口調が違うのは、主にプロットと設定的な事情ですのでご容赦のほどをお願いします。
榊ソウマは変身を解き、崩れるように待合室の椅子に腰掛ける。30分ほど呆けておると、医師たちに響たちを引き渡したイデアが戻ってくる。
「確かに彼女たちは医者に引き渡したよ。立花君は比較的にダメージは小さいからね。私見ではあるが、彼女も体質も鑑み3日ほどで全快だろうね。しかし、風鳴君は絶唱の反動でかなりの重症だね。暫くは戦線復帰は不可能だと考えてくれ」
「そうか、なぁイデア……俺はあの時、風鳴さんが倒れたとき、どこかで見たことがある気がしたんだ。それだけじゃない、響のときと同じくらいに不安感に襲われたんだ。どうしてかわからないけどね」
ソウマは自分が信じられないというように、口角がひきつっていた。どこか、自分の認識とずれた感情の起伏に恐怖を抱いていた。
「その恐怖心は、何かを見いだせるものではないよ。我が魔王……今はまだね」
イデアは、入り口の方を見る
「まぁ、そんなに気になるなら彼に聞くといい。なぁ風鳴訃堂君」
ソウマは入り口に視線を遣ると黒服の人たちに囲まれた和装の老人が立っていた。
和装の老人は、老いを外見からは察することができるものの、目からは老いといえるものを感じさせないほどの覇気ともいえるものが宿っていた。
「君が榊ソウマ君か……」
老人は一文字に引き締めていた口から、外見に似つかわしくない穏やかな声で、ソウマに語り掛けてきた。
先程の鬼のような目が、懐かしく、眩しいものを見るように目を細めてソウマの隣に腰掛け、顔を向けずに語り始める。
「人は生きていく上で業と呼べるものを溜め込んでいく。それが時に人から人へと移り行くことがある」
下を向き拳を握り締め食い縛るように答える。
「なぜ、君がそのような経験していないことを覚えているのかは解らない。だが、もしそれが業といえるものならば……」
ソウマは藁にもすがるように次の言葉を待った。
「業は誰かにとっての希望であるのであろうな。きっとそれは君の助けにもなるだろう。これから君が進む覇道にはそれすら飲み込まなければやっていけないだろうからな……」
「そんなこと、できるわけないだろ‼自分が知らないことを押し付けられて、自分じゃないやつの感情を植え付けられて……」
「だがやらねばならんのだよ。君が世界を救うためにはな」
ソウマの激昂を流すように訃堂は彼を宥める。
訃堂は立ち上がり入り口に向かう。
「おや、彼女に会わないのかい訃堂君」
「そうか、貴様が悪神の配下の神か……聞いていた通りの容貌だな。貴様が側に侍り続けるならば、暫くは大丈夫であろうな」
フッと訃堂は笑う。
「榊ソウマよ。死に無駄死になどない‼️私はそう信じここまで生きてきた。例え、鬼と呼ばれても死んでいった命に報いれるようにな……それが彼らと弟分から託された私の背負う業だ。貴様も背負っている業から」
「託されたものから目を背けるな。そうすればそれが道を指し示してくれる。覇道とは違う道を切り開くためにはな……」
訃堂はそのまま入り口から黒服たちを引き連れていく。黒服は戸惑いながらも、進んでいく。
ソウマとイデアは窓に近づく。夜空は満天の星が空を埋めつくし、まるで地上にいる人たちを見守るように照らし輝き続けている。
「託されたものか…ねぇイデア、託されたものって大事なのかな」
ソウマは顔を上げ、すがるように星を見つめる。それに対比するかのようにイデアは英雄を見つめるように眩しい目で見上げる。
「それは、君次第じゃないかな。我が魔王」
ソウマは星の眩しさに耐えられなくなったように目を反らす。
「でも、自分じゃないものを受け入れるってのは楽じゃないよ…」
「いや、あれは君の感情だよ。間違いなくね…」
「どういうこと…俺の感情って…俺はあんなこと経験してないよ」
イデアの穏やかだが、冷徹さを秘めた言葉から逃げるように、疑問をもって彼の言葉を押し返す。しかし、彼は呆れたように肩を軽く上げる
「当然だよ。あれは君の未来からの因果だからね」
イデアの回答に訳が解らないと、頭を横にふる。
「未来?どういうこと?」
「あれは君が辿るかもしれないものであり、君の…おっと、話しすぎたね。だが、一つだけは確実にいえる。」
しまったという顔をしながら話を区切り、今伝えられることを選び、自身の主に進言する。
「あれは、君の未練だ。君が晴らしてやらなくてどうするんだい我が魔王…未練を呪いにしてはいけないと私は思う。だからこそ、最低限、受け入れてあげるんだね」
受け入れる重圧の重さに俯いてしまいながらも、拳だけは強く握られる。それは自身の防衛本能ではなく、自身を奮い立たせるための行為であった。
「全部受け入れるなんてできない。」
ソウマは目を一瞬背ける。だが、すぐに向き合う。その目は、シャドウジオウライドウォッチを手にした時の覚悟が宿った目に戻っていた
「でも、少しずつでも受け入れていきたい。訃堂さんも言っていたじゃないか、繋いだものだから果たしたいって」
彼の言葉に答えるように、オレンジ色の光が右手に集まる。光はウォッチの形をとる。そのウォッチは黒とオレンジ色のライドウォッチであった。
「これは…」
「ゴーストライドウォッチか、ゴーストに認められたようだね」
微笑を浮かべながら称賛の意を表す。
「このジオウライドウォッチもジオウに認められたってことなの?」
彼の言葉にイデアは真顔となり、大事なことを告げるために珍しく気合を入れる。
「ウォッチはライダー達の歴史だからね。大切にして欲しい」
彼はいつになく真剣になる。その纏う雰囲気はいつもの何処かお茶らけたものを一切感じさせない気配であった。
「あぁ、ライダー達に認められるとウォッチが君の手元に現れる。君が王位を継ぐには最低限20人のライダー達に認められる必要性がある。道は長いよ」
「なんか、いけそうな気がするんだ」
イデアの助言に、ソウマは問題ないと確信を得ていた。何故かは解らないが、これもまた自分が背負った業が伝えてくると暗に理解する。しかし、その感覚は先ほどとまでと異なり、何処か心地好さを感じるものであった。