できれば、来年もよろしくお願いいたします。
瓦礫と砕けた道路の舗装から無造作に雑草が生い茂る。
人の手が入ることがなくなった建造物。
「ここは…」
「さっきと座標は一緒よ。まぁあれから半世紀しか経ってないけどね」
「だったらここまで風化してる筈が…」
「簡単よ。ここに人が生活できなくなってからもう40年近い。人が住まない建物の腐食速度ならこんなものでしょう?」
砂ぼこりと、腐食して崩れている建物の風景に、感傷と胸に沸き上がる忌避感が自身が蝕まれる。
「ーーッ!?」
夢か現か解らなくなるような幻聴に襲われる。
(あ"ぁ"ぁ"ぁ")
(た、すけて…)
(ーーーーーーー)
その幻聴に膝をつく。
「しっかりしなさい。それは幻聴。貴方に取っては気にするべきではない。だからシャンとしなさい」
「あ、あぁ…」
彼の肩に手を置き、言い聞かせる。
(でも…これは…)
「行こう。目的地はここじゃないんでしょ」
「あぁ、キングダムへ向かいましょう。但し歩きでね」
彼女はそういうと軽い足取りで、廃墟の階段を降りていく。
「もちろん」
そういうとソウマは冷や汗をかき、血の気が引いた顔でそれに続く。
その痛々しい姿に3人は示し会わせることなく。同時にそれにさらに続いていった。
全員汗をかき、服に張り付く。
蒸し暑く太陽が照り付ける日差しの中、七実を先頭にソウマ、アーク、クリス、響の順番で廃墟の街道を進んでいった。
「さてと、そろそろ休憩しましょう。」
全員の顔に、疲れが見えてきたところで、七実の提案に素直に従う。
各人が、近くの瓦礫に座ると、青白い顔をしたソウマが、席を立つ。
「すまない、ちょっとトイレに行ってくる」
誰であれ、いつもの彼を知っているものにとっては、今の彼は異常であった。
そんな彼が、トイレにいくという嘘をついてまで、彼の姿は見るに堪えないものであった。
席を立つ彼の異常な姿にクリスが、付いていこうと席を立とうとすると、アークがそれを手で制した。
「ここは任せて…お願い。クリス」
アークは小声で彼女に懇願する。
彼女は目を見開く。
先ほどまでの高圧的な彼女の姿とは違う。彼女の本性の一部を覗き見たような気分になった。
離れた場所に彼はつくと、瓦礫に座り、風にあたる。
「気にするな。榊ソウマ」
後ろに彼女は立っていた。
「あぁ、お前か…俺に何の用だ」
「少しは目を背けることも重要だぞ…」
「お前に何がッ」
彼は彼女に侮蔑の視線を向ける。自分にとって最も大切な人の一人を乗っ取っている存在へはいつもの無感情という訳にはいかなかった。
「ッ!?…私にも解る。私は、いや、私達は世界を滅ぼし、過去へと移動した…大勢を殺した。後悔はない…が、それでも耳に残るんだ。その時の悲鳴が…」
彼女の声色から棘のようなものが抜け落ちる。
「それとこれは…いや同じか…俺も大勢を殺したんだよな」
それを聞いたアークの雰囲気が変わる。
「お前は大義を持って闘った。何処までも私情で闘った私達とは違う。例え、他の何が否定してもこの事実だけは変わらない」
その優しい声音が彼に"それ"を気付かせる。
アークの正体が自分のよく知る人だと。
だが、誰かであるかには思い至らない。そう結論が出るほど彼女はあまりにも、自分の知る人たちと解離していた。
「君は、誰?俺には解らないでも…どこかで…君とはーー」
「それはまだ答えられない。答えるわけにはいかない。でも信じてほしい。いつか明かすと」
彼女の言葉に彼は頷きで答える。否、それしか今の彼にはできなかったのだ。
「よかったの?二人で行かせて」
茶化すように七実は響に話しかける。
その言葉に眉を顰め、響は睨みつける。
「あら、怖いわね。でも、先に言っておくけど、これから、彼は自分の理想を目の前で崩されることばかりが目の前で起こり続ける。」
彼女の言葉に少しの警告の色を感じる。
「アタシがいうのも何なんだけどもよ。少しは仲よくしろよ」
「あら、ごめんなさいね。でも、仕方がないのよ。私にしては彼女に対して恨みしかないもの」
彼女の死んだような目にクリスは顔を顰め、響は分かっているという顔をした。
「個人的には私はあまり、貴女への手助けを極力したくない」
「そんなのわかってるよ」
七実は響の言葉にため息をつく。
「でも、ひとつだけ手助けしてあげる」
そう告げると、彼女は、自分の持つフォースライザーを手渡した。
「え…これって」
「これをつけて、彼女に会いに行きなさい」
「え、う、うん」
七実の唐突な提案に困惑しながら、彼女は恐る恐るベルトを腰に装着する。
『フォースライザー!!』
機械音声と共に、ベルトが装着され、激痛が走る。
「ーーッ!?」
その痛みによって、彼女の意識は闇に呑まれた。
「おいッ、おいッ、これ大丈夫かよ」
いきなり、目の前で倒れた彼女に駆け寄り、揺さぶる。
「問題ない。このドライバーはアークと接続できる。ただ、一応、私がミラに乗っ取られた場合のことも考えて、セーフティもかけてある。だから、安全に彼女に会える」
「会えるって、一体誰に?」
彼女の言葉に視線を向け、睨む。
「過去の自分…まぁ、それ以外にもいるでしょうけども」
彼女の言葉にクリスはどこか心当たりがあるという風に、視線を響に向ける。
「…」
クリスは魘されている彼女の頬を優しく撫でるのであった。それは、かつて、どこかであったようなデジャヴを感じるものであった。
暗い闇のなか、響は目を覚ます。
「どうして、お前がそこにいる…」
目の前に黒いローブを着込んでいる人が立っていた。しかし、その声には聞き覚えがある。
「え、翼さん?」
響の言葉に彼女はかぶっているフードを外す。
そこには、自分の良く知る風鳴翼がそこにいた。
「そのベルトは…七実か」
「は、はい、七実さんにこれをつけろって…」
なるほど、と納得するように、彼女は振り返ると、そこには、7人の人影がいた。
「どうやら、七実の仕業の様だ…ハァ…人騒がせな」
「アークにはあとで知らせましょう…おそらく彼女に合わせるのが目的かしら?」
「はい、誰かに会いにいけって」
「やっぱり、合わせていいんデスか?」
「うん、流石にマズい気がする」
響の言葉に長身のフードを被った4thの後ろで2人で5thと6thが疑問を上げる。
「もちろんよ。でも、合わせる必要があると思うわ…何となくだけど」
「仕方がないか…あの扉を潜りなさい」
翼が指し示す指の先には、そこには薄く光る扉がそこにあった。
「あの扉の先には1stが籠っている。会いに行きなさい」
「…」
怪訝な顔をしながら、彼女は、立ち上がり扉の前に行き、ドアノブに手をかけようとする。
一度戸惑い、手が止まる。しかし、覚悟を決めて扉を開けるのであった。