歌姫と仮面の狂想曲   作:白紙の可能性

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第65話 XXXX/城の中に眠るもの

 2台のタイムマジーンが空を飛ぶ。

 

 

 先ほどまでの急速な加速とは異なり、ゆっくりと進んでいく。

 

 

 その眼下に広がる街にソウマは違和感を覚えた。

 

 

 その街は進歩しているようにも見えるが、今の自分たちが住んでいる時代を訪仏させるそんな世界が目の前で広がっていた。

 

 

「ここまで、文明レベルが違うなんて……」

 

 

「維持ぐらいしかできていない。未来的だと思うことはすべてキングダムの機能でしかない」

 

 

「いまから何処へ?」

 

 

「あぁ、行くのはあそこだ」

 

 

 未来のソウマがモニターの一点を指さす。

 

 

 そこには先ほどから目に入っていた一つの大きな建物であった。

 

 

「城?」

 

 

 それを見るとそれこそ機械でできているものの、それを城と表現する以外の言葉が存在しないほどの城がこの街の中心に建っていた。

 

 

「あぁ、まぁただの管理棟のようなものだ」

 

 

「そうなんだ……」

 

 

 自分の中にある何かがざわつく。胸の内を掻き毟りたくなるほどの焦燥感に似た何かから遠ざかろうと操縦桿を持つ手が震える。

 

 

「……」

 

 

 そんな姿を響と未来はそれぞれ違う感情で彼らの背中を見つめる。 

 

 

 響の目線は不安と恋情、未来の視線には達観と愛情が乗せられる。

 

 

 二人の対極の感情を彼は背中で感じ取る。

 

 

「どうした。怖気づいたか?」

 

 

 未来の自分の煽りに覚悟が決まり操縦桿を捻り、速度をわずかに上げる形でそのすべてに答えるのであった。

 

 

 

 

 

 気が付けば、既に城の前に到着し、開けた場所に2台は着陸した。

 

 

「うわぁ……すごい」

 

 

「これは……」

 

 

「……すごい」

 

 

「ッ! ……」

 

 

 いつもの響から想像通りの反応と、その至近距離からの城の圧力から未来と奏は圧倒され、アスカは多少の憎悪を向けている。

 

 

 しかし、ソウマとクリスは目の前にその姿の巨大さを目の当たりにするが、先程までに感じた焦燥感が薄れ、まるで実家のような安心感が少しだけ感じれらた。

 

 

「ここが……」

 

 

 クリスの口から言葉が漏れる。その言葉には郷愁の想いが込められていた。

 

 

「ついてこい」

 

 

 未来のソウマは足を進め、城の中に入っていく。

 

 

 それに現代組のソウマ達はそれについていく。

 

 

 

 

 

 城の中にはどこか穏やかさとそれに合わせて静かさと荘厳さがそこにはあった。

 

 

 先ほどまで少し興奮していた響たちであったが、今は緊張をしているようで、肩が上がりっぱなしとなっている。

 

 

 そんな姿を後ろから見ているソウマは少しだけ、頬が柔らかく吊り上がる。

 

 

「ついたぞ……ここが王の間だ」 

 

 

 そうしていると、目の前には明るく豪奢な部屋がそこにはあった。

 

 

 目立つものとして、王の間の通り、目立つ二つの玉座がそこにはあった。

 

 

 その玉座をよく見ると、揃って豪奢であるが、デザインが異なっており、これがそれぞれ座る人間を想定しているデザインであると察することができた。

 

 

「ここが、王の間……」

 

 

 ソウマの足が自然と前に出る。

 

 

 吸い寄せられると錯覚するほどに、ある種の空気に呑まれていた

 

 

「止まれ」

 

 

 未来のソウマは目線でその場にいるソウマ達は止めると自分は玉座に向かい、ほんの少し玉座の前で一瞬だけ、躊躇うがそのまま、片方の玉座に腰を掛ける。

 

 

「さて、事情を話してもらおうか……私の記憶ではこの時代に自分がやってくる記憶がない。だからこそ、理由を聞いているのだ」

 

 

「理由については俺は知らない。何か七実さんが知っているかも……あれ、七実さんは?」

 

 

 ソウマは彼の言葉に答えようと、七実に答えてもらおうと後ろ振り返るがそこに彼女の姿ない。

 

 

「えぇ……」

 

 

 重要なタイミングでいないことに、目を白黒させる。

 

 

「どうやら、自分で目的を探せということのようだな」

 

 

 少し呆れたような未来の自分に、少しだけ戸惑いを見せる。

 

 

「少し、良いか……」

 

 

 後ろから未来が声をかける。

 

 

 その口調がいつもと違うことが気になり、振り返ると、彼女の腰に看慣れるようになったベルトがそこにあった。

 

 

「未来……」

 

 

 響は心配そうに見つめると、彼女は響を宥める。

 

 

「気にするな。我にとってもこれはつけねばならない因縁だ……」

 

 

「その口調、確かシェム・ハさんだっけ?」

 

 

「あぁ、久方ぶりよな。魔王よ」

 

 

「……シェム・ハだと」

 

 

 その言葉を皮切りに彼の怒気が膨れ上がる。先ほどまでの王としての纏っていた空気から一転し、今では突き刺すような殺意と怒気が此方に向けれらていた。

 

 

「その通りだ……未来の魔王よ」

 

 

「そうか……であれば、この手でもう一度葬り去るとしよう」

 

 

 彼は玉座から立ち上がると腰に黄金のベルトが現れる。

 

 

「まて、我は争いに来たわけでも、人類を支配しに来たわけでもない。ただ、お前に謝りに来たのだ。魔王よ」

 

 

「謝罪だと……」

 

 

 彼女の言葉にさらに怒りを彼は強める。

 

 

 しかし、それでも、神としての矜持か震えている自分の手を制し、彼女は頭を下げた。

 

 

「すまなかった……」

 

 

「……1つ聞こう。お前は私が殺したシェム・ハか?」

 

 

「いや、私は違う」

 

 

 怒りを押さえつけるかのように乱れた息を力づくで吐く。

 

 

「であれば、私に頭を下げる必要はない」

 

 

「だが──」

 

 

「真の意味でそう思うのであれば、神として人類を守れ……この話はこれで終わりだ。本題に戻ろうか」

 

 

 話を切り上げ、シェム・ハを目で制す。

 

 

 その様子に、彼女は意識を本来の未来へと戻した。

 

 

 意識を失っていたことで話の脈絡のなさに驚きを見せるが、その場で困惑を見せないように、その場で取り繕った。

 

 

 その姿に、未来のソウマは少し微笑むと、彼はそのまま、玉座から離れ、こちらに近づいてきた。

 

 

「といっても、ここでは埒が明かん」

 

 

 そういうと、彼は扉から外の廊下へと出ると、こちらに振り返り、告げる。

 

 

「ついてこい……」

 

 

 その無機質のように聞こえる言葉にその場にいる全員はその言葉に従うことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 歩いていくと少しずつ、それに合わせて、すれ違う人の数が少しずつ少なくなっていく。

 

 

 頭を下げ、道を譲られる様に、響と未来は少し落ち着かない様子を見せる。

 

 

 奏は、歌手活動で多少の人の目に慣れているが、道を譲られる様には少し、気持ちが悪いように少しむず痒さを顔に出てしまっている。

 

 

 しばらくすると風を頬に感じる。

 

 

 少しずつ未来のソウマの足取りが重くなっていく。

 

 

 かく言う、自分自身の足取りも重くなっているとソウマは自覚していた。

 

 

 背中に悪寒が走る。

 

 

 それでも、目の前の自分の背中を追う。今のソウマにはそれしかできないでいたのだった。

 

 

(なんだよ……この悪寒は……)

 

 

 心の中で悪態をつきながらも、足を意識して動かしていると、急に意識の外から光が差し込んできた。

 

 

 ソウマは、その光から目を逸らし、先ほどまでの薄暗い廊下から外に出たという認識を手に入れていた。

 

 

「きれい……」

 

 

「うぁ~」

 

 

 未来と響の声が聞こえる。

 

 

「あぁ、まさかこんなところに立派な庭園があるとはな」

 

 

 奏の声が聞こえる。

 

 

 ソウマは、その声に促されるように光に慣れた目を目の前の景色に向けた。

 

 

 そこには、西洋風と評すべき庭園が広がっており、壁の外の凄惨な光景が嘘と感じるほどの美しさであった。だが──

 

 

「なんか、落ち着かないな……」

 

 

「だろうな」

 

 

 未来の自分の言葉を聞く。多少の意識の中にあるものがほんの少しだけ紛れたような気がした。

 

 

 だが、相も変わらずの居心地の悪さから視線を下に向けると見慣れた感覚がするエンブレムが視界に入った。

 

 

「これ……クウ、ガ?」

 

 

 そこにはクウガのライダーズクレストが床のデザインとして一部使われていた。

 

 

 歩いていく未来のソウマは庭園の中心へと歩いていく。

 

 

 それにソウマだけが付いていく。

 

 

 そこには、見慣れた石像が中央の石碑を守るように円となって囲んでいた。

 

 

「これは……」

 

 

「あぁ……これは墓標だ……あの日、私が救えなかった者たちのな……」

 

 

「このライダーたちは、ガーゴイルみたいなものか……」

 

 

「あぁ……」

 

 

 今までの自分の中にあった、この城への忌避感の正体。それは、この石碑そのものだった。

 

 

「なぁ……いるのか、この中に……」

 

 

 此方を振り返る未来のソウマの貌はまさに失意と絶望が現れていた。

 

 

 先ほどまでの無表情に近い鍍金が剥がれ落ち、彼の中にある本心が顔を出した。

 

 

 それが雄弁に語る。それが事実であると、紛れもない現実であると

 

 

「過去の私よ……これがこの箱庭の正体だ……」

 

 

 その言葉が重くのしかかった気がした。

 

 

 膝が崩れ、目から、涙が溢れ、とめどなく彼の頬を流れていく。

 

 

「嘘だ……嘘だ……そんなこと、そんな、こと……」

 

 

 うわごとのようにその言葉を口にする。

 

 

 そこにいるのは、ただの隠者になり切れなかった愚者が2人いるだけであった。

 

 

 

 

 

 

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