痛みから、辛うじて繋ぎ止めている意識が覚醒する。
近くの気配から、そちらへと視線を向けると、アナザーエグゼイドが立っていた。しかし、その相手の前に何かが見える。目が霞み、もはや何があるのかすら正確には知覚できずにいた。
「グルルゥッ」
自身が目覚めたことに気がつく。
「……ッ!」
体に走る痛みを押さえつけ、彼は再度立ち上がる。
相手は此方を振り返り、その拍子に右手の剣を払う。
「……ッ……? ……ッ!?」
払った露のような水しぶきが顔にかかる。何かと思い掌で拭くと、手が赤黒く汚れた。
それを確認するや否や、アナザーエグゼイドの足元に転がる何かへと意識と視線をを向ける。そこで漸く、ぼやけた視界が鮮明を帯びた。だが、何故だろうか、いつまで立っても、色彩が白と黒の単色から、戻らない。
「あ……あぁ……」
首を横にふる。目の前の現実を振り払うように……
しかし、それでも結果は変わらない。血を流し、倒れ込んだ彼女の──雪音クリスの姿は決して目の前からは消えてはくれなかった。
「ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"」
喉が裂けんばかりの声が、溢れだし、青空へと溶けていく。
しかし、それでも、自分の内の思いが泣き叫ぶことを止めることは、できなかった。
彼の絶望に呼応するように、また紫電が迸る。そして、体に光の線が走り出す。それは枝葉のように、根のように身体中に張り巡る。神経のような光の線は眩く光り、より紫電が強くなる。
「ッ!? 、グガァァァ」
体の内側から、それよりも、深き場所から力が暴れだす。
燃え盛るような炎のようにそれは彼を蝕み、紫電と共に膨れ上がる。
「ア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!」
湧き上がる力任せに、走りだし、姿をシャドウジオウへと変化しさらに、力を更なる高みへと至る。
拳を強く握り、能力を使用し、距離を詰め、そのまま懐に入り込む。
「グガァァ!?」
拳が腹部に突き刺さる。力で上回るはずのアナザーエグゼイドが、丹田に力を込めて、耐えようとするが、すぐさま、蹴りが太ももを蹴りつける。
「ガァァ!?」
折れるともとれるほどの力で、蹴られ、バランスを崩し切る。
「アァァァァ!!」
「グガァァ!!」
力はより蝕み、彼の抵抗する意思を挫く。重い拳がアナザーエグゼイドを襲う。しかし、その拳をアナザーエグゼイドは捌き切る。
しかし、彼の強まる力はそれをあざ笑うかのように、捌き切れずに徐々に、防御が崩される。
ピシピシとシャドウジオウの装甲に皹が入り始める。
「グォ!?」
「ウ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"」
そして、完全に攻撃を防ぐことができなくなり、完全に防御を崩される。
右手に黒と桃色のエネルギーが混ざり、それを胸元に直撃させて、後ろに吹き飛ばす。
「ガハァ……」
エネルギーの奔流により、彼の装の皹が広がっていく。
「アァァァァ」
日々が崩れそうになった瞬間、彼の体からマゼンタ色の光が現れ、彼のベルトの空スロットに装着される。
【ディ・ディ・ディ・ディケイド!】
そのウォッチを装着した瞬間、全身の皹が修復していった。
「あれ……ここは……」
白と黒となった自分の部屋のようなところにいた。
「まったく……相変わらずみたいだな。ソウマ」
声に気が付き、視線を向けるとそこには、スーツのような服をきて、カメラを手に持つ男性が座っていた。
「あなたは?」
「そんなことどうでもいい。時間がない。早く力を制御したらどうだ?」
「え?」
疑問を浮かべると体から、熱のようなものがあふれ出し、膝をつく。
「がッ……なんで、こんな……」
完全に制御が聞かなくなった力が体の内側から焼き尽くそうとする。
「ハァ……仕方がないか」
彼は、懐から、一つの特殊なライドウォッチを取り出すと、彼に向かって、放り投げる。
「これは……」
【ディ・ディ・ディ・ディケイド!】
熱で鈍くなった頭で、そのウォッチを掴み、スィッチを押すとマゼンタの鎖が現れ、彼の体に巻き付くと、急速に熱が体から引いていった。
「ハァハァハァ……どうして?」
「そのウォッチはくれてやる。今のお前じゃ、自滅しかないからな」
無愛想に彼は言い放つと、こちらを無表情に眺めている。
「自滅って、どういう……」
ソウマの表情には、困惑が浮かび、それを見下すかのような男。二人の間の空気の冷たさがソウマの心を締め付ける。
その空気に耐えきれず、体に走る痛みを抑え込み立ち上がる。立ち上がるが、その体を支えるほどの力が存在しない。ゆえに、意志の力という名の根性のみで、立ち上がる。
「ほら、さっさと戻れ! こんなところで油を売っているひまはないだろう」
「あぁ……」
足を引き摺りながら、後ろを向くと、そこには、光の扉のようなものがあった。
歩いていき、光の扉を開けようとすると、後ろから声が聞こえた。
「一つだけ、教えてやる。雪音クリスは生きているぞ」
その言葉に、体が少しだけ軽くなる。表情に笑みが浮かび、そのままあるいて進んでいき光に消えていった。
しばらくの間、カメラの男は彼の向かった先に視線を向けていたが、ため息を一つつき、踵を返して、元居た場所に戻ろうとすると
「ちょっと、冷たいんじゃないか、士?」
聞きなれたしかし、長い間、聞くこととなかった友人の声がした。
「ッ!?」
驚き、そちらを振り返ると、そこには、友人である小野寺ユウスケの姿がそこにはあった。
「ユウスケ……」
「そうですよ士くん!」
別の声が聞こえてそちらを向くと、そこには光夏海の姿があった。
二人の姿に懐かしさを覚えながらも、彼の表情は変わらず呆れた表情であった。しかし、その表情にはどことなく穏やかさが宿っていたのであった。
エネルギーの奔流が収まると、そこには、正気を取り戻した榊ソウマが立っていた。
「グルルルルッ……」
喉を鳴らすかのような威嚇音を発するアナザーエグゼイドに対して、臆することなく、ベルトの回転させる。
【アーマータイム!!】
十のピントのずれたような靄に似た影が展開する。
【カメンライド! ワーオ!】
それがソウマ──シャドウジオウのもとに一つになり、アーマーを形作る。
【ディケイド! ディケイド! ディケイドー!】
顔のディメンションフェイスにディケイドアーマー状態のシャドウジオウの姿が表示されることで、アーマーに鮮やかなマゼンタの色が差し込む。
ディケイドアーマーが完成した姿であった。
ソウマは手を軽く、擦るように叩くとゆったりと構える。
『ライドヘイセイバー!』
機械音と共に、彼の手元に一つの時計を模した剣が顕れる。
そして、彼は、その刃を撫でる。
「さてと、これで終わりにしようかな? 弦十郎さん?」
いつもの、飄々とした状態に戻り、破壊の力と共に、アナザーエグゼイドへと切りかかるのであった。