かなりきつかった。3日でよく間に合ったよ。つまり誤字脱字以下略。
「うっ……わぁ……」
手から伝わる衝動を実感し、修也の背中に顔を押し付けているのに生臭い匂いが鼻を突き刺す。嗅覚が研ぎ澄まされ、次第に修也とのさらなる淫交を思い浮かべるのを止められない。
「はぁーっ……、はぁーっ……、っ…………」
まだまだ採取できそう……。
俺は再び手を動かす。
「ムツメっ……、……うっ」
握り込む手の内側に鼓動のようにドクンドクンという波が伝わる。
用意した採取瓶が足りないかもしれない。
生臭い匂いがさらに鼻につく。
「全部出た?」
「……」
「まだ、なんだね」
……。
…………。
約10分ほど修也の背中に抱きついていただろう。瓶が5個も満タンになってしまった。俺は満タンになった瓶を異空間にしまう。
「はあっ、はあっ、んっ」
「はあっ、はあっ、っ……、ムツメ……」
発情期関係なく発情してしまっている。平時の状態なのに、匂い嗅いだだけで昂奮してしまった。ショーツを下ろし、左手で自分に起きている現象を確かめる。
ぐちょぐちょだ……。
「くっ……」
おっと……。
修也も快感に流されているのか、全身の力をかなり抜いている。少しだけ俺の方に体重を預けてきた。足腰に力を込められないだけかもしれないが……。
薬の材料の製造元の方の感触も確かめる。
「おい、そっちは……」
「……」
修也の手による制止を振り切って感触を確かめる。まだまだ溜まってそうだ。
「ねえ、もう瓶ないんだけど……、……どうする?」
「ムツメ……」
「なに?」
「ムツメ……、ムツメ……」
「……?」
どうしたのだろうか。
「ムツメ!!」
「きゃあああっっ!?」
振り向いた修也が覆いかぶさってきた。
驚いて目をぎゅっと瞑り、バランスを崩した俺は尻餅をつくと思っていたが、修也がおしりをガッチリと掴み支えていた。
……嘘だろ?
これ、もしかして……。
あ、そうだ。今、履いてない……。
……。
…………。
あれ?
顔が修也の胸に押し付けられて、少し呼吸が苦しい状態が続いていたが、なかなか修也が動かない。下腹部に当たっている感触はあるのだけれど、理性がギリギリで踏みとどまっているようだ。
「い、いれるの?」
「それは……」
俺は体をくねらせて、具合のいいポジションを探ろうとするが、修也がガッチリと掴んでいるせいでうまく動けない。
「ムツメ……、ごめん」
「いいよ」
意を決したのか、少しずつ股の間に修也が入ってきて……。
そのまま通過した。
「うん?」
「少し、我慢してくれ」
「え? えぇっ?」
こ、こんのヘタレ……。
地面に足がつかないし、おしりを滅茶苦茶に揉みしだかれている。
それはいい。それはいいが、ここまでしておいてお預けにされるとは思わなかった。
修也が腰をお腹に打ち付けてくる。
「はあ、はあ、はあ」
「もう! この……、ん……、ん……、んう……」
「はあ、はあ、はあ、……っ! ————、くっ……、ふぅ……」
「……大丈夫?」
「ああ、ようやく、毒が、抜けてきた」
「そ、そう」
1人だけすっきりしやがって……、でも、なんだろう。充足感というか、使われたこと、それがすごく嬉しい。
でも、嬉しくても下腹部に残る疼きは一切解消はされていない。だから、このまま……。
「助かった」
修也は先程までとは一転して冷静になった。
「しゅう、や?」
「まだ遠征中だからすぐに寝よう」
何を言っているんだ?
だって、まだ俺は……。
「できるだけ体力は回復しておきたい、突然の魔族の襲撃が起こらないとも限らない」
「そ、そうだな……」
冷静になった修也を前に俺は自分の欲求を言えなくなってしまった。後片付けを終え、修也は体を拭くために小川の方に向かった。
「……ばか」
わざと聞こえるような音声で言ったのに、修也からの反応はなかった。
次の日、俺たちは王都へと到着した。
イオーネさんは疲れからぐったりとしていて先に自室に連れて行き、先の魔王たちとの戦いの報告のため、修也が軍部の人たちと意見交換に向かった。
俺は昨日は一睡もできていない。放置された後、高ぶる感情を抑え込めたときには、夜が明けようとする時間だった。だから俺は大浴場から出て、ベッドに一直線に向かおうとした。
そして、奈央香が王宮2階の踊り場に腰掛けていた。
「ムツメちゃん、ちょっといい?」
眠いんだけど、という言葉は飲み込んだ。聞いたことのない奈央香の冷たい言葉にただ事ではない空気を感じ取ったからだ。
「何かな?」
奈央香は寄りかかっていた壁から態勢を整えてから俺に向き直る。1つ大きく呼吸をしてから、真摯な目で俺を見つめて、口を開いた。
「ムツメちゃんは修也って付き合ってるの……?」
「……え?」
いきなりな質問で驚いてしまった。こんな勘違いを奈央香がするとは思えなかった。
「付き合って、ないけど?」
「本当に?」
「う、うん」
なんで奈央香はこんなベタな勘違いをしたんだ?
俺が仮に修也と付き合っているとすれば、修也なら速攻で奈央香に知らせて、君とは付き合えないと宣言する。修也の性格を知っていれば勘違いするはずがない。
「付き合ってないことくらいわかると思うけど」
口に出すとちょっと辛いな。
だが、奈央香から、俺は想定していない解答が飛んできた。
「だって、夜中に2人であんなことしてたのに?」
見られてた!?
バカな……。
いや、昂奮しすぎて周囲への注意が散漫になっていたのか!?
修也も鑑定で注意深く————。
「————っ!」
昨日、修也が急に冷静になったのは……。
奈央香が唇を噛み、俺を睨みつけてきた。
「何か企んでたのがわかってたから、2人のあとをつけた」
「企むって、別に企んでなんか……」
「嘘、ついてるよ」
奈央香が腰のあたりを指していた。俺は目線を左下に向けると、尻尾が左に触れているのが視界に入る。
そうだった……。
「で、もう一度聞くけど、付き合ってるの?」
「付き合ってない」
「……付き合ってないのに、あんなことしてたの?」
どう、答えれば……。
奈央香の真剣な瞳に吸い込まれるかのような感覚に陥り、自白するように俺は口を開いた。
「…………付き合ってはいないけど、……した」
「————っ!」
視界が右にズレた。
痛くはないな……。
思いっきりビンタされた。手の軌道も全て追えたし、避けようと思えば避けられたけど、避ける気にはならなかった。
「あ、ごめん……」
奈央香が謝ってくるが、俺はそれを受け取るわけにはいかない。
「……酷いね。叩くんだ」
「……それ、ムツメちゃんが言うの? 誰が酷いかわかってる?」
「叩いた人」
わざと挑発したら、奈央香は即座に乗ってきた。俺は努めて冷静に受け答える。
「ムツメちゃんのこと、嫌いにはなりたくなかった」
「俺は奈央香のこと好きだよ、友だちとして」
奈央香が唇が切れそうなほどに噛みしめる。
「だったら……、だったらなんであんなことするの!? あんなの卑怯じゃない!?」
「卑怯じゃない!!」
俺は奈央香の声量に対抗するかのように声を荒げる。奈央香も面を食らったかのように驚いた顔をしたが、即座に怒りの感情が全面に表れる。
「何が卑怯じゃないっていうのよ! あれは手伝う必要なんてないじゃん!」
「それは……」
「どうせ自分の発情期を利用して体で迫っていたんでしょ!?」
「違う!」
昨日は違う。発情期の対処は俺から修也に要求してはいるが、修也の了解も得ている。
でも、エルシアのときは……、エルシアは結局、二重人格にはならなかったから、あれも俺の行動ってことになるのか? 一応は了承得たけど、今の奈央香のように卑怯と修也にも言われた。
卑怯。
卑怯者。
俺の心に黒い影を差し込む言葉だ。
卑怯だなんてわかっている、そんなこと。
「発情期のことは修也に聞くからいい」
「それは……」
「言い淀むってことは、やっぱりそうなんだ」
心情が揺れ動いているのを奈央香に見抜かれた。
奈央香の目が細まる。犬歯が軽く覗くくらいには歯を食いしばっている。奈央香の逆鱗は収まりそうにない。
「変態だよ、変質者、それともビッチ?」
「……」
「否定してみてよ」
否定するわけないだろ。そうなんだから。こっちにきてから肉欲に脳が支配されているかのように快楽に流されてしまっている。日本人の感性からすれば変態だというのは認める。だけどそれは————。
「奈央香には、関係ない」
「そう、そんなこと言うんだ」
「最低」
奈央香の言葉に頭が真っ白になった。
最低。
そうか……。奈央香はそう言うんだな。
「じゃあ、奈央香は黙って修也を取られるところを俺に見ていて欲しいんだ」
「なっ、そんなこと何一つ言っていないでしょ!?」
「言ってるんだけど? 俺は俺なりに修也にアピールしてただけで、それを否定するってことは修也とは私が付き合うから黙って見ていろってことでしょ」
「そんなこと言ってない!」
「言ってるんだよ! 分からず屋!」
「そっちが!」
また手を振り上げて、奈央香は止まる。
「叩けばいいじゃん。また暴力を振るえば」
「うぅ……」
奈央香の目尻に涙が溜まっていく。俺も次第に視界が霞んできた。
「あんな、あんな、肉欲で迫るやり方なんてしなくても! ムツメちゃんだって十分魅力あるのに、なんで———」
「奈央香は女の子じゃんっ!!」
頭に血がのぼっていた状態の俺は何もかも止まれなかった。
俺は内に秘めていた不満を漏らしてしまった。
「な、何を……?」
「奈央香は普通の女の子、俺は元男の紛い物なんだよ! どうあがいたって奈央香しか見てくれない! 修也を振り向かせるには奈央香のアピール以上のことをしていかないといけないんだよ!!」
「そうだとしても限度ってものがあるでしょ! 修也が弱っているのに付け込むなんて最低だよ!」
「わかってるよっ! 最低だってことくらいっ!」
奈央香は黙って俺の言葉を涙を流したまま聞いていた。
「そうでもしないと俺なんかじゃ……、奈央香に勝てるわけないじゃん……」
俺も涙が溢れていた。
「それは昔の、ことでしょ、今の女のムツメちゃんなら!」
「奈央香は何もわかってない!」
「くっ……、この……、わからないわよ! わかるわけないでしょ! 私はあなたじゃないんだから!」
理解なんて、できないし。もう、してくれなんて思わない。
「俺だって、奈央香の立場なら、こんなことしないよ……」
「……」
「俺は、俺は……、とにかく修也に振り向いてもらうために……」
「もう聞きたくない!!」
「奈央香……」
自分の部屋に走って帰っていった。
ソリの合わない関係じゃなかった。奈央香は妹に少しだけ似ている。だから楽しい時間を過ごせた。でも、俺が、俺が元男だから……。本来なら絶対勝ち目のない奈央香に勝つために、奈央香が嫌うかもしれない方法で修也に迫った。
結果がこれだ。
奈央香には大いに嫌われた。
奈央香が真剣に俺と対峙したことを思い出して、俺もそれに感化されたのか……、黙っていれば奈央香との仲はこじれなかったかもしれないけど、奈央香にはすべて話してしまった……。
今日をもって、奈央香とは近くにいても疎遠な距離感になってしまった。
1週間、奈央香とは話していない。
魔族に獣人の国が一撃を入れたことで、人族中心のこの国はしばらくの安寧が訪れていた。前線を引き上げるための物資搬送と拠点修復に忙しい日々を送っていた。
今日は奈央香と2人きりの仕事になった。
気まずい。
「ムツメちゃん」
「……なに?」
たまたま活動内容が被ったから奈央香と一緒に作業に当たっていたが、今日も今日とて6時間くらいは無言の時間が続いて、本日の作業が終わろうとしていたところで奈央香が俺の名前を呼んだ。
「……」
「……」
「私、私……」
「……いきなり泣かないでよ」
名前を呼ばれて返事をし、次の言葉を待っていたら奈央香が泣き始めてしまった。おそらく、奈央香が謝ろうとしているのかもしれない。
「うぅ……」
「……謝らないで」
「なんで……?」
「俺にも譲れないものがあるし、修也に対する態度を、奈央香に認めて欲しいとは、もう思ってない」
「……」
涙に濡れた顔を持ち上げた。
「奈央香は謝りたくないんだろう? ならそれでいいだろ」
「よくない!! うぅ、だって、だってぇ……」
奈央香が駄々をこねるかのような声を上げる。
「ムツメちゃんのこと好きなのに、嫌いなんだもん!!」
「えぇ……?」
「うぅ……」
「泣くなよ」
たくさんの馬車に荷物を詰めているのだが、奈央香が馬車の中で大泣きをしてしまい、俺は奈央香の分の作業もやることになった。
「落ち着けって、ほら」
異空間にしまっておいたアップルジュースを奈央香に渡して飲ませる。少しは落ち着いただろうか。
「ムツメちゃんが、修也に、体で迫ることは理解できたの……」
「そうか」
理解できた、か。理解したくないから怒っていたと思ったけど、違うのか。
「理解できてもね、理解したくなかった」
「うん」
「……」
「……」
「なんで、って聞かないの?」
「じゃあ、なんで?」
「……」
「ごめんごめん。ちゃんと聞くから」
どうやら真剣な話らしい。俺は泣いて座り込んだ奈央香の隣に座る。
「私の話なんだけど……、少し長くなるかも……」
「聞くよ。俺は奈央香のこと好きだし」
「……無視してたくせに」
「それ、奈央香も同じだから」
涙まじりに少しだけ奈央香が笑った。奈央香は目を軽く伏せたまま、少しだけ俺の方を向き、ゆっくりとした口調で話し始めた。
「私、両親が別居しててね」
俺と修也は両親を亡くしているけど、奈央香は少し違うのか。
「2人ともそれぞれ浮気してるんだよね」
奈央香の両親はそれぞれが浮気し別居状態、父にも母にもそれぞれの恋人がいて、それぞれで同居しているらしい。奈央香は高校に入ってからはホテル暮らしだという。奈央香はそんな両親のことを嫌っている。中学の時に両親それぞれの淫行を目撃してしまい、トラウマになったとのこと。だからこそ修也を好きになったという。ドがつくほどの理性的な男と清廉潔白な付き合いをしたいというのが奈央香が修也に思い描く恋心だそうだ。
恋というものに幻滅しそうなトラウマ抱えているのに、それでも恋しようって思えるのか。
「……よく恋なんてできるな、って顔してる」
「尻尾じゃなくて顔でバレた!?」
「バレバレだよ……、まあ、誰でも思うことだけどさ。……私も高校に入るまで恋なんて絶対しないって思ってた」
「恋愛アンチ?」
「そんなところ。でもね。修也と会って修也みたいな理性的な男子っているんだなって思って、それで修也と一緒にいるうちに、どんどん好きになってね」
「修也なら裏切らないって?」
「そういうことか」
つまり、俺が修也に対してアピールしたのが奈央香のトラウマに触れていたということか。奈央香の両親が娘の奈央香に淫行を見られているというが、それが大いに影響していそうだ。詳細は奈央香も話したくはないだろう。
でもなあ……、修也も完璧に理性的とは思えないけどなあ。結構理性崩れるし、むしろ崩せるし。あいつも結局男だけど……。
理性的な男性と清廉潔白な付き合い、か。
「清廉潔白な付き合い、ね」
「……意外かな?」
「意外といえば意外だし、意外じゃないといえば意外じゃない」
「どういうこと?」
「奈央香って黙っていれば大和撫子じゃん、黙っていれば清廉潔白感あるし」
「黙っていればって何?」
「痛い痛い、ほっぺつねるな」
結構ガチ目にほっぺつねられた。めっちゃ痛い。過去一で痛い。
「ムツメちゃんのこと、嫌いになんてなれなかった」
「そうか、俺は奈央香のこと好きだぞ」
「もう! ムツメちゃん、ほんとずるい! もう!」
俺も奈央香も1週間かかってしまった。奈央香の笑顔が見れる日がこんなに早くくるなんて思いもしなかった。でも、それは奈央香が踏み出してくれたから、俺からは絶対に踏み出せなかった。
「大人はずるいんだよ」
「……」
奈央香がぽかんとした顔をする。
「そっか、忘れてたけど。ムツメちゃんって歳上なんだなあ」
「前から20歳だって言ってるけど?」
「17の男に惚れてるくせに」
「うっせ、恋愛に条件なんていらないんだよ」
「ムツメちゃんのは恋愛じゃないし、変態だし!」
なんてこと言いやがる。
……事実だけど。
「ムツメちゃん歳上なんだよね……」
「なんだよ、そうは見えないって?」
「女の子歴1ヶ月だから歳上に見えないの、かも?」
「それはそうだけど」
「あと背ちっちゃいし」
「それは俺の預かり知ることじゃない……」
「……」
「……」
「そうだ、決めた!」
奈央香は勢いよく立ちあがって、涙で腫らした目を向けてきた。
勢いよく立ち上がって馬車の天井に頭をぶつけたのは見なかったことにしてやろう。
そして奈央香はとんでもないことを言い放ってきた。
「お兄ちゃん」
は?
「ムツメちゃんと2人っきりのときはお兄ちゃんって呼ぶ」
「なんでそうなる」
「ムツメちゃんが歳上感出すからだよ。それにお兄ちゃん呼びしてれば、ムツメちゃんが男心を思い出して、修也と付き合えなくなると思うし」
「なんて策士!? それは卑怯だろ!?」
「ムツメちゃんがそれいうー?」
「うぅ……、何も言い返せ……、ん?」
「間違えた間違えた、お兄ちゃんがそれいうー?」
「やめろー!」
奈央香との仲直り、俺からはできなかったかもしれないな。奈央香に感謝しないと、俺も大人気なく意固地になってしまったからなあ。
でも、やっぱり奈央香に修也は渡せない。そこだけは譲れない。
ちょっとシリアスすぎたかもしれない。話を切り出せた奈央香の方が大人だよなあ。その辺はちょっと理由があったりなかったり。
奈央香の過去と設定がようやく出せてよかった。
次回も3日後、3日後は豆まきか。