吟遊詩人がオラリオに来たそうです。   作:プラス九

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 ダンまちだとリヴェリアとティオナがマイブームです。


吟遊詩人がオラリオに来たそうです。

 

 迷宮都市オラリオ、多くの人で賑わう。その中心となるのが、冒険者。街の中心にそびえ立つバベルの地下に潜むダンジョン、そこを探索し富や名声を掴むもの。

 数多くの冒険者の中でも絶大な知名度を持っているのは、都市最強のフレイヤファミリア、もしくはそれに次ぐロキファミリアか……。

 

 ロキファミリア副団長【九魔姫】ことリヴェリア・リヨス・アールヴは一人で街を歩いていた。普段ならファミリア内の同胞が付いて回ることが多いが、ハイエルフと扱われることを彼女は嫌うためであるが。

 

 気晴らしが目的の為、ただ街並みを眺めながら歩いていると人集りが先に見える。目を凝らして見ると、吟遊詩人を女性達が囲んでいるようだ。神の言うところの【あいどる】のようだなと思いながらも、あのようなものは好まない為、別の所へ向かうかと考えていた。しかし、あの集まりに同胞の姿が多く見える。勿論、エルフにもそういった趣味趣向のものがいない訳ではないが、あくまで少数派だ。あれほどの同胞が集まるとは……。そのことが少し気になり足を向けることにした。

 

 到着したところ、詩が終わったのだろうか、周りから黄色い声援が騒がしく広まる。特段、変わったことは無かったかと離れようとした時。

 

「ちょっと貴方!どういうつもり!?我らが貴きお方を侮辱して無事でいられると思っていて!?」

 

 一人の同胞が吟遊詩人の男へ問い詰めている。

 

「何があった?」

 

「リヴェリア様!?どうしてここに?」

 

 原因は分からないが、問題が起きたならと足を運ぶ。

 

「これはこれはハイエルフ様。私の拙い詩でお耳汚ししたことをご無礼ください」

 

 飄々とした様子で吟遊詩人はリヴェリアへ深々と礼をする。

 

「いや、すまない。私が着いたのは、ちょうど終わった時でな。貴殿の詩は聞けていない。それよりも何があった?」

 

「リヴェリア様、聞いてください!この男はエルフならまだマシも、我らが王族を侮辱したのです!」

 

「そんな、とんでもない!私はハイエルフの方と他種族の方の交流の詩を謳ったまで。確かにエルフの方は排他的な方が多い。しかし、全くいない訳ではないでしょう?ハイエルフの方にもそういった方がいらしゃると思いますが、リヴェリア様はいかがでしょう?」

 

「うむ、確かにハイエルフは排他的なものが殆どだが、私はそうとは考えていない」

 

「そんな。リヴェリア様が……」

 

 抗議していたエルフは膝から崩れ落ちていた。

 

「これはこれは!リヴェリア様より、この詩の是か非かを言って頂けるとは!皆さん!この詩はリヴェリア様より公認頂きました。是非、この美しい詩を広めて頂ければ!私も時を見て謳い広げますとも!」

 

 観客へ向き直り、高らかと宣言した。

 

「うむ、私も貴殿の詩を聞ける機会を楽しみにするとしよう」

 

 リヴェリアはそう言葉を残して周りから聞こえる騒がしくも微笑ましい声援を背に黄昏の館へ足を運ぶ。

 エルフの矜恃も理解できるが、他種族との友好へ少しでも役立つなら。

 

 

 あの日から数日後、リヴェリアは黄昏の館で事務処理を行なっていた。昼食の時間となり食堂へ向かうが、不穏な視線を感じる。

 周りを見渡すが、当たり前だがファミリアのメンバーしかいない。静かに食事を始めると、益々この不快な視線が増えているように感じる。悟られないよう周囲を見渡すと、普段喧しいアマゾネスの姉妹はにやにやとこちらを眺め、アイズも何度もチラチラと目線を向けている。まして、フィン、ガレスにいたっては生暖かい目でこちらを見ている。

 

「何なのだ!お前たち!」

 

 流石に腹が立ったリヴェリアは、辺りへ怒鳴り声を上げる。全員が目を逸らし静寂を持って回答する。

 くそっ。品があまりにもない言葉を内心で呟く。すると扉が激しく音を立てて開かれる。

 

「リヴェリア様!本当ですか!?嘘ですよね!?そう言ってください!」

 

 己が後継になるであろうレフィーヤが、喧しく食堂へ入ってきた。

 

「どうなんですか、リヴェリア様!?むぐむぐ、何をするんですか、ティオネさん!?」

 

 直ぐ様ティオネが捕獲し、言葉を妨げる。

 

「レフィーヤ!あんた少しぐらい空気読みなさい!」

 

「お前たち、言いたいことが有れば直接言え」

 

 明らかに様子がおかしい。レフィーヤは何かを伝えようとしていたが。

 

「ねぇ〜。もういいんじゃない?別に悪いことじゃないし、いいことなんだから!」

 

 静寂に耐えられなかったのか、ティオナが周りに促す。

 良いこと?何だそれはと、一切身に覚えのないそれに頭を巡らせる。一体なにが……。

 

「まさかリヴェリアに恋人が出来るなんてね〜。ねぇ、いつからなの?まさか私たちが知らない間にそんなことになるかなんて、やるぅ〜」

 

「は?ティオナ?何を言ってる?」

 

「え?リヴェリアが言ったんでしょ?」

 

 全く意味がわからない。何を言っているんだ。私に恋人だと?リヴェリアの頭は混乱をし、ティオナの言葉より何かを知っているだろうフィンの方へ目を向けた。

 

「はははっ。とりあえずおめでとうと言えば良いのかな?まあ、君らしくない方法で知ることになるとは思わなかったけどね、リヴェリア」

 

「フィン、何を言っている?私に恋人など」

 

「うん。恥ずかしいのはわかるけどオラリオ中に広めておいてそれは君らしくないかな?」

 

「だから何を言って……」

 

「そんな、本当にリヴェリア様が……。よりにもよってあのヒューマンと……」

 

 レフィーヤが言うあのヒューマンとは、確かベル・クラネルのことだったか。なるほど、彼と私が恋仲になっていると。

 

 リヴェリアは周りの言葉をつなぎ合わせ結論へと辿り着く。

 

「何故そうなる!そもそも誰から聞いたのだ、そんなでまかせを!?」

 

「今話題になってる吟遊詩人の詩でだよ!リヴェリアから公認されたって言ってたから、オラリオ中、この話題で持ちきりだよ!」

 

 あの時の会話でこんなことになるとは想像すら出来ず、リヴェリアは頭を抱える。

 

「それに誰が聞いてもリヴェリアとアルゴノゥト君のことだって。みんな他派閥での禁断の恋って騒いでるよ」

 

 驚きすぎて声も出せずいるリヴェリアを見かねて、フィンは一考する。

 

「どうやら、何か食い違いがあるみたいだね。フィオネ、その吟遊詩人を連れて来てくれるかい?」

 

「わかりました、団長!」

 

 指示を受け、風のようにティオネは動いた。フィンは、リヴェリアを正気に戻す方法を考えながら周りを見渡す。

 

「そういえばロキは?こんなことがあったら騒いでいそうだけど」

 

「ロキなら……、うるさかったから縛ってるよ?」

 

「……アイズ、いや、今回は正解だ」

 

 各々が、正しい真相を知るにも、吟遊詩人を向かい入れる準備をし始めることにした。

 

 

 

 少しして、吟遊詩人を連れたティオネが戻ってきた。フィンは、無理を言ったことへの謝罪と歓迎の旨を伝える。

 

「いえいえ、ロキファミリアに呼ばれるなど、名誉であり、迷惑など。更に、リヴェリア様に漸く聞いていただける機会もいただけるなんて、感激の極みです」

 

 仰々しく語る様子は、一種のパフォーマンスにしか見えなかったが、様にはなっている。

 吟遊詩人は竪琴を取り出し、ゆっくりと謳いはじめた。

 

 一人のハイエルフの姫のことが謳われた。

 里の外を見たいからと幼馴染を連れて、世界へと飛び出した。様々な仲間に出会いながら冒険者となる。仲間達と共に成長し、有名な冒険者として名を馳せる。

 エルフ独特の考えに辟易していたが、外に出ると自分も同じだったと悩んだり、幼馴染の結婚を自分のことのように喜んだり、偉大な冒険者も普通の少女だった。

 少女から女性に変わり、功績も大きくなった。

 ある日、他派閥の新人冒険者に出会う。とても純粋な兎のように可愛らしい少年だった。初めは、そこまで興味を持っていなかったが、少年の初めての冒険を見てしまった。強敵に決死の覚悟で向かっていく様に胸が熱くなった。それから、少年が気になり始める。街で会うたび会話を重ねて、恋心に変わるのに時間はあまり必要なかった。

 しかし、少年の派閥は自分の派閥と主神同士がいがみ合い、決して仲が良くなかった。

 主神が二人の関係に気付き引き裂こうとする。このままだと、まだまだ若手の少年に危害が及ぶ。女性は涙を流しながら別れを告げる。彼の英雄になりたいという夢の為にもと。

 少年は、女性を優しく抱きしめる。二人で旅に出ようと。

 女性は告げる。貴方の夢を奪いたくないと。

 少年は笑顔で告げる。貴方の英雄になりたいと。貴方の笑顔を守りたいと。

 そのまま二人は旅に出ることにした。

 

 壮大に語られた詩は素晴らしく、誰もが思わず拍手した。冒険譚であり純愛をも歌う一人の少女の話。しかし、リヴェリアの境遇にかなり似ていた。

 

「とても素晴らしかった。不躾で悪いけど、詩について質問してもいいかな?」

 

 吟遊詩人は是非と答えて、質問へ答えていく。

 

「まず、これは何か参考にして作られたものかい?」

 

「いえ、私自身の創作にございます」

 

「旅に出る理由を何故そうした?幼馴染を連れた理由は?」

 

「ハイエルフの方が里を出るのは、拐われるか、追放されることが多いと聞いたことがあります。それは不敬に過ぎると。お転婆なことで親近感を持っていただけたらと。幼馴染の理由としてはお転婆な少女が騎士を連れて旅に出るでしょうか?まして、一人旅などハイエルフの方では考え難く」

 

 一つ一つ類似点を聞いていくが、吟遊詩人の答えは理路整然とされ矛盾もない。

 

「やはり、偶然リヴェリアとベル・クラネルに人物像が近かっただけみたいだね」

 

 とりあえず、ファミリアには誤解だったと伝わり、リヴェリアは胸を撫で下ろす。

 

「残るは、街中で噂されてしまっていることだけど、流石にこれにはどうしようもないかな。リヴェリアには悪いけど、周りが飽きるまで我慢してくれ」

 

「くっ、そうするしかないか」

 

「旅に出る時は事前に相談だけはして欲しいけどね」

 

「くどい!」

 

 その後、リヴェリアは暫くの間、街を歩くたび、盛大に祝福され恥辱に耐えるしかなかったとか。

 

 

 一方、ベル・クラネルは突然武装したエルフ達に理由もわからず追われるはめになり、逃げ回るしかなかった。その中に信頼するサポーターやツインテールの神がいたような気もするが。

 必死の思いでギルドに匿ってもらうことは出来たが、担当アドバイザーに捕まり、理由のわからない説教を長時間受けることになった。

 





 読んでいただきありがとうございました。
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