歌姫と仮面の狂想曲   作:白紙の可能性

57 / 73
第55話 2009/破壊の継承(前編)

 先ほどの場所より、少し離れた、廃工場にクリス、アスカ、ソウマの3人はいた。

 

 

 ソウマは、瓦礫に座り、背を預けている。肩で息をしながら、手が震え、意識が飛びかけるのを意志の力で、辛うじて繋ぎとめている。

 

 

 アスカは、自分がこうなった経緯について、説明をしているが、ソウマの負傷具合がもはや、戦闘に耐えうる程度ではないこと、最悪の場合が想定し得るため、この状況について、ある程度の逃げる算段を考えていた。

 

 

「さぁて、今の現状を整理すると、アナザーエグゼイドについての件は完全に悪神、アーリが主導の計画。ただ、ここにアスカを連れてきたのはイデア自身の判断ってことでいいんだよね」

 

 

「あぁ、イデアからはそう聞いている」

 

 

「……」

 

 

 自身の整理した状況から、ソウマは考え込む。整理して内容を咀嚼すればするほど、イデアとアーリは完全に今回の件では連携が取れていないどころか、後発の形でアスカの救援が成立している以上、イデアがアーリの計画について、理解した上で妨害を入れたことへの今までの彼らの関係性への矛盾に疑問が思考を妨げる。

 

 

「それはそうと、これからどうするんだよ。これ以上はホントにお前の体がもたねぇよ……」

 

 

 クリスはソウマの隣に座り、彼の服の裾をつかみながら、俯きながら、消え入りそうな声で彼を引き留める。

 

 

「クリス……」

 

 

 ソウマにとってそれは甘い毒のようなものであり、彼女のために、これ以上の戦闘は避けきることはできないと頭では理解しているが、彼女の言葉に意志が揺らぎかける。

 

 

「彼女の言うとおりだ。今のお前は戦えない。それどころか、死にかけじゃないか、ここは、彼女と共に逃げろ。それが最善だ」

 

 

 彼の言葉がそれに拍車をかける。崩れ落ちそうな意識の柱を最後に残った可能性が支えきる。

 

 

「でも、それじゃあ、クリスがあいつに殺される可能性は完全に排除できるのか、アスカ?」

 

 

「それは……」

 

 

「だったら、それを考慮する価値はないよ……」

 

 

「それで、お前が死んだら、残された奴らはどうするッ!」

 

 

「だから、死なずに、この状況を何とかする」

 

 

 言い切るソウマに、アスカは勢いに負け、一瞬口を紡ぐ。しかし──

 

 

「それで死にかけが戦闘に加わって、あいつに勝てる保証がどこにある。あぁ一つ確認したい。今、イチイバルを纏ってくれないか?」

 

 

「え、あぁ……ッ──!? 、……ッ、どうして……」

 

 

「どうしたんだ? まぁやっぱり想像通りか……」

 

 

 困惑の表情を浮かべるも、それを一瞥し、彼はソウマに向かい合う。

 

 

「どうやら、イデアの想像通り、彼女も歌が歌えなくなっているみたいだしな、シンフォギアを使えなければお荷物が二人だ……どうして勝算があると思える?」

 

 

「歌えない? それってどういう……」

 

 

 視線を彼女に向ける。そこには、唇を噛んだ彼女の姿がそこにいる。

 

 

「……シンフォギアを使うために歌おうとした……でも、歌えなかった……歌えなかったんだよ……」

 

 

「……」

 

 

「どうしてかわかんねぇけど……声が、出なかった」

 

 

「クリス……じゃぁやっぱり、俺が戦わないとね」

 

 

 呆れた表情のアスカは、肩を落とす。

 

 

「それで、どうする気だ。勝算はあるんだろ?」

 

 

「100%ではないけどね」

 

 

 懐から、フォーゼライドウォッチを取り出す。

 

 

「これがあればパワー負けはしないと思う。あとは、俺のウィザードの力で、サポートするこれが最善策かな」

 

 

「だったら、俺がフォーゼを使う」

 

 

「アスカ……」

 

 

「お前がそこまでの致命傷を負った原因はフォーゼの力が原因なんだろう。だったら、2回目は命が危ない。だから、お前のサポートで、俺が矢面に立つ。これは譲れないッ!」

 

 

 勢いよく、手元のウォッチを奪い取る。

 

 

「え、でも、それは──」

 

 

「さっきも言っただろッ! お前も彼女も死なせないッ! まだ、何も、俺は聞いていないんだ。どうして、ああなったのか……だから、俺が使う」

 

 

「……わかった。ただ、気を付けて」

 

 

「あぁ」

 

 

 ソウマは、気合を入れなおして、立ち上がる。

 

 

「……」

 

 

 クリスは、彼の服の裾を離さない。しかし、ソウマは、首を横に振り、それをゆったりと離させる。

 

 

「ここに、いて、待っててくれ。必ず向かいに来るから」

 

 

「あッ……」

 

 

 彼の背中に手を伸ばす。しかし、その手は空を舞い、その手が掴むことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空間に出現させたモニターを見て、現在の状況について、確認を取っていた。あれから、逃走して15分ほど経過しており、周囲には、特務災害部隊が集まってきており、奏者たちの姿もそこにあった。

 

 

「う~ん、ちょっとやりすぎたかな?」

 

 

 アーリは、下に視線を向けると、そこには、イデアが地面に俯せになっていた。

 

 

 周りには、天使たちの残骸が転がり、周りにある無数の武器は破壊されていた。

 

 

「まぁいいかな、さてと、これ以上の増援は防がないとね」

 

 

 アーリは、コンソールを出現させ、操作すると、ソウマたちのいる空間を切り取り、外界と断絶させる。

 

 

「さてと、そろそろ、休憩時間は終了かな。では、高見の見物としようかな? ねぇイデア君」

 

 

「ッ!?」

 

 

 彼の言葉に応じるように、彼は、立ち上がろうとするが、光の鎖が彼を抑え込む。

 

 

「グレイプニル鎖verなんてね。さてと……」

 

 

 アーリは意識をモニターに完全に向ける。もはや、イデアへの注意は向けることはない。

 

 

 しかし、彼を拘束する鎖は強靭であり、一切、解ける兆候がなかった。

 

 

「……」

 

 

 イデアは、薄れていく視界に、彼らの戦場へと再度向かう姿が捉えられていた。

 

 

「さぁて、面白くなってきたなぁ」

 

 

 その表情は笑みを浮かべ、まるで楽しむような無邪気な笑みであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アナザーエグゼイドが気配のするほうに意識を向けると、そこには、ソウマとアスカの二人が並び立っていた。

 

 

「グルル!」

 

 

 威嚇の声を喉から鳴らし、自身の存在をアピールする。

 

 

 しかし、二人はその挑発をモノともせずに、両手にウォッチを取り出し、起動する。

 

 

【シャドウジオウ!! ウィザード!!】

 

 

【ゲイツ!! フォーゼ!!】

 

 ベルトに装填すると、異なる待機音が重なりあう。

 

 

「「変身!!」」

 

 

 二人の掛け声とともに、ベルトが回り、世界が回る。

 

 

【シャドウタイム!!】【ライダータイム!!】

 

【仮面ライダージオウ・シャドウ!! アーマータイム!! プリーズ! ウィザード!】

 

【仮面ライダーゲイツ!! アーマータイム!! 3、2、1、フォーゼ!!】

 

 二人は、自分と異なる力を纏いその力を引き出す。

 

 

「グァァァ!!」

 

 

 咆哮と同時に、炎が二人に向かい放たれる。

 

 

「同じ手は食らわないよッ!」

 

 

『コネクト! プリーズ!』

 

 

 空間をつなげ、炎球は魔法陣を通り、異なる空間に移動する。

 

 

「? ──ッ!?」

 

 

 アナザーエグゼイドは自身の攻撃が魔法陣によって消えたかと思うと後ろから光源と熱量が近づいてくることに気が付き振り向く。

 

 

 そこには、自身の放った炎が自分に向かって迫ってくる。慌てて、口から炎を吐き迎撃する。

 

 

「よそ見してていいのかな?」

 

 

「ハァァァ!」

 

 

「ガッ!?」

 

 

 ソウマの声に、意識をさらに取られる。気が付くと、自身の視界の死角からアスカの拳が突き刺さる。

 

 

『バインド! プリーズ!』

 

 

 拳の威力に完全に体感をずらされると、体幹を維持しずらい形で、鎖により四肢が拘束される。

 

 

「一気に行くよ!」

 

 

「あぁ!」

 

 

【ウィザード! スレスレシューティング!】

 

【フィニッシュタイム!! フォーゼ! リミットタイムバースト!】

 

「ハァァァ! うぉりゃぁ!」

 

 

「フッ、ハァァァ!」

 

 

 拘束された相手に、アスカは姿をロケット形態に変形し、錐揉み回転しながら、連続で蹴撃を当て続ける。ソウマは武器に炎のエネルギー送り込み、引き金を引き、連続で炎球放ち、アスカの攻撃の隙に挟み込むように、軌道を操り打ち込み続ける。

 

 

 そして、最後の一撃と言わんばかりに、互いに、攻撃の出力を引き上げ、アスカが、背中から、ソウマが正面からそれぞれ必殺の蹴撃と巨大炎弾を直撃させる。

 

 

「グ、グガァァァァ!」

 

 

 ドォォォォンと、そのエネルギーがその場から逃げ出すように爆発し、アスカは、ソウマの横に戻る。

 

 

「何とかなったみたいだな……」

 

 

「まぁ短期決戦しかないからね……──ッ!?」

 

 

 その爆炎から、巨大なエネルギーがあふれ出し、二人に襲い掛かるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人置いて行かれたという事実に、クリスは泣き伏せる。

 

 

「あ……あぁ……」

 

 

 自分の無力さが自分を蝕み、歌えない自分に嫌気が増す。

 

 

 涙があふれるが、自身の足を動かせる勇気は沸いてこない。

 

 

「アタシを……アタシを一人にしないで……」

 

 

 口からあふれる本音は誰もいない廃墟に響き、溶けて消える。

 

 

 暫く、泣き伏せると、自分の膝を抱え込み、顔を膝に押し付ける。

 

 

(やっぱり……アタシは、誰にも必要となんて……)

 

 

「ッ!?」

 

 

 一度、大きな爆発が背後から聞こえる。その爆音に、弱った心は驚きをそのまま表出し、顔を無意識にそちらに向ける。

 

 

 大きなうめき声が、聞こえたと思うがすぐに聞こえなくなった。

 

 

「あぁ、やっぱり、アタシなんかいなくても、何とかなるんだな……はは……」

 

 

 自棄になり、口から愚痴が力なく零れる。

 

 

『ドォォォォン!!』

 

 

『『うわぁぁぁぁ』』

 

 

「ッ!?」

 

 

 聞こえるはずのない爆音がさらに聞こえる。それに合わせ、二人の悲鳴が聞こえる。

 

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 

 血流が早くなり、脂汗が体から噴き出す。

 

 

 心臓が苦しくなり、手で押さえるが、呼吸は荒くなり、正常な意識を保ちづらくなる。

 

 

「……」

 

 

 その衝動は先ほどまで動かなかった足を動かし、立ち上がり、廃墟を一歩づつ歩み、壁や柱に寄りかかりながらも、外に出ると、そこには勝ち誇ったようなアナザーエグゼイドがそこにいた。

 

 

「そんな……うそ、うそだ……」

 

 

 足元には、血まみれになったソウマとアスカの姿があった。

 

 

「は、はは……」

 

 

 心が折れ、衝動によって保っていた膝も折れて残骸の上に座り込む。

 

 

 手が、ソウマに向かって、無意識に伸ばし、足を引きづるように、彼に近づく。

 

 

 しかし、視界が暗くなる。

 

 

 気が付いて上を向くと、そこには、右手の剣を振り下ろすアナザーエグゼイドの姿があった。

 

 

「あ……」

 

 

 そして、振り下ろされた刃と共に、クリスの視界は赤く染まった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。