歌姫と仮面の狂想曲   作:白紙の可能性

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第31話 0000/誰かが夢見た景色

 

 

「「いただきます!」」

 

 

 響とソウマはテーブルを挟み、先程作った朝食をとりはじめる。

 

 

 ゆったりと一緒に朝の時間を満喫する。久しぶりの二人きりの食事にどこか緊張しながら箸を進める。

 

 

(久しぶりにソウマと二人きりの食事なんて……好きなはずのごはんの味も感じないよぉ……もぉ)

 

 

(なんでだろう、いつもは未来がいたから、まさか、今さら緊張するなんてなぁ)

 

 

 緊張している二人はぎこちなく、すれ違うように意識を反らす。

 

 

 彼は、この空気を変えるため、テレビの電源を付ける。

 

 

「……?」

 

 

 チャンネルを回しながら、一瞬子供向けの番組で手が止まる。

 

 

「どうしたの、ソウマ?」

 

 

「……え、あ、あぁ……どこかで見たことあるような」

 

 

「え、小さいころにみてたんじゃないの?」

 

 

「いや、もっと昔に……」

 

 

 彼は吸い付くようにテレビの画面を覗き込む。

 

 

 そんな姿に響は不安を覚え、彼に手を伸ばす。

 

 

 シャドウジオウライドウォッチが微かに輝く。ソウマの視界が揺れて、歪み、世界は黒と白のモノクロームな世界に移り変わる。

 

 

 先程までみていたテレビの画面にあり得ない砂嵐が流れ、それが治まると、飛蝗を模した黒い異形が映り、此方を見つめる。

 

 

「お前は……一体……」

 

 

「オレハ、オウダ。コノセカイノオウダ」

 

 

 異形はテレビの画面を抜け出し、此方に歩んでくる。

 

 

 ソウマとテレビのちょうど真中の位置で足を止める。

 

 

「オマエハ、ナニヲメザス?」

 

 

「何を、いって……」

 

 

 響の方を向き異形は仮面の下で微笑む。

 

 

「オマエニ、マヨウジカンナドナイ。シカシ……」

 

 

 ソウマに異形が手を向けると、彼の懐からシャドウジオウライドウォッチを手元に引き寄せる。

 

 

 ウォッチを掌で転がすと、急に握り締めウォッチに力を注ぎ込む。

 

 

「何をッ!」

 

 

「アセルヒツヨウハナイ、ダガ、コタエヲダセ! ソウスレバ、コノウォッチハアラタ二チカラヲトリモドス。ホントウノオウトシテノチカラヲ、オマエガノゾムチカラヲナ」

 

 

 異形はウォッチをソウマに投げ返す。異形は振り返り、元来た道を引き返す。

 

 

「なぁ、最後に教えてくれ、王ってなんなんだ。それに魔王ってのは……」

 

 

 足を止めるが、振り向かずに質問に異形は先程とは異なる弱々しく答える

 

 

「オウトハ、ハシラデアリ、セカイノチュウテン、モジドオリセカイノシハイシャ……オウノニンシキコソガセカイノスベテトナル。ダガ、セカイノチュウシンハ、アクマデモヒトツシカ、ソンザイシナイ。ソレダケハオボエテオケ……チュウコクダ」

 

 

「それって、どういう……待ってくれ!」

 

 

 彼の制止を聞くことすらなく消えていく。

 

 

 黒と白が混じりあい、彼自身を呑み込むように襲いかかってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程まで、テレビをみていたソウマの顔面がみるみる蒼白になっていき、顔から生気が失せていく。そんな姿に響はソウマに駆け寄り、彼とテレビの間に立つがそれでも彼の目からは生気が戻ることはない。

 

 

「ソウマ、ソウマ! ソウマ!!」

 

 

 響はソウマの肩を掴み力任せに何度も揺さぶる。揺さぶり続けてようやくソウマは意識を取り戻す。彼の意識が戻り、困惑する。

 

 

「うぇ、ねぇ、響、もう大丈夫だから……」

 

 

 手を掴み彼女の行動を制止する。しかし、止まった反動で脳が揺さぶられ、吐き気を催し、口許を手で押さえる。

 

 

「え、ソウマ、大丈夫!?」

 

 

「三半規管が完全に逝ったこと以外は大丈夫だよ」

 

 

「え、どうして……」

 

 

「こんなに揺らされたら、こうなるよ……」

 

 

「あ、ごめん。でもソウマの様子が急に様子がおかしくなるから……心配で」

 

 

「それは、響のお陰でもう大丈夫だよ。ありがとね」

 

 

 ソウマは席を立ち、シャドウジオウライドウォッチを懐から取り出す。

 

 

(なんで、俺にあんなものを見せたんだ? これは……でもあの異形は一体……答えを出すか……俺は何に迷ってるんだ? わからない、何も)

 

 

「ソ、ソウマ、さっきから変だよ。私が急に来たのは謝るから、休んで……おねがい」

 

 

「……大丈夫だよ。それよりも、さっきテレビからでてきた黒い異形って見た?」

 

 

「? そんなのいなかったよ……ソウマ、疲れてるんだよ。だから休もう、ね」

 

 

「うん……休ませて貰おうかな。なぁ響、別に泊まってくのは全然いいよ。むしろ大歓迎だからさ、好きに寛いでて……後で作ったケーキを一緒に食べよう」

 

 

 それだけ言い残すと彼は寝室に消えていく。響は食卓に戻り、箸を進める。

 

 

「……美味しいなぁソウマの料理は……本当に」

 

 

 食べ終えると、食器を水に漬け、彼の食べ掛けにラップを掛け、冷蔵庫にしまう。ソファーに腰掛け、先程から流れている子供向けの番組を眺めるのであった。

 

 

「ごめんね、ソウマ」

 

 

 口から漏れた言葉は無意識か、それとも一体誰の言葉だったのだろうか、判らず、響は自分の膝を抱え込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから2時間の時が流れた。10時を既に時計の短針が周り、長針は、3を指すころ、ソウマは起きてきた。

 

 

「おはよ、響」

 

 

 彼の視界には、テレビを眺めているだけの響がいた。

 

 

「ソウマ、気分は大丈夫?」

 

 

「うん、お陰様で……ねぇちょっとお腹へったからさ、少し早いけど、昼御飯の準備をしちゃおうかな? ねぇ響は何が食べたい?」

 

 

「ごめんね。急に押し掛けて……」

 

 

「気にしないで、別件だからさ」

 

 

「えっと、何があったか聞いてもいい?」

 

 

 首を傾げて、上目使いで彼の服の裾を掴む。

 

 

 彼女の潤んだ瞳にソウマは頬が紅潮するのを実感しながら、裾を掴んだ手を握り、昨日にあったことを語りだす。

 

 

「俺も2課の外部協力者になってさ、その際、弦十郎さんが来て、アスカが拘束されちゃったんだ……それで、何もできなかったことに無駄にショックを受けちゃったって感じで、落ち込んでたんだ」

 

 

「ソウマ……確信は持てばいけど、きっとそれはソウマのせいじゃないよ。だから自分を追い詰めないで……ね!」

 

 

 響は、今まで、彼がここまで弱っている姿を見たことがなかった。アスカという人物に心当たりが一切ないが、彼のこの姿を見れることと、自分を頼ってくれていることに一種の高揚感と自分達と同じくらい気にかけている人物に嫉妬の感情がそれぞれ一対一で渦巻いていた。

 

 

(響にまで心配掛けちゃうなんて……早く立ち直らないと……)

 

 

「響……ありがとう、元気付けてくれて」

 

 

「え……えっと、アハハ……うん」

 

 

 彼の弱りながらも、笑顔で自分に感謝する姿に照れと羞恥に顔から火がでそうなほどに熱くなる。顔を伏せ、目を泳がせて、掴んでいない手を胸元に抱え込み握り締める。

 

 

「えっと、その~何と申しますか~、ねぇソウマ、アスカってどんな人なの?」

 

 

「え、アスカとは面識があったと……あ!」

 

 

 何かに気づいたように視線を上に向け、口が半開きになる。その姿を見ながら響は彼の面識があるという言葉に首を上げ、傾げる。

 

 

「あ~そういえば、あの時は変身してたからなぁ、えっと、あの時、ノイズの集団を外で倒したあとに、バイクに乗った赤いやつとあったでしょ! それがアスカだよ!」

 

 

「うぇ……う~ん、あ! あの時の!」

 

 

(な~んだ、良かったぁ、女の子じゃなかったんだぁ)

 

 

 彼は頬をかき、ちょっと気恥ずかしさが滲みでており、彼女の脳裏にいやな想像が過る。

 

 

(え、女の子じゃないよね! ソウマ……違うよね……)

 

 

「まぁ、一応あれから、1週間近くは同棲してたからね。楽しかったんだけども」

 

 

「え、えっと、一緒にいてどうだったの?」

 

 

 なぜかは理解もせずに、唾を無意識に飲み込む。

 

 

 それに気付かずにソウマは同棲の感想を述べる。

 

 

「まぁ、凄く新鮮だったけど、男二人での同棲だから色気も何もなかったんだけどね」

 

 

「ふぅ、良かった」

 

 

「ん、何が良かったって?」

 

 

「何でもない! 何でもないって! アハハ」

 

 

 勢いで誤魔化してソウマとの話題をすり替えようとする。

 

 

「そうだ、ソウマ! ご飯作ろうよ! もうお腹がへっちゃって!」

 

 

 先程までのしおらしさから一転、何時もの元気な姿に変わる。

 

 

「ふふッ」

 

 

「ソウマ、どうしたの?」

 

 

「いや、やっぱり響は元気な姿が一番だなって」

 

 

「……い、いやぁ誉めてもなにもでないよ~」

 

 

「う~ん、残念! 響にもっと慰めて貰おうかなって思ったのに!」

 

 

「え……えぇぇぇ」

 

 

「な~んあて、冗談だけど」

 

 

「ひ、ひどいよぉ、もう」

 

 

 冗談交じりの会話から、彼は少しだけ真面目な表情に変え、響に向き合う。

 

 

「できればさ、一緒にいるんだしさ、少しは俺にわがままいってほしいなって」

 

 

「え、でも」

 

 

「さっきから、遠慮気味だし。俺は元気な太陽みたいな響が好きなんだけどなぁ」

 

 

「うぇ、う、うん、わかった……ふぅ、じゃあソウマ、さっきいってたケーキを食べよ? そのあと、一緒に映画みたりして、それで、それで……」

 

 

「う、うん。でも、まずお昼ご飯を食べようよ。ケーキや映画はその後でね!」

 

 

 意識を切り替え、完全に振り切り、何時ものテンションに戻る。ここ最近は戻れていなかっただけに、いつも以上の元気満点さに彼は押され気味になり、誤魔化すように食事の準備のために冷蔵庫を覗きにいくのであった。

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