歌姫と仮面の狂想曲   作:白紙の可能性

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第17話 2019/ワタシタチがアークでライダー?

 病院の廊下を小日向未来は花束を歩いている。

 

 

 

 表情は暗いものではあるが、足取りはしっかりとしており、彼女の芯の強さが見て取れる。

 

 

 

 目的地についたのか扉の前で足を止め、部屋が間違っていないかの確認するために目線を右斜め上に向ける。

 

 

 

 部屋の番号を確認していると耳元に囁き声が聞こえてくる。

 

 

 

(そこまで確認しなくても部屋はあってるよ)

 

 

 

 囁き声に驚き振り返る。そこには誰もいない。その不気味さから扉を開けて中に入っていく。

 

 

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 

 

 息を切らして閉めた扉に背預ける。湧き出した冷汗に不快感を感じながら、ベットの上で眠っている響の姿を確認する。

 

 

 

 窓はどうやら空いているようで、窓から入ってくる風によって冷汗の不快感が心地よさへと変わる。

 

 

 

 未来は、持ってきた花を花瓶に挿す。そのまま、健やかに眠っている響の頬を撫でる。

 

 

 

 響の顔はとても穏やかでただ寝ているだけのように見える。だが、服の中から見える包帯が彼女が怪我で入院しているのがハッキリと理解できる。

 

 

 

 話に聞いていた通りの姿であった。あの後、彼女はソウマと一緒に戦いに向かい重傷を負ってしまったのだと。

 

 

 

「響……」

 

 

 

 ベットの近くにある折り畳みのパイプ椅子を開きそこに座ると、どうして止めなかったのかという後悔から手を血が出そうな程握り締める。

 

 

 

 そんな中、また囁き声が響いてくる。鳥肌から自分を抱きしめるように腕を組む。

 

 

 

(そこまで驚くことじゃないと思うんだけど……まぁいいわ)

 

 

 

「なに……あなたは誰……」

 

 

 

 幻聴のような声に少しずつ恐怖が未来の心を蝕んでいく。そんな未来の影から赤黒いナニかが這い出すと勢いよく腰の部分に巻き付いた。

 

 

 

アークドライバー‼

 

 

 

 無骨なベルトが未来の腰部分に装着されると、彼女の意識は闇に落ちていく。彼女の体はよろけ、倒れそうになるが足を前に出し踏み留まる。

 

 

 

「ふぅ、さてと人がいないところにでも行きましょうか」

 

 

 

 歩き去ろうとしている未来の眼は赤く輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は屋上に移る。屋上は穏やかな風が吹いており、人が数人いるのが分かる。

 

 

 

 未来は指を鳴らすとその場にいた人達は目が虚ろになりながら不確かな足取りで歩いていく。

 

 

 

「これでよし」

 

 

 

 彼女は目を閉じ意識を内側に向ける。

 

 

 

 暗く、穏やかな闇と仄かに僅かな光が広がっている。

 

 

 

 そのなかで未来は倒れている。

 

 

 

 倒れている未来の意識はなく眠っているようで、そんな彼女を見下ろすようにローブを着込んだ人が立っていた。

 

 

 

「起きて」

 

 

 

 未来はその声で意識を覚醒させる。

 

 

 

「ここは?」

 

 

 

 手をついて上半身だけを起こす。床からはひんやりと冷たさだけが伝わってくる。

 

 

 

 ローブの纏っている足が目に入る。その不可思議な状況に先ほど感じた床の冷たさを感じる余裕さえも消えていく。

 

 

 

 恐怖の感情をその足の主に抱く。ただ未来はその影に嫌悪感のようなものを感じずにはいられなかった。

 

 

 

 しかし、感じる恐怖は消えず、顔を上げるのを躊躇ってしまう。その躊躇いから目線を斜め下に移すがこのままでは不味いと考え、ゆったりと上を向く。

 

 

 

「ッ……」

 

 

 

 ローブの中から赤い瞳が見下ろしてくる。

 

 

 

 恐怖か腰が抜ける。その存在から逃げるように後ずさろうとするも、足が滑り、一向に後ろに下がらない。

 

 

 

「そこまで怯える必要はないんじゃないかな……」

 

 

 

 ローブの存在は顔を隠してはいるものの苦笑いを浮かべているのが分かるような雰囲気を醸し出していると後ろからローブを付けた二人がやってくる。

 

 

 

「当たり前だろぉ‼そんな恰好している奴が寝起きで立ってたらアタシ様だって腰を抜かす」

 

 

 

「あら、あなた元々そういうの怖がりだったと思ってたんだけど」

 

 

 

「うっ」

 

 

 

 片方は身長が低く口調が荒々しい口調、もう片方は身長が高く優雅さを感じる口調であった。二人とも声質から女性であるというのは明白だった。

 

 

 

「二人とも、こんな表層に出てくるなんてどうしたの?」

 

 

 

「いや、お前が心配で来たんだよ」

 

 

 

「どうやら状況は想像通りになってるみたいね」

 

 

 

 長身のローブの影は想像通りといえる結果に対し、呆れの視線を最初の影に投げかける。

 

 

 

「えっと……まぁ……」

 

 

 

 気まずさを感じ

 

 

 

「誤魔化し方があのバカみたいになってるぞ」

 

 

 

 3人のローブを纏っている人たちの口論を傍目に未来自身の中にある恐怖は少しずつ薄れていった。

 

 

 

 ようやく、自分の腰に無骨なベルトが装着されていることに気が付く。

 

 

 

「なにこれ……」

 

 

 

 得体のしれないものが装着されていることに恐怖を覚え、必死に取り外そうとする。しかし、そのベルトはビクともせず、一切外れることはなかった。

 

 

 

「どうして、どうして外れないのッ」

 

 

 

「外れないよ、そのベルトは私たちとあなたを繋ぐものだからね」

 

 

 

 その事実に、目の前が歪んだような錯覚に陥った。ベルトが外れないことだけでなく、この得体のしれないものとこれからもともに過ごさなければならないということに

 

 

 

 その失望は、呆れを経て、1周して呆れが冷静さへと変化していった。

 

 

 

「あの、すみません。私はなんでこんなところに連れてこられたのでしょうか……」

 

 

 

 3人は、未来の冷静な質問から、その図太さとも評せるメンタルに両脇の長身と低身長の二人が、最初のローブの存在をを見つめる。だがその視線は感情が強く込められた視線であった。

 

 

 

「なんで、そこで私のことを見るのかな?」

 

 

 

「そんなの貴女が一番わかっているでしょう」

 

 

 

 長身のローブの女性の言葉にもう一人の低身長の女性は頷くのみであった。

 

 

 

 その反応に肩を落としながら、未来の方に視線を向け、本題に移る。

 

 

 

「そうね。このままだとあなたは大切な人たちを全員失う」

 

 

 

 未来は告げられた言葉に衝撃を受ける。その言葉を嘘だと思えないでいた。脳裏に立花響の死体と塵に消えるソウマの姿が浮かび、こびり付いて離れない。

 

 

 

「どうやら、因果情報を取得し始めてるようね」

 

 

 

「因果情報……?」

 

 

 

「えぇ……あなたが得るはずの結末。運命ともいえる情報」

 

 

 

「それがお前たちの辿る運命だ」

 

 

 

 二人の女性が追随する。二人の言葉は冷静にだが、言葉尻に悔しさと悲しみの感情が滲み出ていた。

 

 

 

 一番最初に姿を見せたローブの存在は名乗る。

 

 

 

「私はアーク。この世界で誕生した4番目(……)のライダー」

 

 

 

 アークは名乗りとを上げると、ローブをずらし、腰に装着されたベルトを露にする。そのベルトは未来が現在装着しているものと同型であり、

 

 

 

 4番目に誕生したライダーシステムであるというが、ベルトの意匠から使われている技術がソウマたちのものとは根本的に異なるものであると察する。

 

 

 

「ライダーって確かソウマが変身していたものと同じってこと?」

 

 

 

「うん、その認識であってるよ」

 

 

 

「だって私は、シャドウジオウの次に誕生したライダーだもの」

 

 

 

 アークは未来の腰に装着されているベルトを指差した。

 

 

 

「そのベルトは私たちそのものであり、ライダーの力」

 

 

 

「これが……」

 

 

 

 その存在を確かめるように、ベルトを触る。

 

 

 

「でも、それはまだあなたが使うことはないから安心して」

 

 

 

「でも、時が来たら力をあなた渡す。だから必要な時にあなたの体を貸してほしいの」

 

 

 

 アークは未来に契約を持ちかける。ここに未来以外の人間がいたら、その契約を止めるであろうことが明白な悪魔の契約といえる内容であった。

 

 

 

「そうすれば、2人を助けられるの?」

 

 

 

「えぇ助けられる」

 

 

 

 望み通りの回答を得て、アークとの契約を結ぼうと意識する。

 

 

 

「ッ……」

 

 

 

 しかし、未来は先ほどの光景を現実に目にする可能性に、戦いに赴く恐怖に足が竦む。

 

 

 

 それでもと、覚悟を決め契約を結ぼうとすると長身の女性が声をかける。

 

 

 

「本当にそれでいいの?」

 

 

 

 その言葉を聞き、感情の高ぶりが静まっていく。そして比例するかのように恐怖心が増大していく。

 

 

 

「本契約はまだ先でいいんじゃないか? もしあのアスカってやつが何かしない限りは考える時間ぐらいあたえてもいいんじゃないか?」

 

 

 

 低身長の女性も時間を与えるべきだと主張する。

 

 

 

「わかったよ。ただ、アスカって人が何かしたときには問答無用に体を借りるよ」

 

 

 

 ローブから覗く赤い瞳から感情が消える。

 

 

 

「……それでいい?」

 

 

 

 お道化たように首を傾げるアークに長身の女はアークから目線を反らし腕を組む。逆に低身長の女は目線だけを向ける。

 

 

 

「わかった。ただ約束して……2人は絶対に助けるって」

 

 

 

 未来はその様子に嫌悪感を少し覚えるが仮契約を了承する。

 

 

 

 アークはローブの下で微笑み彼女に手を伸ばす。

 

 

 

 未来はその手を取ると、光に包まれる。

 

 

 

「安心して……私の目的は初めからそれしかないから」

 

 

 

 ただ、最後に聞こえたアークの声が追い詰められた末の張り詰めた声のように聞こえたのは間違いではないと未来は確信めいた直感を得るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めると未来は病院の屋上にいた。

 

 

 

「あれ……ここは屋上?」

 

 

 

 周りを見回すと現在地が屋上にいることを察する・

 

 

 

 どうやらアークにここまで連れてこられたのだと考えた。

 

 

 

 未来の腰からはドライバーが消えており、先ほどまでのは白昼夢ではないかと思えるようであった。

 

 

 

 だが、彼女の胸中に渦巻く恐怖心と脳裏にこびり付く先程の状況は真実であったと証明している。

 

 

 

「響のところに戻らないとッ」

 

 

 

 先程からの恐怖感から、速足で病室に急いで戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 アーク
 ゼロワンの世界の技術を利用、発展して誕生した未来のライダー。オリジナルのアークを上回るスペックを誇りゼアに匹敵できるレベルまで引き上げている。
 未来の世界を滅ぼした存在。アーリとの契約と特定の条件を成立させたことでタイムリープを実現させた。
 時間移動の前に力のほとんどを消費してしまったため、出力が数段と落ちてしまっている。
 システムの基礎設計を行った存在とアークは別存在であり、開発目的と現在の使用目的はかなり乖離しており、目的のためにかつての力を取り戻そうと水面下で行動している。
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