歌姫と仮面の狂想曲   作:白紙の可能性

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第19話 0000/始動

 コーヒーを飲む二人の間には先ほどまでのような暗い雰囲気はなく、優雅にティータイムを満喫している。

 

 

 

「いや、やっぱりおかしいだろ。平日の昼間からこの状況は……」

 

 

 

「そうかなぁ。でも、そろそろ響のお見舞いに行こうかなって考えてるんだよね」

 

 

 

「今日は平日だが、学校はどうしたんだ」

 

 

 

 呑気にコーヒーを入れ直しているソウマにアスカは至極全うな返しを行う。

 

 

 

「まぁ……仕方ないじゃないか、朝から色々あったし……」

 

 

 

「俺もやることがあるからな」

 

 

 

 ソウマはアスカがコーヒーを飲み終わったのを確認した後、食器を洗面台の水桶に入れ、水を張る。

 

 

 

「さて、出発しようか、アスカ」

 

 

 

「あぁ」

 

 

 

「ところで、君は今どこに住んでるの?」

 

 

 

「野宿だが、問題あるか?」

 

 

 

 衝撃の答えに、ソウマの思考がストップする。その姿にアスカが説明を行う

 

 

 

「俺は、この時代に籍がないからな。それに、ゲリラもしていたから多少は生活できる」

 

 

 

「さすがに、ホームレスは勘弁願いたいんだけど……」

 

 

 

「なぜだ?」

 

 

 

「できるだけ、清潔に保って欲しいってだけだよ……」

 

 

 

 ソウマのジト目に意を介さないような反応をアスカが返す。二人の微妙な空気がどうしようもないほど硬直したとき、どこからともなく灰色のオーロラが現れ、中から七実が現れた。七実の服装はいつものものではなく、イデアと同じコートにストールを身に着けていた

 

 

 

「随分とアレな会話をしているわね。まぁ少しでも体を清潔に保とうとすることはいいことだと思うけどね」

 

 

 

 彼女もまた、先ほどの内容に対して頬が引きつっている笑顔を浮かべていた。

 

 

 

「どこからともなく現れるとはな、さすがは神だな……」

 

 

 

「え、七実さんが神様っていってたっけ?」

 

 

 

 ソウマはアスカの発言に対して、驚愕の反応を返すが、アスカはその反応を流すように発言の推察を返す。

 

 

 

「状況証拠的にな。イデアって奴が神だしな、そんな奴と同格として振舞っているということは、神様ということになるだろ」

 

 

 

「隠してはいないけど、そこに気づくとはね。さすがは錬金術師、いえ、シャドウを持つだけとも言えるとはね」

 

 

 

 2人は七実の表情から想像できないほどの冷気のような圧を受け流す。 

 

 

 

 七実は微笑むと、圧を抑えて口を開く。

 

 

 

「まぁ私たち神は基本的に介入はあまりしないようにしているんだけども、さすがにシャドウの力を持つものを浮浪者にするわけにはいかないからね」

 

 

 

 顎に人差し指を立てながら、首を捻りながら目元を歪める。

 

 

 

「イデアの許可は得ていないけども、仕方ないから……二課に協力を要請する必要があると考えてもいいかしらね」

 

 

 

「どうしたの? 七実さん」

 

 

 

 今までのイメージのクールな印象とは異なり、どこか、響のような気の抜けたような反応をしている姿に、ソウマは心配をしてしまう。

 

 

 

「えぇアスカさんの居住先にどうにかするために特異災害対策機動部二課、私は2課と呼んでいるけれど、そこの協力をしてもらって居住区を分けてもらえないかどうか相談しようと思ってね。まぁ相談というよりかは脅迫になりそうだけども……」

 

 

 

「さすがに脅迫してまで住居は欲しくないんだが……」

 

 

 

 物騒な申し出に、微妙な空気が二人の間に流れるが七実はまったく気にしない。

 

 

 

「でも、問題点があればイデアが反対しそうなのよね」

 

 

 

 イデアに許可を取っていないということを気にしている様子から、どうやら、2課に頼るという状況が問題なのだろうかと考えたが、昨日にイデアの2課への対応を見ていると、彼らとの協力が消極的な気配を出していることに気が付いた。

 

 

 

「なんで、イデアは2課に対してあたりがきついのかな? なんか言葉の端にとげがあるんだよね。理由が何かあるのかな……」

 

 

 

「…………」

 

 

 

「……基本的にイデアは彼らの人間性を嫌ってないのよ。それどころか好意的よ、本当に」

 

 

 

 七実の言葉が無音な空気を破る。しかし、言葉に勢いがなく目線は下を向いている。

 

 

 

「じゃあなんで……」

 

 

 

 言い訳じみた前置きに疑問をぶつけるソウマ。アスカも催促を込めた強い目線を向ける。

 

 

 

「それは2課が、というよりも人類全体とでもいうべきね。未来の世界でライダーの技術が各国に普及した世界があるのよ」

 

 

 

「それがなにか問題があるのか?」

 

 

 

 人類がライダーの力を手に入れるということの何処に問題があるかとアスカは疑問を投げかけるが、ソウマはその答えに納得がいっていた。

 

 

 

「人類は手に入れた力を手放さないものなのよ、手放さないからこそそれを血肉に変えてきたのだけれど」

 

 

 

「それを人類同士の争いに利用したってこと?」

 

 

 

 ソウマの想像通り、イデアの大切にして欲しいという言葉と人を守護る力という言い回しから、人類同士の争いへの利用を忌避しているようである。

 

 

 

「なるほどな、ライダーの力は異端技術に匹敵する力だからな。大方ノイズに対抗する手段として用いるために利用したんだろう」

 

 

 

「えぇその結果人類同士の争いのための装備として転用した。その結果、取り返しのつかないことになっただけ……」

 

 

 

「取り返しのつかないこと?」

 

 

 

 取り返しがつかないという事態というのがソウマにとって想像できないでいたが、なぜか頭の片隅にもやもや感が強く残っていた。

 

 

 

「えぇ、首を絞めたってことよ。まぁ詳細は話せないけどね」

 

 

 

 七実の解答にもやもやが残り続けるが気をそらすために、本筋に話を戻す。

 

 

 

「ところで、要件てナニ?」

 

 

 

 明らかに、急に話を逸らした彼の反応に一瞬思考を停止させる。

 

 

 

「……えぇ……まぁこれから立花響の見舞に行くのでしょ、少しあなたに手伝ってもらいたいことがあってね」

 

 

 

「内容は?」

 

 

 

「ついてから話すわ……」

 

 

 

 相変わらずの秘密主義に慣れてきてしまっているソウマは了承の旨を伝える。しかし、イデアがいないことから先に病院にいると考えたが……

 

 

 

「そこにイデアがいるの? いの一番でそういうことは言ってきそうな気がしたから」

 

 

 

「イデアはいないわ。アスカさんが元居た時代に行ってる。さっきの未来の話の真実等の確認にね」

 

 

 

 アスカの話は確かに欠落が大きい。見方によっては情報の捉え方が変わってくる。

 

 

 

「俺の情報が間違っていると?」

 

 

 

「えぇ、おそらくあなたが知らされていない真実があるような気がする。それに……」

 

 

 

 一度言葉を切って困ってように渋い顔をする。

 

 

 

「パヴァリアの母体から考えると、少しはいろいろありそうだもの」

 

 

 

「まぁ気にしても仕方ないことだからね。行きましょ、病院に……」

 

 

 

 強引に話を断ち切り、本題に移ろうとする。

 

 

 

「わかった。それじゃあアスカこれ」

 

 

 

「なんだこれは?」

 

 

 

 アスカにあるものを手渡す。

 

 

 

「この部屋の合い鍵と当面の食費かな、住居が決まるまではここに同居って感じで」

 

 

 

 どこか不満そうな彼に手でバツ印を作り、ソウマは意見を制する

 

 

 

「駄目だよ。さすがにホームレスはね。とりあえず下着とかは、さっきのお金で数着買っておいて」

 

 

 

 3人は玄関の前で別れる形で行動する。ソウマは七実の出した灰色のオーロラで、アスカは徒歩でそれぞれ行動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、俺もこの時代の情報を集めに行くとするか」

 

 

 

 灰色のオーロラが消えるのをアスカは気を引き締めて街中に消えていくのであった。

 

 

 

 




 シャドウシステム
 ソウマとアスカの変身する疑似ライダーシステムの名称。通常のライダーシステムを外見上模すことにより、そのライダーシステムに近い性能と発展の再現を成立させている。通常のライダーシステムとは根本から基礎設計が異なり、使用者の精神状態に影響を与える形で戦闘を補助する等の特殊な機能が存在する。
 イデアとアーリの持つシステムの発展型として開発された第4世代システム。この世界に誕生した始まりの疑似ライダーシステムの発展・制御を目的に開発された。
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