朝日を感じるような日の暖かさから、ソウマは目を覚ます。
見慣れない天井と併せて、背中から感じる触感から違和感から横を見る。白い手すりが目に入る。
(あぁ、そうか、俺、あの時の崩落で……)
自分の状況をある程度察した後、自分の身体に視線を向けると、幾つか傷の処置がされており、左腕を見ると、点滴用に注射されており、生理食塩水が流れ込んでいる。
上半身を起こすが、身体に一切の異常はなく、傷が完全に癒えていると察する。
「いったい、どれだけ寝ていたんだ」
ベットから起き上がろうとし、床に立とうとすると、少しだけ身体が重く感じてしまい、バランスを崩して床に伏せてしまう。
「……ハハハ、こんなに弱ってるなんてね」
掌にシャドウジオウウォッチが転移するように現れる。紫電を発生させ、ソウマの身体を流れると身体の重さが消える。
力が満ちる感覚があり、任せるままに立ち上がる。
「? 身体が軽い……どうしてこんな……」
自分の身体に異常がない確認がとれると、病室をでようと近づいていくと、いきなり扉が開かれる。そこには慌てた様子の響と未来がいた。
「……ソ、ソウマッ!」
響がまず、勢いよく胸元に勢いよく飛び込み、それに負けて、少し後ろに下がる。未来は少しだけ慌てているものの、どこか落ち着いたものであったが、目尻から涙が滲んでいた。
「ホントに心配したんだよ」
「……ッ……ッ……」
響は彼の胸で泣き始める。
ソウマは響をあやすように頭を撫でながら未来に視線を向けて照れたように、笑う。
「ごめん、でも、もう大丈夫だから」
「大丈夫なんかじゃないよ!」
「ひ、響!?」
響は、声を荒げて顔を上げる。表情は涙で濡れ、まるで子供のように、少女のように、女のように、ただ何かを訴え続けていた。
「そうだよ。響はずっとソウマのことを心配していて……私も、本当に心配したんだよ。ソウマ」
戸惑っているソウマが助けを求めるように、未来に視線を向けても、彼女の滲んでいた涙は響と同じように大粒の涙が溢れており、気丈に振る舞うように手を後ろで組み、にっこりと笑おうとするが、ひきつりうまく笑えない。
「未来……響……心配かけちゃったね、ごめん」
「「……ッ……ッ……」」
「未来」
「ハハ、ごめんね。ソウマ……嬉しいはずなのに、どうしてだろ、ッ涙が……ッとまら、ない、よ……」
「こっちにきて、未来」
二人の啜り泣く声にソウマは未来を呼び、響を少しだけ、横にずらし、近付いてきた未来を抱き締めて、二人一緒に抱き締める。
「……」
無言ではあるが、大切な二人を優しく、あやすように泣き止むまで、しばらくそのままにしていた。
「それで……ソウマは本当に身体は大丈夫なの?」
「うん。なぜかね、最初は立てすらしなかったんだけど、これが光って電流が流れたと思ったら身体の不調が治ったんだよね」
泣き止んだ響の口から当然の疑問を投げられたソウマは肯定の意思と説明を行う。
「確か、それが変身に必要なものだってのはなんとなくわかるけど、そんな機能もあったんだ」
「いや、こんな機能はなかったはずなんだよ。今まで多少なりともダメージは受けてたし、疲労感だってあったんだ。でも、これで傷や披露が治ったのは本当にはじめてなんだよ」
未来の疑問にソウマも今までの経験とシステムそのものの中には決して回復機能など存在してはいなかった。
「それじゃあ、ソウマ、心配かけさせたぶんは責任とってもらおう。ね、未来?」
「え……いやぁ……はい……」
「ふふ、うんそうしよ! 覚悟してよね!」
二人の表情に少しだけ苦笑いを浮かべながらもこれからどうなるか祈るだけであった。
「あぁ、なんか泣いたら喉乾いちゃった! なんか、買ってくるよ! ねぇ、ソウマ、未来何か飲みたいものがある?」
「それじゃあ緑茶で」
「私は紅茶で……」
響は勢いよく部屋を飛び出すと彼はベットに腰掛け、内心感じていた疑問を未来に投げかける。
「ねぇ、未来……何で響はあんなに、自分を追い詰めているの?」
「……やっぱり気付いちゃうよね……それはね、あの崩落でソウマが重症を負ったのは全部自分と敵のせいだって思ってるの……」
「でも、あれは、全部自分の意思でやったことで……」
「それでも、響は自分と敵を憎んでるの、自分に至っては完全に軽症で、ソウマが意識不明のまま、ずっとだよ……」
「そんなことが……」
未来は、ソウマの隣に座り、彼の問いに答える。予想以上に手段が限られている状況に彼の胃が痛む。
「これでもよくなったほうなんだ……こんなんじゃ彼の彼女に相応しくないっていって、ソウマが倒れてからずっと自分を傷つけるみたいに毎日、毎日トレーニングをしてて、学校も休んで……」
「そっか……彼氏失格だな。こんなにかわいい彼女たちを悲しませちゃって」
「ソウマ……そんなことないよ。それにこれからも3人で支え会っていくんだから」
「未来……」
未来は一度目を閉じてから、意を決し、ソウマの前に立ち、迫る。彼はそれに応じるように前に出て彼女を抱き締める。しかし、何も言わない彼に不安の感情が積もり、未来はその不安が口から飛び出す。
「それとも、嫌かな、私たちと一緒にいるのは──」
「そんなはずないだろ! 二人がいたからこそ、俺はこれまで頑張ってこれたんだよ。本当に支えられてるのは俺のほうだよ!」
彼は抱き締めるのをやめて、未来の肩をつかみ、顔を見つめ、彼女の不安を消し飛ばすように真剣に話す。それを聞いた彼女の顔は朱に染まりきり、顔から蒸気が漏れそうな位に熱を持つ。
(響にも、自分の気持ちを伝えないとな……このままじゃ、きっと)
ガタンと音が聞こえたと思いフリーズしている未来から視線を外して音の元、病室の扉を見ると顔が真っ赤に染まり、目の前の少女と同じくらいに赤くなっており、完全にフリーズしていた。
ソウマは、ベットから立ち上がり、二人に向けて告白する。
「二人とも、これからきっといろんなことが起きて、二人にたくさん心配や迷惑をかけると思う。それでも、俺と一緒にいてくれますか?」
「そんなの決まってるじゃん! 一緒にいるよ。ずっと、これからも」
「私だってずっと一緒にいたい! 一緒に3人で、ずっと一緒に」
彼の言葉は、二人を現実に引き戻すには十分なものであり、二人とも食い気味に彼の不安を払拭する。互いに一緒にいたいと願いを口にする。それが3人を互いに勇気付ける。
「うわッ!?」
響は彼に抱きつくようにして彼をベットに押し倒す。未来は潜り込むように彼の胸元に身体寄せ会う。
「ソウマ♪」
「エヘヘ」
二人の体温を感じていると、先ほどの回復の反動からか、眠気が増していき、ソウマは一眠りにつくのであった。
病院での出来事からから数日が立ち、見事にそのあとに来た看護師に怒られることとなった。傷も完全に癒えているため、検査のあとにそのまま退院となった。
「まさか、朝にこんなに降られるなんて憂鬱だなぁ……ハァ」
ざあざあと雨が降るなか、梅雨入りを、感じ始める朝の時間にソウマは傘を指しながら、雨に嫌気が指し始めていた。
商店街を歩いていると、ふと何かに導かれるように意識が路地へと向かう。その感覚に反することができるが、物は試しと足がそちらに向かう。
水溜まりの上を歩きながら導かれるように向かって行く。
「なんなんだろうな、この感覚?」
首を傾げるが明確な答えは出ない。
「あ……」
彼の視線に白い髪が目に入る。
そこには赤い服と白い髪、白い肌のモノクロな少女がそこにいた。雨音が遠くに聞こえる言うな錯覚を得る。
ソウマの心に暖かいなにかが溢れ出す。
彼には雨に濡れ、ボロボロな彼女をこのまま放置することはできなかった。例えそれが敵であったとしても──
「クリス……」
無意識のままに、彼女の名前を口にする。
まるで、運命に導かれるように榊ソウマと雪音クリスは再開を果たすのであった。