TS異世界転移-男がヒロインで大丈夫かよ-   作:変T

26 / 47
 22時40分執筆終了。
 見直す元気なんてなかった。

 タイトル思い浮かばなかった。


ヒロイン

 この貴族の男が本当に依頼主。俺がムカついて言いくるめたやつだ。勇者の俺に仕返しをするために子どもたちを利用したのか。初老の男は護衛か。

 その初老の男に両腕を押さえ込まれただけなのに身動きが全く取れない。原因は秘部にかけられた媚薬のせいで体が勝手に反応し続けているせいだ。

 

「クズはクズなりに使えるものがあるというものだ」

「うぅ、ぐっ……」

 

 俺が倒した悶え苦しんでいる3人のうちの1人の背中に足を乗せ、貴族の男が剣を突き立てる。

 

「がああ」

 

 ゴロツキたちの赤い命が垂れていく。

 こいつら、戸惑いなんて一切なく殺していく。残りの2人も貴族の男が次々に剣を刺す。

 鉄の匂いが周囲に蔓延する中、俺はそれでも快楽に振り回されていた。

 

「くっ……、んんっっ! んんっっっ!」

 

 処置を終えた貴族の男がゆっくりと俺に近づいてくる。顔に張り付いたニタニタとした笑みに鳥肌が立つ。

 

「こいつらも面白いことを考えるものだな、パンタソ。ガキを人質に遊ぶなんてな」

「悪趣味かと」

「そうだな、悪趣味だ。だが、こいつは俺に礼節を欠いた女だ。弄ぶくらいがちょうどいいだろう?」

 

 礼節?

 時と場所も考えず、俺をナンパした男の言葉かよ。

 そうか。やはりあの仕返しか。自業自得だろうが……。

 どうする。魔法は今のままじゃ暴発するか使えない。奥歯を噛み締めて快楽に耐えている以上、緩めれば、快楽で脳を支配されてしまう。肉弾戦もかなり厳しい。

 

「お、お前ら、お姉ちゃんから離れろ!! 離れろ! 離れろ! 離れろ!!」

 

 なっ!?

 まずいっ!

 

「なんだ?」

「離れろって言ってんだ!! お姉ちゃんに酷いことするなあ!!」

「酷いこと? 酷いことされたのは俺なんだが?」

 

 被害者ぶってんじゃねえ。お前が悪いだろうが。

 くそっ。

 相手が2人に減ったからか、壁に縫いとめられているのに、少年の1人が強い語彙で男2人に抗おうとしてしまう。

 

「さっきクズどもが面白いこと言ってたな。3人いれば、1人はやっても人質は2人いるんだからって。確かにいい見せしめになるだろう」

「や、やめろ……」

 

 ダメだ……。こいつら2人、いや、俺を抑えている初老の男1人で先のゴロツキ7人以上の強さがある。歯向かったら子どもたちが容易に殺される。

 

「お願い……、お願いだから言うこと聞いて……、逆らっちゃダメ……、あぅんんっっ!?」

「ね、姉ちゃん……」

 

 言葉を発するために奥歯を噛み締めていた力を緩めたせいで、軽く達してしまった。

 

「ははは、これは傑作だ。俺に楯突いておきながら、今更俺の言葉に従うと?」

「うぅ、ぁあ……」

「おお、ヒクついてるなあ。どうした? 昨日の威勢はどこへ消えた?」

 

 耐えろ。耐えるんだ。今は屈辱に耐えろ。どんなに汚されても、どんなに辛くても。

 ……。

 …………。

 嫌だ。

 でも、俺がこいつの慰み者になっていれば時間を稼げる。そうすれば日が暮れ、救援が王都に戻ってくれば空河が気づいてくれるかもしれない。

 賭けられたのは少年たちの命と俺の貞操だ。比べる価値なんてない。そのはずだ。

 でも……。

 

「脱げ」

「……」

 

 初老の男が俺を手放し、近くにいた少年の1人をさらに人質に取る。

 嫌なものは嫌だ。

 できるだけ時間をかけて、空河が城下に戻ってきたら気づくはず……。だから……。今は従わないと……。

 従わないと……。

 本心が嫌がっている。脳裏にずっと修也のことを思い出してしまう。貞操を奪われるという意識がどうしても修也を思考に呼び寄せる。

 お願いだから出てくるなエルシア。

 

「早くしろ」

「痛い!? 痛いよぉ……」

「うぅ……、やめて、血出てるから!」

「なら、早く脱げ」

 

 聞き耳を持ってくれない。また少年の首にナイフを突きつけられてしまった。メンツがゴロツキから雇い主の貴族に変わっただけで状況はまるで変わっていない。

 俺は下着を脱いで肌を晒す。

 媚薬の効果が薄らいだから、逆に助けられる可能性はあがったかもしれない。

 

「後ろを向いて、壁に手をつけろ」

「……」

「胸は小さいが、いい尻だな」

 

 貴族の男がゆっくりと俺に近づいてくる。

 やめろ、触るな!!

 触られる瞬間、人質の子どものことすら忘れ、嫌悪感から魔法を放ちかけた。

 出てくるな、エルシア!

 

「ルペウス様」

「邪魔をするなパンタソ」

「いえ、今触れていれば魔法を使われたかと」

「ん? ガキを殺されたくはなかったんじゃないのか?」

「それでも反撃したでしょう」

「生意気な女だ。……ふむ。やはり見せしめは必要だな。1人やれば大人しくなるだろう」

 

 ダメだ。これ以上はもう時間が稼げない。こいつらは本気で実行してしまう。

 俺は意を決する。

 

「ライトブレッド!!」

「坊ちゃん!!」

 

 幸い下着を脱いだおかげで染み込んだ媚薬の効果を受けなくなった。皮膚に染み込んでいる媚薬の分だけは効果を受けてしまうが、先ほどよりかはマシだ。

 魔法の先制攻撃で舞い散る家の木屑の中を突き抜けて、貴族の男を潰しに行く。

 

「ちっ!」

 

 初老の男から斬撃が俺に向かってきた。

 貴族の男を庇って魔法をまともに食らったはずなのに。

 上体を反らし、そのまま逆立ちの状態に入り、剣を弾く。素足ではなく靴を履いていたおかげで無傷で弾けた。剣を弾いた反対の足で剣を持っている手を攻撃する。

 初老の男は持っていた剣を天井に弾き飛ばす。

 よし、得物は奪った。これなら————。

 

「————っ!? 二刀!?」

「右の剣は失いましたが」

 

 くそっ。

 剣はさっきまで1本しか持っていなかったのに!

 どこからかもう1本の剣を取り出していたようだ。左からくる追撃をなんとか回避する。

 家が崩れている最中だ。もたもたしていたら子どもたちが生き埋めになってしまう。

 だが、それよりもまずいことをしてしまった。反射的に体制を整える行動をとった。つまり、今の俺は子どもたちのいた場所からさらに遠ざかり、部屋の隅に反射的に引いてしまった。

 終わった。失敗した……。

 くそっ、くそっ!

 

「このメスガキがあああ! 俺様の足を!!」

 

 貴族の男の片足が露出している。直撃させられなかった。

 目の前の初老の男1人に止められてしまっている。接近戦は苦手ではないが、熟練者1人を圧倒するほどの力量はない。

 

「ライト————んんくっっ! こんなときに!」

「させませんよ」

 

 初老の男が一歩で近づいて攻撃してくる。剣は躱しても、追撃の拳や蹴りをガードさせられてしまう。たとえ得物を持っていようと初老の男とは接近戦で戦える。だが、戦えるだけだ。圧倒することができない。

 その間に貴族の男が剣を振りかぶってしまう。

 

「見せしめだあああ!」

「やめろおぉぉぉお!!」

 

 突如鳴り響く轟音に聴覚が麻痺する。

 土埃が舞い上がる。

 

「な、なんだ……、何が起きた!?」

「…………」

 

 ……。

 …………。

 え?

 は?

 え?

 嘘……。

 なんで……?

 開いた口が塞がらなかった。

 体をくすぶる熱を無視できるほどに衝撃だった。

 崩れゆくあばら家の天井が空へ吹き飛び、下町のように家と家が密集する路地に立たされた。あばら家の形骸だけが残り、路地裏のわずかな隙間から入ってくる夕暮れの太陽が目に突き刺ささる。

 小さく差し込む夕暮れの光を背景に誰かが立っていた。

 逆光で顔は見えなくてもすぐにわかる。

 

「助けにきた」

 

 修也が剣を振り上げていた……。

 

 

 

————今から10分ほど前。

 

「少し、手間取ったな」

 

 消えゆく上級魔族が最後に恨み言を連ねていたが、奈央香やヘイストス王に視線を向ければ、生き残った魔族との連戦をしていた。上級魔族の散り際の言葉を、俺も聞いていないが、誰も聞いていないな。

 

「早々に片付けるか」

 

 俺は剣を横薙ぎに、生き残りの魔族の群れを一網打尽に倒す。

 

「お疲れ修也」

「ああ、奈央香もお疲れ様」

「私? 私はそんなに疲れていないよ。後方から魔法を撃ってただけだし、ムツメちゃんと比べると威力ないけど」

「十分だ。ムツメならこの魔族の城を一撃で崩壊させてただろう」

 

 魔族が拠点にしていた城はアテナ王国がもともと保有していた領地の城であり、ヘイストス王の弟が最後に管理していた城だという。破壊してしまえば、前線を引き上げるための拠点にできなくなってしまうから、ムツメは適任とは言えないだろう。

 

「これくらいでいいか」

 

 荒い息を整えているヘイストス王だが、俺たちの戦いについてこれる貴重な現地戦力だ。もっとも限界もかなり近いみたいだが。1対1なら今しがた倒した上級魔族と同等程度の強さだろう。四大魔将が相手になると流石に厳しいか。

 

「さあて、我が愛しのムツメちゃんが待つ王都にさっそく帰還だあああ!! ムツメちゃーん!! 待っててよー!!」

 

 訂正だ。案外余裕はあるかもしれない。

 

「……」

「……つっこまないの?」

「ツッコミはあまり得意じゃない」

「私もボケ側だしなあ。ムツメちゃーん!」

「2人は面倒だぞ……」

 

 ツッコミか。最近はほとんどムツメがやっていたな。空河もボケ倒しているし。

 ……。

 …………。

 

「……なんだ?」

 

 胸騒ぎがする。

 嫌な予感だ。

 両親を交通事故で亡くしたときにも感じた、あの嫌な予感が胸をざわめかせる。なにが……、ここか、周囲か、それとも誰かが。

 わからない。何が原因で胸騒ぎがするのか。

 女神リシアから神託を受ける前から俺が持っていた直感のようななにか。

 その胸騒ぎが俺を落ち着かせない。

 周囲の索敵をしても雑多な魔族が引っかかるだけ、脅威という脅威は訪れていない。

 ならば、先ほど思案していた人物の中に危機に陥っている人物がいる可能性だろうか。奈央香もヘイストス王も上級魔族を倒した今、危険が訪れるとは思えない。

 だとしたら……。

 

「ムツメが危ない」

「は?」

「ムツメが危ない、そんな気がする」

 

 ヘイストス王が口を開いて固まった。奈央香は目を細める。

 

「いやいや、いきなりなんてことを言い出すのやら……。はっ!? もしや、ムツメちゃんの危機を直感して助けに行くという建前で、ムツメちゃんをデートに誘う気だな!? つまり、シュウヤくんもムツメちゃんを狙っていたのか!? させんぞ、渡さんぞ! ムツメちゃんは俺の嫁!」

「黙っていてください」

「あ、はい。すみません」

 

 流石にどんなに集中しても数百キロ離れている場所のことなんてわからないか。望遠のようなスキルでもあれば見えるかもしれないが。

 

「……」

「……行くの?」

「ああ」

 

 力のないあの頃とは違う。

 俺は城の窓から飛び降り、音に迫る速度で王都を目指した。

 100キロ以上離れている場所から王都まで全力で走っても10分はかかる。間に合わないかもしれない。王都に近づけば近づくほど、嫌な予感が次第に強くなっていく。

 この感じ……。前にどこかで感じた。

 嫌な予感の中でもそれぞれに特徴がある。今受けている嫌な予感は身に覚えがあった。それもごくごく最近のことだ。

 

「……クレーテの街のときか」

 

 ムツメと2人旅でクレーテの街に襲来する魔族を一網打尽にする任務に就いた。そのときクレーテの街の門に俺たちを貴族かどこかのお偉いさんに合わせようと衛兵が駐在していた。俺たちは魔族襲来で忙しい衛兵の目を盗んで町に入り、次の日も早朝に目を盗んで王都に戻った。貴族との挨拶が面倒だからというだけではなく、何か嫌な予感がしたからだ。そのときの感覚と類似している。嫌な感じは前とは比べ物にならないほど強いが……。

 

「急げ!!」

 

 急いでムツメを助けに向かわなければ……。

 ムツメと顔を合わせたのは3週間ほど前、ただ高校生をしていた俺たちはその人生を終えるはずだった。そのとき、一緒に死ぬ運命にあったのが大学生がムツメだ。俺たちは女神に助けられ、その恩義に報いるために異世界に渡った。

 ムツメは頼りになる人だ。

 鑑定で見ていたから知っているが、俺をリーダーにして、裏から、縁の下から俺たちを助けようとしてくれる人だった。空河と奈央香は高校も部活も同じ、毎日顔をあわせる仲良い友人関係だったからこそ、異分子のムツメという人物を俺は警戒していた。そのために四六時中鑑定を使って監視していた。そして、ムツメが俺たちを影ながら見守っていることがわかった。

 初日に魔族にひどい目にあっていたし、女の体になったことの愚痴もよく聞かされたが、自分に降り注ぐ災難よりも、俺たちのことを常に守ろうと動いていたのを俺は知っている。異世界のこの星の人たちを俺以上に警戒していた人だった。

 だから俺はムツメをすぐに仲間だと受け入れられた。

 付き合いは短いが、今となってはムツメは大切な仲間だ。

 だから俺はこの胸騒ぎを、ムツメを危機から助け出すために王都へ急ぐ。

 

「解決の仕方がわからなかった二重人格が原因か?」

 

 王都までかかる時間が長いから色々なことを邪推する。

 二重人格は王都を出発する前の日のムツメに起きていた現象だ。鑑定の名前の欄に『須木根睦/エルシア』という形で書かれ、エルシアという名が追加されていた。解決方法がわからず、ひとまず遠征を終えてからムツメと話そうと思っていたことだ。

 

「それとも発情期の段階がレベル5に急速に上がったか……」

 

 症状自体はある程度まで抑え込めていたが、毎晩毎晩欠かさす自分を慰めていたムツメだ。きっと俺の耳には入らないと思って声を押さえ込んでいたが、聴覚も強化されている俺の耳には届いていた。毎日盛っていたのだから発情レベルが上がってもおかしくはない。一応薬は残しておいたが、より強力な素材で作るのは憚(はばか)られた。流石に男の性を飲ませるわけにはいかない。ムツメは元男だ。

 まあ、その境界もかなり揺らいではいるが……。

 

「他には、魔王が突如王都に侵攻したか……」

 

 ないな。

 魔王が侵攻したと考えるとムツメ限定で起きている胸騒ぎの説明にはならない。ムツメが攫われているなら答えが合うだろうか。ムツメを攫える魔族なんて上級魔族くらいだが、イオーネさんはともかく空河がそれを許すとも思えない。空河が近くにいなくて結界外で攫われているとかか?

 

「クレーテの街、貴族、ムツメだけ……」

 

 繋がらない線を探っても仕方ない。とにかく足を動かさないと……。

 

「見えた! 『索敵』『透視』」

 

 王都を視界に捉える。

 ムツメの正確な位置を捕捉するため、スキルを一気に発動させる。

 どこだ?

 俺の近くにイオーネさんと空河がいる。街の中に2人がいないのに、ムツメの反応は街の中だ。これは本格的にまずい。俺は2人を無視して王都へと急ぐ。

 どこだ?

 どこにいる?

 街中に入った。

 

「『聴音』『接触』……! いたっ!」

 

 接触のスキルに反応があった。仲間の位置を完璧に把握するスキルが範囲内のムツメの姿を捉えた。

 ムツメが裸になって戦っている。

 なんでだ!?

 ムツメの近くに他の感覚スキルを全集中させる。

 小さな家のような場所で、小さな3人に剣のような切っ先が向かいかけていた。

 状況は何がどうなっているかはわからない。

 ただ、わかることは、もう1歩で届くこと。

 あと1km。

 

「はあ!!」

 

 俺は全力を振り絞った。




 主人公最強系ってのはイコールでなろう系……なのかな?
 主人公じゃないけど。

 次回は3日後、もしかしたら4日かかるかも……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。