歌姫と仮面の狂想曲   作:白紙の可能性

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 お久しぶりです。プロットを書き換えたりしていたらこんなに日が空いてしまいました。今回の話は、想定していなかったものだったので、ちょっぴり長いものになっています。


第11話 20xx/行方知れずの英雄、始まりの物語

 愛知県名古屋市某所、蜃気楼が浮かぶほどの炎天下、二人の警官が、スピード違反の対応追われていた。

 

 

 

 

 

 気性が荒い運転手であり、所謂、走り屋と呼ばれる人種であろうか、まだ若輩の警察官が先輩に見守られながら対応している。

 

 

 

 

 

「お巡りさんさぁ~、俺よりスピード出してる奴がいるだろうよぉ‼️」

 

 

 

 

 

 息を荒げ、唾が飛んできそうな剣幕で若輩の警察官を恐喝する。警察官は内心怯えながらも、気丈に振る舞う。

 

 

 

 

 

「ですから、あなたが、速度違反をしているのには、代わりないですので」

 

 

 

 

 

「じゃぁ、ちゃんと止まってる俺が前科ついて、今走ってる奴には前科がつかねぇてのか、あぁ」

 

 

 

 

 

「いえいえ、前科と言う程のものでもないので、それに警察学校の同期も切符切られたんで大丈夫ですよ。ハハッ」

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 空気が、凍る。都会ならではの喧騒さを感じさせないほどに、凍る。

 

 

 

 

 

 困惑が極まった相手に対して、先輩の警察官が変わって対応する。直前の困惑からか、相手をするのに疲れたようでその後素直に先輩警察官の対応にしたがって処理を終えたのであった。

 

 

 

 

 

 車に乗って去っていく相手を前に先輩が顔を合わせずに苦言を呈する。

 

 

 

 

 

「相変わらずの空回りさだな。今回はいい方向に転んだからいいものの、こういうことばかりじゃないんだからな」

 

 

 

 

 

「すみませんでした」

 

 

 

 

 

「あんまりやるようだったら、明日の焼肉は、ホルモンだけにするぞ」

 

 

 

 

 

「肝に銘じます」

 

 

 

 

 

 少々、おちゃらけた様相を見せる先輩に、後輩の乾いた笑いが喧騒に消えていくのであった。

 

 

 

 

 

 交番に戻り次第、暑さに参りながらも、先ほどの件について報告書類をまとめていた。先輩は、ゆったりとお茶を飲みながら椅子に腰かけ、くつろいでいる。

 

 

 

 

 

 この男は、ヒーローに憧れて警察官になったものの生来の本番の弱さに、空回りが過ぎてしまう。それに対し、先輩警官は、少々ユーモアなところがあるものの基本的に職務に忠実な将来有望な警察官である。

 

 

 

 

 

 二人は、対照的ともいえる。男はヒーローに焦がれるゆえに、誰かを助けたいと人一倍思っている。しかし、どこかで憧れが呪いのように彼を蝕む。それに対し、先輩は職務に忠実であるからこそ仕事として割り切ってるため大事な場面で一歩踏みとどまることができる。それゆえに余裕をもって行動できる。

 

 

 

 

 

 男は先輩の余裕に憧れながら、職務に従事する。先輩は、男の純粋さと愚かさに眩しさを覚えながらも相手を叱る。対照的な二人の関係ではあった。

 

 

 

 

 

 烏の異様な鳴き声が聞こえてくる。それだけではなく、椋鳥が空を埋め尽くすように逃げ回る。犬が吠える。まるで終わりを告げる笛のように、始まりを告げる福音のように空に響渡るのであった。

 

 

 

 

 

「先輩、なんか不気味ですね。なんか嫌なことが起きそうですね」

 

 

 

 

 

「変なこといってないで仕事をしろ‼️」

 

 

 

 

 

 男の不安を先輩は取り合わずに書類を整理を行う。

 

 

 

 

 

 数分が経過したころ机が揺れだし、周辺のものも釣られたように揺れ出す。二人は、想像以上の揺れに衝撃を受けながらも、身を守る行動をとり、扉を全開にする。

 

 

 

 

 

 想像を絶する揺れが去った後、二人は外に出て、外の状況を見ると、耐震構造を考えて設計された建物の骨格が歪んでしまっていた。歪みによってガラスが割れて地面に散乱し、外を歩いていた人の元に降り注いで、目の前が地獄絵図とも言える惨状が広がる。

 

 

 

 

 

 それだけでなく街路樹も軒並倒れ、地面には皹が走っており、ひどい場所では、亀裂となっている。

 

 

 

 

 

 どうしようもない惨状に男は目を背けようとするが、どうしても目を反らすことができない。上がる悲鳴に身がすくんだ訳ではない。ただ、自分のすべきことをするために、足が前へと進んでいく。

 

 

 

 

 

 対照的に先輩は、惨状から目を背け、思考が挟まり足が止まる。だが、前にでていく後輩に、釣られるように足が進む。

 

 

 

 

 

 二人は、沸き上がる不快感を押さえ込みながら、街路樹等をどかして、民衆の避難誘導を開始する。被害の把握のため、様々な建物の状況を確認していく。

 

 

 

 

 

 そのなかで、逃げ遅れを重点に置き、交通用の古い地下通路の確認のため、彼らは足を踏み入れる。通路は荒放題であり、瓦礫が落ちて道を塞ぎかけ、天井からは曇り空が覗いて見えた。

 

 

 

 

 

 ふと、目の前に目をやると10歳前後であろうか子供と、それを守るように母親が瓦礫の下敷きになっていた。比較的軽い瓦礫であったため、二人で協力をして、瓦礫をどかすと、子供の意識はないものの、脈拍は確認できるため、生きていることは解るが、親の方は、すでに事切れていた。

 

 

 

 

 

 しかしながら、子供も重症であったため、この場から動かすと危険であるため、慎重に首もとを押さえてゆっくりと移動させていく。

 

 

 

 

 

「先輩、どうやって避難させますか。このままだとここも崩れます」

 

 

 

 

 

 天井をみると、いつ崩れ出してもおかしくない。それほどまでに、ボロボロであった。

 

 

 

 

 

「だったら、見棄てるか」

 

 

 

 

 

「そんなことするわけないでしょう‼️」

 

 

 

 

 

 男に対して行った質問は、想像通りの回答をもって解決する。

 

 

 

 

 

 先輩は、想定していた反応であったため、苦笑いを浮かべながら、今後の方針を示すのであった。

 

 

 

 

 

「あぁお前ならそういうと思ってたよ。まぁゆっくりと運んでいくしかないだろうな」

 

 

 

 

 

 二人は慎重に子供を運んでいく。しかし、次の瞬間、揺り戻しが起こる。流石にボロボロの天井はその揺り戻しに耐えることはなく、天井が崩れて3人を下敷きにしたのだった。

 

 

 

 

 

 男は霞む意識のなか、目を開ける。瓦礫に押し潰されていながら、ギリギリ意識を保っていた。だが、もう自分は助からないと解る重症を負っていた。しかし、そんな状況下でみた光景はあまりにも凄惨な光景だった。

 

 

 

 

 

「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"'ぁ"ぁ"ぁ"'ぁ"ぁ"ぁ"'ぁ"」

 

 

 

 

 

 目の前には、自分の先輩であり、尊敬していた相手だったものの腕と、血の気を完全に失い、軽く潰れた頭部であった。また、腕は、子供の足を掴んでいるが、先は無く、どうやら子供は瓦礫で完全に潰れてしまったことが想像できる。

 

 

 

 

 

 男は、自分がなにも救えていないだけではなく。先輩の人生や、子供を命がけで守った母親の思いを踏みにじってしまった事実に絶望の淵に叩き落とされる。薄れ行く意識のなかで男は願った。

 

 

 

 

 

(もっと……もっと俺に力が……力があれば)

 

 

 

 

 

 その力はヒーローであったのだろうか、それとも、悪魔で合ったのか、それは解らないがただ力を求めながら、己が理想の結末を渇望しながら、男は生き絶えたのだった。

 

 

 

 

 

 これらの光景を映像として、見ているものが2人いた。長いロングコートを着込み、ロングストールを巻き、本を手に持っている男であった。もう一人はラフな格好をしており、これと言って特徴がないが、尋常ではない雰囲気を纏っていた。

 

 

 

 

 

「イデア、もうこのデータは要らないかな。整理を兼ねて消してしまおうかな」

 

 

 

 

 

 ストールの男、イデアにラフな男が提案をするが

 

 

 

 

 

「お戯れをアーリ様。これは榊ソウマが榊ソウマに成る前の物語。何時かは、この記憶が意味をなすこともありましょう」

 

 

 

 

 

 ラフな男、悪神アーリは微妙な顔を浮かべながら肘をつき、了承の意を表する。

 

 

 

 

 

「正直、もうわかないんだよね。神ってものに成ってから結構たって、人間ってものの心って奴がさ。だから、この記憶にもなんの価値も見出だせないんだよね」

 

 

 

 

 

 アーリはケラケラと笑いながら、イデアをみると神妙な顔をしているのがわかった。

 

 

 

 

 

「イデア、まぁ君がこれを残しておくなら一向に僕は構わないよ」

 

 

 

 

 

「アーリ様……感謝します」

 

 

 

 

 

 頭を下げたイデアを見て、渡すものがあったことを思い出す。

 

 

 

 

 

「これを渡そうと思ってたんだわ」

 

 

 

 

 

 アーリはイデアにプラ板のような本とペンを渡してきた。

 

 

 

 

 

「計画に必要でしょ、それ」

 

 

 

 

 

「ありがたき幸せ、では地上に降りて計画を遂行してきます」

 

 

 

 

 

 感謝を告げ、イデアが去ると同時に、入れ替わるように、悪意を身に纏い、ローブに身を包んだものが現れた。

 

 

 

 

 

「おや、こんな曼陀羅の中点にお客とは珍しいねぇ。まぁゆっくりとしていくといい、アーク」

 

 

 

 

 

 アーリは、テーブルと椅子。ティーセットを出し、アークを歓待する。アークはテーブルにつくものの一言も発しない。

 

 

 

 

 

 二人とも、テーブルにつき、茶を一杯飲むと、アーリから本題を切り出す。

 

 

 

 

 

「さて今回の要件は何かな?」

 

 

 

 

 

 アーリの問いかけに、アークは漸く口を開く。

 

 

 

 

 

「         」

 

 

 

 

 

 アーリは笑みを浮かべながらその注文を了承したのであった。

 

 

 

 

 

 




 
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