自宅前の景色から一転、新しい景色へと変異する。
立花響のいる病院が目の前に現れた。
もう昼の活発な時間を過ぎており、人気が少なくなってきており、突然現れた二人に注視する人はいなくなっていた。
「さて、立花響の病室に向かう前に別の病室に向かうわ」
「別の病室っていうと誰の病室なの?」
ソウマは何となく察しはついているものの確認のために質問を投げかける。
「あなたも何となくはわかっているでしょ。風鳴翼の病室よ」
風鳴翼の名前を聞き、昨夜の光景と頭に焼き付いた情景が脳裏によぎる。
よぎった光景を両方とも現実であったと感覚が訴えるが常識と記憶が後者を妄想だと断言する。
「あぁ……確かにそうだな」
しかし、それでも尚、どこからともなく湧き上がる感情が常識を圧し潰そうと膨れ上がる。
「……」
その姿をただ七実は興味なさげに一瞥し、ソウマの手を引き、病院に入っていく。
病院の中は活気がほどほどにあり、穏やかな空気に支配されていた。
そのいくつもある病院の部屋の中、少しずつ暗い空気が満ちていく場所に七実とソウマは向かっていった。
その足が扉の前で止まる。
集中治療室と目に入る。七実は手を扉に向け伸ばすと空間が歪む。
扉が一時的に消滅し、二人は足を進める。いきなり現れた二人に目を開く医療従事者たちを後目に七実は風鳴翼の入っている医療カプセルに近づく。
医療従事者たちは、ソウマと七実たちを制止しようとすると意識を失う。
「……さすがにやりすぎじゃない?」
「別に問題ないよ……風鳴翼が絶唱の反動でこうなるのは確定事項、でもその前に因果情報を多く受け取った結果、本来以上の力を引き出して、肉体の負担が想定以上に高くなってしまった」
頭を抱え、苦笑いを浮かべる。溜息とともにこちらに視線を向ける。
「だから、かなり強引な手段を使っても軌道修正をしないといけないの」
強引な手段という単語は物騒ではあるが、状況的には物騒ではないと確信できる。しかし、そうなるとなぜ自分が連れてこられたのか疑問が生じる。
「そのために俺を連れてきた意味ってあるの?」
「あるかどうかといわれるとあまり意味はない」
「えっ、ないの‼」
「ただし……いえ、実際にどうなるか確認すればいいもの」
ソウマが首を傾げている間に足を速めてポッドの真横にたどり着く。
ソウマも特に何の意識もせずにポッドの真横に立ち、下に視線を向けた瞬間に、思考が停止し、顔が熱を帯びることのみを自覚することができた。
「~~~~~~~」
声にならない声を上げ、目線を逸らそうとした瞬間にデジャヴを感じる。どこかで今と同じ状況を見たことのあるような気が頭を過る。
「なに、凝視しているのかな」
「いや……」
七実に声を掛けられ、ようやく風鳴翼から目をそらす。
「でしょうね。やっぱり想定通りの状況かな」
「どういうこと」
「気にしなくて大丈夫、ただ、こっちの仮説が半ば立証されただけだから」
七実は右手をかざし、歌を口ずさむ。その旋律に呼応するように風鳴翼の傷が少しずつ癒えていくのであった。
無言でその光景を眺めているソウマにとって、この光景には一切の覚えがないものであったことから、少し興味が沸き目を離すことができなくなっていた。
しばらくの間、七実の歌声を聴いているとやはり、どこか響に被って見えてしまう。しかし、それだけではないようにも見えてくる。
歌が終わりゆっくりと光が衰えていく。
「これで大丈夫、もう少しすれば意識を取り戻す。ただ、正直回復させすぎたかもしれない」
やってしまったという顔を見せてはいるものの、視線は優しい視線を風鳴翼に向ける。
今までのどこか冷たい印象が少しだけ塗り替わる気がしてきた。
「さてと、あとはあなたの用件だけね」
手を何もない場所に向けると灰色のオーロラが現れる。
「さぁ、この先は立花響の病室につながっているから行ってきなさい。私は他にやらなければならないことがあるからね」
「うん。ありがとう」
感謝の意を示してオーロラに消えていくが、寸前にこちらに振り返り一言
「気を付けてね」
まるで、今から自分が行うことを見透かされたかのような一言に衝撃を覚えた。
「なんで、知っているのかな。まぁやることは変わらないけど」
自身もオーロラを発生させ、病院の屋上に移動した。
誰もいない屋上に一体のノイズが現れる。空中に桃色の光が現れ、ノイズの体に吸収される。
『エグゼイド』
音が鳴り響くと姿が少しずつ変わっていき、アナザーエグゼイドが誕生したのであった。
「ミラ、まだ手を出そうとするのね……」
声の主に気が付き臨戦態勢をとるアナザーエグゼイドを後目に主である七実は我関せずと一つのデバイスを取り出す。
そのデバイスを腰に当てると帯が出てき、腰に巻き付く。
『フォースライザー』
懐から長方形のデバイスであるプログライズキーを取り出し、起動する。
『ノイズ‼』
そのまま、キーをベルトに挿入し、引き金部分、フォースエグゼキューターを引く。
「……変身」
彼女の声に合わせベルトから巨大な飛蝗が現れると小さく分裂し、彼女の体に集約されアンダースーツを形成する。
残った分裂した飛蝗が装甲を空中に形成し、まるでパチンコゴムのように装甲部分が彼女に向って勢いよく、装着される。
『ハーモニングホッパー‼』
『Brake down』
各種装甲部位から排熱が行われ、蒸気が発生する。
その姿はバッタを模した姿でありながら、遠目から見るとパーカーを着ているような姿の白銀と黒の疑似ライダー001ハーモニングホッパーへと姿を変えた。
排熱が完了すると同時に、装甲部位から雷が迸り、七実は苦しみだし、一度地面に膝をつく。
「……なるほどね、随分と負担が大きいみたいね」
少し無理したような声色を漏らすが、すぐに立て直す
「でも、あなたにフォニックゲインを利用するシステムだと太刀打ちできないからね」
「まぁ、それ以上にミラ、あなたの人形でいたくないの。だから、これ位は我慢しなきゃね」
気を張り、立ち上がる。電流をを発する装甲が与える反動を精神力で抑え込みながら気を張り詰めて構えをとる。
アナザーエグゼイドが威嚇を行い、近くに生成されたブロックを足場に利用し、飛び跳ねながら七実に迫ってくる。
フォースエグゼキューターを引き必殺技を発動させる。
『ハーモニングディストピア‼』
電撃を纏いながら、自身に迫りくる相手に高速で接近するのであった。
・ハーモニングホッパープログライズキー
シンフォギアシステムとこの世界に誕生したゼロワンの戦闘データを基に作成されたキー。
攻守ともに優れた性能を誇るが、本人が受ける反動がゼツメライズキークラスとなっているため、長時間の運用が難しいものとなっている。
左の部分が特殊な形状となっており、アサルトグリップとの接続が可能となっている。
・フォースライザー
滅亡迅雷フォースライザーを基に七実専用にチューニングが施された特殊なドライバー
アークとの接続が可能となっている。