉、皿が食器棚に収められており、木場と姫島朱乃が赤毛のリアス・グレモリーの傍に一人一人が脇を固めている。

 

「まるで元浜先輩をロクな扱いをしていないように思うんですが」

 

「へえ、どうしてそう思うのかしら?」

 

「せ、正士郎……!」

 

正士郎は元浜を一瞥し、疑問を口にする。リアスの方は余裕に満ちた表情だが、傍らを固める朱乃や木場は臨戦体制だ。一方の元浜は慌てており、悪魔の眷属となったことで主の怒りのオーラを感じ取っているようだ。

 

「ロクに扱っていないんなら、僕の方に使いとして送ってこないように思えます。もし、貴女が元浜先輩を眷属としてロクに(、、、)扱ってるんなら、姫島先輩か木場先輩を使いとして送って来ると思うんですけど。そうしないってことは、グレモリー先輩は元浜先輩を家畜以下の畜生としてしか扱ってないってことになります。」

 

「やめろ、やめろ、正士郎!」

 

「いいえ、続けてもらって構わないわ。私はね、納得が行かないことがあるの」

 

「なんですか?僕のような後輩に聞くことないと思うんですけど」

 

正士郎は苛立っていた。

昨日はレイナーレをタケハヤが連行して行ったことでレイナーレに手を下さずに済んだが、あのまま戦いを続けていれば正士郎はレイナーレを殺していただろう。

自分の命を狙えば一誠が怒りを露にするのは分かっているし、神器を狙って気のある素振りを見せて隙を突いて殺すのは神器狩りをする一部の悪魔と変わらない。

小猫の主のように、大抵の悪魔は眷属を自らのステータスとする。

魔王を排出したグレモリー家はサーゼクスが魔王となったことで地位を向上させているが、それでもまだ飽き足らずにこうして正士郎を誘い出している。

 

中学時代に世話になった元浜を使いとして呼んでこさせることで、悪魔の眷属にさせるつもりだろうか?

悪魔である自分たちこそ、至高と考えるリアスの精神構造はどんな大義名分があっても揺るがない。

そして正士郎は心に決めている。

 

「塔城小猫に何を吹き込んだの?お兄様から聞いたんだけど、タケハヤスサノオが天照大神(アマテラスオオミカミ)とともに会談をしたらしいわね。その際に私から小猫を取り上げ、私たちの助っ人としてタケハヤスサノオの部下である貴方たちを指名したの、聞いてる?」

 

「……それがなにか?」

 

「なら、眷属にならない?」

 

「………ってんだ」

 

「え?」

 

リアス・グレモリーの口調はまるで塔城小猫を「モノ」として扱っているようだ。

私の「小猫」という単語は正士郎の中で燻っていた、心の火種がやがて炎として燃え上がり、濁った正士郎の目に炎が灯る。激しい怒りが業火へと豹変し、アンニュイな表情が流れ落ちる。

 

「そっちは魔王の兄貴から色々聞いてんだろ?それなら、僕らの事情を知っているはずだ。僕たち兄弟はお前ら悪魔に親を殺されてんだよ!それを知ってんのかしらねえのか、それとも自分達がそうじゃない自信があるのか知らないけど、僕にしては全部同じだ。グレモリー先輩の眷属?ふざけんな。木場先輩や姫島先輩とは何があったか知らないけど、僕は断固として拒否する。元浜先輩になに吹き込んだんだよ?なに吹き込んで眷属にしたんだよ!?じゃなきゃ、こんなに怯えねえだろうが!ざけんじゃねえ。ざっけんじゃねえってんだ……」

 

突然の剣幕にリアスは口を開き、唖然としており木場や朱乃らは主の前であるからこそ、毅然としているが元浜はガタガタと身体を震わせている。

弟同然と思っていた後輩が自分達の前では見せていない、激情の側面を見せたことで怖れているのだ。

ーーこいつはどうしてグレモリー先輩に刃向かえるんだ?

最初のコンタクトでは憧れのリアスに呼び出され、そこに木場祐斗という学年屈指のイケメンや二大お姉さまの一人の姫島朱乃もおり、まるで自分の身の丈には合わない空間のようだとすぐに理解するが、そこからの出来事は良く覚えていない。

 

チェスの駒のような物を一つ、身体に埋め込まれ、自分が自分じゃなくなる気分に襲われる。

目覚めたときは既に家におり、全裸だった。

翌日に学校に訪れると、眷属となったことを説明され、なにかを魅了するような視線に囚われて学園が誇る美女の誘いに断れるはずもなく、返事をしたときから元浜は悪魔の絶対的な上下社会に悔やむようになった。

 

「僕の過去を知っているんなら、わかるはずだろうに。悪魔のことを嫌っていると」

 

「でも、私たちは貴方たちの両親を殺した者と……」

 

「うっせえ!じゃあ、分かるってのかよ!?僕の気持ちを!お強い悪魔サマには分からないでしょうがね、怖かったんだよ!力があるからこそ、僕を誘ったんだろうけど、そのせいで僕は初めての彼女に殺されかかった。分かるか?この気持ち。知ったような口を聞くんじゃねえ、分かったように言うな」

 

目に涙を浮かべるリアスを宥める朱乃や木場は正士郎に殺意を向けるが、その程度の悪意や殺意は仕事上、年齢の割に慣れていた。

朱乃に今日はおかえり下さい、と礼儀正しくも強い口調で示されるまもなく、自らの意思で扉に手をかけると残像が目の前に現れる。

 

木場祐斗だった。

 

「このまま、僕らの主様に好き勝手言っておいて帰らせると思うかい?」

 

「ああ。僕は刺し違えてでも帰ってやる。僕は僕の『正義』を実行するまでだ」

 

真剣な眼差しで正士郎の手首を掴み、木場は力を込めるものの、ドアノブにかけられた正士郎の手は木場の手にかけられ、力任せに引き剥がす。

普段ならば木場の誇る武器の一つのスピードで引き剥がすのも造作はないが、正士郎の動きはまるで人間ではなかった。

人間をベースに転生悪魔となった木場はあくまでも、ベースの運動能力は人間の上に悪魔のそれが上書きされていて、一般人の正士郎には劣らないつもりだ。

そう、あくまでも一般人ならば。

 

「帰らせてくれよ、さっさと。今晩の買い物をしなきゃならないんだ」

 

「いいや、駄目だ。君には責任を……」

 

「そうか。ならばこじ開ける。悪魔風情が僕を止められると思うな」

 

木場は未だに扉の前から動くつもりはないらしい。

城門を護る衛兵のように不動の木場は正士郎の怪力によって指の跡がついており、力の差を知った所でも騎士としてこの勝負を諦めるわけには行かなかった。

が、正士郎の運動能力はその上を行く。

木場の腹ごと扉を蹴破り、無言で去っていくと涙ぐんでいたリアスは泣き止み、元浜や朱乃はただ驚きに囚われる。

扉は中央から破裂し、木場は部屋の外へと蹴り飛ばされ、駆け寄った朱乃が木場の傷の具合を見ると

、手加減無しの蹴りのようでそうではなかった。

 

内臓は一つも腫れた様子はなく、痣が残っていて何処も骨が折れていない。

グレモリー眷属のうち、駒一つ消費の兵士(ポーン)の元浜、騎士(ナイト)の木場、女王(クイーン)の朱乃のうち、スピードを自慢とする木場を上回る速度で戦車(ルーク)のようなパワーを誇る正士郎。

 

今のが手加減ならば、本気を出せばどうなるのかは想像に容易く、グレモリー眷属は戦慄すると共にリアスの所有欲を燃え上がらせた。

かくいう正士郎は、

 

「あっ、もしもし?」

 

『しーくん!?昨日の今日で悪魔に呼び出されただと!?大丈夫だ、今夜は兄ちゃんが添い寝してやる!』

 

『……イッセー先輩、お静かに』

 

『あ、あの……?どなたでしょうか?』

 

「ごめんごめん、誰かお客さん着てる?」

 

足早に駒王学園の校門を走りぬけ、着信履歴が着いているので自宅に連絡すると聞こえてくる賑やかな声。

もう一人、礼儀正しく優しそうな声が聞こえてきたのだが、それは見知らぬ誰かの声。

夕食の時間に来客があるのは珍しく、疑問を抱いた弟に気づいた一誠は喜色を含んだ声で弟の疑問を晴らす。

 

『近くで困ってたみたいだからさ、話しかけてみたら仲良くなったんだよ。アーシアっていって俺と同級生らしいな、年齢は。買い物は済ませたから、あとはなんか飲み物買って来てくれ』

 

「了解」

 

プチッ、と電話を切れば兄のお人よしが発動したのを知る。

アーシア、という名前から外国人だと分かるが、そもそも兄は英語が話せただろうか?

否、タケハヤの新人研修プログラム内で食べさせられた、「ほんやくゼリー、永続版」の効果かタケハヤらによって洗礼のような儀式を受けた一誠が言葉を理解できたんだろう。

地域によって神は姿を変え、名も変わることやバベルの塔の設定のように共通言語とやらがあるらしい。

この惑星の人間ではない、正士郎には「にほんご」を理解してから高天ヶ原にある書庫を読み漁ると、共通言語を習得した。

 

客人の為のジュースを買いに行こう、とコンビ二まで急いで走り出す姿は生き生きとしており、とても正士郎は宇宙人には見えなかった。

 

 

 

 




フェニックス戦で正士郎がグレモリー眷属の足りない穴を埋めるために使われそうな予感……。
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