タイムマジーンをイデアが操縦する。
まるで、この装置をよく知るように彼はそれを動かす。
壁を超えるとそこには先ほどまで、自身たちがあるいていた廃墟の町が見えてくる。
草木に呑まれだしているようで、コンクリートの一部が崩れだし、その光景に未来は、あまりにも、時代が立ちすぎているように感じていた。
ただ、その疑問を今、イデアに投げかかることはできなかった。
自身の隣で、生きる気力を失っているソウマを前には、質問をすることへの優先度は下がり切っていた。
「もう少しで、到着だよ……全員戦える準備をしてくれ、このまま、彼らの集落へ直接向かうのは、彼らを興奮させることになる。だからこそ、その近くで降りる」
「それで、戦う準備の必要性は?」
ソウマが力なく答える。
「簡単だよ。集落の周辺ということは、そこに、逸脱者がいるということだからね」
「逸脱者って結局何なんだよ」
「簡単だよ」
彼は、画面を視線を正面に固定しながら、答える。
「人が、人が、自分の欲望に負けた姿さ……自身を飲み込むような、そんな醜い……欲に塗れた醜さが形になった化物……もはや、怪人という言葉すら生温いような醜悪な化物だ」
同じ言葉を繰り返し、自身の中の感情を飲み込めていない。そんなイデアの心象が言葉にのって零れた。
「……なにか、思うところでもあるのか?」
ソウマが、問い詰める。
語気は強くないが、視線が突き刺すように、イデアの背中を睨みつける。
「あるさ、少しぐらいは信じていた……きっと、みんながあの時の歌で一つになってくれると……だが、奇跡が成立しなければ、だれも付いていかない。信じるべきではなかったのかもしれないと思うほどね……」
「何を言っている……」
「今の君には関係ないといえば関係ないよ。私やアーリにとっての後悔のようなものだ……それに歌程度で人類が纏まるなら、とっくの昔に世界は平和になっているからね。それが絶唱であっても、歌が届かなければね」
「どういうことだ……」
虚ろな視線が彼の真意を見定めるように見つめる。
ほんの一時、彼は後ろを振り返る、彼は虚ろの視線の中の意志を探る。
「そんなの簡単だよ。人の人生は一つの道を自分一人で歩いていくのと同じだよ」
「自分一人……」
その言葉にクリスが俯く。
「夢というのは人のゆく道を示す星のようなもの。だが、全員同じ星を目指すわけではない」
「そうだろうな」
「追う夢が少しでも変わればそれが気が付けば致命的なズレを生み出す。同じ手を取っても、同じ言葉を口に出しても……それは同じ道を辿らない。いや、辿れないんだよ……」
どこか自嘲じみた言葉が彼の本質を少し醸し出していた
「歌とは自身歩いている道を、心を他者へと伝える。だが、それだけでは人と人を繋げない。意味がない。言葉と歌に差はないさ……たとえ、心を伝えても、できることは他者の意識を影響を与え、それ以上に強まれば、他者の
「歪めるとはよく言ったものだな」
「違うのかい?」
「……」
「人の心に影響を与えれば良い方向のみには進まない。出なければ宗教に音楽や歌が必ずと言っていいほど使われないだろう?」
「それはあんたの宗教もか? そうだろ、石工達の神」
少し、信じがたいものを見るようにイデアは意識を彼に集中させる。
「……いつ俺の持つ神格に気が付いた」
「簡単だよ。お前は俺たちの意識からお前たちを外したってことは、そういう権能があるってことでしょ」
「あぁその通りだよ……」
「でも、それは人の認識に干渉している権能、さらにお前が偽神と名乗った。人の認識を変えるような神、人の魂を騙すことができる偽神と呼ばれる神であり、
図星を突かれたように、肩を落とす。
まだ、感づかれないと考えていた。イデアにとっては限りなく正解に近い、推測を告げられ、ため息をつく。
「あぁ……その程度のヒントで掴むとはね……そうだよ。私は偽神、造物主の名を持つ神、唯一神を騙る
彼の独白、自身の正体の吐露、役目への嫌悪、それでも、彼の声音は決して揺るぎはしない。
「揺るがないか……羨ましいよ。本当に」
ソウマの言葉にイラつきを覚える。
イデアは唇噛み、ハンドルを強く握る。その唇からは血が滲む。
「だけど、お前がッ……君が魔王なんだよ……だからこそ、今の俺には、君に私の知る道を伝える必要がある」
「それが俺にできる、否、すべきことだよ……」
自分の中の疑念を押し込めるように、自身に使命を言い聞かせる。
「それがお前たちの結論か?」
イデアの持つ熱意さえ、今のソウマには微かにしか届いていない。
「そうだね……でも、今の君にはこの世界を見て欲しい」
機体が着陸する。ゆったりと、ハンドルから手を放す。
少しの落胆と、納得の境のなか、イデアは少し、首に巻いたストールを緩める。
「ただ、君に信じて欲しいんだよ。人の善意を。そもそも、それがなければきっと、統一言語があったとしても、平和などは不可能だよ」
「それでも、善意だけでは世界は回らない」
「回ることはないさ……でも、善意がなくては、人は進歩することはないのさ……どちらもあって初めて人だよ。少なくとも、私は彼らからそれを学んだ」
「彼ら?」
「そうだ。君の持つ力の本来の持ち主たちからね。君もあったことがあるはずだ……」
「……」
ソウマの脳裏にライドウォッチが見せた人達のことが思い浮かんでいた。
しかし、目の前の神がそれを語る理由が理解できないでいた。
「ずっと、不思議だったんだよ。なんで、お前たち神が、たかが人間の英雄たちにそこまで固執する?」
「……たかが、人間か……相当弱っているようだな。我が魔王? ……あぁそうだ、アーク、タイムマジーンの奥に君のプレゼントを隠してある使うといい。ただし、片方の強度はそこまで高くないから、気を付けてね」
タイムマジーンのハッチが開く。
彼は、少し、ショックを受けたような表情をすると、彼はいの一番に外に出ていった。
「……ねぇ、ソウマ君。貴方だって、たかが人間だなんて思っていないでしょ。そう簡単に、思えるならあなたは、ライダーになんかなってないもの」
「クリス、これを」
「あ、おい!? なんだよこれ!?」
「開ければわかる」
七実は一言、伝えると、クリスに、トランクケースを押し付け、イデアの後を追う。
「俺は、俺は……」
自身の中にあるものが強く叫ぶ。だが、無気力と絶望感がそれを打ち消してしまう。
だが、それでも、彼の中にある感情が消えうせることはない。
「……行こ」
躊躇いながら、恐る恐る彼の裾を響は掴む。
そんな彼女の言葉に従うように、彼は、足を進めて、タイムマジーンの外に出る。
未来は、入口とは逆の奥に視線を向けると、そこには、おおよそ2m程度の大きさのケースが横たわっていた。
「これは……」
そのケースを開ける。
そこには、信じられないものがそこにあった。この世界にあるはずのないものがそこにはあった。
「どうしてこんなものが……」
ケースの中には人型のロボット、ヒューマギアの素体がそこに横たわっていた。
薄暗い機体の内で、彼女の眼が赤く光る。
「……」
その素体の隣には黒い武器がそこにはあった。
手槍のようなものであり、それと似たものを彼女はよく知っていた。
「これは、サウザンドジャッカーの改造物……まさか完成してたの……」
アークはそれを手に取ると、彼女の顔に笑みが浮かぶ。
「これで、ようやく、計画が進められるッ」
それは、どこか残忍さを内包する黒い笑みであった。
・歌の力
原作において、統一言語を超える人を繋ぐものとされるもの
シンフォギア等の聖遺物を利用するものを起動させ、人や世界を繋ぐ力もある。
アーリを代表する神やソウマ達シャドウシステム等の仮面ライダーに関する力を保有し、使用する人間たちについては一切の影響を受けつけない等の例外がある。
・イデア
偽りの創造神の神格をもつ存在。
自身の持つライダーシステムに適合するようにアーリによって作られたアーリ自身を基に神が造り上げた戦闘用の神。
この世界に誕生した厄災を打ち滅ぼす使命とソウマを導く役目を負う。