歌姫と仮面の狂想曲   作:白紙の可能性

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第51話 2012/死の女神は絶望を課す

 閉じた目に感じる光に目を覚ますと、隣にクリスが眠っていることに気が付く。

 

 

「うわぁッ……あれ、ここは……」

 

 

 驚き、いきなり起き上がると、そこは自分の部屋であった。

 

 

「どうして、ここに……ッ、クリス!」

 

 

 自分の現状、一切の過程が抜け落ちた結果に対して、困惑が湧き上がるが、ソウマは隣に寝ているクリスに気が付き、彼女を揺さぶり起こそうとする。

 

 

「ん……ん、ん~……ぁ、ソウマ? ……ッ!? ここは……あれ、ソウマの部屋?」

 

 

 クリスはソウマに起こされ、最後にあった記憶から、飛び起きて周りを見渡すと、ソウマ同様に現状に困惑を示す。

 

 

 ソウマは、クリスの飛び起きたことで、少し、バランスを崩して、手をつく。

 

 

「あ、うん……どうしてこうなったのかなぁ~……でも、こんなことができるなんて──」

 

 

 プルルルと通知音が自身の携帯電話から聞こえる。

 

 

「? いったい誰が……もしもし」

 

 

『もしもし、私、七実よ』

 

 

「七実さん、どうしたの? というか、どうしてこの番号を知ってるわけ……教えてないはずだけど」

 

 

『ハハハ、あまり気にしないで欲しいかな。まぁ要件は一つだけだから』

 

 

「理由?」

 

 

 怪訝な顔を浮かべる彼にクリスはその表情に強い不安感に襲われた。

 

 

「ソウマ……」

 

 

 しかし、ソウマは、それに気づく様子がなく、少し考えこむ様子であった。

 

 

「要件? ……でも、いきなりだね。今まで、こんなに直接的なことは今までなかったようだけども……」

 

 

『それは単純に状況を巻く必要があるだけ、だから、指定する場所に来てもらえないかなぁ』

 

 

「はぁ? ……まぁわかった。行くよ……それが必要ならね」

 

 

『あと、クリスちゃんを連れてきてくれない? 彼女が重要なの』

 

 

「クリスを巻き込まないといけないのか……」

 

 

『……あぁお願いするよ。絶対必要なの』

 

 

「……場所は……」

 

 

『──』

 

 

「……あぁわかった」

 

 

『待ってるよ』

 

 

 ソウマは電話を切ると、クリスの心配そうな表情に気が付く。

 

 

「クリス……」

 

 

 顔に不安が張り付いた表情をしており、その瞳がソウマを突き刺す。

 

 

「どうしたんだ? ……なんかあったのか?」

 

 

 少し口ごもるが、クリスに先ほどの会話の内容を答える。

 

 

「七実が指定の場所に来いってさ……クリスと一緒にね」

 

 

「アタシと一緒に?」

 

 

「しかも、連れてこないといけないって念まで押されてな」

 

 

「行くしかないってわけか……わかった。行こうぜ」

 

 

「いいのか? きっと面倒ごとに巻き込まれるよ」

 

 

「いや、既にアタシが面倒ごとの種だからな」

 

 

 クリスの沈んだ表情にソウマは覚悟を決める。

 

 

「……俺にとっては、面倒ごとじゃないよ。クリス」

 

 

「ぁ……」

 

 

 見上げる彼女を抱きしめる。

 

 

 自分の中にある感情に従い、強い力で抱きしめた。

 

 

「どうしたんだよ……ソウマ」

 

 

「気にしなくていいよ」

 

 

「気にするなって……」

 

 

 無言を貫く彼にクリスは身を任せるように彼の背中に手を回す。

 

 

 そのまましばらくの間、二人は抱きしめあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この前の戦闘において廃墟となった工場跡地にクリスとソウマは来ていた。

 

 

「ここのはずだけど……ッ、どうしてこんなところに……」

 

 

 周りを見渡すとそこには少しだけ見慣れた黒服たちがそこにいた。

 

 

「ん? 、榊君、なぜこんなところに」

 

 

「ッ!?」

 

 

 後ろからの声で振り向くとそこには風鳴弦十郎が怪訝な表情で立っていた。

 

 

「弦十郎さんじゃないですか……それはこっちの台詞ですよ。俺は呼び出しを受けただけです。七実さんのね」

 

 

『ジクウドライバー!』

 

 

 少しだけ、笑顔を作り、クリスを庇うように立ち、腰にドライバーを装着する。

 

 

「? 私は、彼女にここへ転移させられたんだが……」

 

 

「は……どうして、まさか、はめられたのか、いや、でも……」

 

 

「あぁ、こっちだ」

 

 

 考え込むソウマに弦十郎は、近くの黒服に気が付き、手を振る。

 

 

「あら、少し待たせてしまったみたいね」

 

 

 七実が、こちらに歩いてきていた。

 

 

「え、あぁ……これはどういう状況なのか、説明してもらえるかな?」

 

 

「えぇ、今すぐ気にする必要がなくなるわ……」

 

 

『エグゼイド!』

 

 

「それは……ライドウォッチ?」

 

 

「えぇ……ただのアナザーエグゼイドライドウォッチだよ」

 

 

 彼女は起動させたウォッチを手に、こちらへと近づいてくる。

 

 

「なぜ、そんなものを……ッ!?」

 

 

 七実の姿がぶれたかと思うと弦十郎の懐に忍び込むと胸にウォッチを押し付ける。

 

 

「何を……──グ、ギ、グァァァァァ」

 

 

 ウォッチから、光が漏れだし、弦十郎の肉体を変質させようとする。

 

 

 その力に抵抗しようと藻掻くも、意識を力に飲み込まれる。

 

 

『エグゼイド!』

 

 

「グ、グァァァァ」

 

 

 弦十郎の肉体は、アナザーエグゼイドに変質し、苦悶に満ちた声を上げる。

 

 

「あら、アナザーライダーの力に飲み込まれないなんて、かなり力を強化してあるんだけどね。やっぱり想定以上の精神力ね。でも……」

 

 

 七実は、彼の体に触れて、自身の力を注ぎこむ。

 

 

「ガ、ガ、ガァァァァ……ア”ァ”ァ”ァ”……」

 

 

「こうやって力を送り込めば問題ない。そもそも、アナザーエグゼイドのウォッチとあなたの適性が高いから、飲み込ませるのは簡単」

 

 

 目の前で、アナザーライダーに変質した弦十郎を見てソウマは冷汗を流す。クリスは、今まで見たことない脅威を目にして、自分を抱きしめる。

 

 

「どういうつもりだよ。七実さん!」

 

 

「ふふ、そんなの説明したでしょ。展開を巻くためって、さぁ、雪音クリスを殺しなさい。アナザーエグゼイド」

 

 

「は──」

 

 

 目の前の弦十郎はその言葉を聞くと、勢いよく飛び出し、拳をクリスに向かって振り下ろす。

 

 

「ぁ──」

 

 

 向けられた強い殺意にクリスは足がすくむ。クリスは迫る拳に一切の反応ができずにいる。

 

 

 ソウマは、震えている彼女を守るために、飛びつき、その攻撃を躱す。

 

 

「カハッ……」

 

 

「ソウマッ」

 

 

 彼女を抱え込み、転がると勢いを殺しきれず、瓦礫に背を打ち付ける。

 

 

「大丈夫……」

 

 

 彼はその場で立ち上がるとウォッチを起動させる。

 

 

【シャドウジオウ!】

 

 

 彼は、ドライバーに装着すると、後ろに現れる文字盤が黒く変色していく。

 

 

 黒く完全に文字盤が変色すると、そこから紫電が迸る。

 

 

(やっぱり封印が溶けて混ざり合っている)

 

 

 その光景に七実は顔を苦虫を噛み潰したように表情を歪める。

 

 

「変身!」

 

 

 ドライバーが一回転すると、まるで世界が引っくり返るように視界が回転する。

 

 

【シャドウタイム!! 仮面ライダージオウ・シャドウ!!】

 

 

 黒い輪がいくつも彼を中心に回り動き、彼の姿を灰黒い異形であるシャドウジオウに姿を変える。

 

 

 ピンクの「ライダー」の文字は少し黒く染まり、顔に勢いよく装着される。

 

 

 ソウマは、武器を構えて、恐怖に竦むクリスの前に立つ。

 

 

「グガァァァ! ──グァ」

 

 

 地面を踏みぬくほどの勢いで踏み込み、向かってくるアナザーエグゼイドは気が付くと、地面に倒れ伏していた。

 

 

「どうしたんだよ。ほら!」

 

 

 自分の状況を理解する間もなく、ソウマは自身の持つ銃で地面に転がる相手に弾丸を浴びせる。

 

 

 その銃撃から反撃するように、飛び上がるが

 

 

『フォーゼ! スレスレシューティング!』

 

 

 気が付くと自分の視界にミサイルが迫ってくる。空中で身をかわすようにして、拳圧でミサイルを打ち落とす。

 

 

「えぇ~、ちょっと化け物過ぎないか、あれ」

 

 

 ソウマが引き気味な反応に対して、アナザーエグゼイドは空中にブロックを出現させて迫っていく。その行動に合わせて躱そうとするが、後ろにいるクリスに気が付き、躱す行動から、迎撃する行動に移す。

 

 

 銃を剣に切り替えて、引き金を引き、そのまま、必殺技を発動する。

 

 

『フォーゼ! ギリギリスラッシュ!』

 

 

 黄色い電気を纏わせて切り付けてアナザーエグゼイドの勢いを逸らそうとする。

 

 

「ぐ! ……おりゃぁ」

 

 

 アナザーエグゼイドの攻撃を逸らし、近くの瓦礫に吹き飛ばす。

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 

 乱れた息を整える。

 

 

「ソウマ……」

 

 

 クリスは息の乱れた彼の姿に震えた足を叩き姿を変える。彼を守るために、自分が嫌う歌を歌いイチイバルを纏う。

 

 

「クリス……大丈夫?」

 

 

「あぁ震えているだけにはいかねぇからな!」

 

 

 クリスは気丈に振舞いながらソウマの横に立つ。

 

 

 彼は震える彼女の勇気に答えるように、アナザーエグゼイドを吹き飛ばした。瓦礫に向かって武器を構えた。 

 

 

 

 

 

 

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