アナザーエグゼイドとシャドウジオウが切り結ぶ。
衝撃が風となり、周囲一体を吹き抜ける。
「クッ……」
切り結ぶも、腕力の差があり、ソウマは押し込まれる形で後方へと吹き飛ばされた。
『ジカンギレード! ケン!』
新たにもう一振の武器を取り出し、踏み込みながら体を屈めて切り込むも、咄嗟の判断により、右手の剣で阻まれる。
(反応が速いか……だったら!)
切り結ぶが、手に持つ二振りの刃では、力で押しきることはできない。
腰を入れ、回り込むように剣で切り伏せるように切り込んでも、腕力の差で、弾き返される。
(相変わらずの防御力だなぁ……ッ!?)
拳と、剣、銃を用いて、力と体に染みついた技術が合わさり、ソウマに向かって降りかかる。
しかし、ソウマの技術を持って、その攻撃を完全に往なす。
「ガ、グ、グガァ!?」
一閃と、一閃と、攻撃の隙を縫うように、アナザーエグゼイドを切り続ける。
流れる水のように、澱むことはなく、迷うことはなく防御と攻撃を繰り返していく。
「ッ!? ガァァァァ!」
攻めているはずである自分が逆に攻め落とされていく。
技術と無限に等しい経験による戦闘勘、それと合わせて二刀流がアナザーエグゼイドの劣勢を生み出した。
二刀流である以上は腕力が相手に勝れば攻撃性を持つが、現実的な状況に近づけば近づくほど、攻めよりも、受け流す防御が基本となる。
文字通り、防御ありきの攻めとなる。柔よく剛を制す。まさに、この戦法こそ、榊ソウマが現状、風鳴弦十郎を上回ることができる数少ない武器の一つであった。
「うぉっと!? ……ッ!?」
左手の銃で、ゼロ距離で打ち込まれそうになり、躱すように距離を取る。
しかし、光弾は左わき腹を掠り、その衝撃で、意識を刈り取られそうになる。
「ガァァァァ」
それを隙と定め、アナザーエグゼイドは炎球を作り出す。
叫び声が響き空間が震えると、炎球が膨れ上がり、さらに大きくなる。
しかし、それに怯えることはなく、ソウマはライドヘイセイバーの針を操作する。
『ヘイ! 鎧武!』
オレンジの切り身のようなエネルギーを刀身に纏う。
『鎧武! デュアルタイムブレーク!』
剣閃が炎を切り裂き、そのエネルギーがそのまま勢いを殺さずに、相手の装甲を切り裂く。
直撃のダメージにより、よろめく。
『ヘイ! ファイズ!』
赤いフォトンブラッドが、密度を高め、刀身を覆いつくし、さらに巨大な光刃となる。
『ファイズ! デュアルタイムブレーク!』
左手のジカンギレ―ドを放り捨て、両手で、ライドヘイセイバーを握り締め、上段で構え、そのまま振り下ろす。
赤い閃光が相手を飲み込む。
吹き飛ばされ、相手は地面を転がり、うつ伏せになる。
「……グ、グガァァァ!! 」
力を振り絞るような、搾り取られていくような咆哮と共に、立ち上がる。
「哀れだな……本当に、踊らされるってのは……」
そんな有様を見て、心底、呆れと哀れみ口から零れる。
「それは……俺もか……」
自嘲の言葉が釣られて出てくる。
そんな弱気を抑えるために、一つのライドウォッチを起動させる。
『ウィザード!』
そのウォッチをディケイドライドウォッチのスロットに装填する。
『ファイナルフォームタイム! ウィ・ウィ・ウィ・ウィザード!』
その音声と共に、ディケイドの力がウィザードの力をさらに引き出す。
右肩の文字が『ディケイド』から『ウィザード』に切り替わり、胸部のバーコードとに『フレイムドラゴン』文字に切り替わる。
それに合わせ、全身がモザイクに包まれ、胸部装甲とヘッドアーマーを覗いで、本来のウィザードの姿となり、炎に包まれたような竜の意匠を持つ赤い姿。
『シャドウジオウディケイドアーマーウィザードフォーム』へとその姿を変じる。
心の内から燃え上がるような力が湧き上がる。腰マントを翻し、体を半身捻り、魔法を発動させる。
『コネクト! プリーズ!』
魔法陣から、時計のようなガントレット型のアイテムを取り出す。
それを掲げるように左腕に装着する。
『ドラコタイマー! セットアップ!』
時計の針を回し、1回転させ、起動させる。
『スタート!』
「さぁ、ロスタイムといこうか」
彼の言葉に乗るように、アナザーエグゼイドは、アナザーウォッチの力によって、強制的に立ち上がる。
「……ァ゛……ァ゛……ア゛ァ゛……」
もはや、唸り声をあげる力すらないが、操られるように飛び込むように、ソウマのもとに迫る。
回っていく、時計の針の背景が青の領域になった瞬間、ドラコタイマーのスイッチを押し込む。
『ウォータードラゴン!』
青い魔方陣が現れ、その中からウォータードラゴンの姿のウィザードフォームが現れる。
「ッ!?」
水を纏った刃が相手の左腕の生体装甲を切り裂く。
切り裂いた装甲が砕け落ちる。
今までの戦闘の影響により、各所の装甲に限界を迎えかけていた。
いきなり、別の方向から受けた衝撃により、地面を転がる。
「ァァ……」
ゾンビのように立ち上がる。そんな姿にソウマはため息をつく。
「まだ、来るのか……しつこいねぇ。本当に」
それでも、緑の領域に入った時計のスイッチを押し込む。
『ハリケーンドラゴン!』
後方から、ハリケーンドラゴンが現れ、風の弾丸を放つ。
風の弾丸が、脚部の装甲に向かって放たれ、両足揃って破壊される。
その勢いから脚部にさらに浴びせ続けて、動きを止めきる。
「まだ、もう一人いるんだけどね」
青のソウマが、ジカンギレ―ドを銃にして、胸部に向かって撃つが、残った右の剣の光の刃が打ち落とす。
『ランドドラゴン!』
その機会音声に、足を引き摺りながら振り向くと、そこには、竜の爪を装備した、ランドドラゴンの飛ぶ爪撃が襲い掛かる。
「ガァ!?」
残った剣を叩き折られ、もはや、胸部と頭部の装甲を残して、すべてが崩れ落ちた。
「ガァァァァ、グガァァァァ!」
炎の球を生み出し、砲撃する。しかし、
『ゲイツ! ギワギワシュート!』
その炎球を光の矢が正確に打ち抜く。その矢が炎を破裂させ、暴発させる。
「……俺を、忘れるな!」
ボロボロなアスカが武器を構えて、足をふらつきながら、こちらへと向かい歩いてきた。
「アスカ……」
「まだ、いける! 気にするな……」
『ファイナルタイム!』
時計が最後の時を告げる。
互いに肉体の許容を超えるダメージを受けている。
いくら、ソウマの肉体が回復しているといえども、ダメージはそれでも蓄積し、体力は限界であった。
だが、二人の間に心配の意図はない。そこにあるのは信頼のみであった。
「だったら、最後まで付き合ってくれる?」
「あぁ……当然だ!」
二人の言葉のみが気力を持つが、
「さぁて、これで行くかな」
『ファイナルアタックタイムブレーク! ウィ・ウィ・ウィ・ウィザード!』
『オールドラゴン!』
炎の竜のもとに、水、風、大地の竜が魔力となり、集う。
竜の頭、爪、翼、尾が装備され、四属性が一つとなり、まさに、究極の竜へと姿が変じた。
『アーマータイム!! 3、2、1、フォーゼ!!』
フォーゼのアーマーを纏い、姿を変える。
「すべての魔力を一つに……この一撃で終わらせるッ!」
「悪いが、ここで、雪音クリスを殺させるわけにはいかないんでなッ!」
飛び上がり、二つの軌跡を描き、アナザーエグゼイドを挟み込む。
「ハァァァ!」
「ガァァァァ!」
正面からくるアスカを、腕力で抑え込む。あまりの出力に地面に足が埋まる。
「負けて、負けてたまるかッ!」
『グラヴィティ! プリーズ!』
ソウマの重力魔法が相手を地面に縫い付ける。
いつもの冷静さをかなぐり捨て、意識をすべて、相手を押し込むことに向ける。
「ガァァ……ッ!」
「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛」
重力により、さらに力を増し、押し込む。
身体にかかる常軌を逸した一撃に耐えきれず、炎球を生み出し、吹き飛ばそうと打ち込む。
しかし、燃え上がる爆炎がアスカの目の前を覆いきるが、止まることはなく、怯むことなく、地面に押し込む力をさらに強める。
「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!」
「──ガァァ!?」
その勢いに負けて、その拳が、アスカの拳がアナザーエグゼイドの胸部装甲を打ちこわし、元の生体装甲のライダーゲージを削っていく。
「ガァァァァ!」
「──ッ!?」
最後の力を振り絞ったアスカの無防備な腹部に、強烈な拳の一撃が突き刺さる。
地上最強の一撃は、フォーゼアーマーを破壊し、突き刺さる。
そのまま、勢いを殺され、吹き飛ばされる。
(あとは、頼んだぞ。オーマジオウ……否、ソウマ……)
薄れゆく意識のなか、自分にとって、憎しみと友情を併せ持つ相手にすべてを託すのであった。
その反撃に間髪入れずに、雷と風が、アナザーエグゼイドを包みこみ、冷気により、埋まった足と腕を固定する。
その異常な状態に、現況であるソウマを探そうと、周りを見渡すが見つからない。
「……ッ、グッ、ガァァァ!」
上空に四つの属性の魔法陣が現れ、竜の姿を取り、アナザーエグゼイドに食らいつき、拘束する。
その中心にいる竜の姿となったソウマが、構えて、全速力で、垂直に、必殺の蹴撃がアナザーエグゼイドへ向かって放たれた。
「ダァァァァァァ!!」
胸部に蹴りが突き刺さり、そのまま、地面へと押し込み、それでもなお、勢いが止まることはなく。さらに地面へとめり込ませ、弦十郎の中のアナザーウォッチを破壊するのであった。
その蹴りが収まると、アナザーエグゼイドの姿から弦十郎へと姿が戻る。
「ふぃ~」
その言葉と共にソウマの姿ももとの姿へと戻る。
長い、長い、遊戯のような、神の試練は終焉したのであった。
黒煙によって汚れた青空の光が唯々、彼らを包み込むのであった。