TS異世界転移-男がヒロインで大丈夫かよ-   作:変T

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 貯めに貯めてこれかーって文章ができてしまった。最悪である。
 視点変更が多くなってしまいました。ごめんなさい。

 前半コメディーからの、後半は最終章シリアスさんお帰りなさい。


第7章 最終決戦
真実の毒


「なるほどな、あの剣士ではなく、この小娘が中核だということだな」

「はい、我々も今やかなり追い込まれています」

「なぜ今になって、あのような戦力が人類側に現れる……」

「……女神でしょうか?」

「くそっ……」

 

 魔族の誰も彼も、人類を殲滅し、女神を消し去って、魔界へと帰還ができると思っていた。人類は虫の息まで追い詰め、勝ちは揺るがないものと思われていた魔族に凶報が入った。

 人類、特に人間と呼ばれる特徴のない種族がいる。その種族を殲滅する計画が崩壊した。

 圧倒的な数の暴力で殲滅するはずだったが、結果は魔族の大敗、投入した戦力で戻ってきた兵は意思疎通すら取れない雑魚魔族しかいなかった。

 そして、上級魔族が倒されたことで、魔族界は動いた。危険な因子を全戦力を以って殲滅する作戦を立て、現に作戦はうまくいった。しかし、人類側の咄嗟の機転で奇襲を耐え切られ、相手の技を真似て魔法を放てば、相殺される上に、バカみたいな魔力効率の悪さもあって、魔王自らが魔力切れを起こしてしまった。潜在的な強さは敵の方がはるかに強力であった。

 魔族は奴らがこの世界の住人ではないことをすぐに察し、勇者対策をとることにした。しかし、人類の獣人と呼ばれる種族が多く存在する国に責められ、上級魔族を何体か倒されてしまう。魔族は劣勢、苦境に立たされていた。

 

「四大魔将は半分に減り、上級魔族も数が少なくなった」

「……はい」

「わかるな?」

「魔王様の仰せのままに」

 

 魔王は数多くの部下たちに恵まれていた。食事の奪い合い、力の奪い合い、魔族の生存は同種でさえ喰らい、相手の力を自分のものにする。群れで存在することなんて魔族の特性上ありえない。しかし、魔王は魔族の勢力の中でも稀有な存在であった。数の力というものを理解し、部下に慕われ、数々の戦果をあげてきた。

 しかし、数の暴力は、それすら圧倒する強大な力に屈した。

 魔王は部下の四大魔将の1体を食し、吸収した。

 

「あやつは喰われるのを察して身を隠したか……、私の信頼も地に堕ちたものだ」

 

 もう1体の四大魔将は姿をくらませていた。

 

「まあ、よい。絶対に奴らは葬ってやる」

 

 

 

 朝を迎えた。俺はかなり上機嫌なまま、朝ごはんを食べに向かう。何か修也と空河が話し合っていたが、食器の用意とかしている雑音と、2人の声が小さすぎて全然聞こえない。

 

「おはようござ……、食欲なくなったんで帰ります」

「帰るな帰るな」

 

 吐き気を催す邪悪がいた。

 

「いやあ、なんか俺もおっぱいできちゃったわ」

「あれ、男にも効くのかよ……」

 

 空河に風船が2つ生えていた。

 吐きそう……。

 空河を見ないように、視界に入れないようにしながら話す。身長180越えの爆乳男子とかいう誰得状況だぞ。朝っぱらから何見せられているんだ。

 脂汗出てきたよ。

 

「いいから、自室に戻れ」

「えー、でもこれ、どうすればいいかわからないんだけど」

「後でイオーネさん呼んでくるから」

 

 イオーネさん死んだな。死因は汚物を視界に入れたせい。この場にいるのが男3人だからセーフだが、いや、俺は割とアウトだけど、純正な女の子が見たら吐くぞ。吐き気を催すどころか吐くぞ。

 

「でもムツメちゃんしぼんでるじゃん。どうやったのさ」

「……」

「……」

 

 やべえ、なんて言い訳しよう……。

 

「それはだな」

「うんうん」

「気合だ」

「気合かー」

「後は任せた修也」

 

 テキトーなホラ吹いて、脱兎のごとく逃げ出そうとしたが、修也に手首を掴まれる。

 

「ムツメ、逃げちゃダメだ」

「逃げるわアホ」

「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」

「それ、自分自身に言い聞かせてくれる!? 俺を洗脳しようとすんな!」

 

 修也にがっつりホールドされ、腰まで掴まれてしまい逃げる機会を失った。

 

「離せ修也! 俺はイオーネさんを呼んでくるんだ!」

「そのまま逃げる気だろ、逃がさないぞ!」

「おい、俺は疫病神か何かか?」

 

 変態だアホ。たとえそれが、お前のせいじゃなくてもな。

 

「朝から何しているのよ! って修也とムツメちゃん何してるの!?」

「お、奈央香バトンタッチ!」

「へっ?」

 

 俺は奈央香を修也に押し付けて、食堂から退避する。ドアを開けるとメイドさんたちが覗き見ていた。そうだよな、近づきたくないよな。俺は彼女たちを尻目にイオーネさんのいる部屋へと走る。

 

 

 

「な、なんだったのよ」

「ムツメめ、逃げやがったな……」

「しゅ、修也……、近い……」

「あ、悪い」

 

 俺は抱きつく形となった奈央香を離す。抱きついてしまったが、これは俺の責任ではないよな。ムツメのせいだし、後でムツメにどやされることもないだろう。

 

「ムツメちゃんと何かあったの?」

「ムツメと? いや、そうじゃなくてだな……、そうでもあるんだけど、なんていうか……」

 

 奈央香は俺がムツメと抱き合っていることを問いただしている。確かに奈央香にとって俺とムツメの関係というのは気になることだ。

 だが、それを超越する存在がいるから、ムツメとの関係性を説明している余裕がない。

 というか奈央香はなぜ気づかない。俺の影になっているからか? 俺の背後にいる魔物を、視界情報からシャットアウトしている可能性すらある。

 

「よお、奈央香。これ見てくれよ」

 

 魔物見せんな。

 

「空————、おぁっ……、うぅっ……」

 

 奈央香が見せちゃいけない嘔吐感を全面に出してしまった。

 

「奈央香! 死ぬな奈央香! 奈央香あぁ!!」

「お前らひどくね? 俺、普通に困ってるんだけど」

 

 俺も振り向くことができない。逃げたムツメが羨ましい。

 

 

 

 イオーネさんに助けを求めて、俺は自分の部屋に退散した。まさか宮廷内で悪魔的なトラップが生まれるとは思わなかった。

 

「それで、結局誰が搾るんだ?」

「王様らしいぞ」

「————はっ、ごめんちょっと気絶してたわ、なんて?」

「王様が空河のを搾るらしいぞ」

「おえぇぇぇ」

 

 地獄絵図を想像してしまった。めくっちゃいけない1ページじゃねえか。

 マジで食欲出ねえよ……。

 

「それで、奈央香に説明したのか?」

「機会はあったけど、余裕がなかった」

「あ、うん、だろうね」

 

 奈央香にはまだ伝えていないのか。あんなのに出くわしたら、奈央香に俺を選んだ旨を伝えるどころの騒ぎじゃないだろうさ。

 ところで、俺たちって付き合ってるのだろうか?

 俺は告白しているのに、修也からの返答らしい返答はもらっていない。十中八九どころか、100%オーケーだろうけど。

 

「奈央香に話して、魔王を討伐するまでは待ってくれ」

「随分と待たせるな」

「すまない……」

「まあ、うん、大目に見てやるわ」

 

 この会話がすでに良い返事だと証明しているけどな。

 で、空河の誰得事件のせいで、奈央香にはまだ伝えられていないと。

 

「とりあえず、落ち着いてから伝えることにする」

「そうか」

 

 俺たちは自室に運んだ朝ごはんを前に会話をしていたが、会話が終わった後も食事はしなかった。

 

 

 

 順調に進んでいた歯車が狂ったのはここからだった。

 

「ムツメ様、少しよろしいでしょうか?」

「何かな?」

 

 空河の一件は終わったのだろうか。イオーネさんが訪ねてきた。

 

「最上階の屋上までついてきてください」

「? なんで?」

「あなたを呼んで欲しいと頼まれました」

 

 誰に?

 主語がないのはわざとだろうか。名前を言ってはいけないあの人的な誰かからの頼みとかかな。名前を言ってはいけないあの人が誰かもわからないけど……。

 王宮の屋上は広く、見渡す景色もとてもすばらしかった。

 誰もいないのが一瞬でわかるくらいに見晴らしがいい。

 

「誰の呼び出し? 見たとこ誰もいないけど」

「それでは……、いってらっしゃいませ」

「は?」

 

 俺は意識を引っ張られる感覚がして、目を瞑り、引かれる感触が消えるとともに目を開いた。

 

「ハロハロー、お久ー」

「おらっ!」

「ちょっ、女神にドロップキックはなしですよー! ムツメさん! やめてやめてー!」

 

 ここで会ったが100年目、積年の恨み、晴らさでおくべきか!

 

「お前のせいでどんだけ苦労したと思ってんだこらっ!」

「やめてくださいー」

「やめるかボケッ!」

 

 獣人の身体能力を駆使して、この世界のクソ女神に肉弾戦で攻撃をしかけるが、ことごとく避けられる。ちくしょう避けるなんてずるいぞ。

 

「もうー、お話しできないじゃないですかー」

「ったく、何の話だよ」

「さっさと男に戻せとは言わないんですねー」

 

 いちいち癇に触るやつだな。

 

「さっそく本題ですがー、呼び出した理由はー」

「間延びした喋り方がムカつくから死刑」

「酷すぎますー」

 

 酷いのはてめえだ。

 まあ、今となっては……、女にされたことは、感謝してやらないでもないけど……。

 

「安心しました。ムツメさんも女性の体に馴染んでいただけたのですねー」

「おい、てめえの仕業だろ。……あれ、何かお前に、このことを言おうとして……」

 

 そうだ。

 俺は女神に何か文句があったはずだ。最近ずっとドタバタしていたから忘れていたが、マリン師匠のことで問いたださないといけないことがあった。

 

「師匠を操ったのはお前か?」

「師匠ー? ああ、マリンさんですかー。彼女の許諾をいただいたのでー、死したお身体をお借りしましたー」

「……何のためだ?」

「ムツメ様のためですよー」

「それは知っている」

「あらー?」

 

 おそらくは俺のため、ただし、必ずしも、俺にとって良いこととは限らない。男の頃の人格を消しとばし、エルシアとしての人格で上書きしようとしていたのではないだろうか。こいつはそれくらい信用ならない。

 

「良い線いってますねー」

「心っ!? ……読んだのか?」

「それぐらい朝飯前でしてー、そうですねー、あのときムツメさんの人格が不安定で不安定で、見ていられなかったので、最低限危険な時に対処ができるようにと、本能をベースとした人格を構築しましたー」

「傍迷惑な」

「仕方ありませんー、だって魔王軍と戦うのに————」

「それだ」

 

 一瞬で、俺は考えにはなかったが、脳がフル回転させて、女神の矛盾を発見した。

 

「俺1人欠けても、魔王軍には勝てるだろ?」

「……何を根拠に言っているのでしょー?」

「魔王たちと相対してわかったが、修也以外の勇者組、俺と奈央香と空河はおまけでしかない。修也1人が生き残れば良い」

「ムツメさんが機転を利かしたおかげで、魔王の襲撃を間一髪で防げましたー。ムツメさんが欠けてはいけませんでしたよー?」

「いや、俺が欠けても空河と奈央香の戦力を考えれば修也を撤退させ、魔王と再び相対させることはできた。その際にイオーネさんが死んでしまうとは思うが、修也が生き残れば、魔族は滅ぼすことができる。どんなに時間がかかってもだ」

「それでは意味ないですよー、人類が滅んでしまえば、私も消滅しますしー」

 

 違う、それも嘘だ。

 

「修也には強大な魂がある」

 

 修也の力を鑑みるに、もっとも、魂を削られたのは修也だ。それでもなお、修也を含め、魔王が魂の総量は圧倒的と言い切った。勇者の4人は神託で魂をすべて削り取られているわけではない。つまり、修也が生き残っていれば、強い兵士を量産できる。もちろん、俺たちにも言えることだ。

 

「……俺たちは何のためにこの世界に渡ったんだ?」

 

 戦う力はある。されど、圧倒するほどの力は与えられず、ギリギリ生き残る程度の力だ。俺と奈央香と空河に与えられた力は中途半端だ。俺たちは修也よりも魂が大きいのではないか?

 

「修也だけ特別、魂の総量が多い可能性はないだろ。地球人が誰も神託を受けないというなら、たとえ受けていたとしても、現代までの魂の総量のブレはそこまで大きくはないはずだ。全員ほとんど横並び、均質化されている」

「……」

「何のために俺たちの魂を残した? 神託でこの世界の住人レベルまで魂を削れば、魔王たちを軽く圧倒できただろう。少なくとも、3000人殺されたリント砦の被害もなかったはずだ」

「少し、あなたを見くびっていました……」

 

 口調が変わった。

 

「そうですね。答えを教えて差し上げましょう。こう、あなたに問えば、ムツメさんの欲しい答えが自ずとわかるかと、『ムツメさん、あなたを男性に戻しましょうか?』」

 

 俺の中で、何かが壊れた音がした。

 

 

 

 女神リシア様に頼まれ、ムツメ様を女神様の場所へ送り届け、帰りを待っていました。十数分ほどして、ムツメ様はまばゆい光を纏わせて帰ってきました。

 

「イオーネさん」

「なんでしょうか?」

「イオーネさんって聖女だよね」

 

 ムツメ様は今まで見たことのない、暗い表情をしていました。

 

「なんで、俺と修也の部屋を隣同士にしたの?」

「え……?」

 

 問われた内容が全然理解できませんでした。言葉に詰まる私を見て、ムツメさんは1つため息を吐きました。

 

「そうなんだね」

 

 寂しそうな声を上げて、ムツメ様は歩き始めます。私はどう答えて良いかわからず、ただ、彼女のすぐ後ろを歩きます。普段、笑顔満開のムツメ様の朗らかな雰囲気は一切ありません。

 冷たく、寒く、震えて、悲しい。

 ムツメ様に声をかけることができず、ムツメ様の部屋までついていきました。

 

「1ついいかな」

 

 怖い。

 怒られる気がしました。

 

「修也は、どこに、いる?」

 

 彼女が堪える苦しみが表情にじみ出てきました。私は彼のいる場所を知りません。首を降ると、彼女は目を伏せました。

 

「わかった。自分で探す」

 

 彼女の歩みはしっかりとはしているが、とても重たく、鉄の靴を履いているかのように、1歩1歩確かめるように歩いていく。

 その背中に、声をかけることはできませんでした。

 

 

 

 いた。

 修練している。

 

「ムツメ?」

「ちょっといい?」

 

 修也はすぐに修練をやめて、黙って俺についてくる。ここでいいかな。階段の踊り場、今は近くに誰もいない。

 

「言わなきゃ、いけないことがある」

「どうしたんだ? ムツメらしくないぞ」

 

 枯れた心から、最後の言葉を振り絞る。

 

「ごめんね……」

「え?」

「ごめん……、ごめん……」

「ムツメ、何があった……?」

 

 離れていないから、すぐに修也は俺の肩を掴んで、俺の目をしっかりと見つめてくる。

 

「ごめん……」

 

 心臓が痛い。

 

「何があったんだ? 具体的に言ってくれないとわからない」

「ごめん……、俺、修也のこと、好きじゃないかも……」

「え?」

 

 俺は肩を掴む修也の手を振り払う。

 

「ごめん……」

 

 涙が溢れ出てくる。この感情も偽物なのかな……。

 

「ごめんね……、迷惑かけたね……」

「ムツメ……」

「今は……、1人にさせて……、ごめん……」

 

 好きという感情を、俺は未だに知らない。




 次回は4日後になります。2/25です。
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