歌姫と仮面の狂想曲   作:白紙の可能性

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第22話 0000/キョウアイ

 先ほどまでの喧騒は止み、未来だけが1人病室に取り残された。

 

 

 自分が口に出した心にもない。否、心の奥底にずっと秘めていた感情がそのまま口から流れ出ていた。

 

 

 ずっと心の中で煮詰めていた自分以外の自分が積み重ねた響への強い怒りと憎悪、それが今の未来が持っていた不満と劣等感と混ざりあって形となったのだ。

 

 

【ねぇ、少し話そうよ。未来】

 

 

 自分の影から、タールのような粘性の液体が溢れだし彼女の腰に巻き付いていく。粘性の液体はベルトに変化するとそれにあわせて、彼女の意識は闇に落ちていく。

 

 

 

 

 

 廊下を3本のペットボトルを抱えながら病室までソウマは歩いている。少しずつ人が少なくなってきている病院の姿が、昨晩の光景を想起させるが、1日で起こった内容の密度が高すぎるため、それほど、辛くは感じていなかった。

 

 

「俺ってこんなに非情だったかなぁ」

 

 

 少しだけ、本気で悩みながら響の病室の扉を開けるとそこには倒れている未来の姿があった。

 

 

「未来ッ、響は何処に」

 

 

 倒れている未来を抱き起こし、響がどこかに連れ去られたのかと考え、回りを見渡す。

 

 

 見渡しても争った形跡の無さと、未来の外傷の無さから状況について何も理解できないでいた。

 

 

 しかし、彼女の腰を見ると見たことの無い、既視感すら感じないベルトが装着されていた。

 

 

「これは……一体……」

 

 

 そのベルトに触れようとすると

 

 

「ん……」

 

 

 彼女が少し身動ぎし、目を覚ます。

 

 

「未来良かっ……お前は誰だ……」

 

 

「ほう、まさか我に気付くとはな、称賛に値する」

 

 

 目覚めた未来は完全に気配がことなっていた。そのまま、未来の姿をした何者かは、ソウマの腕の中から抜け出し、響の使っていたベットに腰かける。

 

 

「未来と響は何処だ……!」

 

 

「簡単なこと、立花響は七実という奴がつれていった。未来はここにいる」

 

 

「未来がここにいるってどう言うこと」

 

 

「簡単なことだ、このドライバーはいくつかの人格を統制し、並列化させている。その管理者であるアークが小日向未来と契約したことで、配下にいる我が人格を交代しているということだ」

 

 

「それが本当なら未来の人格は何処にいるんだ」

 

 

「今は、他の人格と話している最中だ。少し悩み事を抱えているようでな、安心しろ未来は無事だ」

 

 

 怒涛の情報に頭が痛くなるが、今、未来も響もあまり問題が無い状態だとわたったため、安堵の息を吐き、項垂れる。

 

 

「はは、まぁ二人が無事で良かったよ」

 

 

「随分と印象が変わるな【始まりの男】よ」

 

 

【始まりの男】と呼ばれたことに顔を上げてから首を傾げる。

 

 

「それって俺のこと?」

 

 

「あぁ、まぁ今は気にせずともよい」

 

 

「そういえば君のことはなんて呼べばいいの?」

 

 

「我のことか、なぜ私の名が気になる」

 

 

「それは、だって未来じゃないし、君のことも縁ができたから名前ぐらいは知りたいなと思って」

 

 

 一度考える素振りをしてから答える。

 

 

「我の名はシェム・ハ、神の一柱である」

 

 

「なんか、神様多くない?」

 

 

「何か問題でもあるか?」

 

 

「無いですけど、有り難みがないかなって思って」

 

 

「気にするな、他にはミラだけだ、お前が出合う神はな」

 

 

 目を反らしながら、ソウマに声をかける。

 

 

「お前はそんなことよりも女関係をなんとかするのが先だ」

 

 

「何でいきなり」

 

 

「本当に貴様らは女泣かせだな」

 

 

 シェム・ハのため息だけが部屋に響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗い空間で未来は目を覚ます。

 

 

「ここは……アークの中?」

 

 

「うん、私が呼んだんだよ未来」

 

 

 そこにはローブを被った女性がいた。

 

 

「あなたは……」

 

 

 ローブの女性は手を空間にかざすとテーブルと椅子が現れる。

 

 

 彼女はそのまま椅子に座る。未来も彼女の視線に促されるように椅子に座る。

 

 

「今回の件はアークには内緒してるからあまり目立てないけどね?」

 

 

 少しだけ目の前の女性に見覚えがある。

 

 

 怪訝な顔をする未来に女性は微笑んで自身のローブに手を掛け、自身の正体を未来に明かす。

 

 

 そこにあったのは少し大人になり、壊れたような笑みを浮かべる立花響の姿であった。

 

 

「え……響、どうして」

 

 

「気に病まなくていいよ。正直全部私が悪いんだもん」

 

 

「え、そんなことないよ。私が」

 

 

 反論しようとする未来を優しい笑顔で制止する。

 

 

「違うよ未来、結局、私はソウマに愛されていることに気付けてないだけ、それでこれからもっと大変なことを起こしちゃう」

 

 

 自分の行いを本気で悔やむように目線をテーブルに向ける。

 

 

「私はソウマのことが好き。誰にも渡したくない。それは今でも変わらないけど、そんなことすら今の私は目を背けてる」

 

 

「響……」

 

 

「未来……私の目を覚まさせて、このままじゃ何も変わらない」

 

 

 未来は椅子から立ち上がり、震えている響を抱き締める。

 

 

「ううん、違うよ私も悪かったのソウマの好意から目を背けていたんだもん。だから、そこまで自分を追い詰めなくてもいいんだよ」

 

 

「未来……」

 

 

 響はすがり付くように声を上げて泣き晴らした。

 

 

 

 

 

「ごめんね。未来、なんか私が慰められちゃうなんてね」

 

 

「いいよ、気にしないで、私も響に謝る勇気を響から貰ったからがんばるよ」

 

 

「うん、未来ならいけるよ。そうだ、お菓子食べていってよ。一人でいつも食べてるから寂しくて」

 

 

 照れながら、苦笑いを浮かべる響の言葉に引っ掛かりを受けながらも未来はそれに賛同し、お菓子と紅茶を飲みながら、所謂、女子会というものを開催するのであった。

 

 

 

 

 

「もういい時間だね。未来、今日は久しぶりに楽しかった」

 

 

「響、また一緒にやろう」

 

 

「……うん、またね」

 

 

 寂しそうな目をする響を見ながら未来の視界は光に包まれていった。

 

 

 

 

 

 一人になった響の後ろから足音が響いてくる。

 

 

「やっぱりばれてたよね」

 

 

「当然だよ、響。どうして、彼女と接触したのかな」

 

 

 響が振り替えるとそこには怒気を纏うアークがいた。

 

 

「それに正体まで明かして、どうするつもりかな?」

 

 

 響は天を仰ぐように上を向く。

 

 

「理由は私を止めて貰うためかな。そして、もう一度3人で一緒に過ごしたいからだよ」

 

 

 アークは響の言葉を聞くと怒気を納め、振り返り元来た道を帰る。

 

 

「許してくれたのかな? そうだったら嬉しいな」

 

 

 響は、少し微笑みアークの背中を見送った。

 

 

 

 

 

 アークは響いる領域から出ると、誰にも聞こえない声で苦悶を漏らす。

 

 

「私だって、一緒に過ごしたいよ。響」

 

 

「でも、私はまだ、全部許せない。だから、それまではごめんね、響」

 

 

 響の領域に向かって、アークはただただ謝罪の言葉を告げるのであった。

 

 

 

 

 

 

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