歌姫と仮面の狂想曲   作:白紙の可能性

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第40話 0000/陰る明日

 パイプ椅子に座る響と未来の二人は単調な電子音のみが耳に響く。

 

 

 2人は目の前にあるベットに対して、視線を外すことができないでいた。目の前のベットには2人にとって最も愛する人がここに眠っていた。

 

 

 ソウマは先ほどの工場の爆破の瓦礫に潰される形となり、重症を負ってしまった。回避することができはずであったものを、クリスを庇ったことで、瓦礫を交わすことなく受けきったものであった。

 

 

「ねぇ……響……ソウマは……」

 

 

 縋る様な言葉とともにソウマの手を強く握る。

 

 

 目に前の呼吸器から、酸素を取り込む呼吸が聞こえるが、彼の意識は戻らない。内蔵までもダメージがあり、辛うじて生きているといっても仕方のない状況であった。

 

 

「ごめん……ごめんね……ソウマぁ……」

 

 

 響の泣き声には後悔と彼を案じる念が籠っている。

 

 

 自身がデュランダルを手にしたことで起こした爆発がソウマをこのようにしてしまったと自責と彼に目覚めてまた自分達と一緒にいたい望みが響の心を傷つけ押し潰す。

 

 

「……申し訳ありません。もう、お時間となりますので」

 

 

 看護師が2人に対して、面会時間であると伝えにきた。

 

 

「すみません……でも、もう少しだけ……!」

 

 

「響……帰ろっか……」

 

 

「未来……」

 

 

「お騒がせしました。いこ、響」

 

 

 響の表情は苦虫を噛み潰した顔を浮かべるも、未来は感情を圧し殺した顔であった。

 

 

 しかし、二人の足は重く、無理をして歩んでいるのが誰の目からも明らかであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗く澄んだ水面の様な場所に円卓が置かれていた。そこには、フードを被った7人が席についていた。

 

 

「ところで、今回の集まりは何の目的なのかしら、アーク?」

 

 

 長身の女性、4thは、まとめ役であるアークに質問を投げ掛けるも、彼女は特に答えはしない。

 

 

「お! 悪いな、遅くなっちまった」

 

 

「やけに上機嫌みたいね……3rd」

 

 

 今まで沈黙を貫いていたアークが反応を示す。

 

 

「あぁ……まぁな」

 

 

「いっておくけど、ソウマが重体で今、入院しているの」

 

 

「あ~、やっぱりそれぐらいはダメージを負ってるよな」

 

 

 アークは、手に銃をその場で作り出し、3rdに突きつける。 

 

 

 その現状に他のメンバーは一部を除き、慌て出す。

 

 

「待つデスヨ! アーク!」

 

 

「やめて!」

 

 

 5thと6thがアークを制止する。

 

 

「待て、アークこの場で3rdを殺す意味はないだろう!」

 

 

 2ndは剣を取り出し、アークに突きつける。しかし、こんなに喧騒としていても、1stとシェム・ハは一切の反応を示してはいなかった。

 

 

「そんなの知ってるよ。でもよ、アイツはこんな程度じゃ死なねぇよ。それはお前も知ってるだろ、アーク」

 

 

「それとこれとは話が別! ……でも」

 

 

 銃を下ろすとアークは先ほどの怒りは鳴りを潜めて、彼女は3rdに頭を下げた。

 

 

「え、え、どういうことだよ。なにしてんだよ!?」

 

 

「ありがとう。ソウマを救ってくれて本当に感謝してる」

 

 

 アークからの素直な謝罪先ほどまでに気配から、警戒するが特に手のひらを返す気配がないため、3rdは息をついた。

 

 

「それで、アタシ達の力を使ってソウマの怪我を回復させるの?」

 

 

「いや、違うぞ。1st、さすがにあの傷を怪しまれずに直す手段はない。一応、ミラの権限なら行けるかも知れないが、私たちでは完全回復か、代謝を上げて回復を促進させるだけだからできない」

 

 

 シェム・ハが現状について説明すると、手の打ち所がなく、このまま、経過を見届けるぐらいしかないのであった

 

 

「さすがに、今回の覚醒については一切の把握をアーリはできてない。つまり、今の私達は雪音クリスとフィーネが決別するように手を回すのが一番よいと思うけど、みんなはどうかな?」

 

 

 その場にいた全員が頷くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クリスは眠りから覚めると、そこは自身の部屋そのものであり、どうやって戻ってきたのか、記憶に一切ない状況であった。

 

 

「アタシは、どうやってここに?」

 

 

 外の景色を見ると、月が昇り、夜空が綺麗に輝いていた。

 

 

「……」

 

 

 ガチャという音とともに、フィーネが入ってきた。

 

 

「どうやら、失敗したしたようね」

 

 

 クリスを叱責する言葉がフィーネの口から漏れる。

 

 

 しかし、彼女の耳には、遠くから聞こえる声のように、聞き取りづらく感じる。

 

 

 クリスは視線をフィーネに向けると、その表情はいつもと変わらぬように見えたが、その中に自身への優しさが感じられていた。

 

 

「すまねぇ、フィーネ……」

 

 

 その言葉を受けたフィーネは無意識にクリスのことを優しく抱き締めた。

 

 

「フィ、フィーネ!」

 

 

「気にしなくて大丈夫よ。クリス」

 

 

 いきなりの抱擁に動揺するが、その暖かさから、クリスはフィーネの背中に手を伸ばすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ソウマの負傷から4日ほど経過したある日、響と未来はもう慣れた道を行き、ソウマのいる、病院へと向かっていた。

 

 

「……」

 

 

 二人の間に流れていた空気は今重いものとなり、彼女達にとっての陽だまりは暗く陰り、今の青空とは正反対の心情であった。

 

 

 病院につくと未来は慣れた手付きで面会の手続きを行い、ソウマの病室まで歩いて行くと

 

 

「あ、あれは……おーい、立花」

 

 

 響は自身を呼ぶ声に気が付き、振り返ると、そこには以前の戦いで重症を負った風鳴翼であった。

 

 

「どうしたんだ? こんなところで」

 

 

「あ、アハハ、いや、ここにソウマが入院していて」

 

 

「知り合いなの?」

 

 

「いや、知り合いっていうよりも、私たちの彼氏です……」

 

 

 突然のことに吃驚し、思考が止まるがあることに気が付く。

 

 

(聞いちゃいけないことだったなぁ彼氏さんが……あれ、私達?)

 

 

「すこし、聞いてもいいかな」

 

 

 響の言葉に疑問を感じ投げかける。

 

 

「"私達の"ってどういうこと?」

 

 

「そのまんまの意味ですよ、翼さん私達は二人でソウマと付き合ってるんです」

 

 

「そ、そうなんだ……」

 

 

「響、先いってるね」

 

 

「うぇ、未来──」

 

 

 未来は響の唇に人差しを当てられると、そのままの勢いで、耳打ちする。

 

 

「ソウマのことは大丈夫だから、それに、悩んでるみたいだから、翼さんに、悩みを聞いてもらったらどうかな?」

 

 

「う、うぇ!」

 

 

 響は呑気な声をあげると、未来は少しだけ早く走って病室に向っていった。

 

 

 そこには、杖をついている翼と目が点となった響がポツンと病院の廊下に取り残されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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