立花響は、堕ちていく意識の中で彼、榊ソウマとの出会いとこれまでのことを思い返していた。
私、立花響は、榊ソウマに恋をしている。恋と呼べるほどの純粋なものではないとも思っている。
あの日、2年前、ノイズから生き残ったライブの日から、私は、学校や周囲から非難されていた。味方は未来以外は家族ぐらいで、でも家族も、お父さんもお酒やたばこが酷くなっていって、少しずつ精神が擦り減っていた。
そんな時だった、ソウマと出会ったのは。ソウマは、初めて会った時には、無感情とは文字通りこういうのだろうて感じだった。でも、手を私に差し伸べてくれたときは、表情とかはそのままだったけど、声音と目の奥に確かに暖かさがあったと思う。
そんなことがあってから、ソウマは私のことを、いつも未来と一緒に助けてくれるようになったんだよね。でも、最初は未来も私もソウマとはあまり、仲が良くなかったんだけど……
少しずつ、一緒にいることが多くなっていって、ご飯とかも一緒に食べるようになって仲良くなっていったんだよね。意外だったのは、ソウマがお菓子作りが趣味っていう若干少女チックな趣味を持っていたりして。そうやって、無償の愛情を向けてくれる彼に優しかったときのお父さんを重ねていたんだと思う。
でも決定的に彼を異性として意識しだしたのはお父さんが家を出っていったときかな
落ち込んでる私のそばに、なにもいわずにいてくれた。それまでも、ずっと未来と一緒にそばで私のことを見守っていてくれた。それから、私は、彼と一緒にいることが多くなった。放課後は二人で出かけたり、まるでデートのように過ごしていてとても楽しかった。それこそ、未来のことを忘れるくらいに……そのせいで、未来とも一時期疎遠になりそうになっちゃった。
ソウマが未来を誘ったりして、3人でフラワーでお好み焼きを食べたり、カラオケやゲーセンに行って遊んで、仲直りできたんだよね。ほんとに、怒っているときの未来は怖かったなぁ。
それから、三人で前みたいに一緒に、放課後や休みの日を過ごしたんだけど……3人で過ごしていく中で、わかっちゃたんだよね。彼は私に確かに愛情を向けてくれている。私も、どこかでお父さんの代わりって見ていた時期もあったから……でもソウマの思いは未来のほうを向いてる……勝てるわけがない……未来は料理もできるし、勉強もできる……だから、諦めようって思った……
それでも……頭ではわかっていても、ソウマへの思いは日に日に増していく。何かあるたびに自分のところへ駆けつけて助けてくれる。だから、私の中での決意は、現実に目を背けて「甘えていたい」「このまま寄りかかっていたい」そういう気持ちに変化していった。彼と未来の3人で過ごしていながら、ずっとどこまでも、一緒に変わらないでいたかった。
自覚した思いは膨れ上がり、彼女の理性を焦がす。だが、自分が抱いてる未来への愛情と思いがぶつかり合い彼女の欲望を抑え続ける。自分のような甘える人間と未来のように自分を心の中で強く持っている人間と勝手に思い描いていた。
実際には、未来は、相手を思うばかり自分の気持ちを表に出せないだけなのだが、嫉妬に狂っている彼女は、そう強く思い込んてしまったのであった。結果として、響は二人に対して、コンプレックスを抱いてしまいながらも、二人という陽だまりの中で甘えていたい欲望に呑まれていった。
そんな中、シンフォギアの力を発現した彼女は、
(これで、私も未来に勝てる。みんなの居場所も守れる。胸を張ってソウマの傍にいれる)
生来の性質と彼に並び立ちたいという思いもあってノイズと戦っていた。半分尊いが半分醜いそんな思いが彼女を突き動かしていたのだった。
しかし、先ほどの戦いで助けられたことで、自分の弱さを見せつけられたようで、ノイズとの戦いに約束を破ってまでの価値を見出せずにいた。
(なんで……シンフォギアでみんなを守るために戦って……でも、結局負けて、ソウマに助けられて……全然追いつけなくて……もうどうすればいいかわかんないよ……)
守るべきと考えていた人が自分の苦戦した相手を圧倒して、果ては撃破までしたこと、その後の戦闘でノイズを効率的に捌いていくソウマの姿に響は無力感に支配された。
響は、今までのことを振り返っていると、あたりが、一面暗くなったような気になる。
目の前には、ソウマが何かを抱えて、項垂れている。
「ソウマ? どうしたの……」
響が彼に触れようとするも、手はすり抜け、虚空を掴む。近づいて、初めて気がついた。ソウマが抱えているのは、今より少し大人びたシンフォギアを纏っている私であった。肌からは生気が感じず、一目で死んでいると感じさせるものであった。
「ッどうして私が死んで……」
よく見ると彼も現在の見た目より、少し大人びていた。
響の死体は光を放ち、彼の体に吸収されていく。そうすると、彼の巻いているベルトが、黄金の装飾されたベルトへと変化していった。
「響、見ていてくれ……俺が、何に変えても……世界を守ってみせるから……」
彼の目が虚空を睨みつけ、ゆったりと立ち上がり、闇に向かって歩き始める。響は、ソウマから感じる底知れない悍ましさに止めようと声をかける。
「ソウマ、待って!」
響が彼を追いかけようとした瞬間、地面がひび割れ、マグマともいえるエネルギーが時計の文字盤のように広がり、針のようなものが、強引に押し広げられる。
「変身」
ソウマを黄金の光と闇が包み込む。響はその光に止めようと手を伸ばす。
「ダメェェー」
立花響は勢いよく目を開けると、一目で病室であると分かるつくりであった。自分で汗をかいていると一発であるほど冷や汗で服が張り付いていた。体を動かそうにも、痛みが酷くまともに動けない状態であることを。
自分の状況にに戸惑っていると、扉の場所に、リディアンの制服を着ている未来がいた。どうやら、放課後に見舞いに来てくれているようであった。
「響が目を覚ましてくれたぁ……よかったぁ」
未来は響に抱きつき、涙を零す。響は、痛みを堪えながら、未来の頭を撫でる
「ゴメンね、未来。心配かけちゃったね」
引き戸に寄りかかるように立っているソウマに気づく。
「ソウマ……」
「ほんとに、心配したんだよ、響」
微笑みながら、私たちをみる彼に、先程の悪夢の彼と被りながらも、自分の事を心配してきてくれた二人にたいして胸の内から温かい何かが溢れ出す。しかし、どこか様変わりした彼の雰囲気にすこしだけ寂しさを感じるのであった。