TS異世界転移-男がヒロインで大丈夫かよ-   作:変T

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 難産すぎる。特にイオーネ。

 注、イオーネはムツメが元男とは知りません。


恋愛相談

「土砂崩れ、ですか?」

 

 新拠点となる城に物資を運び、王都に戻ってイオーネさんに外泊の説明をした。

 

「新しい拠点に向かう道路でね」

「なるほど、それで1泊したと」

「迂回路が少し時間かかりすぎるからどうにかしたいんだよね。でも土砂を取り除こうとすると、連鎖的に土砂崩れが起きそうな気がして対処できなかった」

「……そうですか」

「どうしたの?」

「いえ、……あの辺りはかなり頑丈に作られていまして、城奪還後に周辺を調べても問題はありませんでした。気温と雪解け水の量を考えても土砂崩れが起きるようなことはありません」

「……となると?」

「魔族の仕業かあるいは……」

「何かあったってことか」

「はい。ですが、調べるにも王都から調査団を派遣するよりは新拠点があったほうがいいので、しばらくは土砂の撤去にしか人員は割けませんね」

 

 魔族の仕業にしては規模が小さいよな。ただの嫌がらせにしかならないし、拠点そのものを奪還すればいい。だとしたら人為的な何かか。

 あ、そうだ。報告は終えたけど、少し手伝ってほしいことがあった。

 

「そういえばイオーネさんってこの後時間ある?」

「え?」

「あー、ちょっとだけ付き合ってほしいことがあるんだけど……」

「そ、その……、この後予定がありまして……」

「あ、そうなんだ。大した用事じゃないから俺の方でなんとかするよ」

「すみません」

「謝らないで、本当に大したことないし、そもそもイオーネさんの手を煩わせるようなことでもないし」

「そうですか……」

 

 予定があったのか、忙しそうなイオーネさんと別れて、自室に向かう。

 修也の体液から薬を作るにはどうすればいいか聞きたかっただけなんだけど。俺は発情期に効く薬の作り方を知らないから、知っているイオーネさんを頼ろうかなと考えた。でも、冷静になって考えてみると、今回の薬の材料はアウトかな? アウトだな。女性に手伝ってもらうような代物じゃない。

 だとすると、修也に聞くか。

 ……。

 …………。

 でも、それって修也にお前のものを飲むと宣言してるようなものだよな。

 はずっ。

 めちゃくちゃはずっ。

 さすがに修也につくり方を教わるのは無理だ。顔が赤くなる。というかすでに熱い。想像しただけで熱くなってしまった。

 

「ムツメ」

「ひゃい!?」

「……どうした?」

「しゅ、修也か……。驚かせるなよ」

「普通に声かけただけだが? おかえり」

「ただいま、……どうしたの?」

「付き合ってほしい」

「へあ!?」

 

 変な声出た。俺は3分しか生存できないヒーローかよ。

 

「つ、付き合ってって」

「行きたいところがあるんだ」

「……」

 

 あー、うん、はいはい。なるほど。

 これ殴っていいか? いいよな。よし殴ろう。

 

「……? どうした?」

「殴らせろバカ」

「なぜそうなる」

 

 理不尽に暴力を振るうヒロインの心情がわかった気がする。たぶんこれ理不尽じゃないだろ。むしろ俺が理不尽な目にあってる。

 

「それで、どこに行きたいんだよ」

「怒ってる?」

「怒ってない」

「……」

「……」

「……そのだな、具体的にはわからないから、ついて来てくれ」

 

 修也の行きたいところは前に約束したことに関連していた。

 

「食材屋?」

「そうだ」

「……ふむ」

 

 もしかしなくとも、胃袋は掴んだ的な?

 おお、これは1歩前進といっても差し支えないのではなかろうか。

 

「この前、ムツメの料理が食べられなかったし」

 

 なるほどな。淫毒に侵されて、食欲がなくて俺の料理を残した。それに俺が怒っていたからなあ。怒りが湧いたというか、悲しかったんだけど。

 ご機嫌取り、なのかな? 俺が労働させられるのは機に食わないが、修也が食べたいというならやぶさかではない。だが、言わなければならないことがあるはずだ。

 

「ふーん、それで?」

「できれば料理を作って欲しい」

「ていくつー」

「……ムツメのおいしい料理が食べたいです」

「よくできました」

 

 俺もちょろいな。これだけのやり取りで嬉しくなってしまうのだから。

 

 

 

 街の食材屋で必要な分を買ってきた。売ってる食材の種類が多くて助かった。

 鶏の唐揚げ、みそ汁、ごはん。

 品数は少ないが、ホームシックには強烈に効くだろう。もっとも、修也がホームシックかどうかは知らんが。まだ1ヶ月だし、なるわけないか。

 

「おいしい?」

「うまい」

「……」

「……」

 

 言葉は少ないけど、パクパクと唐揚げを口に運び続けている姿を見れば満足しているのがわかる。

 粉屋で色々な粉を買っておいてよかった。日本までとはいかないが、それなりの粉の種類があったおかげで、試行錯誤に時間はかかったけど、外がカリッとする唐揚げが作れた。

 

「あつっ」

 

 ちょっと熱いけどうまいな。ごはんが進む。

 

「ちょっといいかな?」

 

 俺たちの空気を割って入って来たのは料理長だ。

 

「ムツメ様の地元の料理ですか?」

「そうだね」

「なら、私が作れるようになれば振る舞えますので、作り方を————」

「やだ」

「……あ、なるほど。申し訳ありませんでした。馬に蹴られる前に退散しましょう」

 

 俺が料理長の要望を即座に否定すると、真意を汲み取って退散していった。

 料理長に作られて、俺より美味しいとか言われたら立ち直れない。ただでさえ料理の腕前は妹にマッハの速度で抜かれたというのに……。ああ、トラウマがっ。

 絶対に、絶対にこのアドバンテージは死守する。

 

「いいのか? 料理長に教えれば作ってもらえるぞ?」

「俺が作るからいいの」

「そうか」

 

 美味しい料理なのだが、箸が止まる。実際はフォークとスプーンだけど。

 もう食べられん。

 

「ちょっと作り過ぎたな……」

「大丈夫、食べられる」

「無理して食わなくていいから」

 

 どう見てもまだ10人前くらいあるし、若いとはいえ胃もたれすんぞ。奈央香と空河、ついでに王様が乱入して来て修也の食べる分が減ったらどうしようって考えて、多めに作ってしまったのがあだになった。

 でも、結構食べるなあ。

 ……黙って食べているのに、うまそうに食べる。体が小さくなって食欲も減った俺だけど、修也を見てたらお腹いっぱいなのに食べたくなってきた。

 

「あー!? 本当にいた!」

「やっぱり来たか……」

 

 バレるだろうとは思ったけど、こんなにも早くバレるとは……。

 

「料理長からムツメちゃんが少し変わった揚げ物を作ってるって聞いたのよ!」

 

 料理長てめえ、なんで馬に蹴られてねえんだよ!

 レシピを教えなかった腹いせか!?

 もう少し2人きりの時間作らせろ。

 

「ムツメちゃんが修也にごはんを……、むー、私の苦手分野……」

「ふっ」

「むかっ」

「……まあ、食べてみなよ」

「いいの?」

 

 修也に食べてもらいたいとは思ったけど、全部食えなんて言ってないし。それに修也も大食感というわけでもないから、食べるスピードは落ちている。前に俺が放った言葉が効いているのか、少し無理して食べようとしてくれている。そこまでは望んでいないんだけどなあ。だから奈央香にも食べてもらえるならその方がいい。

 それにしても、奈央香が現れたのに、空河が現れないのは結構意外だな。あいつなら噂を聞きつけてすぐに飛びついてくるのに。

 

 

 

「ここでよろしいでしょうか?」

 

 使われていない白の一室で私は今、勇者様方の1人であるクウガ様の相談を受けていた。聖女、つまりはシスターでもある私が相談をされて断るという選択肢はない。嫌嫌やっているわけでもなく、彼らのことなら、なるべく力になりたい。故郷を離れこの地の救済に来た彼らに、恩として返せるものがあるのなら返したいのです。

 

「……」

「……」

 

 クウガ様にしては珍しい。あっけらかんというか、いい意味で能天気な方ですので、悩みとは無縁な方だとは思っていましたが、思い詰めるくらいの重たい悩みを抱えるのですね。

 相談しにくい内容なのでしょうか?

 だとしたら、少しずつ口を開いてくれるように誘導するしかありませんね。

 

「長丁場のお勤めありがとうございました」

「いえ、忙しかったのは兵隊さんたちの方ですから、強いて言うなら暇との戦いでしたね。平和が一番ですけど」

「そうですね。それでも気を張っていたのでしょう?」

「それはもう慣れました。ムツメちゃんの護衛もありましたし、抜かりはありませんよ」

 

 ムツメ様の護衛となれば力を発揮する。彼が獣人をこよなく愛する変わった方ですので、今回の作戦でムツメ様と組み合わせて見ましたが、思いの外、相性は良さそうですね。ムツメ様はクウガ様を邪険に扱うことが多いのですが、クウガ様のことを嫌っていないことは知っていました。次も同じ組み合わせで任務にあたってもらいましょうか?

 いけないいけない。今はクウガ様のお悩みの相談中でした。私から違う話題を振っておいて、そのまま逸れてはいけません。

 

「ところで、なぜ私に相談をしようと?」

「イオーネさんにしか頼めないので」

 

 交友関係というか、勇者様方の中でもっとも顔が広いのはクウガ様ですので、私以外にも相談相手くらいはいるとは思うのですけど。

 とにかく今はクウガ様の言葉を待ちましょう。

 クウガ様が口を開くまで。私は長丁場になりそうな空気を察し、ゆっくりと紅茶を口に運ぶ。

 

「俺、……男を好きになってしまったみたいで」

「ぶほっ!?」

 

 紅茶が、鼻腔に!?

 

「けほっ、けほっ」

「大丈夫ですか?」

「ご、ごめんなさい。申し訳ありません……」

 

 ま、まさかの同性に対する恋慕ですか。

 ということは、お相手はもしかしてシュウヤ様?

 

「驚きますよね」

「申し訳ありません。相談事を受けるシスターとしてあるまじき態度を」

 

 吹きこぼした紅茶を拭き取りながら、思考を巡らせる。

 確か勇者様方の出身地である地球の総人口は70億と教えていただきました。今の我々の、……1400倍です。それだけの人類がいれば必ずしも男女間での恋愛とは限らなくなるのでしょう。我々のような人類の種が失うような危機的状況下でなければ恋愛も自由ということでしょうか。

 男女間が普通の恋愛関係ですから、同性間は異常だと思っていました。ですが彼らには当てはまらない。なんでしょうか、とてもすばら……、いえ、とても尊い。ええ、尊いものな気がしてきました。同性間、いえ、男性同士というのは!

 

「同性愛者……、というものではないのですよね?」

「はい、自分はノーマルのつもりでした。今でもそう思います」

「なるほど、本来は普通の恋愛感情を持っていて、お相手はそれを覆すほどの魅力を持っているのですね」

「はい。……ツンデレなんです」

「つんでれ?」

 

 つんでれとは何でしょう?

 

「こっそりと布団をかけてくれるところとか本当に好きなんです。布団じゃないか、ひざかけ?」

「は、はあ。よくわかりませんが、とても魅力的ということなのですね」

「本当は、最初から魅力的に思えたのですが、同性ということもあって、友人のように接してきたつもりです」

「な、なるほど。最初から魅力的には見えていたのですね」

「はい」

「ですが、その心情をしまいこんで友人として接していたと」

「そうですね。ですが、もう抑え込むのが辛いというか」

「心に嘘をつくのは辛いことです」

 

 真剣な態度、普段ムツメさんに見せているふざけた態度が鳴りを潜め、とても真面目な態度のクウガ様です。相談とはいえ、ここまで真剣な瞳を見ることになるとは思いませんでしたね。私も真剣にお相手しませんと、でなければとても、この世にはとても尊すぎる光景を見られなくなります。そんな不幸があってはなりません。慎重に、ですが、確実に。

 

「すぐに想いを伝えるのは難しいですね」

「……わかっています」

「でしたら、少しずつ距離を縮めるのがいいかもしれません」

「心の距離、とかですか?」

「物理的にです」

「直接の距離ですか……」

「人には自分の領域があります。そこに踏み入れるくらいの仲になりましょう」

「あ、聞いたことあります」

「いきなり距離を縮めすぎるのはダメですので、気をつけてくださいね」

 

 本当は即刻、手を繋ぐような関係とか見てみたい。照れ臭く2人がそっぽを向きながら手を繋いでいたら……、なんでしょう。心が躍りそうな光景ですね。

 尊いです。

 本来なら許されない、あの女神リシア様がカンカンに怒りそうな情景でしょうが、神という難攻不落の壁を乗り越えて、男性同士で真実の愛を紡ぐ。ああ、なんと尊い光景なのでしょうか。それがこの世の肉眼で確認できる光景となるのでしょうか。私はなんという扉を開いたのでしょうか。これが本当の愛というものではないでしょうか。情欲と愛はやはりイコールではありません。私はリシア様が牛耳る天界を受け入れることはできないようです。

 

「わかりました。明日デートに……、いえ、デートというと重たいか。普通に街に出かけようって誘ってみようかと思います」

「それはいいですね。何事も積み重ねですから、少しずつ心と体の距離を近づけるがいいと思います」

「なんだか、素直に行動できそうな気がしてきました」

「それは良かったです」

「今日はありがとうございました」

 

 クウガ様は晴れやかな表情を浮かべて帰って行きました。惜しむらくは明日、仕事があることですね。クウガ様とシュウヤ様の顛末を見届けられないだなんて、私はなんと不幸な……。

 ……あれ?

 男性同士の恋慕は許されるのであれば、私もムツメさんと……。

 

 

 

「むっつめちゃーん!!」

「現れやがった……」

「明日フリーでしょ、城下街に遊びにいかない?」

 

 唐揚げが残り3人前くらいになったところで空河が飛び込んできた。

 城下町か。

 そういえばこいつ獣人のバーか何かに通ってたんだっけ? 街のことは詳しいのかな。俺も今日行った食材屋に粉屋、あとは孤児院くらいしか街のこと知らないんだよな。服屋とか気になる。いつも同じ格好だし、女のファッションとかよくわからないけど、修也に似合っているという言葉を本心から言わせてみたくもある。

 

「ところで、なんで修也は唐揚げ食べてるんだ?」

「ああ、さっき俺が作ってみんなで食べてた」

「俺は!? ムツメちゃん、なんで呼んでくれないの!?」

「もともと修也に作ったものだし、奈央香は乱入してきただけ」

 

 言うや否や、修也の前に立って空河が怒鳴り散らかす。

 

「修也てめえ! ムツメちゃんの手料理ふるまってもらえるとか羨ましいこと富士山のごとし!」

「何言ってんだお前は……」

「ちくしょう! 俺も食べる! いいよね、ムツメちゃん!?」

 

 どうぞどうぞ。

 胃袋がオーバーフロウしている修也を救ってやってくれ。

 空河が泣きながら唐揚げを口に運んでいる。かわいそうなことしたな。確かに故郷の味を他のみんなが食べてたら悲しいもんな。

 仕方ない。

 明日街に行った際に少しは優しくしてやるか。痴漢したら即座にぶちのめすけど。




 勘違いシスター、イオーネさんの腐落ち。
 ちなみに作者の私には腐の心理がわからないので心理描写がわからない。腐に近いものは書いていますがね。

 次回も3日後。そろそろエロスに入りそうなんだけど、問題は次のエロスがタグに入っていないことなんだよなあ。嫌いな人もいるかもしれん……。許してクレメンス。
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