2××× epilogue&prologue
荒野が広がる。瓦礫と呼べるものが所かしこに散見され、文明と呼べるものがあったことは想像に難くない。しかし今は見る影もない。
荒れ果てた景色の中で一際目立つ彫像と一人の玉座に座している異形のみが文明を感じさせる。
その彫像は、中心に碑、それを囲むように20の異形の巨像が立ち並んでいた。巨像はまるで中心の碑を護るかのように、外を向きそれぞれを象徴する姿をとっている。
異形は、黒と金を思わせる鎧を身にまとい金属製のサッシュを襷掛けしている。目と呼べる場所に「ライダー」と読める文字のような造形が施されている。相対するものに恐怖を与える禍々しさと格の違いを知らしめる気迫を纏っている。まさにその姿は魔王と呼ぶに相応しい。
喧騒が荒野に広がってくる。そこには様々な装いの人間が集まっている。東洋人、白人、黒人等の様々な人種が入り混じり共通点と呼べるようなものがないように思われる。しかし、集団はある一点においてのみ共通しているものがあった。
それは、眼前に君臨する魔王のような異形に対する敵意、そして殺意である。フードを被った集団が手に持った瓶を割ると「アルカノイズ」と呼ばれる異形が現れる。それに合わせ、銃器を持った人間たちが武器を構える。魔王はその戦意に応じるように玉座から立ち上がり、自らを害そうとする集団に相対する。
「う"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!! 」
風が吹きすさび、砂を舞い上げる。集団は、相対する魔王への恐怖に潰されないように、声を張り上げ、全霊を賭けて魔王へと突撃を敢行する。
魔王に銃弾や光弾、アルカノイズたちの触手が襲い掛かるが、魔王の周りを包み込むように透明な何かが攻撃を遮る。それでも集団は攻撃の手を緩めず、嵐のように攻撃を続ける。
その勇気が無謀であると示すかのごとく、魔王は手を翳し、衝撃波を放ち、襲ってくるアルカノイズを消し去る。
先陣を切ったアルカノイズが魔王の手によって、消滅させたことに畏怖の念を抱きながらも、敵対者は歩を進める。
魔王は向かってくる敵対者に、手から蝙蝠を模したエネルギーを大量に放ち、塵に変える。
「怯むなぁ、突っ込めぇぇ!!」
「う、うぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」
それでもなお、恐怖を圧し殺し、向かってくる集団に対し、縮退星のようなもの集団の中心に生み出す。その黒星に飲み込まれ、敵対者はまた数を減らしていく。
「あ、あぁぁぁぁぁぁ、た、たすけてくれぇ」
飲み込まれていく恐怖に悲鳴が上がるも、それでも一部のものは突撃を行ってくる。魔王は溜息を一つつき、向かってくる敵対者たちの時をとめ、告げる。
(う、動けない。どうして……なんで……こいつに……)
「光に群れる虫のように、無謀にも向ってくるな、貴様らは……だが、貴様らでは私に勝つことは不可能だ。なぜかわかるか」
集団は止まった時の中で魔王の言葉に耳を傾ける。その答えを彼らは知っている。今まで魔王に挑み、生き延びた者たちから伝え聞いてきた言葉、長きにわたり生き残った者たちから否定されてきた言葉、それは……
「私こそが最高最善の
その言葉を告げると同時に、時間停止に巻き込まれた存在を塵に還す。その存在はもう必要ないと告げるかのように……
「撤退だ! 生きてるものは何としても撤退するんだ!」
消滅を免れた少数のものたちは、敗北を確信し撤退を行う。その眼には口惜しさと憎悪を宿しながら歯を食いしばり、体を引きずりながら、その場去っていく。魔王は追撃をするわけでもなく、ただその様相を眺めていた。
仮面の相貌は憎悪の炎に燃え盛り、ライダーの文字は歪む。だが、魔王からはどこか哀愁に満ちた寂しそうな雰囲気を漂わせる。その様相を見届けた後、魔王は玉座に戻り、砂煙にまみれた曇った空を見上げる。
「響……未来……みんな……俺は……」
魔王は俯く。その姿は魔王というよりは、打ちひしがれた隠者と呼べる姿であった。
朝日が部屋に差し込み、部屋を照らし出す。そこは寝所と呼べるものであり、女性の部屋であると察せられる。ベットで一人の少女が眠っている。
少女の名は小日向未来、私立リディアン音学院に通う学生である。陽の光が彼女の顔を照らされたことで、布団の中で身じろぎをしながら目を覚ます。
体を寝床から起こし、目をこする。時計を見ると5時台であり、少し早く起きてしまったと実感する。彼女はいつものように、顔を洗い、着替えを済ませ、朝食の準備のため、台所に向かう。朝らしく、焼き鮭とみそ汁そしてご飯という和食の定番を作っていた。
「えっと、お味噌を溶いてっと……お米は、うんいい感じ!」
調理しながら、今朝見た不思議な夢を思い出す。荒野に佇む魔王の異形と、世間を悪い意味で騒がしているノイズと呼ばれる災害を操る集団の戦いというより、一方的な蹂躙といえるものであった。
「なんだったんだろう……なんか悪夢のような気がするんだけど、どこか寂しく感じる夢……」
なぜか、未来は自分の交友関係にいる少年と魔王がかぶって見えた気がした。
時計の針が2周するころに、同居人であり、学友の立花響がパジャマのまま、眠そうに目をこすりながら起きてくる。
「おはよう~未来、今日のご飯はなに~」
と暢気に未来に声をかける。未来は響の顔を一瞬愛おしそうに見つめた後、響に挨拶を返し、朝食は和風であり、白米のご飯もしっかりと用意していると伝え、席に着くように促した。
そのまま、いつもの穏やかな朝食を過ごす。いつものように雑談を交わしながら時間は進み、学校への準備を整え、学校に向かう。
登校する2人の姿を高所から見つめる二つの影、一人は男、背丈は170㎝後半ほどの長身、若葉色の体を覆うようなロングコートを着込み、やたら長いロングストールを首に巻いている。また左手には表紙に歯車のような意匠が施された本を携え、アルカイックスマイルを浮かべ、胡散臭さを醸し出している。もう一人は女、腰までの長い黒髪を後ろで束、白いワンピースを着こみ、無表情に2人を冷めた目で見つめる。女は男とは正反対に、上品さと神聖な雰囲気を纏っている。女は2人を見つめながら、男に話しかける。
「ねぇまだ、こんなことをまだ続けるの? この世界は今までにないほどに不安定になっている。前よりも酷い結果になるかもしれないのに」
男は、女に向き直り、呆れたような態度で口火を切る
「やってもいないのに、諦めるとはね……ある意味では君らしいし、ある意味では君らしくないね」
男の呆れた態度に、今までの冷徹さが嘘のように消え、心配するような目で男を見つめる。
「もっと信じてみようじゃないか、彼女たちを、我が魔王を」
男は手を広げ歌うように宣言するのであった。そして虚空に向かい祝辞を述べる
「祝え、新たなる王の物語の始まりを……」
彼の言葉は虚空に溶け、今、新たな章の1ページが幕を開ける。
荒廃した未来
かつて文明が栄えていたが、ある出来事に伴い、世界の人口は大きく減少してしまった。その後、現れたオーマジオウの手によって世界は一時安定するが、なぜかしばらくした後、世界を救ったはずのオーマジオウは人類に対して敵対的な態度をとることになる。現時点において、オーマジオウは、人類に対し、好戦的に挑むことはなく、石碑を守るように近くにある玉座で鎮座している。