歌姫と仮面の狂想曲   作:白紙の可能性

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第49話 0000/比翼連理の想い

 白い服を着た女性がクリスとソウマの前に立ちながら、興味深そうに二人を覗き込んでいた。

 

 

「あれぇ、こんなこと、今までなかったはずなんだけどなぁ」

 

 

 二人を見るようで、その瞳はモノを見るようであるが、どこか、温かさを秘めている。

 

 

「まぁ、いいか……ちょっと眠って」

 

 

「「ッ!?」」

 

 

 彼女が手をかざすと、急激な眠気に襲われる。

 

 

 クリスが、そのまま地面に倒れ伏す。ソウマは、反対に気力で踏ん張りながら、意識を繋ぎとめる。

 

 

「あ~、なんで寝てくれないかなぁ~、気力だけで神の力を跳ね除けるのは、ちょっと想定外だねぇ」

 

 

「貴女は……一体?」

 

 

「私、私はミラ、善なる神にして、この世界で最も初めに存在した神様……かな?」

 

 

「なんで……ここ……に……」

 

 

「事前にここの状況について確認」

 

 

「確……認……?」

 

 

 当然の疑問を投げかけるが、ミラは首を傾げる。

 

 

「まぁ、理由は言えないかなぁ~」

 

 

「なん……で……ッ!?」

 

 

 ソウマの意識が急に遠くなっていき、足を折り、うつ伏せに倒れる。

 

 

 足音が、消えゆく景色の中に聞こえてくる。

 

 

「少し、おふざけが過ぎるな、ミラ?」

 

 

 足音共にいつもの飄々とした態度が消えた、少しだけ、怒気を纏わせたアーリがそこにいた。

 

 

「ッ!?、ぁ……アーリッ!!」

 

 

 まるで、花が咲くかのように、待ち人を待つ少女のように、恋する少女のように、善なる神は、悪なる神との再会に心を躍らせる。

 

 

「……ミラ」

 

 

 対するアーリは、眉間に皺を寄せる。

 

 

 アーリは意識を失ったソウマとクリスを灰色のオーロラで二人を転移させる。

 

 

 転移させた後、ミラも特に気にすることなく、アーリに視線を離さずに微笑み続ける。その視線に彼は気づきながらも、決して彼女と目を合わせようとはしなかった。

 

 

「それで、この状況はどういう訳だ? ソウマとクリスを眠らせたのは、ここに鉢合わせたから、では、なぜ、ここでお前が鉢合わせた? まだ、動くタイミングではないと思っていたんだけどね」

 

 

「あぁ~うん、それはねぇ、フィーネに力を与える前に、今どれだけソウマ君たちのことを調べているのか、ちょっと気になっちゃって……」

 

 

 アーリに向けた視線を少し泳がしながら、胸の前で、指と指を合わせる。

 

 

「ふ~ん、まぁ、その理由で納得しといてあげるよ。今から口にすることは、ただの独り言だ……」

 

 

 独り言と断りを入れた上で、自分の考えを述べていく。

 

 

「お前がここに、来る理由は、現状の確認も一つだろう。でも、それであれば、システムを使えばいいだけ、それをしないのは、この場に現れたソウマとクリスが状況によっては、フィーネと鉢合わせる危険性、それに伴う、彼女が計画を放棄する可能性を考えた。まぁそれの未然防止ってところかな?」

 

 

「随分と長い独り言だねぇ~」

 

 

「いや、一応まだ続きがある」

 

 

「そ、それ以上は、勘弁してくれないかなぁ~、お願い!」

 

 

 アーリは、自分に対して、手を合わせて懇願してくる彼女にため息をつきながら、彼女と正面を向いて向き合った。

 

 

「わかったよ……それで、まぁ、なんていうか……」

 

 

 しどろもどろする彼の姿にミラは首を傾げる。しばらくすると、意を決したように手を首元に回して、目線を先ほどまでと同じく、逸らす。

 

 

「元気だったか……」

 

 

「ぁ……うん! 、元気だよ。だって元気が私の取り柄だもん!」

 

 

「そうか……それはよかったよ……本当に」

 

 

 気恥ずかしさから、目線が泳ぎ続けるアーリに、ミラは喜びのあまりに、頬が緩み続けてしまう。

 

 

 ミラは、意を決して、一つの頼みごとをアーリに投げる。

 

 

「……あ、あのさ、アーリ……また、また一緒に世界を管理しようよ。それで、私と一緒に過ごそう。ね……」

 

 

「それは、それはできない」

 

 

「……やっぱり、私にもう嫌気がさしちゃった?」

 

 

 ミラの目じりには涙がたまっていく。それにアーリは首を横に振る。

 

 

「そんなことない。でも、俺とお前じゃ望む未来が違いすぎる」

 

 

「そんなこと……そんなこと、どうでもいいじゃない!」

 

 

 自分の中にある有り余る感情をそのまま、アーリにぶつける。

 

 

「なんで、そんなに人類のために、身を投げうてるの……どうして、そのために私を捨てたの……」

 

 

「捨ててなんかいない……仮にも俺とお前は夫婦神だろうが……自分の愛妻を見捨てる夫がどこにいるっていうんだ!」

 

 

「じゃぁ、どうして……」

 

 

「俺は、自分の神としての責任を果たすだけだ」

 

 

「責任って、どうして……」

 

 

 明らかに沈んでいる彼女に、アーリは頭を掻きながら、一つの提案を行う。

 

 

「なぁ、ミラ、俺たちって結婚式すら、上げてなかったよな……」

 

 

「う、うん……それがどうしての?」

 

 

 いきなりの話の切り出しに彼女は戸惑いの感情が頭を占める。

 

 

「これが、この世界の未来が決まって、俺たちのやることが全部終わったら……、式を挙げないか?」

 

 

「え、え、えぇぇぇ~!?」

 

 

「だめか?」

 

 

「う、ううん、したい、したいけど、アーリはそれでいいの?」

 

 

「いいさ、ただ、その分俺は今回ばかりは遠慮せずに行く。これ以上時間をかける猶予も力もあまり残されていないからな……」

 

 

 彼の言葉を受けて、呆然とするミラは、無力感を感じて、唇を噛む、しかし、すぐにそれを払拭するために、手を強く握るり、自分の中にある、躊躇いを投げ捨てる。

 

 

「そんなことない……そんなことないよ、私が勝って、すべてを手に入れる。だから、アーリ、今回は私も全力で行くよ」

 

 

 悪神と善神は自身の目指す未来のために、自分の領域に戻ろうとする。

 

 

 アーリとミラは、自分の領域への門を開くと、足を止めて、口を開く。

 

 

「ミラ、俺は、全力で足掻く」

 

 

「アーリ、私も、全力足掻くよ」

 

 

「「自分が望む未来のために!」」

 

 

「人類の自由と」

 

 

 アーリは自由を掲げ

 

 

「人類の平和と」

 

 

 ミラは平和を掲げる。そして、

 

 

「「未来のために! 必ず勝つ!!」」

 

 

 一人と一柱の神は、自身の領域へと戻っていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミラは、自分の領域に戻ると、自分の机の上に置いてある。ライドウォッチダイザーに目を向け、その台座に装着されている。一つのウォッチを手に取る。

 

 

「全力で行かないと……もう、猶予はあまりないんだよね……アーリ」

 

 

『ジオウ!』

 

 

 アナザージオウライドウォッチを起動させる。

 

 

「これを少し強化する必要があるわね」

 

 

 先ほどまでのほんわかとした気配は鳴りを潜めて、彼女の眼には狂気が宿る。

 

 

「さぁ、踊ってもらいましょう。フィーネ……私たちの望む未来のために」

 

 

 口が裂けたかと思う程に、口角を釣り上げて、狂気に染まった笑みを浮かべる。

 

 

「始めましょうか、期待しているわ……フィーネ。せいぜい、私の目的の礎となるように暴れて頂戴!」

 

 

 白い世界に彼女の狂気に侵された笑う声音が鳴り響き渡る。その眼には、自分の望む未来を描いており、もはや、正気などはどこにも宿してはいなかった。

 

 

 

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