歌姫と仮面の狂想曲   作:白紙の可能性

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第52話 2012/灯す希望

 対峙する二人を威嚇するように、自身の埋まっている瓦礫を勢いよく吹き飛ばす。

 

 

 

 吹き飛んだ瓦礫が周辺に散らばり、一部が二人のもとに降り注ぐが、二人は、手にもつ銃で瓦礫を打ち落とす。

 

 

 

「そうだ、これを言っておかないとな。クリス、あれはシンフォギアの持つフォニックゲインを吸収することで回復するんだ」

 

 

 

「ハァ、先に言えよ! ……じゃぁどうすればいいんだよ」

 

 

 

「簡単だよ……あいつの許容量を超えるダメージを叩きこめばいいんだよ」

 

 

 

「簡単に言ってくれるぜ!」

 

 

 

「グァァァ!!」

 

 

 

 踏み込む勢いに任せて二人に向かって踏み込み、地面を割り、空気を押し退け、前へと出る。

 

 

 

 押し退けられた空気の衝撃と殺気が合わさり二人を圧倒する。

 

 

 

「……ッ、さぁて……やってみるか!」

 

 

 

 クリスは自分の不安を押さえつけて、隣にいる彼を思い、歌を紡ぐ。彼女の歌に呼応するように、両手の武器はガトリングの形状へと切り替わる。

 

 

 

【BILLION MAIDEN】

 

 

 

 ガトリングが火を噴き、弾丸がアナザーエグゼイドに襲い掛かる。

 

 

 

 襲い掛かる弾丸の衝撃を受け、一時、速度が落ちるが、それをものともせずにさらに踏み込み、地面を踏みぬき、速度を引き上げる。

 

 

 

 しかし、

 

 

 

「グ、グガァ」

 

 

 

 回復を上回るように、弾丸が塞がる傷口をさらに広げていく。

 

 

 

「想定通り!」

 

 

 

 ソウマは走りながら、アナザーエグゼイドの後ろに回り、背中を蹴り飛ばし、そのまま銃撃を合わせる。

 

 

 

「ガァァァ!」

 

 

 

 勢いの流れを急に変えられてことにより、勢いのまま、地面にそのまま叩きつけられる。

 

 

 

「よっと」

 

 

 

 蹴り飛ばした勢いのまま、クリスの隣に着地する。

 

 

 

「無茶するなぁ、お前……」

 

 

 

「まぁ、そうでもしないと、裏をとれないからね」

 

 

 

【フォーゼ!!】

 

 

 

 ベルトに装填し、回す。それと同時にアナザーエグゼイドが立ち上がる。

 

 

 

【アーマータイム!! 3、2、1、フォーゼ!!】

 

 

 

 フォーゼアーマーを纏い、二度自分の胸を叩き、拳を前に突き出す。

 

 

 

「さぁ、タイマン張らせてもらうよ!」

 

 

 

 挑発に似た言葉に、アナザーエグゼイドは、先ほどまでとは違い、変化した敵の戦力に警戒心を強め、間合いをゆったりと詰めてくる。

 

 

 

「────」

 

 

 

「ハァ!? ……あぁ、もう! わかったけど……しっかりと躱せよ!!」

 

 

 

 ソウマは屈みながら、クリスに耳打ちをしてあることを提案する。

 

 

 

「うん、任せて」

 

 

 

 その内容にしぶしぶ了承するが、少しだけ、不安が顔に滲み出る。

 

 

 

 歌う声に応じるように、彼女の手の武器が消えて、背部に2基の大型ミサイルと小型ミサイルラックを作り出し、それをアナザーエグゼイドに向ける

 

 

 

「さてと、こっちから行こうかな……ッ!!」

 

 

 

 恐怖を胸に抱えるが、クリスの表情を見て、覚悟を決め、彼女の準備が完了を確認すると、脚部と背部推進器を点火し、アナザーエグゼイドとの間合いを詰める。

 

 

 

 切り裂く空気が衝撃となり、音が一泊遅れるように聞こえるほどの速度で、アナザーエグゼイドに迫り、瞬きの間に、相手の一足の間合いまで詰め切る。

 

 

 

 アナザーエグゼイドは想定以上の速さの相手に、反射で、距離をとるために、蹴りを放つと、それに合わせてソウマは拳を振り抜こうとする。だが、アナザーエグゼイドの力が上回り、押し返されそうになる。

 

 

 

「ハァァァ!」

 

 

 

 腕部推進器を点火し、その力を合わせて、拳を振り抜き、敵の足は、後ろ側に吹き飛ばされ、体幹が崩れる。

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 崩れた体幹に受け身が取れずに、防御が取れなくなったアナザーエグゼイドに対して、全身の各部推進器を一気に吹かせ、体当りする。

 

 

 

「グァァァ!?」

 

 

 

 最大速度に到達すると同時に、推進器の推力を偏向し空中に飛び上がる。

 

 

 

「うぉぉぉ!」

 

 

 

 空中から、さらに推力を偏向し、最大推力で、瓦礫の壁に向かって飛ぶ。瓦礫の壁に衝突し、突き抜け、空中へと再び舞い上がる。また空中で旋回し、周辺の瓦礫に幾度も繰り返して突撃し、アナザーエグゼイドに対して、ダメージを蓄積させていく。

 

 

 

「グ、グァァ!」

 

 

 

 フォーゼアーマーの最大推力で、瓦礫に叩きつけられることに少しずつ限界を感じていき、力任せにソウマを殴り続けるが、圧縮されている空気の圧と摩擦熱から逃れることができずにいた。

 

 

 

「グォ”ォ”ォ”ォ”ォ”!!」

 

 

 

 しかし、さらに、幾度か瓦礫の激突を受けた朦朧とする意識のなか、アナザーエグゼイドは持てる力のすべてを拳に込めて、ソウマを殴り、空気圧と推力の拘束から抜け出した。

 

 

 

「ガハッ……」

 

 

 

 ソウマは振り切られた攻撃に、肺から空気が抜け、制御が乱れ、完成に従い、まだ形状を保っていた廃工場に衝突する。

 

 

 

 アナザーエグゼイドも同様に、慣性に従い、地面を転がり、ソウマの衝突した廃工場の付近で止まる。

 

 

 

「ガ、アァァァ」

 

 

 

 しかし、ダメージを受けつつも、アナザーエグゼイドは立ち上がり、最も現在の脅威となる相手であるソウマを殺すために、廃工場へと入っていく。それは彼が女神から受けた命令を遂行するために必要であると判断するためであった。

 

 

 

「ハァ……ハァ……ハァ……ッ! マジかよ。これでも、やられないなんてね……」

 

 

 

 目の前に限界に近いダメージを受けているが、まだ、相手への殺意を保ったままのアナザーエグゼイドは片足を引き摺りながらも迫ってくる。

 

 

 

 ソウマは、幾度も行った突撃と先ほどの不意の衝突、アナザーエグゼイドの渾身の一撃を受け、装甲の各所からは火花が散り、限界に近いダメージであるが、何とか立ち上がる。

 

 

 

 しかし、体に受けたダメージが想定よりも大きく、意識を気合で保っていた。

 

 

 

「ハハハ、さて、どうする。弦十郎さん?」

 

 

 

 彼の問いかけに反応することなく、意識をこちらにのみ向けていることが見て取れる。

 

 

 

 その現状に、ソウマは、仮面の下で笑みを浮かべる。

 

 

 

「……ッ、今だ!! 、やれ、クリスゥ!!」

 

 

 

「あぁ、しっかり避けろよ!」

 

 

 

【MEGA DETH PARTY】

 

 

 

 彼の声に、彼らがいる廃工場にクリスは、後ろに2基の大型ミサイルと多数の小型ミサイルを瓦礫に向けて打ち込む。

 

 

 

 こちらに向かってくるミサイルを認識したと同時に、ソウマは全身の各部推進器にエネルギーを回し、天井を突き破り、外へと脱出する。

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 意識の外から小型ミサイルが背部に受け、爆風がアナザーエグゼイドを吹き飛ばすが、付近のフォニックゲインを吸収し、回復しようとする。

 

 

 

 しかし、その回復を妨害するように、2基の大型ミサイルがさらに追撃する。その爆発によって、廃工場は、もはや原型を留めることができないほどに崩れ去る。

 

 

 

『ドォォォォン!』

 

 

 

【フィニッシュタイム!! フォーゼ! リミットタイムブレーク!】

 

 

 

 2基の大型ミサイルの爆発と合わせて、ソウマは錐揉み回転をしながら、各部の推進器の発生させる風圧を利用し、周辺の煙をかき消し、煙の中から、アナザーエグゼイドを探し出す。

 

 

 

「グ……グ、ガァ……」

 

 

 

 アナザーエグゼイドが抵抗の意志を示そうとするが、一瞬だけ止まる。

 

 

 

 その隙を見逃さないように、先ほどの回転を利用し、ドリルのような蹴撃をアナザーエグゼイドに向かって繰り出す。

 

 

 

「ライダーロケットドリルキィィィィック!」

 

 

 

 ドリルのように回転する蹴りが直撃し、そのまま、空中に浮きあがり、地面に引き摺るように、アナザーエグゼイドを蹴り込む。

 

 

 

 そのまま、足で、蹴り飛ばし、相手を瓦礫の中へと吹き飛ばし、遅れて轟音がする。

 

 

 

「……」

 

 

 

 爆発音を確認するとソウマは、気が抜けて、膝をつく。

 

 

 

「おーい、大丈夫かぁ」

 

 

 

 クリスが、こちらに手を振って、向かってくる。

 

 

 

 彼女の元気な姿に、体に走る痛みが抜けていく錯覚に襲われる。

 

 

 

「お、おい……重いって」

 

 

 

 倒れこむように、クリスに体を預けるように倒れる。

 

 

 

 彼女は、重いと文句を言いながらも、顔には先ほどの不安を塗りつぶすような歓喜の表情が浮かんでいた。

 

 

 

「よかった……無事で……」

 

 

 

『回復!』『高速化!』

 

 

 

「……ッ!?」

 

 

 

 声が廃墟に響く。クリスは、頭に疑問符を浮かべるが、ソウマは、頭に無意識としてある知識から、この声と内容が絶望的な状況だと知らせる。

 

 

 

 さらに気が付くと、空中に多数のブロックが出現する。

 

 

 

「マズい! ……」

 

 

 

 クリスから離れて、アナザーエグゼイドが消えた瓦礫を中心に周囲を見渡すが、視界では一切見つからない。足を踏みしめる音は聞こえるが姿が見えない。

 

 

 

 しかし、違和感に気が付き、振り返ると、クリスの視界の裏から、アナザーエグゼイドがブロックを足場に、気配を殺して距離を詰め、人類最強の拳が彼女を殺そうと迫る。

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 出せる力を振り絞り、空中にいるアナザーエグゼイドとクリスの間に割って入る。

 

 

 

「ッ!」

 

 

 

 割って入った相手に気が付くも、そのまま、殺すように拳を振り抜く。

 

 

 

 振り抜かれた拳が爆音とともにソウマの胸元に突き刺さる。

 

 

 

「……ッ……グハッ……」

 

 

 

 ダメージが装甲の限界を超えて変身が解除される。崩れるように装甲が消えていき、傷だらけのソウマの姿が現れ、口から、血が噴き出る。

 

 

 

「え……?」

 

 

 

 爆音に気づき、振り向くと目の前で彼が血を吐いてアナザーエグゼイドの拳が腹部に突き刺さる姿であった。

 

 

 

 膝から崩れ去る彼を抱き留める。

 

 

 

「おい、ソウマ……ソ、ソウマ……お、おい、起きろって……おいッ……おい……」

 

 

 

 涙が自然と流れ出る。彼の服が血に染まっている姿にどうしようもないほどに、手が震える。

 

 

 

 いつか感じた恐怖が、いつか喪った大切な人たちへの悲しみが胸を支配する。

 

 

 

 自分からすべてを奪った”()()”への憎悪が、何もできない自分への憤りが自分の頭を支配する。

 

 

 

「……」

 

 

 

 内に渦巻くナニかが歌を口から紡げなくさせる。

 

 

 

 彼女は自分の大切な相手を傷つけた敵を睨みつける。

 

 

 

「……」

 

 

 

 それでも敵は、女神の命令に従い拳を自分に向けて振り下ろす。

 

 

 

 彼女は恐怖で目を瞑る。

 

 

 

 しかし、いつまでたっても、訪れない死に疑問を抱き、視界を開けると

 

 

 

「やらせるつもりは……ないよッ……弦十郎さん」

 

 

 

 紫電を纏って迫りくる死を彼は()()()()()()()()()()

 

 

 

「ソウマ! ……ッ……」

 

 

 

「安心して、クリス……俺が、君を、守る……か、ら」

 

 

 

 息も絶え絶えになっている彼に、クリスの口は言葉を紡ぐ。

 

 

 

「……げて」

 

 

 

「え?」

 

 

 

 聞こえないほど、か細い声で、何かを言う彼女は今度は聞こえるように大きな声をだそうとする。

 

 

 

「逃げて……アタシを置いて、お願い、だから……」

 

 

 

 彼女の声は、小さく、涙が混じったものであり、決して大きな声ではなかった。

 

 

 

 しかし、ソウマはその願いを聞く気がないのか、アナザーエグゼイドの拳を受け止め続ける。

 

 

 

「頼むよ……逃げてくれよ……お前を死なせたくないんだ……」

 

 

 

「……」

 

 

 

「……頼むよ」

 

 

 

 目元を腫らしながら、彼女の縋る声が彼の耳に届く。

 

 

 

「……るな」

 

 

 

「え……」

 

 

 

「諦めるな! 俺も死なない。クリスも死なせない。それを実現させることを諦めちゃだめだ!」

 

 

 

「で、でも」

 

 

 

「俺は諦めない! もし、クリスが自分を信じれないっていうなら、俺がクリスの希望になる!」

 

 

 

 希望という言葉に、彼女の眼に光が戻る。

 

 

 

「希望……」

 

 

 

「あぁ、クリスがもし、これからもいろんなことに絶望しかけても、俺が希望になる」

 

 

 

 もはや、体の何処にもないはずの力を引き出すように、紫電を先ほど以上に迸らせながら、アナザーエグゼイドの拳を押し上げる。

 

 

 

「俺が……クリスの、()()()()()になる! 絶対にな」

 

 

 

 彼の中にある記憶が告げる。その言葉を自然と口にする。

 

 

 

 決意として、掲げられた彼の言葉に答えるように、赤い光が彼の胸元から飛び出し、アナザーエグゼイドを吹き飛ばす。

 

 

 

「グァ!?」

 

 

 

 相手を吹き飛ばした光は、彼の手にとまり、銀と黒のライドウォッチへと姿を変える。

 

 

 

「これは……」 

 

 

 

 ソウマは、ライドウォッチの盤面をそろえ、起動させる。

 

 

 

【ウィザード!】

 

 

 

 彼に鎖が巻き付き、消えていく。

 

 

 

 彼の瞳に宿る光に答えるように、彼の纏う紫電がさらに強まり、彼を覆う程のものになると、シャドウジオウライドウォッチが光り輝く。

 

 

 

【シャドウタイム!! 仮面ライダージオウ・シャドウ!!】

 

 

 

 光が収まるとソウマの姿はシャドウジオウの姿へと変わっていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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