TS異世界転移-男がヒロインで大丈夫かよ-   作:変T

18 / 47
これは酷い
投稿するか迷ったレベル

後書きにほんの少しだけネタバレがあるので嫌だって人は見ないでください。今後のことで少しだけ伝えておきたいことがあったので


ライバル?

「まじまじと見つめられると恥ずかしいんだけど……」

「あ、ごめん」

「そそり立つものがないから興奮しない?」

「そうなのかな? って女の子がなんてこと言うんだよ!?」

「いいじゃん別に」

 

 奈央香に興奮しないのは脳裏にずっと居座っている修也の影が原因だろうな。奈央香は修也と同い年で、同じ部活をやってきて、そしてなにより純正の女子である。紛い物とは違う純正の女子である。この考えが思考を切り替えようにも、厄介なカビよごれみたいに思考にこびりついて離れない。

 思考がまた発情に毒されているのだろうか。

 修也に好意を持っているのは自分でも認める。だが、それは恋愛感情とは言い切れない。人として好意を持ってはいるが……。だが、奈央香を煙たがったり、奈央香のスタイルをみてイライラしてしまうということは、修也を取られてしまうという認識が思考に根を張っている。まるで修也が自分のもので、まるで修也が自分の恋人であるかのような考え方をしてしまっている。

 酷い思考だ……。

 俺は男だろ。

 

「興奮しないんじゃ仕方ないね。とりあえず、揉んでみる?」

「別にいい」

「あ、そう。じゃあ背中洗ってくれる?」

「はいはい、そもそも汚れてないだろ」

「女の子はいつも清潔さを保っておくものよ。エチケットよ」

 

 旅路で汚れていた俺はアウトじゃねえか。もともとアウトだけど。

 

「……」

「終わったよ」

「ところでさ」

「うん?」

「ムツメちゃん……」

「何さ」

「修也の背中拭いたりしてないよね」

 

 エスパーかよ。怖い。

 

「……したけど」

「……ふーん」

「いや、その、修也が拭いてくれって言うから仕方なく……」

 

 俺はなんで必死に言い訳しているんだ?

 

「ムツメちゃんが背中洗うのがうまいから気になってね」

 

 上手いとか下手とかあるのか?

 

「まあ、別にー、ふーん、なるほど、そういうこと」

 

 どういうこと?

 

「ほら交代、背中洗ってあげるから」

「うん」

「それで、ムツメちゃんは修也のことどう思っているの?」

「どうって……」

 

 背中を洗われながら、答えをどうするか考えを巡らせる。

 

「頼りになる後輩?」

「……そういうことにしておいてあげる」

 

 絶対そういうことで済まないよな。

 

「それで、話を戻すけど、……あれ?」

「ん?」

 

 体を洗っていたら更衣室から誰かが入ってきた。

 

「あ、ナオカ様とご一緒でしたか」

 

 うお、あぶねえ。濡れてもいい服を着て入ってきたと思ったら真っ裸だった。

 でかい。わかってはいたけど、すごいな。シスター服だと全然わからないけど、前回一緒にお風呂に入った時にはわかっていた。でも脱いだらさらにすごいな。一瞬しか見なかったけど、脳裏にお気に入り保存してしまうほどに強烈な印象を残している。

 神様ありがとう。

 

「……」

「……?」

「ねえ、なんでイオーネから目を反らしてるの?」

 

 あ、やっべ。

 イオーネさんの裸は直視できない理由を奈央香に説明しなくてはならなくなってしまった。

 

「……イオーネほどじゃないけど、私もそれなりに大きんだけど?」

「いや、そんなこと言われても、大きさじゃないと思う」

 

 イオーネさんの裸を見て一瞬で俺の中の男が出てきた。これは俺もよくわからないけど、奈央香のことをもしかしたら妹のように見ているのかもしれない。

 イオーネさんは少し離れた場所にいる。かけ湯をしている音がした。

 

「ムツメちゃん?」

「いや、あのー、その……」

「歯切れ悪いけど?」

「いや、だって、ほら、うん、中身男なんだから、裸見たらイオーネさんに悪いでしょ」

「私は?」

「それは奈央香だし、——痛い痛い!?」

 

 また頰を引っ張られてしまった。

 

「とれるほっぺとれちゃう!? あうん!?」

「ちょっと私だってちゃんと女しているのよ!」

「そんな仁王立ちでおっ広げなやつに言われても……」

「なんで直視すんのよ!」

「自分から開いているじゃねえか! 理不尽だからな!? ちょっとは股を閉じろ!」

 

 あー、わかった。俺、奈央香を女として見ていないんだ。男として女を好きになれないんじゃなくて奈央香というタイプがそもそも恋愛対象じゃないんだ。

 理由は妹に似ているから。

 性格もからかいグセとか少し似ているし、意外と責任感が強いところも、髪型はほとんど同じゆるふわ系、顔のつくりは流石に違うけど、体型も少し胸が大きいくらいで、身長160近辺というのも似ている。あと声の音程も近い。歳は妹の1個下。

 うん、恋愛対象としてまるで見ていなかった。

 いや、待て。そうだよ。恋愛対象だよ。

 男心は下心と同じとか言い始めたせいで勘違いしていたけど、俺が相手に求める女性像に近い人に接すれば、男心を戻せるのではないだろうか。

 俺が求める女性像。そんなんあったっけ?

 まあいい、とりあえず、イオーネさんは俺にとってかなり特別な位置に属する女性だ。おっぱい大きいし、美人だし、歳も20で俺と同い年だし、同じ女性だし。

 いや、同じ女性じゃダメだろ。

 ……。

 …………。

 恋愛か……。

 恋愛とは無縁の生活だったな。

 両親を失って、弟と妹のために頑張って、気づいたら弟と妹が立派に成長してお世話される兄貴になってしまった。そんな折に異世界に転移だ。ずっと弟たちのために頑張ってきた俺は弟たちが成長したことで、生きる目標を失っていた。だから、簡単に女神の誘いに乗った。

 これから自分の将来、生活を考えなくてはならない時期で、今まで弟たちに費やしてきた人生は充実感があったが、俺は俺自身の生き方に興味がなかった。恋愛なんてする余裕もなかったし、金銭的には余裕があったから大学には入った。だけど結局目標もなく、ただ時間を持て余していたから毎日ゲームをしていた。恋愛の仕方とかわからなかったから恋人を作ろうと努力したこともない。

 ……。

 …………。

 人を好きになる、か。

 脳裏に浮かぶのはやっぱり修也なんだな。毒されすぎだろ。

 でも、今ならイオーネさんも思い浮かぶ。

 淑女然としていて、優しく真摯に接してくれて、それでいて顔もスタイルもいい、完璧な女性だ。だが、シスターだから結婚とかはしないのかな? こっちの世界の宗教とかまだよくわからないから、恋愛オーケーかどうかも不明だ。神託が未経験という条件から結婚はタブーな気もするけど。

 

「考え事?」

「うん」

「まさか前まで洗ったのに、気づかないとは」

「あ、ほんとだ」

「悲しいなあ」

 

 ごめんよ奈央香。かなり長いこと考えてしまっていたからな。もうイオーネさんも近くにきて、奈央香の隣で髪を洗っている。

 

「……」

「……」

「普通、体より先に髪洗わない?」

「あ、やっぱりそう?」

 

 俺は髪から洗って、上から流していく。先に体洗うと髪のフケとかがつくような気がして嫌なんだよ。もう一回体洗うか。

 髪を洗い始めると隣から変な笑い声が聞こえる。なんだ?

 

「ふふっ、ふひっ、これなら一石二鳥、いや、一石三鳥か……」

 

 何か良からぬことを考えついたに違いない。俺は耳の後ろを重点的に洗わなくてはならないので、奈央香よりも時間がかかる。シャワーを浴びながら横目で表情を盗み見る。

 

「おい、やばいこと考えている顔しているぞ」

「そう?」

 

 とぼけ顔を今更しても、目の怪しい輝きは隠せていないからな。本当に良からぬことを考えている。

 

「ねえねえ、イオーネ」

「なんでしょう?」

「イオーネはさ、地球のこと知らないよね」

「はい、さすがに勇者様方の出身世界のことは……」

「地球にはね、豊胸の女神様の儀式があるのよ」

 

 聞いたことねえよ。

 俺は髪を洗い終え、顔を洗おうとしたところで変な話題がぶち込まれた。

 

「大きい人が小さい人の背中におっぱいを当てるんだけどー、ほら、ムツメちゃんにね」

 

 クソ女神様、この変態オヤジ(♀17)をどうにかしてくれ。無知をいいことにイオーネさんにセクハラしようとしています。俺が止めればいいって? それはアレだよ。アレ。えっと、……アレだから、俺には止められないんだ。そう、アレだから。

 

「いやー、ムツメちゃんが小さいの気にしててさ、やってみようかって」

 

 小さいのは気にしてねえよ。自分についている分には興味ないし。

 

「大きい方が小さい方にくっつけるとおっぱいエネルギー、通称パイエネが増幅しておっぱいを大きくするんだよ」

 

 何言ってんだお前は。

 

「体洗うときとかに石鹸つけながらするの。2人で挟んであげるとさらにこうかはばつぐんだよ」

「な、なるほど、そういう風習? が、地球にはあるのですね」

「体も洗えて一石二鳥ってね」

 

 ここまで酷い設定を信じちゃうのか、女子同士だから抵抗感ないってことか。

 騙しているみたいだけど、もしかしたら地球にはそんな風習があってリアルにパイエネが存在するかもしれない。俺が知らないだけで存在する可能性も微粒子レベルで存在するはずだ。いや、ある。あるに違いない。ないと証明するのは難しいからな。だからきっとある。

 待てよ、仮にそんなものが存在していても、ここは地球じゃないんだから効果は出ないだろ。……これは黙っておくか。

 俺の背中にイオーネさんの大きいものが当てられる。

 はなぢでちゃうぞ。

 

「どうですか?」

「私もぎゅーっ」

 

 なんだこれ、なんだこれ。

 さすがに興奮する。奈央香とイオーネさんのサンドイッチとか鼻血出てもおかしくない。前に奈央香、後ろにイオーネさん。

 柔らかい。

 あったかい。

 幸せだあ。

 両腕2人分で抱きしめられているから密着感を強く感じる。右耳に奈央香の声が、左耳にイオーネさんの吐息がかかる。

 

「およそ人に見せられない顔してるわよ」

「へ?」

 

 表情筋が緩んでいるみたいだ。引き締めないと。

 うん無理。

 

「何か私にいうことあるでしょ?」

「じーじぇい!」

「じゃあ、この儀式の最後の仕上げはー」

 

 2つのぽっちを摘まれれた。

 

「きゃぅん」

 

 体が思いっきり跳ねた。

 摘んだ奈央香が口を開けて固まっている。

 俺は顔から火が出そうだ。

 

 

 

 風呂上がりのホカホカの体で昼ごはん前に一睡でもしたい。眠って先程のことを忘れたい。

 

「テキトーなこと考えて実行するもんじゃないねー」

「……うぅ、奈央香のバカ」

「イオーネが変に誤解していないといいけど……。最後のは思いつきだったんだよ。やっぱりスイッチは押すべきかなって、2つもあったし」

 

 なら、自分の2つのスイッチ押してろ。初日の着替えでわかっているだろ。俺は胸も弱いんだ。刺激に慣れてないんだよ。

 今はお風呂から上がって自室に向かって歩いている。エントランスホールでイオーネさんとは別れた。

 

「ムツメちゃんはイオーネのこと好き?」

「まだわからない」

「そう」

 

 人を好きになる感覚を思い出せないんだ。好意は持っているが、その対象が異性なら好きってことになるのだろうか?

 

「私にとってはムツメちゃんがイオーネと付き合ってくれると助かるかな」

「……」

「……」

「それは、修也のこと?」

「うん、ムツメちゃんさ、修也と距離近すぎるんだよ」

「同じ男だけど?」

「でも、発情レベルが進行したら?」

 

 それは……。

 

「空河とムツメちゃんがくっつくなら別にいいけど」

「空河の扱い酷いな」

「でも、修也は渡したくない。私のものってわけじゃないけど、修也は渡さない」

「だからイオーネさんに恋心、というかイオーネさんに俺が下心を持つように仕向けたのか」

「うん」

 

 まあ、俺も便乗したからなあ。

 でも、奈央香はそんなことまでして俺と修也を遠ざけたいのか……。

 

「修也のことは諦めて、私の恋を応援してくれる?」

「……」

 

 頭が真っ白になった。何か言おうと口を開くが、声が出てこない。どうにか振り絞る。

 

「おう、えん、するよ……」

「そんな苦い顔しながら言わないでよ。さすがに意地悪がすぎたかな」

 

 声に出すのも苦しかった。修也と奈央香が付き合う。別に付き合っても俺には何にも関係ないはずだろ。でも、胸が痛い。苦しい。

 奈央香に取られたくない。

 

「修也とは————っ」

 

 修也の、唾液を、舌を合わせたことを不意に言い出しそうになった。

 目をつぶって言いたいことを堪える。

 

「————何も、ないから……」

 

 奈央香は黙っていた。

 しばらくしてから何かを言おうとして口を閉じた。目を閉じてから手を頭の上で組む。

 

「うーん、まだライバル宣言は早かったかなー」

 

 空気が緩んだ。

 先程までの緊迫した空気から解放され、ほっと息を吐く。余計なことを口走らずに済んでよかった。

 

「私はね、ムツメちゃんがライバルになると思ってるよ。今じゃなかったみたいだけど」

「そうか、俺にはよくわからない」

「悩んでいるのがその証拠。男心をわざわざ取り戻す必要があるってことは修也と何かあって、女の感情を刺激されたとかそんなとこでしょ。だから心の性が歪んでて、戻す必要がある」

 

 だいたいあってるな。

 

「まあ、でも、ムツメちゃんが女性として生きると宣言しない限りは敵じゃないんだよね」

「どういうこと?」

「ムツメちゃんじゃなくて修也がね」

「修也?」

「ムツメちゃんから見て修也ってどう?」

「堅物、生真面目、唐変木」

「語呂いいね。まあ唐変木かどうかは知らないけど、超がつくほどに誠実なんだよ。だから、ムツメちゃんが女性として生きていくと言わない限り、修也からムツメちゃんに手を出すことはありえない」

 

 超がつくほどに誠実か。確かに旅の最初の頃は本当に男扱いされていた。着替えの時だけは唯一女扱いされていたけど、その時も修也に疚しい感情なんて一切見えなかった。途中から修也が何考えているか観察する余裕なんてなくなっていたけど。

 

「……それはなんとなくわかってた」

「……へえ、直感?」

「そんなとこ」

「女の勘じゃん」

 

 いや、男だって勘で判断することあるから。

 

「ムツメちゃんが男なのか女なのか時折わからなくなるよ。私の中では9割女の子として接しているけどね」

「せめて5割にしろ」

「無理、かわいいんだもん。それで、今の修也は1かな? 本来の修也なら0だろうけど」

 

 息を飲んだ。1割女性として見ている。奈央香から見て修也は俺のことをほんの少しは女として見ていると?

 

「だから、怖くなった。ムツメちゃんに修也を取られる可能性が出てきたって本気で思ってる。これは私の、女の勘だよ。今もムツメちゃんに先を越されている感覚もあるし」

 

 思わず手が口元に伸びかけたけど止めた。もし伸ばしてしまっていたら根掘り葉掘り追求されただろうな。

 

「……もしムツメちゃんが女の子として生きるようになるのなら、早めに決心して欲しいな」

「なんで?」

「私、ムツメちゃんに嫌われたくないし、……嫌いたくもないから。じゃあ、またお昼に」

 

 俺は奈央香の後ろ姿をしばらく見つめてから部屋に戻った。




 結局一番セクハラしてるのは奈央香。



 ネタバレみたいで申し訳ないけど、(以下ネタバレ注意)





・ムツメちゃんイオーネさんと浮気フラグ
・修也が奈央香に寝取られフラグ
が、立ちました。
 先に宣言すると後者は書く予定です。ライバル側の進展ですね。修也爆発しろ。
 男側でも取られるのは嫌だって人はごめんなさい。寝取られタグは必要ないかなって思っています。先を越されるだけなので、修也と奈央香がゴールインするわけではありません。寝取られじゃないとは思うんだけど……。必要なら寝取られタグ入れますが、多分いらないやろ。
 前者も見ようによっては寝取られかもしれないけど、どちらかといえば二股かな。書くかどうかは未定です。



 次回はイオーネさん視点、裏話がメインです。
 たぶん結構時間かかりますがなるべく早く投稿します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。