歌姫と仮面の狂想曲   作:白紙の可能性

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第69話 XXXX/苦しみと希望の欠片

 見覚えのあるだけの場所、もはや、人の気配すらないそんな場所。

 

 

「あれ、ここって……」

 

 

 響は、周りを見渡すとそこが、自分たちがよく使う商店街だということに気が付く。

 

 

「ここも……本当に私たちが住んでいる町なんですね」

 

 

 未来の言葉に、信じたくないという視線で、いつも利用する場所に変化した廃墟を眺める。

 

 

 歩いていくと視線を感じてくる。

 

 

 その視線に対して、穏やかな視線をイデアが向ける。

 

 

「さてと、我が魔王、変身しなさい」

 

 

「どうしてだよ……」

 

 

 爆音が轟き、砂ぼこりが舞い上がる。

 

 

 そこには、色々な生物が混ざり合ったような異形が、姿を現した。

 

 

「あぁ、あれが、噂の逸脱者、すなわち、この世界におけるシャドウシステムの誤作動、というよりも、違法利用の結果かな」

 

 

「なにッ……」

 

 

「君がこの世界の王になったことにより、この世界のすべての人間にシャドウシステムのメインサーバーへのアクセス権を手に入れた。その結果、自分の中にある欲望がそのまま具現化し、肉体が変質し、怪物になった。それが逸脱者」

 

 

「俺が使ってるこいつと同じものってことか」

 

 

「あぁ、間違った使い方をした結果。というよりも、無知ゆえの結果だよ」

 

 

「無知だと……」

 

 

「あぁ、そうだよ。さてと、このままではこの近くの集落、人間の生き残りたちが襲われて全滅かな……どうする? このまま放っておくのかい? いや、おけるのかい? これ以上、この時代の人類を追い詰めるのかい?」

 

 

 疑問符の連続に少しずつ、ソウマの表情が歪んでいく。

 

 

 苦虫を噛み潰した表情のまま、ベルトにシャドウジオウウォッチを装填する。

 

 

 そのまま、ベルトを装着する。

 

 

【ディ・ディ・ディ・ディケイド!!】

 

 

「変身ッ……」

 

 

 逸脱者に向かって走りながら、ベルトにウォッチを装填して変身する。

 

 

【ディケイド! ディケイド! ディケイドー!】

 

 

 そのまま、武器を両手に呼び出す。

 

 

「……アぁ」

 

 

 怪物が意識をソウマに向けると、そのまま、喧嘩でよく見る体重をかけた、蹴りを全力で放つ。

 

 

 そのまま、踏み抜くように、蹴り倒す。

 

 

 左手の銃を顔面に連射する。

 

 

「アぁ、や、ガ、アぁァぁッ!!」

 

 

 どこか、意味を汲み取れそうな言葉を逸脱者は放つ。

 

 

「あぁ゛ッ!?」

 

 

 銃撃を止めることなく、相手の横腹を蹴り抜く。

 

 

 痛みを負いながら、怪物が転がっていく。

 

 

「ガ……クルシイ……くル、しイ……たスけッ」

 

 

 怪物は藻掻くように、ソウマに手の爪を向ける。

 

 

「ッ!?」

 

 

【ヘイ!! ブレイド!! デュアルタイムブレーク!!】

 

 

 とっさに、青い雷を纏った斬撃が逸脱者を吹き飛ばす。

 

 

「……意識があるのか?」

 

 

「いや、ないよ」

 

 

 傍にイデアが立つ。

 

 

「ならあれはなんだ」

 

 

「あれは、残留思念かな、もはや、彼らは人間に戻れない。文字通りの地獄の苦しみを味わっている。それから開放する方法も、彼らを救う方法も、その手で葬るしかない。……もし、あるのであれば、持ってきてほしいぐらいだよ。それがないからこそ、ミラは狂ったのだから……」

 

 

「だったら、やるしかないか……」

 

 

【フィニッシュタイム!! シャドウジオウ! ディケイド!】

 

 

 ベルトを回転させ、飛び上がる。

 

 

 くすんだ金色のカードが、縦に並び、怪物とソウマを一直線で繋ぐ。

 

 

【アタック! タイムブレーク!!】

 

 

 手を手刀のように伸ばし、体の前で交差させ、体を抱えこむ。

 

 

「フッ!」

 

 

 身体をバネのように伸ばし、態勢を取り、金色のカードを突き抜け、怪物の目の前に迫る。

 

 

「ハァァァ!」

 

 

 10枚のカードのエネルギーを一転に集中した蹴撃が立ち上がろうとする怪物の胸部に突き刺さる。

 

 

「ア……あぁ……」

 

 

 その黄金の光と渦巻く風に包まれ、苦しみから解き放たれるような声を上げながら、爆発四散した。

 

 

 目の前に移る炎に仮面の下で、苦虫を噛み潰したような顔を浮かべ、持っている武器の柄を握りつぶすように力を無意識に籠める。

 

 

「我が魔王、行こう。目的地はこの先だ。どちらかといえば、先ほどから私たちを見ている人たちに案内してもらうのがいいかな?」

 

 

 歩いていくイデアにソウマは変身を解くことなく、歩いていく。

 

 

「ちょっとまちなさい。おいていく気なの? イデア!?」

 

 

 七実たちは、少し離れている2人に追いつくように走っていった。

 

 

 七実たちが追い付く寸前に、イデアが大声を上げる

 

 

「見ている諸君、君たちの集落へ案内していただけないだろうか、このまま、私たちが単独で進むよりも、君たちの案内ありきで訪問させてもらったほうが、君たちと正面切って争うリスクを回避できる。勿論先ほどの、戦闘で私たちの戦闘力の一端は示せたはずだ。だからこそ、君たちにはおとなしく案内してほしいんだけどね。そうだろう? 拝歌派の残党諸君?」

 

 

 彼の言葉に物影に隠れていたフードを被った数人が顔を出す。

 

 

「なぜ、我々のことを知っているッ」

 

 

 その中の代表のような男にがフードを取り、此方を睨む。

 

 

 その顔から、おそらく40歳前後であろうか、中年を過ぎ、壮年に差し掛かりそうな皺が刻まれ、始めている。

 

 

 そんな彼は、語気を荒く、手元に魔法陣のようなものを展開し、警戒を強めている

 

 

「簡単だよ。もともと、君たちのことを調べていたから。元来、君たちはパヴァリアの一員だったが、10年前に起こったキングダムで発生したテロの主犯として、キングダムから追われ、パヴァリアからも裏切り者として追われ、その結果、その二つの勢力に挟まれる形で、点々と集落を築いて生活している。違うかな?」

 

 

 無言を貫き、その内容を肯定する。

 

 

 イデアは少し周りに意識を回し、手を空に向けて掲げると、いきなり、空が割れ、透明に近しい3対の翼が生えた人形が4体が現れ、彼の四方を囲む。

 

 

 4体の人形は、それぞれ、武器を構え、隠れているであろう彼らの仲間を目で捉えた。

 

 

「今、君たちと交渉するつもりはないんだ。今すぐ、君たちの集落に連れていけ。そして、10年前のことを話してもらおうか」

 

 

 無表情のイデアと脂汗をかいている男、文字通り、蛇に睨まれた蛙のようであった。

 

 

「……わかった。ただし、一つ約束してくれ」

 

 

 暫しの無言の後、彼は、魔法陣のようなものを消し、唾を飲み込み、怯えを抑え込み、神に願いを申し入れる。

 

 

「何かな? 交渉のようなものはする気がないと再度言っておくよ」

 

 

「……交渉ではない懇願だ。仲間の命を保証してほしい。私の命はどうなっても構わない。だから、どうか……」

 

 

 イデアが首を傾げる。

 

 

 途端に気が付いたかのように、噴き出し、笑う。 

 

 

「そんなことか、いや、すまない。もとより、その点は保証するつもりだったんだよ。いや、確かにこいつらをチラつかされれば、そうもなるな。安心してほしい。君の命も、仲間の命も、保証しよう。何せ、君たちがどうしてこうなったのかの原因にはある程度、調べがついている。だが、君たちの仲の裏切りものが残っているのであれば、もちろん、処罰させてもらうけどね。その点は君も、同意してもらえるとは思うけど、どうかな?」

 

 

「もちろんだ。だが、裏切り者がいたとしても、主流派と合流をしていない時点で、その可能性は低いと思うが……時間がないのだったな。案内しよう。我ら拝歌派の集落へと」

 

 

 彼らは、ソウマ達に背を向けて、瓦礫の奥へと歩き出す。

 

 

「では、行こうか」

 

 

 イデアの言葉に、ソウマ達は彼らを追いかけるのであった。

 

 

 




・逸脱者
 逢魔の日以降に現れた怪物。人を中心に、さまざまな生物の特徴を併せ持つ。
 ソウマ達が使用するシャドウライダーシステムをドライバーを介さずに偶発的に使用した人類の末路。もはや、その精神は壊れ、彼らは生きながら苦しみ続ける。
 彼らを救う方法は、命を奪う以外、現時点において存在しない。

・拝歌派
 未来の勢力の一つ、パヴァリアの勢力の内、キングダムとの統合、融和を望む勢力。
 かつて、自分たちを助けるために、逸脱者と戦った奏者からの言葉を守り、歌と、音楽で、平和をつくることを目標としている。
 だが、10年前にテロの主犯とされ、キングダム、パヴァリアの主流派両方からも追われている。
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