あ……。
そうだ。俺、まだおっぱい吸われてたっけ? 肥大化した胸の大きさを元に戻すために、修也とイオーネさんの協力をしてもらっていた。
「はーっ、はーっ、はーっ」
何度絶頂しただろうか。
天蓋の飾りをぼーっと眺めながら、呼吸を落ち着かせる。
だいぶ小さくなってきたから修也が後ろから、俺の方に乗り出して胸に吸い付いている。それでもDカップくらいはまだありそうだ。
「さ、さすがにお腹いっぱいです……」
「あ、ありがとう。イオーネさん」
左は右よりも大きいなあ。
……。
…………。
「……少しの間、退室しますね」
「あ、うん」
イオーネさんは俺が困惑しているのを見て、部屋から出て行った。
「どうしたんだ?」
「う、うぅん、なんでもないよ」
イオーネさんが限界を迎え、左右のバランスが悪くなっている。修也に飲んでもらおうかと考えたところ、イオーネさんが加えていた右胸を、そのまま修也に口をつけて欲しくなかった。
おそらくここまでイオーネさんが察してくれたのだろう。
「あ、届きそう」
だいぶ小さくなったけど、左胸を自分で咥えられそうだ。俺が口をつければ修也とイオーネさんが間接キスをすることもあるまい。
間接キスごときでなんで俺は心揺さぶられているのだろうか。
もちろん、修也がキスをしてくれないからだろう。
俺と奈央香の間で揺れている修也は、基本的に手を繋ぐのが限界である。キスは何度迫ってもしてくれることはない。
だから修也に間接キスさせないために、自分の胸に吸い付こうとした。
「待ってくれ」
「え?」
修也に呼び止められて、俺は修也の方に視線をずらす。俺の左前、近距離にいる修也と目が離せなくなる。
少しずつ、修也の顔が近づいてくる。
「それ、間接キス……、にならないか?」
「え、えっと……」
近い、近すぎる。
それと、間接キスって言葉が修也から聞かされるとは思わなかった。修也が言いたいのは、俺が自分の胸に吸い付くと、イオーネさんと間接キスになることを指しているのだろう。もうとんでもないほどのエロ行為をしているだから、間接キス1つどうってことない話だ。だが、修也と距離を縮める際にキスはかなり重要な要素になる。基本的に手を繋げても、キスから先は特別扱いだからだ。
修也は俺がイオーネさんと関節的でもキスするのが許せないと言っているのだろうか。
「ムツメ、嫌かもしれないが、ジッとしていろ」
「な、なに? なんなんだよ……」
「口閉じて」
「……ん」
何をしようというのか、修也の顔が近づいてきた。
キス?
本当にキスするのか?
修也が近づいてくると、自然と目を閉じ、俺の全神経が唇に集中した。
ぺろっ。
舐められた。唇の上から修也に舐められた。
「へ?」
予想していなかった出来事に目を見開いてしまった。
「ムツメ……、ムツメ……」
「ちょっ、んぶっ、ん、んぅ」
舌で上唇と下唇を交互に舐めてくる。顔が近すぎて、口元がどうなってるかわからないけど、感触だけに集中してみれば、修也の舌と俺の唇が当たっている。
え?
これが俺のファーストキス?
しばらく困惑していると、修也が離れる。
俺はその間、ほとんど目を開けたまま、修也の行為をぼーっと眺めていた。
「修也……?」
「これなら、キスじゃないだろ」
は?
これキスじゃないの?
え?
うん?
キスよりもっとすごいこと、今したばっかだけど!?
「……」
修也は、俺とイオーネさんが間接キスをする前に、今の行為に及んだ。
「キスじゃないんだ」
「あ、ああ」
奈央香への義理があるから、俺とキスに及ぶことはできない。
矛盾している。
俺は見逃さない。見逃さないぞ。
抜け目なく、その矛盾、つつきまわしてくれる。
修也が俺の左胸、イオーネさんが飲んだ俺の左胸に顔を近づけてくる。
「じゃあ、今のがキスじゃないなら、このまま、修也はイオーネさんと間接キスするの……?」
「むっ」
「奈央香に義理が立たないよ」
俺は左胸を軽く持ち上げ、修也に軽く挑発する。
修也は今、俺の唇を舐めた。だが、これはキスじゃないという。だけど、自分の中ではキスした事になっていて、だから修也はイオーネさんと間接キスができるということだ。
俺に対してはキスしていないと確認までしておいて、その矛盾はおかしいだろう。
「ふふっ」
「な、何がおかしいんだよ……」
勝った。
絶対に勝った。
俺は勝ちを確信した。
修也は顔が赤くなっている。
「修也、俺のこと好き?」
修也はそっぽを向く。
罪状は揃ってるのに、最後は黙秘権を行使してきやがった。この機は逃さない。
「修也に左胸、直して欲しいんだけどなあ……」
「……なら、搾る」
「むむっ!」
こいつ。最終手段とってきやがった。
「それはダメ」
「ダメなら、左右のバランス崩れてしまうぞ」
「むぅ、手伝うと言ったのに中途半端に放置するんだ。困ってる女の子を見捨てるんだ」
「お前な……」
あと少しなんだ。あと少しで落とせる。
……。
…………。
って、まあ、落とさなくても、多分大丈夫だろうけど。
修也は俺のことを選んでくれるだろう。ここまで行けばもうわかる。確信している。でも今すぐに俺に手を出してこないのは、まだ奈央香に、俺を選ぶことを告げていないから。誠実な修也は、どちらかに決めるまでは、キスから先には進まないようにとガードが硬かった。
その修也が俺の唇を舐めた。
これはまだ奈央香に報告していないから、修也なりのギリギリの行動だったのだろう。でも、俺もスイッチが完全に入ってしまっている。不義理なことを修也に強要したら、嫌われて白紙に戻るかもしれないが、今の俺は、俺自身で制御できるほどの理性は残っていない。修也に好かれているとわかった途端に、理性の糸はぶちぎれているのだから。
「しゅうやぁ」
驚くほどの甘い声が出た。
「しゅうやの唇、ぺろぺろしてもいい?」
「えっと、それは……」
「したじゃん、俺にはしたじゃん」
「したけど……」
「じゃあ、するよ」
俺は修也に抱きついて、そのまま修也とキスしようとしておでこを合わせた状態で固まる。理性の糸は全部切れたと思っていたけど、残っていたらしい。
「舐めるね」
「ん」
キスしたら万が一にでも不義理とされて嫌われる気がした。
舌を伸ばして、修也の唇をちょこちょことくすぐるように舐める。唇同士は1センチもない距離にあるのに、俺たちはキスはしていない。
まあ、これキスだけどな。
「修也、舌出して?」
「ん」
舌と舌を這わせる。
もうこれベロチューだよ。
一応、俺たちの間ではキスには分類されない。
たっぷり唾液を混ぜ合わせ、唾液の糸ができる。
「……」
「……」
うわっ、恥ずかしくなってきた。キス以上のことしてるのに、キスしてないって言い張るのか。これ恥ずいぞ。
修也も俺も互いに目を合わせられない。
「ムツメ……」
「なに?」
修也の方を向かずに返事をする。
「まだ、俺たち、キ、キス、してないけど……」
「あっ」
そうだ。
イオーネさんが飲んでいた俺の左胸に口をつけると、間接キスになるのが問題だった。今した行為もキスじゃないなら、
「今更だけど、間接キスはノーカンだろ……」
「そ、そうか、ノーカウントか」
いや、俺、前に修也と間接キスしてなかったっけ?
舌先同士がぶつかったのは覚えているんだけど。
他にも何か間接キスした思い出があるけど……。料理だっけ? シチュー? からあげ? お味噌汁? なんだっけ?
いや、あーんしたんだ。そうそう、奈央香が修也に……。そした差し出されたそのハンバーグを俺が横取りした。
間接キスの相手、奈央香じゃねえか!?
「俺、……奈央香と間接キスしてる。煮込みハンバーグ食べた時……」
「……」
「……」
「ノーカンでいいな」
おい、今までの葛藤とか全部台無しだよ。
でも、まあ、修也との関係が繋がったから良かったのかな。
「ふふっ」
どうしても笑みが漏れてしまう。一応、まだ確定はしていないけども、修也に選ばれたとわかるのが嬉しい。
「あ、そうだ」
「なんだ?」
「一応、ね」
俺は自分の人差し指を唇に当て、そのまま修也の唇に渡す。
「これで、関節キス、したね」
「……そう、だな」
俺は少しだけうつむき、修也は俺の頭を撫でながら、そっぽを向く。気恥ずかしくて仕方ない。
「……続き、お願いします」
「……わかった」
昂奮してたのは俺だけではなく、遠慮なしに、いっぱい吸われた。
ドアを背に、中の様子を伺っていたところ、初々しいやりとりがあり、2人の仲が急速に発展していっていた。
「ムツメ様……」
私は女、叶わぬ恋をしてしまった。私にできることはムツメ様の幸せを願うことくらいでしょう。
私はドアの前から退散し、自室へと帰る。
王城内にある離れの家に到着すると、涙がこぼれ落ちた。
泣いてはいけません。
彼らは自ら、恋を実らせたのです。きっかけはもしかしたら、私とリシア様が原因かもしれませんが、私は途中からは中庸中立の立場を、いえ、女神リシアとは敵対した立場でムツメ様との仲を進めようとしました。ただ、シュウヤ様が予想以上にムツメ様を愛していて、私は自然と手を引くことにしました。
私の恋は叶わないものでした。
『果たしてそうかしら?』
「……相変わらず、気に触るお方ですね」
『少しは上司を労ってよー』
「する必要がありませんね。ですが、良かったのでは? あなたにとって彼らの仲が睦まじく進展するのは」
『ええ、とても助かるわー。誰かさんの裏切りがあって、私、全然介入できなくなっちゃってたから』
今の言葉が本当かどうかも怪しいですね。
『それより本当に諦めちゃうかしらー?』
「何をおっしゃるのですか?」
『いいのー? ムツメさんを奪われてしまって』
「リシア様、それ以上は無粋でございます」
『無粋だから何ー? 愛を告げることすら叶わないなんて不幸があっていいわけありませんよー』
「何を?」
『あなたは、ムツメさんに、ついてあげてくださいねー』
「リシア様!!」
嫌な予感がする。
ムツメ様に……。
ムツメ様になにをするというの?
通信が切れたようで、すでに女神リシアの魔力気配はなかった。