歌姫と仮面の狂想曲   作:白紙の可能性

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第37話 0000/問答

 少し時は遡る。

 

 

 ソウマ、アスカ、奏の前に、先ほどまで護衛していた車両を追いかけるのを阻止するようにノイズが壁のように集まり道を塞いでいた。

 

 

「まぁ、狙い通りといえば、そうなんだけど思っている以上に敵が多くないかな?」

 

 

「そうだな……これだけのノイズをこちらに配置すれば全体的な戦力バランスはこちらに集中させることに成功できている。ここで引き止めれば、向こうの戦闘も大分楽になるな」

 

 

「お前は響のことが心配じゃないのかよ……こんな作戦を考えて、しかも本人には一切知らせずに‼」

 

 

「言っておくけど策に乗っている時点で君も同罪だよ」

 

 

「ッ‼」

 

 

 彼の言葉に奏は怒りの感情を露わにして睨みつける。

 

 

「よせ、今はそんなことを言っている場合じゃない」

 

 

「あぁわかってるよ‼……そんなことはッ」

 

 

「文字通り、四面楚歌か……でもまぁ聞こえてくる音はただの耳障りな雑音だけみたいだけどね」

 

 

 三人の意識が周りのノイズに向いた瞬間、見計らったかのようにその周りからの総攻撃を受ける。3人は、それぞれの距離を生かし、それぞれ攻撃に対して、迎撃を行い、確実に相手を塵に返していく。

 

 

 3人の目前に迫る矢とも見間違うノイズの攻勢に先ほどまで余裕が少しずつ失せていく。

 

 

「……ッ‼」

 

 

【ゴースト‼】

 

 

【アーマータイム‼カイガン! ゴースト!】

 

 

 ゴーストアーマーと16のゴーストパーカーが意思を持つように目の前の敵に立ち向かっていく。オレンジと黒のゴーストパーカーが姿を変えて、ソウマのもと飛び込むように装甲を、一つの姿へと形成していく。

 

 

 ゴーストアーマーに姿を変えシャドウジオウが身に纏いその力を身に宿した。

 

 

 15の英雄がノイズの進行を食い止めるように四方に散らばる。

 

 

「な、なんなんだこれ‼」

 

 

「……」

 

 

(俺が使った時よりも、前回あいつが使った時よりも、強い力を引き出しているのか……)

 

 

「なるほどな……、これが魔王の力か‼」

 

 

 彼の力を前に、驚くことしかできないでいる奏と未来の姿に近づいていく彼に恐れに似た何かを感じていた。

 

 

「アスカ‼、これを‼」

 

 

 ソウマは彼にクウガウォッチを投げ渡す。

 

 

 アスカは、そのウォッチを受け取った。その時、何か強い鼓動のようなものをそれから感じていた。

 

 

「なんだ……ゴーストウォッチとは違う……これは……」

 

 

「それは、始まりの力だ……平成ライダーのね」

 

 

「ッ‼」

 

 

 後ろから聞こえる声に対して振り返る。

 

 

 そこには、暫く姿を現していなかった。イデアの姿がそこにいた。

 

 

「始まりの力だと……」

 

 

「あぁ、それは文字通り、始まりの力だ、すでに彼がウォッチを目覚めさせている。ゴーストウォッチは力は君を認めている。しかし、そのウォッチはまだ君に力を託すかどうか考えている」

 

 

「認めていない……か」

 

 

「違うよ、彼は、自分以外を戦いに駆り立てることを望んでいないということだ」

 

 

 彼の耳には、周りの炎と、その奏とソウマの声が響いている。

 

 

「……クウガはソウマを認めているのか?」

 

 

「判らない。彼らの真意は神である我々ですら理解することは一切不可能だ。しかし、彼らはソウマに力を貸している。それを私たちは……俺は利用している。自分でも思うさ、愚行だと……」

 

 

 イデアは戦火に目を向け、睨みつける。まさに唾棄すべきものであるというように

 

 

「戦いは……人を進歩させる。君はどうする。このまま、彼を殺し、未来を変えるか、それとも、君が彼とともに未来を変えるか……どうする? 影の救世主よ」

 

 

【クウガ‼】

 

 

【アーマータイム! クウガー!】

 

 

 アスカはクウガの力を身に纏う。

 

 

「俺は、あいつの未来を変えて世界を救う‼ただ、それだけだ」

 

 

「そうか、なら行くがいい」

 

 

 彼はその意思を貫くようにソウマのもとに走って向かう。

 

 

「……あぁ、それでこそ────」

 

 

 イデアは諦めた夢の先を見るような目で彼を見送り、右手に光る聖剣を作り出す。

 

 

『ファイズ』

 

 

 彼の目の前のノイズがアナザーライダーに姿を変える。

 

 

 イデアはそれを無視するように右手の聖剣に力を蓄える。

 

 

 光が増していく。まるで溢れんばかりの力を開放するように2つの光波を打ち出す。

 

 

 その光波に相手は飲まれていく。体の半分を消し飛ばされており、もうすでに虫の息となっていた。

 

 

「あぁ……君も承知の上だろう。私は石工達の神だぞ、聖剣の一つや二つ作れるに決まっているだろう。それに……私が君程度にわざわざ疑似ライダーの力を使う必要もないだろう?」

 

 

「ぐぁぁぁぁぁ」

 

 

 最後の力を振り絞り、イデアに飛び掛かるも、そのまま断ち切る。

 

 

「いくら、私みたいな紛い物であっても、この程度の猿真似以下に負けると思われるのは不愉快極まる」

 

 

 ウォッチが砕ける音とノイズの塵が降り積もるなか、彼の表情は不快さに引きつっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 攻撃をすべてを引き出した力を使い、ソウマがノイズの展開を押し込める。

 

 

 彼らの行動を止めるためにすべてに労力を割いているため、この状況を突破できるほどの余力は残されていなかった。

 

 

 そのせいで後ろから迫る敵への攻撃に対して反応が遅れた。

 

 

「ッ‼」

 

 

「ハァァ‼」

 

 

 クウガアーマーに装備して、ソウマに背後から迫る敵に蹴り倒す。

 

 

「アスカ‼」

 

 

「遅れてすまない……ここは任せて先に行け」

 

 

「え……でも、ここは‼」

 

 

「判ってるさ、敵の攻撃を引き付けて、デュランダルの防衛の強化と裏切り者のあぶり出しをする。そのために彼女を一人にして、撒き餌にした」

 

 

「だったら‼」

 

 

「でもな、お前は、どうしたいんだ。彼女を助けたいんだろ‼」

 

 

「それは……」

 

 

 俯くソウマの胸ぐらを掴み自分の方へと引き寄せる。

 

 

「俺たちを信じろ、ソウマ!」

 

 

「……アスカ」

 

 

「とっとと行け!! こんな奴らに私たちはやられないよ!!」

 

 

 早く行けと奏とアスカが迫る。

 

 

 自分にとって何のために戦うのか、まだ、ソウマにとっては踏ん切りがつかないところであった。

 

 

 ソウマのライドウォッチホルダーに光が集まり、スロットにに白とオレンジのライドウォッチ──フォーゼライドウォッチが現れた。

 

 

「ッ!?」

 

 

 ウォッチから強い光が二人の視界を奪う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 視界の全てが白く埋め尽くされた場所にいた。

 

 

「ここは……確か、あの時の……」

 

 

 回りを見渡しても前回出会った男の姿はなく落胆の意思を露にする。

 

 

「そんなに俺に会いたかった?」

 

 

 振り向くとそこには常磐ソウゴがそこにいた。

 

 

「貴方は……」

 

 

「ねぇ、なんで君は戦うの?」

 

 

 唐突な彼の問いは自分の中にある感情が暴れだす。

 

 

「俺は……」

 

 

「前、君は彼女達のためと、みんなの明日への希望を守るためって言ったけど、それって君の本心?」

 

 

「そんなの決まってる! ……本心だ」

 

 

 ソウマは脂汗をかく。自分の持つ矛盾を暴かれたような気持ち悪さが突き抜ける。

 

 

「違うよね。確かに明日への希望を守りたいって気持ちは本当だと思うよ。でも、それは君にとって大切な人たちの幸せありきでしょ」

 

 

「そ、それは……」

 

 

 自分にとっての戦う理由すら危うい薄氷の覚悟を自覚させられた。

 

 

 自分の希望が絶望に転じかける。

 

 

 自身の醜さから目を背けるが……

 

 

「君は結局、自分の大切なものしか守る気はないんでしょ」

 

 

 ポキリと、自分の中の意志が折れたことを実感してしまった。

 

 

 そこにへたりこむ。

 

 

「……」

 

 

「ソレノナニガイケナインダ」

 

 

 振り向くと黒い異形がそこにいた。

 

 

 彼は自分の醜さを否定せず、肯定していた。

 

 

「そんなこと……」

 

 

「ソンナモノダロウ、ニンゲントイウモノハ」

 

 

「でも……」

 

 

「ジブンノシテンデシカ、ニンゲンハモノゴトヲリカイデキナイ」

 

 

「それは……」

 

 

「ワカラナイカ? オマエハ、ソレデモソノサキヲミヨウトシテイルンダ。ジブンノナカニアルヨクボウカラ、セカイヲ、アスヘノキボウヲマモルトイウネガイニショウカサセタンダ。ソレノドコガミニクイトイウンダ? シイテイウナラ、ソレハゴウヨクナダケダ」

 

 

 静寂が支配する。長い間、感覚であれば10分ともいえる沈黙の果てに彼は立ち上がり、黒い異形と見つめ合う。

 

 

「俺は……そうだな、ありがとう。やっとスッキリしたよ」

 

 

 振り返り、ソウマはソウゴに相対する。

 

 

「それでも、俺は大切な人を守って、ついでに世界を救うさ」

 

 

「その実現のためにはきっと色んな相手と戦うことになるよ?」

 

 

「かまわない!!」

 

 

 少しだけ悲しそうな目をした後、彼に対し、認めたように笑ったのだった。

 

 

 

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